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『ラブライブ』十一話に見る視点誘導と「今まで」の挫折について

アニメ版『ラブライブ』では挿入歌を三枚出すところまでは確定しているので、あとはいつ流れるかという話だったんだけど、今週の内容を見るに残りの一曲は最終回で流れるという認識でよろしいのだろうか。
しかしながら九話の『Wonder Zone』は本当に挿入歌扱いで流していたわけだし、挿入歌3の発売日は4月の頭である以上、十二話で流れてもおかしくないといえばない。
最初から「挿入歌を出すよー」と言われている場合、どこで流すのかが本当に気になるし総話数から逆算して山場を分析する人間としては度のタイミングで流すのが効果的なのか考えちゃって集中できないのだわ。
まあ何回も見ればそんなことは忘れるわけなのだが、とりあえず十一話の新曲は今までにないロックナンバーで個人的には好き。
まさにライブ映えする楽曲だったなーと思うところである。


TVアニメ ラブライブ! 挿入歌 その3TVアニメ ラブライブ! 挿入歌 その3
(2013/04/03)
μ’s

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『ラブライブ』十一話は「ラブライブ出場に向けての最後の追い込みとして文化祭でライブをやることにしたμ'sであったが、そのための練習に頑張りすぎた穂乃果は屋外ライブという悪環境もあって倒れてしまう」という筋立てであり、最終回のために一度落とすシナリオだったかな。
十話で関係性の一度整理して最終回に向けての下準備は終わっているわけで、十一話から残りの話はひと続きの脚本として見ていったほうが良さそうな気もする。「落とす」は「持ち上げる」とワンセットなわけで、持ち上げたところに広がる景色を見ないことにはその落とし方が妥当かどうか判別できないのである。
個人的にはその辺は心配してないんだけどねー。

さて、十一話で個人的に気になったのは「穂乃果を中心においたことりや海未、雪穂といった周囲の人間達を描いている」という事で、十一話に限って言うなら穂乃果にあんまり感情移入させる作りになっていない。
むしろ穂乃果の周囲にいる人間――ことりや雪穂や海未という身近な人間に感情移入させることで、穂乃果をただ見せるのではなく「周囲の人間から見た穂乃果」を思わせるような画面構成や脚本になっていたかと。
とりわけことりの写し方が面白くて、十一話の中心人物は間違いなく穂乃果なんだけど、主に感情移入させようとしているのはことりで、海未や雪穂はその補助線としての描き方になっている。
例えば文化祭の打ち合わせにおいても穂乃果が映るカットではきちんとことりが映り込むようになっていて、ことりの視点は穂乃果に向いている。

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こういう画面構成にすることで穂乃果だけでなくことりにも視聴者の意識=感情移入先が向かう。それによって「ことりが浮かない顔をする」という部分に接続されても、違和感がないんだよなぁ。
この穂乃果→ことりへの視聴者の導線作りという事を画面を構成していく上できちんとやっておくことで、ことりの抱えている問題を受け止められるし、ことりに感情移入させられるようになっているのである。
またこの視聴者の導線作りをやっておいて視聴者の感情移入の対象が穂乃果からことりに移る事で「穂乃果は倒れる」という展開に重みを置きながらも、今後の展開で「穂乃果不在」という状況が出来上がった時でも穂乃果無しでの方向性を指し示す事ができるわけで、このあたりのテクニカルさは押さえておきたいところ。
また画面の占有率でいうなら穂乃果が多いようになっているんだけど、脚本ではことりや海未での出番が多いわけで「穂乃果の存在感を画面の中では強調しながらも、脚本ではきちんと存在感がある」というのも面白いところかな。
特に「海未はことりの様子のおかしさに気づいている」というのが何度も描かれているんだよね。

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こうして「視聴者の視点が向かう先として、穂乃果からことりに接続している」という中で、海未を補助線として使うことでことりについても掘り下げているところも画面構成の面白さかな、と思うところで。
映像の面白さという意味では動いたほうが面白さは分かりやすいんだろうけど、この「構図の作り方」や「誰の視点なのか」ということは映像特有の面白さかな、と。
ちなみに実家での穂乃果については雪穂が視点になっていることが多いように思う。
今回も同じような感じで、雪穂から見ても「穂乃果の様子がおかしい」というような描き方だった。

2013-03-20_00h44_48.png

だから穂乃果が倒れた時に雪穂が駆け寄るカットが挟まったんだろうなーと。
今回でもそうだけど「穂乃果の危なっかしさに気づいていた人」という意味では妹の雪穂の立ち位置は絶妙なところにいるような印象が。
あと視点の移動のさせ方としては連続して視点を投げるようにしていたのも面白かったなぁ。

こうきて。
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ここでことりに視点を投げて。
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ことりの視点から。

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似たような画像を使って悪いが、ここで海未に移る。

2013-03-20_01h16_22.png

この視点となるキャラが入れ替わることで一人一人の感情移入度が下がっている。海未だけ二回あるから他の二人よりも感情移入度が高くなっているので、この辺りも面白いね。



また穂乃果が倒れるという展開についても、視点誘導の演出を行って「周囲の人間から見た穂乃果」にしておくことで「熱意の空回りしている穂乃果」という文脈から「これまで以上の重圧に穂乃果が耐えられなくなる」という表現になっているところも興味深いところかと。
穂乃果は「これまでと同じ」ということをライブ直前になっても繰り返している通り、背負い込み方として「これまでと同じ」を強調する事で背負おうとしたんだけど、「これまでと同じ」では駄目だった、というのは「唐突に新しい振付を考える」ということだったり、雪穂が止めるにも関わらずに雨の中で練習していたと言う事からも分かる通り、「これから」を「これまでと同じ気持ち」で背負おうとしたからこそ、十一話ではその穂乃果が空回りしていて危なっかしい演出に繋がっている。
「いよいよここまで来た」という穂乃果の心情は理解できるし、そこに対するμ'sメンバー全員の喜びも理解できるんだけど、それでも周囲の人間は穂乃果の空回り具合に気づかなくちゃいけなかった。海未はそのことに気づいていたんだけど、ことりは自分の問題があるので支えきれなかったからこそこの悲劇が成立する。

2013-03-20_00h52_55.png

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そんな、『幾つもの問題が同時に発生』して、『屋外ライブ』かつ『雨の中での決行』という「逆境の中での重圧を穂乃果一人に背負わせてしまった」ということは今回の脚本を見る上では大事なことではないかな。
また八話でようやくメンバーが揃ったμ'sにとっては、今回の穂乃果が重圧に潰されてしまって倒れる一番最初の挫折であり失敗であり試練なので、「ここからどうやって立ち直るのか」というのは来週の焦点にになるかと。
「これまでと同じ」では駄目だったことを「これから」どうしていくのか。
次回のサブタイトルは「ともだち」ということも踏まえて見て行きたいところ。

あと「面白ぇなぁ」と思ったのは冒頭を「ラブライブに出れる!」ということにしておいて「ライバル達が追い込みをかけてくる→じゃあちょっとでもランキングを上位に持って行こう」という文脈で「文化祭でのライブ」に接続することで、「ライブ失敗の重み」をもう一度描写しようとしていること。
1stライブは「観客が一人も入らない」という失敗のさせ方をしているわけだけど、今回は「観客の前で倒れる」という意味での失敗のさせ方をさせていて、1stライブとは失敗は失敗でも意味合いが違う。
ここで失敗させておくことで何を生み出すかは今の段階では確証を持った事は言えないけれど、個人的には十二話で「ランクが下がってラブライブに出れないようになる」という展開に繋げるんじゃないかという推測を立てていて、最終話はその最後の追い込みとして講堂ライブ開催で1stライブのリベンジという体裁にするんじゃないかと踏んでいるんだけど、実際どうなるのかどうかは分からないかな。
少なくとも「ラブライブに出場」はともかく「廃校が阻止される」というビジョンは、コンテンツ自体が終了してしまうので提供されないと思ったほうがいい。
ではどうやって終わらせるかという話になるのだが、個人的には「何とかなりそうという予感」をみせてくれればそれでいいという考えなのでそのへんに対しても特に心配はしてないし、尺度を考えてもその方向で話を組むのが妥当だとも思う。
結局のところこの作品の描いているものは「自分のやりたいことをやりなさい」ということだし、「自分のやりたいこと=夢を叶えるために頑張る女の子」なので、一視聴者としては「頑張ってやってきた女の子」に見えていれば「ラブライブに出場が決まる」という段階で「この子たちは頑張ってここまでたどり着いた」という部分に対する重みが生じている。
その重みを「予感」に上手く変換できていれば、視聴者の感情の置所としては十分だしそれでいいんじゃないだろうか。

ちなみに十一話の絵コンテは京極監督なんだけど、相変わらず画面の作り方が面白い監督だなぁ。
ライブ演出もステージが存在しているという前提での絵コンテの切り方をしていて、それも含めて熱いところだね。



残り二話という状況なわけで、1クールアニメである『ラブライブ』もその辺りも踏まえてそろそろ総括に入りつつつある。そんなところでのこのイベントの起こし方は「きっちり最後まで楽しませてやろう」という意気込みを感じられて好きだなぁ。
最後はどうやって幕を引くのか。その辺りも含めて残り二話、μ'sとともに付き合っていきたい。


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1件のコメント

[C1140]

いちいち「ほぉ~」と関心しながら読んでしまいました。

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