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『ラブライブ』の「唇に色を載せる」演出が生む印象の強化について

前に一度した『ラブライブ』のリップ描写と表情を印象づける演出についてという話をもうちょっと書き直したいと思ったので書きなおすことにする。
話の本筋としてはそんなに変わらないので前の記事を読んでいる人はそんなに目新しい情報はないと思うのだが、もうちょっと注目してほしい演出なので書きなおすという二度手間を行うことにしたい。しよう。そういうこととなった。



アニメ版『ラブライブ』はさりげない演出が面白い作品だ。
例えば四話で凛は花陽にアイドル活動に誘われて断るというシーンにおいて、一度自身の言葉として反芻し一呼吸置いてから断っているという演出がされている。
すぐに断ってしまうのではなくいくつかのプロセスを挟むことで、凛の中にあるアイドルに対する感情を、より正確に言うのであれば「女の子らしさ」に対する感情を呼び起こしており、そのことが凛のμ's参加への伏線につながっている。
そんなさりげない演出の中でも個人的に好きなのは唇に色を載せるというものなんだけど、これは他ではあまり見かけない演出だと思う。同じ京極監督繋がりで『プリティーリズム』も見ているが、唇を色に載せているわけではないので、京極監督というより『ラブライブ』オリジナルの演出ではないかと思うのだが、その辺りについてちょっと書きだしてみる。


・唇に色を載せるという演出について

2013-02-02_01h19_58.png


この「唇に色を載せる」という演出はアニメ版だけの特別なものではなくPVの頃から用いられているものなんだが、1stシングルの頃はそれほど面白い使い方をされていない。2ndシングルから用いられ始め、演出手法として確立されたのは3rdシングルの頃。
それ以降は大体全部使われているんだが、一番効果的に使われていたのは4thシングル辺りかな。
この画像は3rdシングルのものなのだが、口元に注目すると薄く色が乗っているのがわかるんじゃないかと思う。

資料

この「唇に色を載せる」という演出自体はさほど珍しいものではないといえばない。
例えば変身ヒロイン物や魔女っ子物における「変身」において「ルージュを引く」というシークエンスが存在するものもあるし、変身後にはルージュを引いた状態のキャラも居るわけなのだが、『ラブライブ』の場合はそういう演出ではなくて、用いられている部分は基本的にはアップの部分で使われる演出ではあるが、シーンによって唇に色を載せている部分とそうではない部分があるというのが特徴的な演出となっている。
例を上げていくと、これは一話から抜き出してきたカットだが、この部分では穂乃果の唇には色がついていない。

2013-02-02_01h25_27.png>


しかし同じ一話でもこちらのカットでは唇に色を付けており、この二つは「穂乃果にカメラをよせて表情を見せようとしている」という意味では同じ撮影の仕方をしているのだが、違う演出がされているということがよくわかる。

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・唇に色を載せるということの意味

そもそもなぜこの唇に色を載せるという演出を用いるのかといわれると、やっぱり印象を強化したいという理由なんじゃないかと思う。
アニメ絵では基本的に目で感情表現することが多く、口や鼻はわりかし省略されやすい。省略しているからこそ目での表現に視聴者の意識を集中させる事ができるようになると俺は思うのだが、それとは逆に「口元の情報量を増やす」という演出手法はそういう意味では視聴者の意識を分散させることに繋がる。
ただ意識の集中するポイントを分けるということはそれだけ全体を見せたいということではないだろうか。
こういう「意識を集中させる場所を散らす」という手法は、意識を一点に集中させることで得られる没入感を阻害する代わりに俯瞰視点というか全体を見るという意識に持って行きやすい。
少なくともおれは一つのところに集中するのではなく二つ以上を見るわけなのだから、一つのところに集中するよりも没入感は薄れるし、一歩引いたところに意識の焦点を合わせている感覚がある。
『ラブライブ』の場合は「唇に色を載せる」という手法により口元の情報量を増加させることで、「目」と「口元」という顔の中の二つのポイントに視聴者の意識を集中させ、目だけでなく顔全体の表情を印象付けるという演出意図になっているように思う。
状況証拠でしか無いけど、『ラブライブ』でこの演出が用いられているのは基本的には顔を見せたいところぐらいで、例えば一話のこのシーンなんかは顔を印象的に見せる目的で演出されていたように思う。

2013-02-02_01h26_25.png


こういう「唇に色を載せる」などの情報量の増加といえば『涼宮ハルヒの憂鬱』のライブ回でのハルヒはライブ時とそれ以外とでは線の多さ自体が変わっていて強烈な印象を与えていたけれど、同じように情報量を増やして印象を強化するという演出でも「書き込む線の量を増やす」と「使う色を増やす」という二つの手法があって、何を見せたいかによって選択の幅が生まれているような気もする。
いやまあこのへんは印象論なんだが。

・爪にも色を載せているのはなぜか?

そういえばアニメ版『ラブライブ』の色使いでは爪にも色を入れているのも面白いところではないだろうか。


2013-01-30_03h16_31.png

このカットは花陽の手に注目させる目的があるのでこのカットだけの演出なのかなーと思っていたら、そのシーンの後で凛の爪にも色が付いているし、そもそも一話のアバンタイトルの段階で既に用いられていたりするので、ラブライブ全体でこの演出を用いているようだ。

2013-01-30_03h17_03.png

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この演出を何故行なっているのかは少なくとも今の段階ではわからないけれど、「アニメ版は創作作品だよ説」を唱える人間としては創作作品っぽさの強化であり、「彼女達はメイクしているよ」という演出なんじゃないかと思うわけなのだが、にしても何故爪まで……。
検証した限りだと本当にアバンタイトルから用いており、爪が映りそうなカットでは全部色を入れているようなので色々と手の込んだ事をしていると思うわけなのだが、この「爪に色を載せる」という演出に焦点を当てているのが四話の花陽と凛の会話だけというのは正直どうなんだ! いや爪にカメラをずっと向け続けられても困るんだが!
しっかり爪まで線を引いているわけじゃないので本当にさりげない演出だけど、こういう爪に色を入れるというのもなかなか面白い事をしているなーとか思うのです。そういえば爪の描き方として現実寄りではなくきちんとアニメっぽい描き方になっているところも面白いかなーとか思うところ。



まとめると、


・「唇に色を載せる」という演出はアニメ版だけでなく、PVの頃から用いられている『ラブライブ』独自の演出
・唇に色をわざわざ載せるのは口元の情報量を上げて印象づけるため。なので使うところはちゃんと選んで使っている。
・爪に色を入れている理由はさっぱりわからない。とりあえず俺は「創作作品っぽさを強化する演出」という説を唱えておく。
・この検証のためだけに口元や爪に注目してPVやアニメ版を見直しているけど、PVのにこにー先輩はちょっと「俺に惚れてるんじゃないか?」とか思わせる度が高すぎると思います。


というところで。

何にしても、こういう演出は面白いし「どうやったら何気ない表情を印象づけられるのか?」という意味でも大変興味深いものなので、個人的にはかなり注目しておきたい演出ではないかと思う。
あまりにもさりげなくやっているので一度見ただけではわかりづらい演出ではあるので、二回目三回目を見る時にちょっと注目して視聴してみてもいいのかもしれない。
そうした細やかな演出が最終回でどのような実を結ぶのか。最終回まで楽しみにしていきたい。



ところで四話でアルパカが突然登場したように見えたが、ありゃ唐突でもなんでもなかったといったらどう思われるだろうか。
俺も見直していて気がついたのだが、四話のアルパカ登場の伏線は一話の段階ですでに貼られていたのである。

2013-02-02_01h30_51.png

あまりにも自然に描きすぎて、四話でいきなりアルパカが登場したかのように思ったんだけど、やっぱりちゃんと伏線は張ってあるんだなーと感心しました。
だけど普通はあそこでアルパカが取り上げられるとは思わないよ!


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4件のコメント

[C1100]

唇の表現は西田亜沙子さんの作画ですね。
電波少女もこの特徴がよく出ています。

[C1101]

>>西田亜沙子

電波少女からの流れでほぼ間違いないと思いますね。
1stの頃はそれほど用いられてないのに、電波少女の後になる2nd辺りからこの表現が用いられてきている辺りも面白いんですが、この表現自体は情報量の増加という意味でも使いどころは結構あるんじゃないかと思います
  • 2013-02-04
  • 水音
  • URL
  • 編集

[C1102]

アルパカの件は4話の登場で気付かされたけど、
第1話の時点では、ラクダ? いやまさか。あれ犬だろ 見解でした・・・w

[C1103]

>>アルパカ

なぜ音乃木坂にはアルパカがいるのか。
私、気になります!
  • 2013-02-05
  • 水音
  • URL
  • 編集

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