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『アトラク=ナクア』というゲームに思うこと


アトラク=ナクア 廉価版アトラク=ナクア 廉価版
(2000/09/14)
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長い年月を一つのジャンルにのめり込んでいると、「この作品は一生モノだ!」と思う作品に出会うことがある。
もちろんその「一生モノ」の作品は人それぞれなのだけれど、その人がそのジャンルにのめり込んできたことで磨かれた感性やそのジャンルに傾倒してきたと言う経験がその作品をそう思わせることもあるのだけれど、ただ何となく「これは一生モノだ!」と思う作品があるのも確かである。

『アトラク=ナクア』は俺がそんな何となく一生モノの作品だ!と確信したタイトルの一つである。

何が良かったかと言われると「比良坂初音」と言うキャラクターに尽きる。
「人外化生は愛してやまない」と公言しているものの、多くの人外キャラが人間に歩み寄る姿勢を見せているか、徹底的に拒絶するかのどちらかで演出される。
例えば『月姫』のアルクェイドは「吸血鬼」と言うアイデンティティを持つがゆえに「人間とは違う」ということを明確に意識した上で「人間」である志貴に対して隔絶感を持ち、ある程度距離を保ったキャラクターであり、そんな意識が共闘の中で変革していく部分で強いドラマ性を発生させ、我々を魅力的なドラマに誘うことに成功しているし、『沙耶の唄』の沙耶は「歩み寄りながらも食物が明確に違う」という点で彼女が「人外側にアイデンティティを持つ存在」として演出されている。
その逆に人間側に歩み寄る姿勢を見せている人外としては『デモンベイン』のアル・アジフだったり、ちょっと違うけど『宇宙人ポール』のポールなんかがいるわけで、彼あるいは彼女たちは「人間に寄り添う存在」としてある程度計算されて設計されている部分がある。

一方、比良坂初音はそれらの人外と比べると少々異質な存在として描写されている。
大蜘蛛であるということにアイデンティティを持ち、人間を食料とする明確な化物として描写されているにも関わらず、比良坂初音はどこか人間臭さを感じさせる。
例えば「人間は食料」と扱いながらもヒロインである奏子にある程度の関心を寄せており、終盤で奏子から離れるものの最終的には奏子へと戻ってくる。そういう「人外として人間を受け入れていない」と言う人外らしさと「人間に歩み寄らずともある程度近寄れる」という人間臭さが初音にはある。
穏やかな物腰の中に見え隠れする妖艶さや魔性もさることながら、そういう「人外でありながら人外ではない」という絶妙に成立しているさじ加減こそが比良坂初音の魅力なのではないかと俺は思う。

この「人外でありながら人外らしくない」と言う初音のキャラクター付けが、シナリオにおいても効果的に用いられているのが本当にずるい。
とりわけ効果的に用いられているシーンといえばやはり銀との最終決戦だと思う。
自身を生み出した親であり恋人であり殺そうとしてきた存在である銀に対抗すべく、初音は本来の姿であり最も効率良く力を発揮できる蜘蛛の姿へと変貌するのだけれど親である銀に叶うわけもなく一方的にやられるのだが、奏子の声でふたたび立ち上がる、と言うシーンがあるのだけれど、奏子が駆けつけた後の初音が取る姿は本来の姿である「蜘蛛」ではなく「人間の姿」であり、その人間の姿で彼女は銀を倒す。
ここが凄く面白くて何度も読みなおしてしまうのだけれど、平野耕太の『ヘルシング』においてアーカードは「化物を殺せるのは人間だけだ」という発言をしている。つまり逃げ込んだ先である学校での生活が初音の人外性の中にある人間性を強化した結果、「人間である初音」が「銀という化物」を討つと言うロジカルになってるんじゃないだろうか。
そういう「人間万歳!」じゃないけれど「食料」としてしか見ていなかった初音が、人間を認めた上で化物を討つだけの意志を手に入れたと思うと、あのシーンが非常にヒューマニズムというか人間への尊敬の念に溢れたシーンに思えてくる。
最期に初音が奏子の中へと還るシーンなどはそうやって見ていくと、初音は「それでも人間を選ぶほど人間を愛している」ようにしか見えないし、同時にそれに気づかせてくれた奏子に対して愛情を抱いているし、同時に尊敬もしているんじゃあないだろうか……。

まあ今さら『アトラク=ナクア』が傑作であるということは語る必要がないことなんだけど、何となく書きたくなったので書いてみた。

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