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『仮面ライダー電王』と小さな奇跡による救済について

『五星戦隊ダイレンジャー』の44話のサブタイトルが「感動!君も泣け」で、「全米が泣いた」だの「神回」だのといった、映画会社の打つ宣伝やまとめサイトがつける定型句じみた煽り文句以上に洗練され具合が素晴らしいサブタイトルだな。
内容自体もキバレンジャー周りの話でこのサブタイトルに相応しい内容だっただけに、このサブタイトルの有無の言わせなさとスタッフの言いたいことを簡潔に伝えすぎてるっぷりは見ていて爽快ではあるのだが、しかし次の話の「本気(マジ)で解散!!」も凄いな。
しかし二十年ぐらい前の特撮なのに今見ても面白いというのも凄い話である。



youtubeの東映チャンネルで『仮面ライダー電王』が配信されているので見続けているのだが、放送当時も思ったけど『仮面ライダー電王』は面白い作品だなぁ。実にいい時間SF物だ。


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『仮面ライダー電王』という作品の面白さとしては、ボタンのかけ間違い的な「些細な事で過去に囚われてしまっている人間をどう救済するか」というところが大きいと思う。
『仮面ライダー電王』で登場する怪人というのは本人の持つ強い記憶とそこからくる願いを叶えるために手段を選ばない行動によって過去を改変することでその過去から繋がる未来を書き換えることを目的としているのだが、『電王』の怪人に取り憑かれる一般人というのは「些細な事がささくれとなって過去に囚われている」という人間ばかりだ。
彼らは母親の死に目に立ち会えなかったり、サッカーの試合で凡ミスをしてしまいレギュラーから落とされたりと、本当に「ボタンのかけ間違い」とでもいうような「些細な出来事」で過去を悔み、怪人にそんな後悔の過去から繋がる願いというものを口にするのだが、まあ怪人の目的は「歴史改変」なので彼らの語る願いは最終的に破壊活動になり、歴史自体を歪めてしまう。
そんな歴史改変を阻止するのが時の流れを守る仮面ライダー電王の役目なのだが、『電王』の面白いところはそうした「歴史を守るものとしての戦い」という枠組みとは別のところにあって、そうした「些細な事で発生した過去の後悔」というものをほんの少しだけ変えてやることで、明日に対して前向きになれる小さな奇跡を起こしているということだ。
母親の死に目に会うことが出来ず、そんな母親の最後のプレゼントに固執する不良少年を救うのは仮面ライダー電王ではなく、そうした「些細な事からくる不幸と後悔」というものを今まで運から徹底的に見放されてきた主人公・野上良太郎は「母親が死なない未来」にするのではなく「母親の死に目に立ち会わせてやる」ということで救済する。
この「不幸続き」だからこそ不幸になった人間の気持ちを誰よりも理解できる青年が、ボタンのかけ間違い的な些細な後悔からほんの少しだけヒーロー的パワーを奇跡を使うことで救済してしまう=小さな奇跡という扱い方と、それに伴う「大きな流れをは変えられないが、明日を前向きに生きる活力にする手伝いをする」という作劇が、俺はなにより好きだし、そうした「ちょっとした奇跡」と時間SFの混ぜ込み方というのが電王は絶妙で、その辺りの面白さというのはやはり電王ならではの面白さではないかと思う。
時間移動できるからこそ「過去」と「現在」と「未来」を理解し、救済できる話があまりにも多いしな!
あと平成ライダーシリーズというものは『電王』をきっかけに明確に違う方向へと舵を切ったのだが、『電王』が平成ライダーシリーズにもたらしたものというものを考えていくと、「えげつないものをハートフルに見せられる」ということなのではないかと思う。
『電王』って最終的な人の生き死にというものは歴代ライダーでもそれほど多くないのだが、その過程では人はいっぱい死んでいるし、そもそも『電王』というのは時間SFであると同時に「記憶」というものが非常に重要なものとして描かれていて、この作品では「誰かが覚えてさえいてくれれば、歴史改変で死んでしまっても修正された時に復活できる」という設定があるのだが、これは「誰も覚えていなければそのまま歴史の中に埋もれて消滅してしまう」ということでもあって、この設定のえげつなさというのは作中でも度々描写されているし、二号ライダーであるゼロノスのパワーソースとなっているものは「他者の中に残るゼロノス変身者の記憶」であり、彼らは「自分がそこにいたという記憶」をパワーソースにする以上、「最終的に消滅する危機」というものを強く認識した上で戦うことになる。
そうした「もしかしたら消滅するかもしれない」というえげつなさというのは、『電王』作中でも度々描写されていることなんだけど、『電王』作中ではそういう「消滅する」という設定のえげつなさというのはそれほどえげつない印象に映らない。
こうした「えげつない設定をハートフルに描く」という事、もっといえば「えげつないものをえげつないものに見せない」ということを考えていくと、『電王』のもたらしたものは大きく平成ライダー二期シリーズにおける『W』のガイアメモリなんかもその類であると思う。
ガイアメモリって言ってるけど、中毒性だとか攻撃性だとか作中で度々語られるところを見るとつまるところあれはドラッグ以外の何物でもないわけで。そうした「ドラッグの危険性」というものを「ガイアメモリ」という設定によって、そこまでえげつないものには見せてない。
そういうところを見るとやっぱり平成ライダーというものが『電王』以降の大きく舵を切ったということは、ある程度間違いないものだと思うし、個人的には『W』以降のライダーというものはそういう『電王』の影響下にある作品群だとは思うところだ。
あとこの辺りの話と『龍騎』でもたらした「子供っぽいものを十分にシリアスに見せられる」と言うことを混ぜ込んだのが平成ライダーの今の流れだと思うけど、この文法すらもそろそろ行き詰まった感があるのは確かで、次のライダーはどういうものを見せてくれるのかというのは気になるなぁ。

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