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『うたプリ』二期で彼らがたどり着いたステージについて

『うたの☆プリンスさまっ♪』二期の最終回を見たわけなのだが、これは傑作が生まれた瞬間に立ち合ったのかもしれない。


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『うたプリ』という作品がジャニーズ系アイドルの影響を受けているという事について異論を挟む余地はないと思うのだが、一期ではそうした個性豊かなアイドル達が一つのアイドルユニットとなってデビューするところまでを描いていた。
そこで描かれたものというのはつまるところ「個性が強すぎるが故に孤立しやすい」という面々が安っぽい言葉ではあるが絆を築きあげていくということで、そうした絆が主人公である七海春歌の本当にやりたい音楽というものを作り出させたし、七海春歌がきっかけで仲間となったアイドル達が「ST☆RISH」というアイドルユニットとなってデビューしたのが一期の大まかなあらすじでいいと思うのだが、二期の面白いところは一期で鮮烈なデビューを飾ったST☆RISHと類まれな歌唱力を持つセシルを通じて「アイドルってなんだろう」という事を描いていったところにあるのではないだろうか。
セシル加入までの間描かれていった物語というのは、セシルという「アイドルになれるだけの素養を秘めながらも、アイドルの良さを理解していない人間」を通じてアイドルというものが、ファンや観客に何を与えているのかということや、だからこそファンに対する誠意の見せ方や期待への応え方、そして「アイドルが果たすべき使命」とその面白さについて説いていくという物語で、セシル自身もステージに立ったり裏方とはいえアイドルの仕事を間近で見たり、仲間達のサポートをすることで「なぜ彼らがそこまで真剣になれるのか」というST☆RISHのメンバー達がアイドルという職業であり存在に対する思い入れや熱意に感化されていく。
その辺りが爆発したのがセシルがST☆RISHに入りたいと熱弁するシーンだろう。
このシーンの良さというのは「アイドル」という存在をある意味ではバカにしていたし理解していなかったセシルが、「アイドルという存在がどれだけ尊い存在で、どれだけ真剣になれる存在であるか」を理解したからこそのもので、彼がそうしたアイドルに感化されていく光景というのは今までの話でさり気なくではあるが演出されてきた。であるからこそ、そのさり気なく挿入されるシーンの一つ一つが結びつき、彼の中でのそうしたアイドルの象徴たる「ST☆RISH」への憧れを爆発させて「仲間に入れてくれ」という部分の面白さとセシルの熱さが際立つ。
EDでさんざん歌って踊っているとはいえ、視聴者の多くはST☆RISHがデビュー時に見せた鮮烈な輝きを見ていたはずで、だからこそ「セシル加入」というものを「いきなり加入」という形ではなく「セシル自身がアイドルと共に過ごすことでいつしかアイドルになりたいと熱望するようになる」という丁寧に段階を踏ませて加入させる形にをしたこのシリーズ構成はなかなか面白い。
そうしてセシルが加入したST☆RISHは、ST☆RISHの所属する事務所の社長たるシャイニング早乙女とそのシャイニングと因縁を持つレイジング鳳とそのレイジング鳳が社長を務める事務所のアイドルである、HE★VENSとうたプリアワードという新人賞を競い合うことになる。
この新人賞争いというのは最初から提示されていたものであるのだが、ここにきて登場したHE★VENSというのは単なる噛ませ犬で終わらせるのではなかったところが、『うたプリ』二期終盤を大きく盛り上げることになる。
HE★VENSは登場してからも憎まれ口を叩き続けていたのだが、彼らにはそういうことを言えるだけの実力者であって、その「他人を圧倒する熱量の音楽」は多くのファンを魅了出来る存在だったというのが12話のライブで描かれた。
この「他人を圧倒する熱量の音楽」というイメージを演出に落とし込んだ結果があの12話のドラゴンとドラゴンブレスによってファンを焼きつくすという演出になるのだが、あの演出が面白いのは『うたプリ』という作品がそうした「音楽から感じ取ったイメージをそのまま演出にしている」という事を徹底してきたからこそのものだ。
そのことについては既に『うたのプリンスさまっ♪』とその演出に流れる心の動きについてという記事でも触れているが、12話に来て視聴者的には初めて見るようなライブでこれだけ派手な演出をいきなりしたHE★VENSがどれだけすごい存在であるかは、今までの『うたプリ』を見ていれば何となく分かる。
「その音楽から感じ取ったイメージ」がそのまま映像に現れるという『うたプリ』において、あれほど「他者を圧倒する」ということを、そして「自分が今彼らによって焼かれている=熱意を受けている」ということを込めたイメージがあっただろうか。
そういう意味では12話でHE★VENSが見せてくれたあのドラゴンというのはまさしく「彼らが噛ませ犬などではなく、紛れも無い実力者であって、うたプリアワードを受賞するに相応しいトップアイドルである」ということを如実に語っている演出だったのだろう。
そんなHE★VENSの音楽の凄まじさを見せた12話から引き継いで始まる最終話。
ST☆RISHが歌う『マジLOVE2000%!』はファンや審査員だけでなく、レイジング鳳やHE★VENSまでもを銀河の果てまで連れて行ってくれた。そこで描かれる内容というのは、「ST☆RISHの音楽というのは銀河の果てを感じさせるような壮大な音楽だった」ということだけではない。
ST☆RISHがやったことは「ファンや審査員やライバル達に銀河の果てを感じられるところまで、自分達が連れて行った」ということで、そうした「自分達をもそういう高みへと思いを飛ばした」と言うことに尽きる。
彼らがなぜそういった音楽を奏でられたのかといえば、彼らの音楽が「勝ち負けの音楽ではない」ということであり、「ファンに幸せになってもらうための音楽」であったからだ。
そうした「ファン全てに幸せになってほしい」「聞く人全てが幸せになれる音楽」という無償かつ無限の愛を込めた音楽だからこそ、彼らは「ファンや審査員やライバル達と共に銀河の果てまで共に行き、共に感じることが出来る」というイメージを生み出し、レイジング鳳の心をも幸せで満たす事ができたのだろう。
だからこそこの物語の最後はファンや観客、そしてライバルや先輩であるカルテットナイト全員で、自分達の始まりの曲である『マジLOVE1000%!』を合唱する事で物語は終わるのだ。
全ての人間に愛を振りまくようなST☆RISHが見せてくれたその光景というのは「負けたら解散」というルールの中において、「勝ち負けに拘らない」「全ての人間に自分達の愛を届けたい」と心から願う彼ら自身の音楽だ。
そんな彼らだからこそ、合唱という「皆で歌う」という結末に至れるし、そうした「ST☆RISHと会場にいる全ての人間の合唱で物語が終わる」ということが何よりも美しく尊いものに見えるのである。

『うたプリ』はイメージ先行の演出と言うこともあって過剰演出だといってもいい演出が多く、ギャグアニメのように語られがちだが、今振り返ってみると一貫した物語とその過剰演出にはきちんと演出意図に基づいた哲学が込められている事がよく分かる。
そうした『うたプリ』の哲学が実を結んだのがこの最終話だったのではないか。と、俺はそう思わずにはいられない。
俺は全くネタ扱いせず、純粋に「うたプリは楽しい」と言い続けてきた人間だけども、想定よりも遥かに高いところで物語を終えてくれた事と、今まで積み上げてきた演出をこういう形で昇華してくれたことに感謝しつつ、早くカルテットナイトとHE★VENSの日常回を映像特典でいいんで出してください。俺も見たいです。


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2件のコメント

[C1341]

9話で見せた「幸せになる音楽」を10話で勝負事を意識させることでいったんリセットしてからの春歌の再認識(11話)、先輩たちが感じる歌の余韻(12話)で、『マジLOVE2000%!』の演出が突飛なビックリ演出にならないのが実に良いですね。歌中は演出なしで普通にEDを躍らせることで「アグナダンスをちゃんと踊らないセシルの頑張り」を地味に拾ってるのもよかったです。

点数が僅差だったりHE★VENSファンが残っていたりしてHE★VENSの凄さをなかったことにしなかったり、最後の最後に始まりの『マジLOVE1000%!』を合唱したりと番組自体が「ファン(視聴者)に幸せになってもらうための音楽(アニメ)」になってるのが素晴らしいですね。

個人的にはやりたい事とは違いながらもプロ根性でお笑いキャラとして作り上げられていたHAYATOが11話でちゃんと無かったことにされずに拾われたのがよかったです。アイドルはキャラ作りが大事、とはにこ先輩の言葉ですが、作られたキャラがなかったことにされるのはファンとしては悲しいことですからね……

[C1342]

>>うたプリ

全ては「ファンあってのアイドル」という意識がちゃんと共有されていた感じはありますね。
監督を務めた紅優は一期の段階で「どういう層に、どういうウケ方をしているのか」を研究して後半の演出を決めていったらしいですし、原作レベルで関わってるらしい上松さん自身も、どちらかといえば「積極的にウケを狙いに行く」というタイプですし。
そうした「誰に向けたアニメなのか」ということを常に意識しているからこそ、こういう作品になったのかなーと思いますし、そこにはミューズを感じずにはいられませんねー。

>>HAYATO

あの拾い方は素晴らしかったですね。
「HAYATO」を否定するのではなく、「HAYATOがあっての今」という接続の仕方と、だからこその窘め方はよかったですわぁ。あれも金春智子脚本だった記憶が。
  • 2013-06-29
  • 水音
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