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『009 Re:Cyborg』――なぜ今「009」だったのかという話

神山健治監督の最新作『009 Re:Cyborg』を見てきたんだけど、これがなかなか面白かったという話。


009 RE:CYBORG009 RE:CYBORG
(2012/11/09)
神山 健治、福島 直浩 他

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いやーこれはいい映画だったんじゃないかと。
トレーラーの段階から面白いものが見れそうな雰囲気はあったんだけど、そのトレーラーで望んでいたものは大体見れたし、そこにちゃんと+αもあったので個人的にはかなり満足度が高い映画だったなぁ。
まあ俺が見に行った理由は「トレーラーで面白そうだと思ったから!」もあるけど、なにより「神山健治監督の最新作だから」なんだけどね!
『東のエデン』以降短編映画以外は手がけてなかった神山健治監督が脚本も手がけて長編映画を作る!というだけで神山健治を追いかけてきた身としては身に行かざるをえない。
しかもそれが石ノ森章太郎の『009』であるのならば「組み合わせが面白い」というだけで食いつきたくもなるじゃあないか。

かつて世界を守った九人のサイボーグ戦士達。彼らは長い年月の間にそれぞれの道を歩き始めていた。しかし2013年。突如発生した世界同時多発テロによりサイボーグ戦士達は再び立ち上がろうとしていた。
そんな中、そんなサイボーグ戦士の一人、009=島村ジョーは記憶を失い東京で暮らしていたのだが、テロに巻き込まれてしまう。
仲間達とフランソワーズにより記憶を取り戻したジョーはサイボーグ戦士として復活を遂げるのだが、彼は仲間たちにこの世界同時多発テロが「彼の者」と呼ばれる存在により引き起こされている事、そして自身もその「彼の者」により東京でテロを行おうとしていたことを告げる。


という導入から始まる本作は「9.11」という単語や2013年が舞台ということからも分かる通り、我々の生きる「現代」を舞台にしているわけなんだけど、個人的に気になっていたのはそういう「現代」を舞台にすると言うことで生じる「今なぜ009なのか」ということをきちんとやってくれるかどうかだった。
舞台設定や導入が面白いのは分かる。俺もこの導入や舞台設定に惹かれるものがある。
ただその魅力的な舞台や導入を用意しておきながら、「なぜ009でやろうと思ったのか」と「今やることの意味」がやっぱり欲しかった。

ただ「009を出す」じゃなくて、「009であるからこそ」という必然性の問題なんだけど、本編を見ていたら「なるほど。これがやりたかったのか」と納得できるものになっていたのが個人的に最も気に入ったところだったな。
『サイボーグ009』は原作からそうなんだけど、多国籍で様々な人種が所属している組織になっている。
本作ではそこを踏まえた上で002=ジェット(アメリカ人)を国家安全保障局所属の人物として描くことで、主人公の009=島村ジョー(日本人)と「リーダーを巡っての確執がある」というドラマに政治的な意味合いを発生させている辺りがすげー面白かったんだけど、「国籍が違うもの同士が手を取り合う」というのがよかったんだよね。
なぜなら「現代」を舞台にする以上、やっぱり「終わりなき戦争」や「いつか壊れるかもしれない日常」という文脈は必須だと思うから。

「終わりなき戦争」、つまりテロとの戦争はこの現代を描く上で避けては通れない。
月村了衛の『機龍警察』もその文脈に属する作品で、近未来(ハヤカワ的には至近未来)とされた『機龍警察』世界でも「終わりなき戦争」の空気感、つまりテロリストとの戦いを描いている。


機龍警察(ハヤカワ文庫JA)機龍警察(ハヤカワ文庫JA)
(2010/03/19)
月村 了衛

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また冲方丁のシュピーゲルシリーズなんかも「テロリストとの戦い」という意味では外せないんじゃないかな。


スプライトシュピーゲル I Butterfly&Dragonfly&Honeybee (1) (富士見ファンタジア文庫 136-8)スプライトシュピーゲル I Butterfly&Dragonfly&Honeybee (1) (富士見ファンタジア文庫 136-8)
(2007/01)
冲方 丁

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オイレンシュピーゲル壱 Black&Red&White (1)(角川スニーカー文庫 200-1)オイレンシュピーゲル壱 Black&Red&White (1)(角川スニーカー文庫 200-1)
(2007/01)
冲方 丁

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テスタメントシュピーゲル 1 (角川スニーカー文庫)テスタメントシュピーゲル 1 (角川スニーカー文庫)
(2009/11/28)
冲方 丁

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この2つに共通することは「テロリストとの戦い」を描いた作品であるとともに、どちらも「終わりがない」ということを背景にしているということ。「戦争に終わりがない」ということは決着のつけようがないということであり、「絶望的とも言える戦いをし続けなければならない」ということでもある。
そう考えると30年近くの時を「サイボーグであるからこそ」そのままの性能で戦い続けられる「009」というのは、「終わりなき戦い」において重要な存在ではないか?と思うわけです。
ましてや一人一人が国籍が違う。そんな「人種」も「背景とする文化」も「利害」も、それら全てを乗り越えてサイボーグ戦士達がもう一度結集する。そう考えるとなかなか面白いし、「009であることの意味」もそれなりに納得がいくことなんじゃないかな。

映像的にはもうこれは凄いよなぁ。
ジョーとジェットが中心人物ではあるんだけど、各サイボーグの特殊能力の演出がとにかくカッコいい。グレートの変装能力ですらああいう派手さを抑えた演出で印象に残るものになっているし、ハインリヒが両手に装弾するシーンなんて銃好き、もっというと「銃器の排出機構フェチ」である俺には「たまらない」もので、正直あのシーンだけもう一度見たいがために二回目に行きたい!と考えるほどには気に入ったシーンだし、ジェロニモの腕力も視覚的に面白い演出がされていたのが好印象。
そして最も特筆すべきは加速装置! おそらく多くの人が見たいのはこれだと思う。
先ほども書いたけどこの加速装置の演出だけど、トレーラーで「これが見たい」と思ったものは大体全部見ることが出来るというのが凄いんだけど、それだけじゃあない。
詳しくは避けるけど、中盤のドバイでの加速装置は「格好良い!」だけじゃない。もっと複雑な感情にさせてくれるという意味で、加速装置のギミック的な面白さを上手く調理した映像だったと思う。
あと廃墟の街は必見。
廃墟のグラフィック自体が美しい背景ではあるんだが、その背景に流れるものを理解するとより魅力が増すのではないかなー。俺はあのシーンが一番好きだな……。

世の中には「映画館で見なくてもレンタルで見ればいいじゃない」という人がいるのも事実だし、俺もそれは否定しない。
だけど俺は本作『009 RE:CYBORG』は映画館の大スクリーンで見る価値がある映画だと思う。脚本に興味を惹かれない人も映像はとにかく面白いし、一つ一つのギミックが「こういうギミックもあるのか」と思わせるような作りになっているので映像だけでもぜひ見てほしい。

ところで本作は当初は押井守が監督で神山健治は脚本だけ(なので押井守監督想定の脚本)だったそうで。
押井守が嫌がった事もあって神山健治もその脚本を取り下げようとしたところ、押井守の「やってよ!」の言葉でやることになったらしい。
俺は押井守のある種の「激励」だと思っているんだけどねー。それに神山健治は応えられたのかどうかも、見る楽しみの一つに加えてもいいかもしれないね。
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