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『ラブライブ』に存在する「ゆらぎ」について

今日もまた『ラブライブ』の話をしてるけど、星空めておの『ファイヤーガール』がえらく面白かった事とそのうち記事を書こうかと思う。
でも発売一週間で通販はほぼ全滅。再販は未だかからずという状態なので、「記事を書いても読んだ人が即購入に移れない」という状態が継続しているというのはいかがなものか。
まあ出版社でもないTYPE-MOONが自社出版という形で出している以上、再販までの動きが遅いのは仕方がないと思うのだが、第二版の動き出しは早かったのに第三版の動きの遅さは何が理由なんだろう。
ところで『ファイヤーガール』は全三話らしいんだが、最近の流れを考えると完結後に星海社辺りで販売されそうだなーと予想しているのは俺だけではないはずだ。

アニメ版『ラブライブ』が放送開始してから既に三週間が経つわけなのだが、つくづく『ラブライブ』というコンテンツは面白い作りをしていると思う。
アニメ版では一話の終盤における絢瀬絵里と東條希、園田海未と南ことりと高坂穂乃果という全く別の場所にいる二組の台詞が視聴者視点では繋がるようにしている点や、先程までダンスの練習をしていた穂乃果がなぜかEDでも踊れることなど、一見すると繋がっていないように見える。
しかしそもそも『ラブライブ』というコンテンツは「現実にμ'sがいる」という想定でコンテンツを展開してきている。
前述したような演出から考えると、アニメ版は「事実を元にしたドキュメンタリー風ドラマ」という創作作品で、台詞が繋がっている事や芝居がかった演技をしているのは「この作品がドキュメンタリー風ドラマである」ということを意識させるための演出であり、一話のEDで穂乃果達が踊れている事も「アイドルとしてデビューした後の三人が実際に踊っている」と考えると納得がいく。

そもそもなぜアニメ版『ラブライブ』がこういうドキュメンタリー風ドラマみたいな作り方をしているのだろうか。
それは『ラブライブ』というコンテンツが正史を定めておらず、全てが正史であり偽史であるという状態=あらゆる可能性を残した作品だからだろう。
俺はこの「可能性が残っている状態」「解釈を第三者に委ねる」という概念を「ゆらぎ」と呼んでいるのだが、この「ゆらぎ」は『ラブライブ』というコンテンツの独自の概念かというとそうではなく、『ラブライブ』の前企画に当たる『Baby Princess』辺りから引き継がれた概念ではないかと思っている。


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『Baby Princess』とは突如生き別れた母親と再開したことにより主人公=読者は十九人の姉や妹と共に暮らすことになった!という導入から始まる『電撃G'sマガジン』の読者参加型企画なのだが、この『ベビプリ』の最大の特徴は「家族全員が綴る日記」という形でブログを運営していたということ。
このブログはほぼ毎日更新されていたんだけど、執筆者は十九人の姉や妹一人一人という設定であり、視点も当然長女なら長女の、十九女なら十九女の視点で固定化されている。
この第三者視点の排除が何を生み出したかというと、『ベビプリ』では季節やら何やらで定期的にイベントが発生していたんだけど「イベント全体を語る人間がいないおかげで、「何が起きていて、どういう流れになっているか」「複数のヒロインの視点で綴られた日記から読者一人一人が想像することが出来る」という面白さを生み出しており、「起きているイベントは一つなのに、複数人の日記を読むことで推察される内容と解釈は読者に委ねられている」という事により「読者一人一人にとってのイベントの真相」を生み出した。
この「イベントの唯一性」が『Baby Princess』が描いている「トゥルー家族」の面白さで、「トゥルー=真実の家族」は読者一人一人が、ブログを読むことで想像力に依る関係性を構築することで成立する。
そして想像力(妄想力と言い換えてしまってもいいのかもしれないけど)は読者一人一人にとって違うわけで、同じブログを読んでいても読者一人一人にとって「真実の家族像」というのは微妙に違うし、イベントについても異なるものになる。
それによりトゥルー家族は読者一人一人にとっての「真実の家族」として唯一性を確立するに至っているんじゃないだろうか。

この「同じものなのに読者一人一人にとっては微妙に違う」という「ゆらぎ」の概念は『Baby Princess』以前から電撃G'sマガジンの読者参加型企画ではよく見られる要素ではあるんだが、『Baby Princess』はこの概念にある程度の指向性を与える事に成功しており、それによりライブ感とそれによる面白さを生み出していたのだと俺は思う。
この「ゆらぎ」の概念をコンテンツ全体に適応したのが『ラブライブ』というコンテンツだと俺は思っているんだけど、「廃校を阻止するために入学希望者を増やす宣伝塔として、スクールアイドルを結成した」という基本的な導入とアイドル達はキャラクターとして存在しているけれど、コンテンツとしてみると読者側の視点は「ファン」となっており、ファンには「結成に至るまでの理由」や「本人達の思考」は全くわからない。
もちろん本人たちが後から振り返って語るということあるし、実際インタビュー形式で綴られたショートストーリーはあるにはあるのだが、それについても「結成しようと思った当時の目線」ではなく「後から振り返ってみてこうだった」でしかない。
もちろん後から「結成した当時の話」を展開することは出来たと思うのだが、それを固定化することは『ラブライブ』というコンテンツの「実際にいるとして」という想定を否定してしまうことになってしまうし、そこから仕掛けられていた全ての仕掛けが台無しになってしまう。
この辺りを大事にした結果、二話におけるグループ名決定のエピソードでの「μ'sを投票したのは誰なのか」や「ファン一号は誰なのか」も明言しないという、視聴者に解釈を委ねるような演出に繋がるのではないかと思う。

長々と書いてきたけど、「正史を明言していない=様々な解釈をする余地が残されている」というのが『ラブライブ』というコンテンツの仕掛けになっている部分はあるは思うので、「事実とは違う部分もある」というドキュメンタリー風ドラマ(になるかどうかはまだ分からないけど)のような映像作品にした京極尚彦監督の判断は正しいものだと言わざるをえない。
とはいえ、まだアニメ版ラブライブはまだ始まったばかり。コンテンツとしてもまだゴールではない。
本当にそういう理屈のもとに作られたかどうかについては異論を挟む余地は多分にあるし、京極監督の判断についても同じことが言える。まだ始まったばかりだ。
ならばそれが正しかったのかどうか。面白かったのかどうかについては後回しにして、まずは最後まで完走してくれる事を願いたい。
賛美にせよ批判にせよ、それからでも遅くないはずだ。


ところで、これを書くためだけに『Baby Princess』のコメントログを読み返したら、「0歳の誕生日おめでとう」というコメントがあった。
やっぱりトゥルー長男は時代の最先端を生き過ぎているな。スゴイ!


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[T237] [アニメ][ラブライブ!][表現][考察]なんでみんなラブライブ!ってデタラメアニメ見てるの? 脳がスポンジなの?

デタラメさ気にならないの?目が節穴なの? 右の耳から左の耳に抜けてくだけなの? 宛名なしで届くCD 2話でμ’sの発案者、高坂穂乃果の熱意に当てられて、μ’s宛にピアノや歌が得意

[T239] -

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  • 2013-02-24

3件のコメント

[C1092]

G'sの読者参加企画を本格的に知ったのは「双恋」からですが,それ以降これといったヒットがなかった気がします.

再びの隆盛を見られることを期待しています.
  • 2013-01-22
  • Anonymous
  • URL
  • 編集

[C1094]

>>G's

一応百合を打ち出した『ストロベリー・パニック』や前述した家族愛を描いた『Baby Princess』はアニメ化までしているんですが、一部の層にウケた!というところでとどまっているのが惜しいところです。
  • 2013-01-23
  • 水音
  • URL
  • 編集

[C1616]

すごく面白い指摘で、ラブライブ!を見るにあたり新たな視点を持つ事ができました。私のブログでもこちらの記事を引用させて頂きました。失礼ながらコメントにてご挨拶させて頂きます。
『劇場版 ラブライブ! 2度目の感想:やっと理解できた ミュージカルアニメとしての凄さ』
http://kato19.blogspot.com/2015/06/lovelive-movie-2.html

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