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『ラブライブ』最終話に見る「周囲を巻き込んでいく」高坂穂乃果の魅力と「それでもやるかどうか」という問いかけについて

あるいは私がいかにして高坂穂乃果に振り回されるようになったのか。

電撃ラブライブ三学期を購入して読んでいたのだが、花田十輝と公野櫻子のインタビューまで取ってきていて、ようやく雑誌として面白くなったなーと思うんだけど、最初からこういうものを出しておけば文句言われなかったのに!と思うのは俺だけか?


電撃ラブライブ! 3学期 2013年 5/14号 [雑誌]電撃ラブライブ! 3学期 2013年 5/14号 [雑誌]
(2013/03/30)
不明

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キャストインタビューまでちゃんと取ってきているのも素晴らしいけど、個人的には原案者である公野櫻子のインタビューを取ってきて、企画について言及させてるところは褒めておきたい。
二年組が公野櫻子のいつものキャラ造詣というのは「ですよねー」という感じなのだが、キャラクター一人一人についてもちゃんと言及していて読み物として大変面白い。
特ににこについてはアニメ版と原案者の中であんまりずれがない感じで、「花田十輝的には性格改変だけど実はそうでもなかった!」という展開になっていて愉快な結果だなーと思う。まあ俺もにこは根の部分はクールだと思っていたんだけども。
あとやっぱり公野櫻子らしく「リアルな体験に基づくリアリティ」というものが発揮されているコンテンツなんだよなぁ、ラブライブ。
こうやってインタビューで言及されると公野櫻子作品群としての位置づけが見えてきて面白いのだわ。



さて『ラブライブ』最終話の話をする。
満を持しての最終回であるが、物語は「アイドルを辞める!と宣言した穂乃果であったが、講堂というμ'sの始まりの場所に再び立つことである結論を出す」という筋立てとなっており、十二話の「やめる」を受けての物語となっており、絵里から突きつけられた「何がしたいの?」や海未の怒りの中から、穂乃果が結論を出すまでの一連の流れの組み立て方は見事だし、アバンタイトルで一度穂乃果の友人の口を借りて一般生徒の見解として「辞めてもいい」を出しており、あとは穂乃果の気持ちをどこに落ち着かせるかという問題だけという状態にすることで「テーマとしての『本当にやりたいことは?』」をちゃんと浮かび上がらせるような情報整理の仕方をしている。この「アバンタイトルで問題提起→全編使って解決までたどり着かせる」という構成は『ラブライブ』のほぼ全編で用いられていた構成ではある(例外は十二話ぐらいだけど、あれはそもそも十一話とセットで考えるべき)んだけど、最後までその構成が生かされていて「何を問題提起しているのか」というところに関しては特に迷うところがない辺りは頭のいい作り方だなーと今更ながらに感心する。

それはそうと、最終話が素晴らしかったわけなんだが、どう素晴らしかったかというと、この最終話では作品全体のテーマである「本当にやりたいことは何?」に付随する「やりたいことを貫く事で周囲に迷惑をかけてしまう可能性」を描いた上でそれでも本当にやるのか?という問いかけに繋げており、今までの「本当にやりたい事は?」というテーマから一歩先に進んだ話をやっていて、これが凄く良かったのだ。
「本当にやりたいことは何?(=本当にやりたいことをやれ)」というのは作品全体で繰り返し述べられてきたテーマであり、そのことについては八話でもさんざん触れたし、前回もそんなことを書いたような気がするんだが、最終話では十一話から続く物語として「熱で倒れる」「やりたいことに熱中しすぎてことりの悩みに気づかない」ということで「周囲に迷惑をかけた」と穂乃果は迷惑をかけたと感じて「アイドルをやめる」という発言に繋がるんだけど、この「迷惑」というのは「本当にやりたいことをやれ」という思想につきまとう問題で、この問題がなぜ「本当にやりたいことをやれ」という思想に付随する問題かというと、そもそもこの思想自体が「他人に迷惑をかけない」という事を下地にしている。
だから「他人に迷惑をかけた」し「我儘だ」と思った穂乃果がそのことに責任を感じて「やめる」というのは、一応作品のなかで語られている思想としては一貫しているし、そもそも「夢を叶える物語」というコンセプトなんだから「(本当にやりたいこと=夢のために行動しろ」というのはまあ当然で、その夢のために周囲の人間に迷惑をかけて、一番の親友が泣いてしまうところまで追い詰めて傷つけたんだから、その結果を受けて「やめる」というのは分かるし、

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「今度は誰も悲しませないことをやりたいな。自分勝手にならずに済んで、でも楽しくて、沢山の人を笑顔にするために頑張ることが出来て。でもそんなもの、あるのかな?」

という台詞からも伺えるように「やりたいことをやることで迷惑をかけてしまう(傷つけてしまう)」ということに対して穂乃果が臆病になってしまう描写が挿入されており、その「臆病になってしまった」ということを端的に表したのが上記の台詞である。
しかしその「迷惑をかけた」ということを前提にした上で、「では私=(穂乃果)が行動したことで生み出してきたものは、果たして本当に他人に迷惑をかけるだけのものだったのか?」というのが最終話のテーマになっていて、大部分を使って穂乃果がやってきたことは迷惑をかけただけじゃなかった事を描く。
それは「廃校阻止」だったり絵里の「でもね、私は穂乃果に一番大切なものを教えてもらったの。変わることを恐れないで突き進む勇気。あの時、私はあなたの手に救われた」だったり、にこ、花陽、凛のスクールアイドル活動だったり、ダンスゲームでの結果だったりするのだが、それをちゃんと描いている。だからこそ講堂という「μ'sの始まりの場所」に再び立った穂乃果の決意が生きる。

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「やめるって言ったけど、気持ちは変わらなかった。学校のためとか、ラブライブのためとかじゃなく、私好きなの、歌うのが。それだけは譲れない。だから、ごめんなさい! これからもきっと迷惑をかける。夢中になって誰かが悩んでいることに気づかなかったり、入れ込み過ぎて空回りすると思う。だって私、不器用だもん。でも!追いかけていたいの! 我儘なのはわかるけど、私――!」

この台詞は「迷惑をかける=傷つけてしまう」ということを前提にした上で「それでも私はやりたいしやるんだ!」という高坂穂乃果の魂の叫びだ。覚悟と決意の表明だ。そして穂乃果はその事を海未に宣言しておきながら台詞としては一言も「だから私を助けて」とは言ってない。
あくまで海未側から、

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「ですが、穂乃果は連れて行ってくれるんです。私やことりでは勇気がなくて行けない凄いところに」
「穂乃果に振り回されるのはもう慣れっこなんです。だからその代わりに連れて行ってください。私達の知らない世界へ! それが穂乃果の凄いところなんです。私もことりも、μ'sの皆もそう思っているはずです!」

と、「ドンドン巻き込んで、私たちの知らない世界に連れて行ってほしい」ということを語らせてしまう。
ここの描写は謙虚にだけどしっかりと丁寧に展開しており、そのことにより「高坂穂乃果」という存在のアイドル性についても言及するに至っている。
そうして「本気でも不器用な穂乃果だからこそ到達できる世界」を示唆し、「ドンドン巻き込んでほしい!」ということを語りながらも、ことりの問題に関しては「いつか違う道を歩むとしても」とした上でぶちまけ、あくまで「高坂穂乃果の我儘」で説教としていないところも地味に凄いところだと思うの。

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「ことりちゃん、ごめん! 私、スクールアイドルやりたいの! ことりちゃんと一緒にやりたいの!いつか、別の夢に向かう時が来るとしても。行かないで!」
「ううん。私の方こそごめん。私、自分の気持ち、わかってたのに……!」

ことり自身を「気づいていながらも行動できなかった」というところに着地させて内省の方向に持っていくこの謙虚さと自主意志の尊重具合。あくまで我儘として描いてしまう辺りがさりげないんだけどいいわぁ。

あと「講堂をいっぱいにする」という夢の達成は描いていながらも、その先の夢については特に定義しておらず「とにかくこの子たちはこれからも頑張っていく」ということしか語ってない辺りも地味に凄い。
あそこで夢を語らずに「μ'sミュージックスタート!」で終わらせてしまうことで、「どうにかなりそう」という予感だけ与える事に成功している。
モチベーションが維持出来れば続けられる「自主的なスクールアイドル」だからこそ、ああいうテーマが描けるのだろう。作品への理解度が深すぎる。具体的なものを何一つ描いてないのに「何とかなりそう」という説得力を産ませている辺りとか本当に凄い。
そして『START:DASH!!』という始まりの曲でリスタートさせる辺りも素晴らしい。
「始まりの鼓動」を感じさせてくれた段階でパーフェクトな幕引きだと言い切ってもいい。
だから「新しい夢に向かって」が今までとこれからのドラマを感じさせる台詞に思えてくるのだろう。
花田十輝も京極尚彦も見事な仕事をしてくれたと俺は思う。「集団製作物としてのアニメ」をこうして見せられることになるとは思っていなかった。いやー凄いわぁ。

また瞳などの顔のパーツを部分的に使うことで感情を語らせる演出が多かったのも面白いところで。
特に瞳の表現は今週非常に上手く使われていたところかなーと思う。

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このシーンはアイドルをやめた穂乃果がゲームセンターで友達と遊んでいるシーンなのだが、潤んだように描くことで穂乃果自身に「やめたものは本当に無駄だったのか?」ということを思い出させているように見えるし、新田恵海の演技がよく言えば空元気、悪く言えば空虚な感じに聞こえてくる事も相成って、非常に印象深い演出になっていたんじゃないかな。

また海未に宣言した穂乃果が花筋の通った顔になっている辺りは穂乃果の真剣さ加減が見えてくる。

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「唇に色を載せる演出で情報量を増幅させることで印象付ける演出がある」という話は以前にもしたけれど、今回のこれは鼻自体を省略することが多いアニメ絵において「鼻筋の通った顔にする」というのは、非常にいい印象の残し方をするんじゃないかと思うの。

またAパートの最後でことりと穂乃果が背中合わせで描かれるカットがある。

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ここの対比具合も面白い。
「やりたいことを見つけた」穂乃果が顔を上げているのに、ことりが俯いている。これは「本当にやりたいこと」を見つけて行動する覚悟を固めた人間とそうじゃない人間という対比させているのだと思うのだが、ここで対比させておくことでことりを引き止めに言った穂乃果や穂乃果に引き止められることりの「わたし気づいてたのに」に重みを産ませているのだろうな。面白い。

あとラブライバー的には「高坂穂乃果がセンター」というのがアニメ版を見るとストンと腑に落ちる出来になっている辺りは褒めておきたい。他の子と違って穂乃果は個性が強いとはいえないんだけど、こうして連続性の強い形でのドラマで見せられると説得力が生まれるなーと。
まあ熱血なんてものはドラマを見せられないとわからないことではあるんだけど、アニメ化したことで「矢澤にこ」というキャラクターが非常によく分かるキャラになったのは大きいし、誰も分からなかった(演じている徳井青空ですら)「にっこにっこにー」が分かるようになったのも素晴らしい。
花田十輝は電撃ラブライブにて「性格を改変した」と書いてたけど、そもそも「アイドル好きで自己プロデュース力がある」というキャラクター付けをされていることを考えると、ああいうクールで一歩引いた所で考える性格であることは一応想定できたことではあるわな。
そういう意味では恩恵を受けたキャラクターとしては本当ににこが裏主人公というべき役回りで、「全員やめる」という選択肢を排除したのも素晴らしいところだと思う。「別に穂乃果がいなくてもいい」という状況をきちんと構築できたのもにこのおかげといえばおかげといってもいいだろう。
あと地味に穂乃果の天性のアイドルっぷりが凄いアニメだった。「何とかしてみせそう」と周囲の人間に思わせた辺り、穂乃果のアイドル性は揺るがないし天性のものすぎる。
でも俺は真姫ちゃん派なんだ。ごめんね。

どうでもいい話をする。
『ススメ→トゥモロウ』を何故歌っているのかについて言及されていないので、別にメタ構造説は否定されていない。
かと言って肯定もされていないんだけども。
以上、どうでもいい話し終わり。



というわけで毎週のようにわざわざ記事書いてきたけど、今期には「夢に向かって頑張れ!」「夢は素晴らしいものだ!」ということを無条件に肯定する作品と「夢は裏切るし素晴らしくない」ということを前提に「それでも夢は素晴らしい」と叫ぶ作品の二種類を今期だけで見てきたんだけど、そんな中で『ラブライブ』のような「夢」というものを描くのではなく「夢に向かうということはどういうことなのか」というところを描こうという作品を生み出した事は素晴らしい事だと思うし、そこに関しては誇るべき仕事だったと思うの。
何が誰得シリアスだ、馬鹿馬鹿しい。誰も得してないって誰が決めたんだ!
お前はこの世の中にシリアスじゃないものがあると思ってんのか! 真剣に生きようと思ったら大体シリアスになるわ! 真剣に描くからシリアスなんだ!

だから「遊びがないシリアスなものをシリアスのまま描き切った」ということを俺は誇るべきだと思うし、それに対して「面白かった!」「誰が何と言おうがあなた達は間違ってない」という事を真剣に叫び続けることこそが、製作者側に俺達ができる唯一のことだと思うの。
はー、まあ俺も一年ぐらい前にこの道に足を踏み入れた人間だけど、この三ヶ月の公野櫻子イズムと京極尚彦イズムと花田十輝イズム、そして「ラブライブとはなにか」について真剣に考えさせられた期間もないので、ありがとうございましたというしかないのです。
濃密な体験をありがとう!
とりあえずもう一周します。一話から!

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「μ's! ミュージックスタート!」


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3件のコメント

[C1157]

僕らは今のなかでの歌詞を改めて読むと、この最終回からの再出発の曲なんだと気づいて感心した。
  • 2013-04-05
  • まくお
  • URL
  • 編集

[C1334]

一話の考察から一気に拝読しました。

ところどころ、「おお、そういう解釈があるか!」というところもあり、
非常に面白く読ませていただきました。

3rd ライブLV参加組でしたが、
次期制作を心待ちにした初めてのアニメで、
本当にいいアニメに会えたと思いました。

そして、レビューを読み、またその思いが蘇ってきました。

最終話のにこにーは本当にかっこいいと思います。
でも海未ちゃんが可愛いです。最強です。
ラブアローシュートにみんな射たれていいと思います。

SSAで逢えたら、挨拶させて頂ければと思います。

乱文失礼しました。
  • 2013-06-19
  • ツカサ
  • URL
  • 編集

[C1335]

>>僕らは今のなかで

初めてタイトルを聞いた時は、ハリケンジャーEDの『今風の中で』を彷彿とさせるタイトルだなーとか思いましたけど、終わってみればこれ以上無いぐらいにテーマソングしてましたねー。

>>ツカサさん

まー実はこれを下地に今また総括的な文章を書いてるんですけど、面白いと思っていただけたなら幸いです。

>>海未ちゃん

海未ちゃんも好きなんですけど、俺は真姫ちゃん一筋なものなので……。
  • 2013-06-20
  • 水音
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