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『PSYCHO-PASS』のシビュラシステムは破壊されるべきだったのか

虚淵玄・深見真が脚本を手がけるということでチェックしていた『PSYCHO-PASS』が関西でも最終回を迎えた。一週間ほど前に。
以下、思考整理のためのメモ書きとしてサイコパスについて書いておく。



この『PSYCHO-PASS』は「シビュラシステム」と呼ばれるシステムの精神判定により全ての人間が管理された近未来社会を舞台に、犯罪を起こしそうな精神構造をしているとシビュラシステムに判定された存在である執行官と、執行官を管理する管理官を主人公とした警察ドラマを描いた作品であり、前述したように脚本を『まどか☆マギカ』やらを手がけた虚淵玄とその友人であり小説家である深見真が手がけ、総監督に『踊る大捜査線』シリーズの監督を務めた本広克行を据えていつことからも分かる通りかなり力の入った作品だったように思う。
まあ力を入れていても面白くなければ意味が無いし、力を入れてなくても面白い作品はあるので「前評判の指標となる部分は結構凄かったんだよ」ぐらいの認識で捉えてもらった方がいいと思う。
『マギ』だって舛成孝二と聞いて見てたけど、舛成孝二分少なかったしな! 面白かったかどうかで言えばそれなりに楽しめたからいいけど!

閑話休題。
この作品の中核を据えるのは「シビュラシステム」という精神判定システムだ。
このシステムによって犯罪者予備軍が摘発されることや、精神判定によって就職先に至るまで決定されることから見ても、シビュラシステムとは「未来を決定されるシステム」という描かれ方をしており、この『PSYCHO-PASS』という作品で描かれる社会とはこのシビュラシステムに完全に依存しきった社会となっている。
犯罪者と同じ精神構造を持つ存在は犯罪を起こす前に捉えられることも少なくないようだし、犯罪を起こしたとしてもシビュラシステムの監視からは逃れられない。精神構造はほぼ常に測定されているのだから、変装したとしてもその数値ばかりはごまかしようがない。
しかし前半の終盤になってから登場した槙島聖護というキャラクターはこのシビュラシステムの精神判定に引っかからない犯罪者であり、物語の後半以降は槙島聖護という「犯罪者でありながらもシビュラに捕まらない人間」との戦いを描いていた。

さてこのシビュラシステムであるが、結論を言えば「槙島聖護のような人間の脳を生体ユニットとし、それにより機械では測れない人間の精神構造を判定できるようになったスーパーコンピューターであり、それぞれはある程度自立意志を持ってシステムの判定を行なっていたことが物語終盤に明かされる。
言ってしまえば「人間が人間を判定している」と言う事になるのだが、この物語の結末としてはシビュラシステムは破壊されないし、それどころか作中で主人公がシビュラシステムを批判しているにも関わらず、シビュラシステムはそのままこの作中社会の中で機能している結末となっている。

このことについて不満を感じている人がいるのは理解できる。確かにこれだけのことを描いておきながらこの結末では肩透かしもいいところだと思うのだが、個人的には「シビュラシステムは今の段階では破壊されるべきではない」というこの結末には納得がいっている。
なぜならこの作品の中で描かれた社会とは「シビュラシステムに完全に依存し、そのことにより安全神話を手に入れた」というシビュラシステム無くしては成立し得ない社会だからだ。
そのことをこの作品では前半の大部分を割いて描いている。
主人公自身もそんなシビュラシステムによって管理官になった人間である事もそうだが、多くの事件において鍵となるのは「シビュラシステムの監視をどうやって突破したのか」ということだし、槙島聖護が登場後は「シビュラシステムの判定は絶対でありそこから逃れられない人間はいない。だからこそこの社会は成立している」ということがちゃんと描かれており、だからこそ「シビュラシステムの判定を逃れてしまう存在」である槙島聖護は「この社会に対する凶悪な犯罪者」で、だから「必ず捕らえる必要がある」という理由付けがされている。
そうして作中で「シビュラシステムと社会がどれだけ融合し、分離出来ない存在になっているか」をきちんと描いているからこそ、「シビュラシステムを破壊するということ」がどれだけ恐ろしいことかというのが分かる。
この作品に登場する社会はこれだけシビュラシステムに依存している社会なのだから、「シビュラシステムの機能停止」はそのまま「社会崩壊」であり「社会混乱」ということに繋がってしまう。
だから主人公は「シビュラシステムとは人間の生体ユニットを使ったスーパーコンピューターであり、人間が人間を判定している」ということを知らされても「シビュラシステムを破壊しよう」という選択はできないし、してはいけない。
まあ警察官が社会システムに不満があるからと言って破壊するのはアウトでしょ、という話でもあるんだけども。

では『PSYCHO-PASS』という作品は未完というか、オチをぶん投げた作品なのかというとそうではない。
エピローグで主人公がシヴュラシステムに語った「人間を甘く見ないことね。私たちはいつだってよりよい社会を目指してる。いつか誰かがこの部屋の電源を落としにやってくるわ。きっと新しい道を見つけてみせる」とは「いつかシビュラが必要のない社会が出来上がり、シビュラの支配から抜けだしてみせる」という事でありシヴュラに頼らない社会を目指すということでもある。
それは一話と同じような展開から始まりながらも一話では「奴らはサイコパス(=精神判定)の犯罪係数が規定値を超えた人格破綻者」だったことが「君とは違った判断基準で生きる人間」と台詞が変わっている事からも伺える。
だから「いつかシビュラから抜け出せる」という予感とそのために行動しようとする姿勢を作品の中で示した事で「この作品はきちんと終わってる」と俺は思っているし、いい着地のさせ方だな、と思うのである。
むしろ個人的に問題だと思うのはそれをきちんと描いた脚本に対して映像がその落とし所に対して答えきれてないことで、そこに対しては不満に感じているしちゃんと見せて欲しかったなーとも思う。
脚本は無茶苦茶いいんだけどな! 
アニメってのは映像作品だからさ! 脚本が良くても映像に説得力がないとさ!



PSYCHO-PASSで書きたいことはそんなところ。
どこかで使うことはないだろう。多分。
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6件のコメント

[C1283] 承認待ちコメント

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[C1325]

虚淵の脚本を良いと思ってるお前はスポンジ脳

[C1326] Re: タイトルなし

そういう君は他人がどう感じているかということを尊重できない小学生脳。
  • 2013-06-13
  • 水音
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  • 編集

[C1585]

劇場版サイコパス面白かったです。水音さんはご覧になりましたか?

[C1586]

続けてすみません。面白かったとは思うんですけど、良かったとは実はあまり思ってないんです。機会があれば見てみてください。

[C1587] Re: タイトルなし

なるほど。一月中はちょっと行けるかどうか分からないので二月に入ってからになりますが、視聴したいと思います。
  • 2015-01-21
  • 水音
  • URL
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