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『激走戦隊カーレンジャー』に見る浦沢脚本の面白さについて

youtubeで東映様が公認戦隊やメタルヒーローや仮面ライダーなどの特撮作品を毎週二話づつ配信開始しているというのは有名な話だけれど、今週から配信開始したのがよりにもよって『激走戦隊カーレンジャー』という辺りに東映の恐ろしさを見るのだった。

youtube - 激走戦隊カーレンジャープレイリスト

車をモチーフにした戦隊は数あれど『激走戦隊カーレンジャー』ほど混沌として狂気的なスーパー戦隊、いや特撮作品もそうそう無いのではないだろうか。というか俺はこれほどまでに混沌の方向に突き抜けた戦隊を他に知らない。
この『激走戦隊カーレンジャー』の面白さというのは本作でもシリーズ構成を努め、後に『人造昆虫カブトボーグ V×V』にて毎週最終回という狂気的なコンセプトを打ち出したシリーズ構成、浦沢義雄による物が大きい。
この浦沢義雄という脚本家は極めてアイデア一発勝負のコメディ脚本ばかり書いている脚本家で、特撮作品で頭のおかしなコメディ回があったらほぼ確実に浦沢義雄かその一派が書いているんじゃないかと思うような、頭のネジを数本ぶっ飛ばさないと出てこないようなアイデアとそのアイデアに基づくギャグ展開を得意としているわけなのだが、今回配信開始となった『激走戦隊カーレンジャー』はそんな浦沢義雄の戦隊デビュー作であり、そのカオスさを世にしらしめる事となった一作である。
「敵は暴走族」だとか「芋羊羹を食うことで怪人は巨大化する」だとか、そういうギャグとしか思えない要素を散りばめ、本編においても真面目になることが殆ど無いコメディ戦隊である『激走戦隊カーレンジャー』なのだが、この『激走戦隊カーレンジャー』の面白いところは「肝心なところはギャグだが、基本となる物語構成は戦隊の基本的なフォーマットを抑えている」というところにあるのではないだろうか。
先に上げた「怪人の巨大化」にしても「怪人が悪さする→戦隊が駆けつける→倒す→巨大化」という基本的な流れはきちんと押さえられた上での巨大化であるし、カーレンジャーを代表する迷台詞である「俺達は一人の力を五人に分けているんだ!」についても、基本的な流れを踏まえた上でのセルフパロディとして行なっているネタだ。
この『カーレンジャー』という作品を鑑賞する上で押さえておきたいのはまさにそこで、「スーパー戦隊シリーズ」における「お約束」というものを徹底的にパロディやギャグとする事で茶化すという『カーレンジャー』のスタイルは、ギャグにしている以外の部分でスーパー戦隊のお約束を守っているからこそ際立つものであり、そこにはアイデア一発勝負のギャグをやるからこその浦沢義雄の並々ならぬ真面目さがうかがい知ることが出来る。
「物語やシリーズ構成レベルではお約束を外さない」という浦沢義雄の真面目さがあるからこそ、『激走戦隊カーレンジャー』というシリーズは「迷走しているように見えて、実は全く軸がぶれておらず続きが気になる戦隊」という独特の立ち位置を確立する戦隊となっているのだが、後に制作することになる『人造昆虫カブトボーグ V×V』もまたそうした浦沢義雄の真面目さが生み出した名作だった。

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『カブトボーグ』の面白さというのは「毎週最終回」というコンセプトから来る存在そのものがギャグじみているというシリーズ構成にあるとは思うし、実際『カブトボーグ』は「狂気の浦沢脚本」としか言えない話ばかりだったのだが、「毎週最終回」というシリーズ構成のせいでギャグじみて見えていただけで話の骨子としては「シリーズのエンドマークをつけるに相応しい結末」というものばかりだったように思う。
毎週最終回というコンセプトと本編の真面目に最終回をやる具合があのカオスさを生み出していたのであって、カブトボーグ全編に渡ってあの狂気的なスタイルが貫かれていたのならば、おそらく「頭のおかしなアニメ」というだけで終わっていただろう。
脚本家達の中に真面目さというものが何処かに存在していたからこそ、ギリギリのところで踏みとどまってギャグをやっていたのであって完全にアクセルを振りきって作っているわけではないのである。
そうした「どこまで真面目にやっているかどうかわからない」というバランス感覚という意味では浦沢義雄のあのバランス感覚はまさに天才的であると言え、そんな浦沢義雄だからこそこうして「カオスなアニメ」の代名詞となった『カブトボーグ』という名作が生まれたのだろう。

で、『激走戦隊カーレンジャー』に戻るのだが、この戦隊はそうした『カブトボーグ』に通じるバランス感覚がもっとむき出しの形で存在している作品だと言え、『カブトボーグ』の原典とも言えるかもしれない作品だ。
こういう形で配信開始してくれたことをチーキュ人としては嬉しく思うところであるのだが、カーレンジャーを一週間で二話視聴はちょっと重すぎるので辛い気がしてきた。
あとこの作品ほどニコ動に向いている特撮も早々無いので、初代マンを1クールだけ無料配信している暇があるならこちらを早く配信開始して欲しいところであるのだが、まあ浦沢脚本は正直盛り上がらないわけ無いよなぁ、とか思いました。
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2件のコメント

[C1353]

カブトボーグのシリーズ構成は大和屋暁氏です。
浦沢氏はカブトボーグという異常なコンセプトの作品においても自分のスタイルを貫き、その結果として最も退屈で平凡な回であろう19話や、どんな展開に陥ろうとも常にボーグバトルに帰結していた同作品において、終にボーグバトルが行われず冗長なまま時間が過ぎていった25話が生まれました。
カブトボーグの極めて異質なコンセプトを無視したために、浦沢義雄氏の異質はより大きな異質を前にして凡庸へと転じたと私は解釈しております。
カブトボーグのエピソードの多くは緻密な脚本に基づいたもので、それは浦沢脚本のおおらかさとは対局をなしていました。
浦沢脚本の回(7話、9話、16話、22話、25話、30話、33話、37話、40話、44話、45話)は、先に触れたように手癖で作られたと感じるものが多く、そのため他とのバランスを欠いた、浮いたものになっていると思います。
  • 2013-07-06
  • お酉様
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  • 編集

[C1354]

>>お酉様さん

ご指摘されるまで完全に浦沢義雄がシリーズ構成だと思い込んでおりました。
きちんと調べてから言及するべきであったと猛省する次第です。

確かにおっしゃられるとおり、弟子筋の大和屋暁が打ち立てた異常さの中で、浦沢義雄の真面目さからくる異質さは「そもそも根幹(コンセプトレベル)から狂っているのに、律儀にホビーアニメのお約束は守る」というボーグ全体の大原則からは大きく外れたものであるという部分は間違いないものではないかと思います。

  • 2013-07-06
  • 水音
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