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『ラブライブ』12話に見る「やりたいことは?」の逆転と光陰の演出について

『プリティーリズム ディアマイフューチャー』の50話を視聴したわけなのだが、「私たちはプリズムスターだ! みんなが進む道は明るいって、未来は美しく輝いてるって、私たちが言わなきゃ、誰が言うんだ!」という台詞が出てきた段階でこの作品は「スター」や「アイドル」といったショービジネスを題材とする作品の中ではひときわ大きく輝く一作だと言い切ってもいいのではないだろうか。


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この『プリティーリズム ディアマイフューチャー』は前作『オーロラドリーム』からの一連の流れを締めくくる物語構成となっていたと思うのだが、その集大成としてみあ達の前に立ちふさがるのは「夢に裏切られて不安定な未来に絶望しきった大人」というのは対立軸として非常に分かりやすいものだ。
しかしそこでみあの言う「私たちはプリズムスターだ! みんなが進む道は明るいって、未来は美しく輝いてるって、私たちが言わなきゃ、誰が言うんだ!」というのは「未来は輝かしいもので、夢は裏切らない」という事を無条件に肯定したものではなく、「未来は不安定で、夢には裏切られる」という事を前提にしている。その上での「それでも私達プリズムスターが未来は輝かしくて夢は裏切らないものなんだ!と言わないで誰がいうんだ!」というのは綺麗事で嘘であることは十分承知だが、それでもそれは真実だと叫び続けることは「スター」の使命だ!というプリズムスター達の叫びだと思うの。
だからこそファンはみあに投票するし、みあが「いっちばーん」なのである。全力であの境地に達してしまった「上葉みあ」というプリズムスターを見れたことは我々にとって救いであると言えよう。
こういう「綺麗事」を「それでも真実だと叫び続けるスター」がいるから俺達は生きていけるのである。

なんかラブライブの記事の書き出し方じゃないが、この話は『ラブライブ』五話でにこが言う「アイドルとは皆を笑顔にする仕事」に通じることであり、ひいてはアイドル物をやる上でも結構重要になってくる気がするので、押さえておくべき作品ではないかと思うところである。
というわけでいつものように、駄文垂れ流した所で『ラブライブ』十二話について書いておく。



『ラブライブ』十二話は「穂乃果の空回り具合に気づけず、倒れさせてしまったμ'sはラブライブ!への出場を取りやめる。しかしながら今までの活動の結果として当初の目的であった廃校阻止は一応阻止され、そのことを喜ぶメンバー達。しかしその祝いの席で穂乃果に告げられたのは親友であることりの留学の話であった」というあらすじとなっており、アバンタイトルからして前話からシームレスに繋がる作りとなっていて、カメラとしても穂乃果視点ではなく周囲の人間の視点で描写している辺りからも前話から連続して見る事を前提にしているような仕掛け方をしているようにみえる。
あとアバンタイトルからOPに繋ぐときに一度流れをぶった切るというのは、アバンタイトルの雰囲気を本編に持ち込ませないようないい切り方になっていていいなーとか思うところであるが、十二話で面白かったのは「一度全て取り上げた状態での『本当にやりたいことは何か?』」ということ。
アニメ版『ラブライブ!』がテーマにしていることは「自分が本当にやりたいことは何か?」であるということは、八話の話でも書いたのだが、今回面白かったのは今までとは逆に「周囲から穂乃果に対して行われている」ということで、そのために「廃校阻止」という逃げ道を断ち、「一番の親友であることりが既に別の道に歩もうとしている」という状況を作り出しているところの作りこみ具合がいい。
今まではアイドル活動を続ける理由として「廃校阻止」というもっともらしい理由があった。どこまで本当にその目的で頑張っていたのかは知らないけど、まあ「同じ学校に通う生徒同士」ということを考えてもこれ以上無いぐらいに分かりやすく共有しやすい目的だったように思う。
だから「廃校阻止」が成立した上での穂乃果の「アイドルをやめる」という台詞が出てきてもまあおかしくはない。だって目的は「廃校阻止」なんだから、廃校は阻止された段階でこれ以上、走らなくてもいいといえばいい。
でも穂乃果はそれを言ってはいけないし、いう資格がそもそもないのである。
なぜならカノジョは三話の1stライブの失敗の後で「廃校阻止」という目的を捨てて、「自分がやりたいからアイドルをやる」という目的に切り替えてしまっているのだから。
確かにことりが留学するかどうかで迷っていた時に気づけなかったということは悪いかもしれない。でもことりは別に責めているわけではないし、せいぜいが「言えなかった私も悪いけど、気づいて欲しかった」という程度のものである。
だから「全てを自分のせいだと言うことは傲慢だ」という絵里の発言に繋がるわけなのだが、「親友の苦悩に気づけなかった」事で「輝けなくなった」ということを持って、「じゃあ私はアイドルをもう出来ないので辞めます」と言っていいのだろうか。
それは違うだろうし、あまりにも無責任だ。
だって「出来ないからやらない」というのは一話で絵里に否定されようが、三話で客を集められなかろうが、それでも「やってきた」という実績が確かにここにある。
その結果として今ここにμ'sが存在している以上、「私はもう輝けないから辞める」というのは責任放棄も甚だしい。ましてや「やりたいからやる」と啖呵を切った人間が「廃校は阻止されてるから」という理由でやめる? ふざけんな!って話だし、そりゃもう一人の幼馴染である海未だって、

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「あなたがそんな人だとは思いませんでした。最低です……。あなたは最低です!」

と言って怒るのも当然のことだろう。
真姫が止めてなきゃにこも本気で殴ってただろうし、そうなったら仲直りとかしようがないんであそこで止めるのはまあ正しかったよなぁ。
あそこで動いて、穂乃果を怒れるのはやっぱり一番近くにいた海未以外にあり得ないとか思うがまあそれはキャラクター性の話なのでちょっと別の時にする。

で、十二話のこの「廃校阻止」を目的にできなくして、ことりという他者を奪い、穂乃果を孤独にさせるという事をもって、「本当にやりたいことはなんだっけ?」というテーマにきちんと繋げている具合たるや見事なものだと思うのだが、全体の構成から見ても二年組だけでスタートしたこの物語を二年組に戻してまとめようとしているのは実に美しい流れではないか。
ましてや一番最初に賛同してくれたことりと一番最初に走りだした穂乃果に焦点を合わせてるんだぜ!
またここで九話で同じ道を歩んできた二人が微妙に異なる道を歩み始めていることが既に示唆されているのも素晴らしい。このさりげないエピソードの積み重ねこそが今回や最終回で実を結ぶのかと思うと震えが止まらない。
何度も言うように、俺はこの作品のテーマを「本当に自分のやりたいことは何か?」だと思っているし、実際そうだと三話の穂乃果とか八話の希の告発とかを根拠に確信を持って言ってるわけなのだが、実際問題としてここまで現実感あふれる世界で、そういう自己分析ないし自分の心に切り込み、剥き出しの欲望を抽出しようなんて試みをしているというのもなかなか恐ろしい話である。
何にしても最終回で穂乃果とことりが「本当に自分のやりたいこと」を見つけ、「夢」に向かって頑張って欲しいところであるし、ちゃんと穂乃果が立ち上がるところの覚悟と重みを描いて欲しいところだ。

これ多分男でやったら洒落にならねーんだろうなーという気はする。それやったら男は死ぬから。虚栄心とか自尊心とか全部分解されきった後って何も残らないから。
そういう意味では女の子にすることでマイルドになってる感はあるような気もするが、まあその話はいいや。面倒くさい。

あと面白い光と影の使い方をしているのも十二話のいいところだと思うわぁ。

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このシーンはことりが海未に相談するというシーンなんだけど、この段階でのことりは「まだ穂乃果に留学の話を打ち明けられていない事を後ろめたく感じている」ということが会話の中で語られているところを考えると、「ことりが影の中にいる」というのは、これはそのまま今のことりの心理状態――後ろめたさや罪悪感を表しているのではないかと考えられる。
元々『ラブライブ』自体が面白い画面の作り方をする作品ではあったんだけど、今回の影の使い方は「後ろめたさ」や「罪悪感」という心理状態を表す演出として用いられることが多くて、特にことりが穂乃果に全てをぶちまけるシーンはこの「後ろめたさ・罪悪感のメタファーとしての影」が上手く使われていたように思うの。正確には影がある位置に移動しているだけなんだけどな!

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で、この構図からことりの台詞に繋がるというのは「よくやった!」と思うところである。

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「何度も言おうとしたよ? でも穂乃果ちゃん、ライブやるのに夢中で……ラブライブに夢中で……だからライブが終わったらすぐ言おうと思ってた。相談に乗ってもらおうと思ってた。でもあんなことになって……。聞いて欲しかったよ穂乃果ちゃんには。一番に相談したかった! だって穂乃果ちゃんははじめて出来た友達だよ? ずっと側にいた友達だよ? そんなの……そんなの当たり前だよ!」

今回の絵コンテは四話の渡邉哲也さんだけど、こういう構図作りの上手さにかけては本当にすごいね。
この構図!そしてこの台詞!
動画と音声が合わさってこそのアニメであり、このシーンはそんなアニメだからこそ成立する演出の一つじゃないだろうか。
このシーンの何が素晴らしいかといえば、ことり自身は「全く責める気がない」ということだ。
前を向いて走り続けている穂乃果に「それでも気づいて欲しかった」という願い。しかしそれが叶わず、そしてこういう形でしか話す事が出来なかったがゆえの嘆きであるというところで、だからこそことりは穂乃果を責めない。ことりは周囲に責任を押し付けるわけではなく自分の責任だと自覚しているからこそ責めない。責任を転嫁できるほど子供だったらいいのに! だからこそことりも穂乃果も、他のメンバーも辛いし、絵里の「皆が悪い」ということにも繋がる。
脚本レベルで言えばそういう話になるんだけど、ここで先ほど上げた光と影の演出――「光源に近いところにことり、遠いところ=影側に穂乃果がいる」というのを見ていくと、今まで光の中にいた穂乃果がことりの影に入ることで「ことりからのアクションで、そのことに気づけなかった穂乃果が後ろめたさを感じていく」という演出になっていて、その後の穂乃果の落ち込み具合と傲慢さ加減に説得力を与えていると思うのよね。この後の穂乃果は大体暗闇の中にいるし。
またことりが光に背を向けているのも面白くて、彼女自身も迷った果ての決断だとは思うが、やっぱり後ろめたく感じているからこその逆光だと考えられるので、このへんのキャラクターの心理状態を光と影を用いて演出することでちゃんと心理状態を表せていると個人的には感じられるところだったりする。
「光や影を用いて心理状態を表す」というのはある意味定番の演出ではあるのだが、それをきちんとやるとこれだけ面白いものを生み出せるのである。何が言いたいかというと奇をてらう必要とかあんまりないよね!という話だ。

あーあとこの光と影の果てしない心理描写の演出は、穂乃果が暗い部屋の中で「輝けない」ということを悟るシーンでも使われているところは地味に凄い。

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何が凄いって、「他者を拒んでいる」という暗喩の込められた暗い部屋の中で、自分自身を攻め続ける穂乃果が見ているのはパソコンの画面上に映るA-RISEなんだぜ!
暗い部屋の中で唯一の画面の中で歌い踊るA-RISEの輝きっぷりを見た穂乃果のつぶやく「あんな風に輝けない」というのは、「スクールアイドルとして輝けない」と同時に彼女自身が潜在的に持つ輝きを失ったということにほかならない。
その発言を挟んでいるからこそ穂乃果の「アイドルを辞める」発言が重みを増すし、にこの「本気で言ってるの?」や「あんたが本気だから」という発言につながる。そうして見ていくと十一話、十二話、十三話というのは「輝きを失ったアイドルがもう一度輝きを取り戻す」という話になるのではないかと思うのだが、そういやタイミング的に『ラブライブ!』一巻の特典として収録された高坂穂乃果の楽曲、『夢なき夢は夢じゃない』と重なる部分がなくもない。まあ印象論なんだけど。

しかし今回は前回がことりに焦点を合わせていたのに対して、穂乃果に焦点を合わせる事が多かったのも印象に残るなぁ。
アバンタイトルでは周囲の人間に焦点を合わせていたわけだけど、見舞いに行くシーンからは穂乃果側に視点が写っていて、そのまま進行していく。
このさりげない視点のパスの仕方については十一話でも突っ込んでいるわけなのだが、今回特に面白かったのは部分的に穂乃果の表情がカメラに映らないようにしているところで、だからこそ穂乃果の表情全体が見えた時の印象の強さに繋がっているようにも思う。
ラブライブのポスターで穂乃果の顔が隠れるシーンとか「どういう表情かわからない」ということで、視聴者に想像させようとしている辺りも素敵。

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なんかこういうカメラの動かし方もひとつの特徴だよなぁ。構図作りも凄いんだけど、さりげないカメラの動き方は好印象。手ブレ感とか上手く使えているしね



そういや高坂穂乃果の楽曲に『もうひとりじゃないよ』という曲があって、その歌詞の中に「もうしないで。一人になりたがるのは、傷つきたくない気持ちなんだね」「うん。わかるよ。想いが大きすぎたら、苦しくなるでしょ。言ってみようか」というフレーズがあるんだけど、十二話の穂乃果の状況と合致していて個人的に面白かったんだよなぁ。
でもこの後に「泣きたい時もあるよ。一緒にいればいいよ。一緒ならばいいじゃない」と繋がることを考えると、穂乃果だけでなく誰かにも一緒に立ち上がって欲しいところである。

何にしても穂乃果が始め、ことり・海未を巻き込む形でスタートしたμ'sの最後の「何がしたいの?」を穂乃果が担うというのは大変面白いところ。泣いても笑ってもあと一話であり、果たして自分は何がしたいのかを見つけられるのだろうか。
まああんまり不安に思ってないんだけどな!


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