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失敗からの覚悟を描いている漫画版『ラブライブ』の魅力について

漫画版『ラブライブ!』はたまに引用するのに未だに一度も書評を書いたことがないのでいい加減書いておくこととする。

はてブで「公野櫻子の名前もちゃんと書け!」と書かれてたのでちょっとだけ加筆。



アニメでも人気になっている『ラブライブ!』は電撃G'sマガジンの読者参加型企画であり、アニメ版もまたその企画の一部を担っている作品だというのは何度も書いてきたことなのだが、『ラブライブ』のメディアミックス作品としてアニメ版の他に公野櫻子原作の元、鴇田アルミが執筆している漫画版というものが存在している。


ラブライブ! 1―School idol project (電撃コミックス)ラブライブ! 1―School idol project (電撃コミックス)
(2012/09/27)
公野 櫻子

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この漫画版『ラブライブ』は「廃校の危機に陥った音乃木坂学院を救うためにスクールアイドルを結成する」という骨子は変わらないものの、アニメ版では四話から加入した花陽・凛が最初からメンバーにいたり、メイド喫茶でバイトしているのがことりじゃなくなっていたり、にこの性格がアニメ版でいう「アイドル状態」の時だったりと、アニメ版とは導入部分のストーリーラインだけ共通でそれ以外は大きく異なる物語となっており、アニメ版とはまた違った魅力の光る一作となっている。
個人的に面白いと思うのは「徹底的に挫折させている」という事と「部活物要素の強化」という事。
アニメ版でも漫画版でも「廃校の話が出てくる→スクールアイドルで入学希望者を増やそう」という流れは共通なんだけど、漫画版ではその前に「部活動で頑張って結果を残せば何とかなるんじゃないか?」とワンクッション挟んでからアイドル活動の話にシフトさせている。
これは漫画版では穂乃果と海未が剣道部という設定があるというのもあるんだけど、ここで穂乃果が「剣道の大会でいい成績を納めれば入学希望者が増える=廃校を阻止できるんじゃないか?」と考えて行動し、そこから「剣道で頑張っていい成績を納めても廃校は阻止できなかった」という展開に繋げることで、「正攻法では駄目だった」という失敗から正攻法じゃない方法に対する説得力を与えている。
また穂乃果が優勝したのは剣道の個人の部なので、そこに対して「一人じゃダメだ!」というところに繋げているのも面白いんじゃないかと。「正攻法=部活動での活躍が駄目だったから、邪道=スクールアイドルを目指す」というだけなら分かるんだけど、個人活動では変えられなかったということから集団での活動に繋がっているのもテクニカルな感じで興味深いところ。

加えて穂乃果の「廃校阻止」に対する覚悟というか決意の固さが、穂乃果自身の台詞としてきちんと描かれているのも漫画版の魅力の一つではあるんじゃないかな。
アニメ版でも穂乃果はあたふたしているようで芯の部分は全くブレないし、決めたことはきちんとやるというある意味頑固な人間として描写されているんだけど、漫画版では「私、音乃木坂を絶対廃校にはさせない。どんな手を使っても守ってみせる」と言い切っていて、その覚悟のもとであらゆる手を打とうとしている。
剣道で頑張ったのもそうだし、剣道が駄目だったからスクールアイドルという方法にシフトして。そこで海未から糾弾されても穂乃果はスクールアイドルという選択を変えてはいない。
その辺りの覚悟がちゃんと海未という一緒に剣道をやってきた仲間からの糾弾や1stライブでの大失敗で試されるシナリオになっている辺りに脚本の上手さを感じられる。
ちなみにこの漫画版のプロットは原作者となっている公野櫻子が担当していて、視点が結構入り乱れるのが特徴と言えば特徴な気がするなぁ。
漫画版の1stライブはボロカスに貶されて笑われてダンス自体も上手く行かず失敗するしで、漫画版のほうがその失敗のさせ方は悲惨な印象が強いんだけど、このシーンの視点を海未に絞ることで「穂乃果達の失敗」をより悲壮感あふれる演出になっているのも押さえておきたいところで。
この話では「穂乃果にとっての海未」と「海未にとっての穂乃果」がきちんと定義されて、幼馴染であることを強調することで「ただの失敗」ではなくて「大事な友達が公共の場所で泣いてしまうような大失敗をしている」という見方になっていて、この辺は穂乃果・ことり・海未という演者の視点から失敗を描いたアニメ版との大きな違いなんじゃないかと。
この辺りの視点の入れ替わり具合も押さえておくといいかも。

またアニメ版と比べると漫画版の方が部活物っぽい要素が多いのも特徴かな。
元々『ラブライブ』というコンテンツは活動を「アイドル活動」と呼んでいたりファンのことを「ラブライ部員」と呼んでいることからも分かる通り、題材としてはアイドル×部活動というものなんだけど、漫画版の寄りかかり具合としては部活動の方に重点を置いている。
例えば「序盤からゴール地点としてアイドルコンテスト=ラブライブを設定している」とか「顧問が必要」とか。
特に押さえておきたいのは「ラブライブは学校公認の部活動でなければならない」という要素で、一応見立て方としてはアニメ版の花陽がいう「アイドルの甲子園」という要素をより強化したような形になっているんだよなぁ。
これはアニメという動画と音声で見せるメディアの特性と漫画という静止画と文字で見せるメディアの特性の関係だと思うんだけど、動画や音声でアイドル的なものを見せられるのに対して漫画版は絵と文字で見せなきゃいけない。
メディアの特性を理解した上でどちらに重心を置くか、という問題だと思うんだけど、部活動物っぽい設定の組み立て方をすることで「あれだけ人気があるA-RISEがなぜUTX所属で留まっているか」ということに対する理屈付けが出来ていて、世界観設定的な意味でも上手い作り方だな。
問題はつまるところ部活動であるスクールアイドルとそうではないプロのアイドルは、どういう距離感なのかということなんだけど、実際そのへんはどうなのかさっぱりわからないね!
あ、あと仲間集めにおいてもエリチカは対立する存在になってなくてむしろ幼馴染であり、穂乃果達を応援する存在として描かれているし、そのキャラクター付けもアイドル状態のエリチカなのでその辺りと脚本を考えると「漫画版の方がドラマっぽい仕立て具合をしている」という見方もできて個人的には好感が持てるわぁ。
ありかどうかはともかく、最初にラブライブ出場しているところを描いているのでどうにでもなりそうな感も。



アニメもそろそろ佳境に差し掛かっているわけだけど、漫画版はまだまだこれから。
この二つは同じ作品を原作としていながら全く別の面白さを生み出しているので、比較して見ると両者の面白さが再発見できるんで気になる方には是非チェックしてほしい。
あと何気に上手いんだよ、この漫画。



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