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『テラフォーマーズ』の人類に逃げ場なしっぷりが面白い


テラフォーマーズ 1 (ヤングジャンプコミックス)テラフォーマーズ 1 (ヤングジャンプコミックス)
(2012/04/19)
橘 賢一

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人類最大の敵とはなんだろうか。
恐らく多くの物語でその問題は扱われてきたように思う。
怪獣映画では怪獣こそが人類の最大の敵として立ちふさがり、ブラム・ストーカーは吸血鬼を最大の敵として設定した。時に人間であることもあったし、外宇宙から飛来し、邪神と形容されるようになった凶悪な生命体であったこともあった。
だが我々の住まう地球には我々と同じ大きさであれば、我々人類を赤子の手をひねるかのごとく容易く屠ってみせる生物が暮らしている。
我々の想像できる範疇を超えた様々な能力を宿し、我々の理解を超えた生命としてこの地球上最多の生物として地上に君臨しているが、我々が暮らす都市においておそらく最も恐れられているのはあの忌まわしくも悍ましい黒き輝きの生命体であることは否定出来ないだろう。我々の想像をはるかに超える速度で移動し、我々の理解を超えて飛来するそれは、まさしく「人類最大の敵」と言っても過言ではない。
その忌まわしくも悍ましき生物は何億年もの間、姿を変えずに存在し続けているという。
だがもしもその生物が進化したとしたら。人と同じ大きさの生命体へと変わったとしたら。
それは人類が知る限り最強の生物になるのではないだろうか。



本作『テラフォーマーズ』はそんな最強の生物と化したゴキブリと人類の生存戦争を描いた物語である。
人口増加に伴う火星移住計画により火星をテラフォーミングする必然性にかられた人類は、酸素を生み出すために遺伝子改良した苔とともに、ゴキブリを送り込んだ。太陽線を吸収するために生命力と繁殖力の高さにより選ばれたゴキブリ達。
いくら繁殖力が強くともたかだかゴキブリ。人類の敵になるはずがない。そう思われていた。
500年後。テラフォーミング完了とみなした人類は、その生命体を撲滅すべく火星に乗り込む。そこにいたのは火星の過酷な環境に耐えうるべく進化し続け、人と同じ二本の腕と二本の足で直立歩行するようになったゴキブリたちであった――というところから始まるこの物語は火星での人類対ゴキブリの戦争というべき内容である。
有史以来続いていると思われるゴキブリと人類の戦争だが、ゴキブリが2足歩行するほど巨大になり、舞台を火星に移したというだけの物語では断じてない。
それだけであれば地球と同じように、人類はゴキブリを全滅させることは出来ずとも有利な環境を作り出すことに成功していただろうし、ここまで人を魅了するかのような物語にはならない。
本作を面白くしているのはそのゴキブリ達の強さにある。
『テラフォーマーズ』に登場するゴキブリ――テラフォーマー達は我々の知るゴキブリとは大きく異なる。
地球種のゴキブリが持つその強い生命力と人を翻弄する素早さ、環境によってはカブトムシにも匹敵するという筋力を人間大にスケールアップしているということによる生物由来の強さもあるが、本作におけるゴキブリが人類を圧倒する強さを誇るのは人類と同じように二本の腕を持ち、二本の足を持つが故の高い環境適応能力にある。
時速300kmで走り出せる脚力。軽く腕を薙ぎ払うだけで人の背骨を砕いてしまうその腕力。
それらが人間と同じような身体を得たことにより発揮されるのだから、まともにやれば人類に勝ち目などあろうはずもない。事実、作中でもそのような進化を遂げていると知らなかったゴキブリ退治の第一陣は全滅している。
しかし人類は失敗に学ぶ生物である。
第一陣が敗北した理由を分析し、知恵を絞ってゴキブリに対抗すべく人体改造に踏み切る。
それは即ちゴキブリが人間のような手足を手に入れたのならば、人類は昆虫の力を手に入れるということである。
かくして送り込まれた第二陣は昆虫や動物の能力を自在に操る改造人間であり、本編で描かれるほぼ全ての人間が何かしらの生物の力を持つ改造人間ということになる。
つまり『テラフォーマーズ』の中で行われているのは、人と同じような手足を手に入れたゴキブリと他生物の力を手に入れた人間の戦いということになるわけなのだが、そんな人類よりも雑魚であるゴキブリの方が強いのだから実に恐ろしい。
「圧倒的な数と強さを誇るゴキブリに対して、人類はどう対抗していくか」という骨太なドラマが本作の魅力ではあるが、人類にとっては接触=死亡にも等しい存在であり、改造して得た能力を全て発揮させてくれるような隙をなかなか見せないゴキブリに果たして人類は勝てるのだろうか――。

「人類に逃げ場なし!」とは第三次スーパーロボット大戦αのキャッチコピーであるけれど、『テラフォーマーズ』の人類たちにもしっくりとくる。
『スパロボ』が「迎え撃つ」に対し、『テラフォーマーズ』は「挑みに行く」が正しいのであるが、そう簡単に引くことができないという人類側の覚悟はどちらも同じであり、だからこそ「その覚悟に対する試練」である敵陣営は強力なのであろう。
現在のところ三巻まで発売されている作品であるが、四巻に収録されるだろうエピソードでは「誰が死ぬか」という死ぬ側の法則がゴキブリ側にも適応されることが判明しており、それもまた「人類対ゴキブリ」という戦いを面白く見せてくれる。

はたして人類はゴキブリに勝利することが出来るのだろうか。
今後に期待したい作品である。


テラフォーマーズ 2 (ヤングジャンプコミックス)テラフォーマーズ 2 (ヤングジャンプコミックス)
(2012/08/17)
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