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『ジョジョリオン』と震災後の現代とサスペンス性について

最初に書いておく。
本や漫画は読み終わった段階で書評書くんだけど、大体上げる前に書いたことを忘れてそのまま放置することが多いので定期的に放出しておこうというのがこの記事の趣旨です。



現代を舞台にするということはやはりその現代=時代の空気感や社会構造を利用するということにほかならないのだが、そういう空気感や社会構造を利用することでしか描けないし、理解できないキャラクター像というのもあるんじゃないだろうか。
何の話かというと『ジョジョリオン』の話なのだけれど。

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実質的にジョジョ七部であった『スティール・ボール・ラン』が終わり、ジョジョ八部としてスタートしたこの『ジョジョリオン』。
『スティール・ボール・ラン』が開拓時代のアメリカを舞台にした大陸横断レースであり、そんなレースに参加することとなったジョニィとジャイロの二人によるロードムービーで、荒木飛呂彦という作家の成熟っぷりというか、変化の仕方とアメリカの広大な土地と移民の国であるということが生み出す「何でもあり感」が凄く面白かったのだが、第八部となった『ジョジョリオン』は現代の杜王町に舞台となり、記憶喪失の青年が自分の正体を探るという物語であり、現代舞台の作品として結構面白いものがある。
まず舞台となる杜王町はジョジョ四部でも登場した街なのだが、きちんと震災の影響により壁の目と呼ばれる隆起現象が発生していて、震災の傷跡というものをかなりエンターテイメント寄りというかアート的な持ち込み方をしていて、杜王町を「震災の傷跡の残る街」として描こうとしている。
震災後の世界というものをエンターテイメント作品で描くというのは不謹慎だと怒られそうなものだが、『ジョジョリオン』の場合はそんな震災後の世界を悲壮感があるように描くのではなく、一歩引いた俯瞰視点で見ている感があって、そういう悲壮感を感じさせないというのは興味深い。なんというか「淡々としている」というか。
ある種の芸術性を与えているからそう感じる部分があるのかもしれないけれども。
ともかく物語はそんな震災による隆起現象によって出現した壁の目で見つかった東方定助が見つかるところから物語が始まる。
東方仗助は記憶喪失で「自分の正体を探す」という目的の元で物語を動かしていくのだが、この東方定助と対になる形で描かれているのが広瀬康穂で彼女はなんというか、ジョジョキャラっぽくない存在なんだよなぁ。
ジョジョに登場するキャラクターというのはなんというか「確固たる自分」というものを持っていて、だからこそ悪役でもゲス野郎でもどこか格好良く見えると思うのだが、康穂にはそういう「自分」というのがあんまり見えないんだよな。流されているというか。
同じ姓名を持つ広瀬康一も流されるがままにスタンド使いになり、流されるがままに戦いに巻き込まれていったわけだけど、広瀬康一ってそういう状況でもやっぱり「ブレない自分」というのがあったんだけど、康穂にはそういうのが感じられない。
定助が自分の正体がわからないなりに「確固たる自分」を持っている事を考えると対照的に映る。正体不明だが確固たる自分を持つ東方定助と正体はわかるが、確固たる自分が無い広瀬康穂。この二人は対となっている感がある。
荒木飛呂彦は流行りものをガンガン作中に盛り込んでいくという癖があるけど、なんかこう康穂の描き方を見ていると「イマドキの若者」という奴を康穂で描こうとしているのかなーというのはちょっと感じるところなのだが、実際どうなんだろうなー。
あとジョジョの名物であるスタンドバトルが今作では「ルールをどう攻略するか」みたいなバトルになっていて、「ルールの穴を突いて戦う」という今までとは違う感じになっているところも面白い。
1巻から4巻まで、登場したスタンド使いって全員「一定のルールというものに基づいて攻撃を仕掛けてくる」という存在ばかりで、異能対異能でも知恵比べでもなくて「ルールの把握」というところから始まって、「そのルールに則った形で勝利をおさめるか」というゲーム的な面白さがある。
その辺りを詰め込んだのが定助が引き取られた東方家のダイヤとの戦いで、ダイヤとの戦いは「最初からルールと勝利条件が判明している」というところからスタートし、駆引きに相当重点を置いた戦いになっていて、今までとは明らかに違うバトルだったなーと。方向としてはダービー兄弟の戦いに近いけど、ジョジョリオンはそれを更に突き詰めていった感じがあって面白かったなぁ。

4巻ではシリーズを知っているものなら衝撃の展開があるわけなのだが、なんというか荒木飛呂彦の恐ろしいところはそういう衝撃の展開があったのに「物語としては微妙に進んでなくて、堂々巡りをしている」という感覚があるところで描き方としてはサスペンス的。
定助というだけじゃなくて「どういう方向に進むのかどうかもさっぱりわからない」という意味では物凄く不安になるし、現在のところ「敵すらも分からない」という状態で本当に緊張感と不安感がある。
まあ荒木飛呂彦なので特に心配するつもりはないんだけど、描き方としてはそういうサスペンス的な要素を今まで以上に強めてるなーとは思う。4巻は同時期にこういう本出してたしね。


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なんというか。やっぱりジョジョって面白いなぁ。
どの話でも方向性は全然違うんだけど、荒木飛呂彦という作家の恐ろしいところは方向性は違うのにきちんと作者の味は残っていて、前の話を執筆中に成長した部分が次の話でメインに据えられてたりする。
「スタンドの共通ルール以外のルールで縛ってくる」というのはリンゴォ戦っぽくもあるし。
まだ話としても巻数としてもそれほど多くはないので、アニメでジョジョを知ったという人にも読んでほしいシリーズではあるかな。今のところは。
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6件のコメント

[C1317]

康穂の「イマドキの若者」感は「流行り物」ではないでしょう
いつの時代に「ブレない自分」を持っている若者がいるんだっていう
  • 2013-05-30
  • 名無しの日本人
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[C1318] Re: タイトルなし

この話はジョジョという作品に於けるキャラクター像の話であり、そういう観点から見ると「ぶれまくってる康穂というのは、なんかイマドキの若者を描こうという試みなのかねぇ」と俺は感じたというだけの話ですので。
  • 2013-05-30
  • 水音
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[C1319]

うん、まぁ、だから「流行り物」では無いでしょって言ってるんですけど……
  • 2013-05-30
  • 名無しの日本人
  • URL
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[C1320] Re: タイトルなし

アッハイ。俺もなんか勘違いしてました。
  • 2013-05-30
  • 水音
  • URL
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[C1321]

確かに淡々としてる雰囲気はありますね
敵とかハッキリしてないからなのかなぁ

あと意見正しい正しくない関係なく3番目のコメントは失礼じゃないか
です、で終わろうよ
  • 2013-05-31
  • 名無しさん@ニュース2ちゃん
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[C1322] Re: タイトルなし

ホラー映画論やジョジョについてのインタビューでも答えてますけど、荒木飛呂彦的には「なぜ襲われているのかわからない」というのが一番怖いみたいなので、そういう意味では荒木飛呂彦の源流に最も近い事をやっているのかもしれないですけどねー。

  • 2013-05-31
  • 水音
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