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『デビサバ2』と問題を解決していない幕引きについて

『デビルサバイバー2』が最終回を迎えたわけなんだけど、声優の演技は良かったしきちんとメガテンの悪魔が画面の中で動いているという部分もあって、個人的にはダメなアニメというわけほどダメなアニメでもないが、脚本に関しては何一つ褒めるところが出来ない作品だったように思う。

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この『デビルサバイバー2』の何が悪いかというと、「問題が何一つ解決していないのに問題が解決したかのように見せかけている」という一点に尽きる。
元々『デビルサバイバー2』という作品は、造物主が「この世界は失敗作なので消して新しい世界を作ろう」としているので、そんな失敗作の世界に住む人間達が造物主に自分達の存在を認めさせるために人間達が造物主の試練に立ち向かうという作品だった。
原作ではそうした事情もあって「戦い続けた末に造物主に自分達の存在を認めてもらう」という流れを多くのルートで辿ってしまう。しかしながらこの「造物主に認めてもらう」という結末というのは「また造物主の気まぐれで消される可能性」というものを孕んでいるわけで、目の前の問題自体は片付いているもののそもそもの事の発端たる「造物主の気まぐれ」の範疇からは逃れられていない。つまり問題は何も解決していないのである。
これが原作であるゲームならばその中に一つだけ用意された「造物主から逃れる結末」により、仮に造物主から逃れられない結末をたどったとしても周回プレイとそこから来るループ構造的解釈によって、その辺りの「結局造物主殻は逃れられていない=問題は何も解決していない」という結末も全く問題なく、「あくまで今回はループから抜け出せなかった」で説明がつく。
しかしアニメ版でたどった結末というのはまるで問題は全て解決したかのように演出しているが、結局のところ造物主の掌の上から全く逃れられていないのではないか。
この『デビサバ2』の脚本は「問題が解決したかのように見せかけているが、問題は何も解決していない」も同然だ。今思えば『ペルソナ4』の時も似たような終わり方をした記憶があるのだが、岸誠二と上江洲誠はそういう「問題が何も解決していない結末」というものを本当に面白いと思っているのだろうか。そう思っていないというのならなぜこのような結末になったのだろうか。
この手の展開だと今川泰宏とか思い出す部分がなくもないが、今川泰宏がよくやる「俺たちの戦いはこれからだ!」という結末は一見すると問題を全て投げ捨てた結末のように見えるが、あれは実は違う。
「問題がひと通り解決したところで新たな問題が発生した」という展開であり、そういう意味では長い尺を使って続けてきた問題というものを解決したからこその「新たな問題」で「長い時間をかけて困難な問題を解決した奴らだからこそ、『俺たちの戦いはこれからだ!』で終わっても、次の問題も解決する気がする」という期待感で終わらせることが出来る。
そういう意味ではあれはちゃんと考えられた結末であり、『デビルサバイバー2』のような「問題が何も解決していないにもかかわらず問題を解決しているかのように見せかける」とは全く別のシロモノであるし、『デビサバ2』のこの「1クールかけて問題に取り組んできておきながら、問題は結局解決していない」という展開はキャラクター達の想いが最終的に無駄になっているとしか受け止められないのである。
あと悪魔合体を最終回限定の必殺技扱いしていたけど、なんだろう。それはもう『ペルソナ4』で見たし、全く同じ事をやられても困る。
同じスタッフだから同じ演出になったということなら、「同じスタッフだからこそ同じ演出にしちゃダメだ」という感覚を持つべきではなかろうか。その悪魔合体ははっきり言って「お約束」じゃなくて二番煎じだ。
粋のつもりでやっているんだろうとは感じるが、その二番煎じっぷりは無粋の類だし、デビルサバイバー2のシステムに習っているとは言いにくい。
『ペルソナ4』の時もペルソナ合体を最終回限定の必殺技扱いにしていて、個人的にはどうかと思わないでもなかったが、そもそも『ペルソナ4』の場合は主人公側がペルソナを使い分けていたからこそ、それほど違和感がないものだったし、ペルソナ使い分けができる以上ペルソナ合体は再現したとしてもそれほど重要性が高いものではなかった。
しかし『デビルサバイバー2』はそうした「悪魔合体を繰り返して強くならないと勝てない」というゲームだったし、悪魔の使い分けという部分を切り捨てている要素ではある。おそらく使役する悪魔によってキャラクターごとの差別化を図ろうとしているのだろうが、それなら原作においてコミュニティを進めることで解禁される悪魔の存在をキャラクター専用のものとして、主人公はそういう悪魔がない分、仲間達の力を借りることで悪魔合体できる、とかそういう設定付けのほうが面白かったような気がする。
唐突に「お前たちは悪魔召喚プログラムを使いこなしていない。なぜなら悪魔合体ということを知らないからだ」みたいな事を言わせるよりは、そちらのほうがいいような気もする。
今回のように悪魔合体を最終回限定のものにしたいのなら本編では悪魔合体以外のもっと別の何かが欲しかったところなのだが、もしかしてキャラクターの多さがその「ペルソナ使い分け」や「悪魔合体」の代わりになっていると思っているのだろうか。
そもそもこの作品の脚本というのは問題の因果を全て主人公に集約させているわけで、イオとダイチ以外の仲間の存在意義というのはほとんど存在しないではないか。そんな中で「仲間と共に試練に立ち向かう」というところをもってきてもチグハグな印象しか受けないし、そもそもその数多くキャラクターについても特に掘り下げるわけでもなく、ただいるだけというキャラがどれだけいるか。
そうした食い違いと「問題は何も解決していないのに問題を解決したかのように見せかける」という脚本で、何が伝わるというのか。
まあこの問題は原作プレイ済みの人からすると「細かいところで見れば原作に対する配慮はされているのに、肝心な所では原作を蔑ろにしている」という一言で言い切れてしまう部分ではあるのだが、岸誠二・上江洲誠コンビは最近そういう作品作りが多くて、見ていて「こいつらは原作をプレイしていないんじゃないか」としか感じられない。

岸誠二・上江洲誠はほぼ毎期のように仕事をしているわけで、そんな中で糞みたいな作品が一、二本生み出されても仕方がない部分があるとはいえ、今回の『デビルサバイバー2』のような「問題解決は全くしていない」という結末を持って「完成」というのは正直どうかと思うし、ましてや原作には「問題が全て解決する結末」がきちんと用意されている中でそれを選ばなかった理由が全く見えない結末だっただけに、どうにも許しがたいアニメ化作品になったなぁ、という印象だ。
原作はシナリオに相当穴がある作品なわけで、その穴を自覚して埋めてくるぐらいのことはやって欲しかったのだが、結局原作の穴を広げるだけだったこの『デビサバ2』を見ていると、さすがに言い過ぎだがこの二人の「批評精神」の存在を疑ってしまう。
特に今期は『進撃の巨人』が時系列に沿った形での再構成をしていたり、原作で突っ込まれた部分が修正されていたりするだけにだ。
そんな中で同枠で放送開始される『ダンガンロンパ』なのだが、監督・脚本家は岸誠二・上江洲誠というデビサバ2のコンビなわけなのだが、不安に感じずにはいられない。
なまじ原作が傑作といってもいい作品なだけに、直前に作った『デビサバ2』がこうして明らかにダメな脚本だったことを考えるとだめになりそうな気配もする。
まあ1クールアニメらしいしな、ダンガンロンパ。脚本を圧縮しないと全部消化出来ない気がする。

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5件のコメント

[C1344]

描こうとしたテーマに決着はつけたように感じたので
水音さんの感想はちょっと意外でしたね。

結末は同じでも
せめて「次は造物主から逃れてみせる」と決意するような
描写が必要ということでしょうか?

[C1345] Re: タイトルなし

ですです。
『グレンラガン』なんかが分かりやすいんですけど、『グレンラガン』も「ドリルは世界を滅ぼすからダメだ」というアンチスパイラルの問題提起に対して「俺達はそうならないようにする」というのが最終的な解答になっている。
それに対する実践の一つとして「死んでいった人達も螺旋力を使って蘇らせようぜ!」という事が否定されてるんですね。
「決意」と「それを小さい形でも実践しておく」という描写があれば、あの結末でも問題ないんですが……。
  • 2013-07-01
  • 水音
  • URL
  • 編集

[C1346]

理解しました。

正直、水音さんの感想を見て
「造物主からの脱却」はテーマを考えれば蛇足じゃないかと思ったんですが、
だったらアニメ化の際に「造物主」の設定を
「気まぐれを起こすことのないシステム的なもの」に変えれば済んだ話ですしね。
そういう意味でも本作には穴があって批評精神の欠如という批判につながるわけですか。

[C1347]

そういうことになります。
個人的に原作のある作品群(所謂メディアミックス作品)というのは「原作を再構成する」と言うことに他ならないと考えていまして、原作の欠点を意識した上で「どう変えてくるのか」「どう見せ方を変えるのか」というのが最も大事なことではないかと思っています。
どちらの手法をとるにせよ、「欠点を一度自覚する」というプロセスが必要になる以上、批評的に作品を鑑賞する必要があると思うのです。
『デビサバ2』の場合(というか上江洲誠・岸誠二コンビの作品全般に言えますが)、明らかにその欠点を自覚しないで、欠点をそのまま映像化してしまった結果、一本道であるアニメだからこその欠点まで生み出していますし、原作ではされていたフォローが一切されない事で欠点が目に見える形で残されるという問題を生み出している。
これが結果的にいい方向に転がる事もあるわけですけど、少なくともデビサバ2に関してはそれがいい方向に転がっているようにはとても見えない。
今までも漠然とこの二人の「批評精神の無さ」については感じていたんですが、今回のデビサバ2で「本当に無いんじゃないか」と思ったので、珍しく名前を上げて批判してますが、内田彩のイオの演技は良かったのでアニメ化してよかったとは思いました。
  • 2013-07-01
  • 水音
  • URL
  • 編集

[C1348]

俺も内田彩さん目当てで見てたクチです(笑
内容はイマイチだったけど演技で結構感動させられたんですよね~。
ラブライブでも演技力でキャラを魅力的にしたと個人的には思ってます。

水音さんの評論はタメになりますわ。
夏コミに行けそうなら本買わせていただきますね。

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