『戦姫絶唱シンフォギア』という作品は上松範康が「ライブシーンがあるアニメは盛り上がる!」という基本コンセプトを元に『ワイルドアームズ』シリーズなどでプロデューサーを務めた金子彰史が脚本を手がけた作品で、王道熱血を持ち味とする金子彰史だけあって物凄く熱量があるアニメであるのだが、「歌で変身し、歌で戦う」というコンセプトであるにもかかわらず、何故に音楽周りについて違和感の残る演出ばかり行われるのだろうか。
一期の頃から「歌で変身する」「歌わないと闘えない」という設定があるにもかかわらず、演出面ではどうにも違和感が残る演出になっている。というか正直、演出面ではその「歌」というものの重要性が伝わってこないとすら個人的には思っている。
『シンフォギア』における「歌」というのは設定上かなり重要なものだ。
作中の描写を見る限りでは最強クラスのキャラクターである司令が戦えないのも全て「ノイズ」という敵はシンフォギア装着者でなければ戦えないという設定があったからで、そんなシンフォギアを装着できる存在は歌の力を引き出せるからこそ、聖遺物を身にまとうシンフォギア装着者になり得る。
『シンフォギア』という作品において「歌」というものは極めて大事なものなのだ。
少なくとも作品を見る限りでもそれは理解できるし、作中で何度も繰り返されていることだ。
だからこそ自らの命を削ってまでも歌う「絶唱」が捨て身の必殺技として演出され、歌い続けることでその強さというものが演出されている。
それだけ「歌」というものが大事だからこそ、脚本面ではその重要性をきちんと拾い上げた見事な脚本になっている。そういう意味では金子彰史は見事な仕事をしているといってもいいだろう。
しかしながら演出面ではどうかといえば、『シンフォギア』では「キャラクターがリアルタイムで歌っている」という事になっているにもかかわらず、実際の歌はほぼBGM化してしまっており、脚本が展開している音楽の重要性を全く拾い上げていない映像になってしまっている。
これがまだ通常アクションだけなら百歩譲って許さないでもないのだが、『シンフォギアG』二話・三話で「これが私たちの絶唱だ!」とキャラクターに言わせているのに、実際には歌っていないのは演出が脚本の意図を汲み取れていないというしかなく、少なくとも演出面においては歌というものはそれほど大事にされていないように映る。
この「歌が大事な作品なのに、肝心の歌の演出はそれほど重要視されていない」という問題であるが、これは一期の頃から全く同じ問題が存在していた。
しかしながら一期の頃はまだ口パクを合わせようとするなど様々な工夫をしていて、その辺りの雑さ加減も「問題に気づいている」という認識で見れたので違和感はあれども、「いつか改善してくれる」と好意的な捉え方をしていて、それほど問題視していなかった。まあ途中から「本人が歌っている歌なのにBGMとして扱われている」という演出になって萎えたのは萎えたのだが、しかしながら二期になっても全く同じ問題を引きずっているというのはこれはどうなのか。問題を解決したふりをして見て見ぬふりを決め込んでいるだけなんじゃないのか。
この問題はつまるところ「音楽が大事な作品であるのなら、音楽に対してもうちょっと扱いを良くしろよ!」という話なのだが、そもそも「アクション」と「キャラクターが歌っている」というのを同時にやるのは演出的に労力が掛かり過ぎる上に得られる物がつじつま合わせぐらいのものだから労力として割きたくないのは分からないでもない。
しかしながら「歌が重要な作品」なのに、肝心の歌の扱いが極めて雑というのは本当にどうなんだ。
歌が本当に作品にとって大事なものであるのならば、そういう演出を脚本以外のところでもちゃんとやるべきなんじゃないのか?
そういう演出をしていない『シンフォギア』の音響演出というものは正直ほめられたものではないと個人的には感じるところで、現状の『シンフォギア』の変身アイテムでしか無い音楽の扱い方には正直改善して欲しいとすら思っている。せめて必殺技の絶唱ぐらいは「歌えよ」と。
別に口パクを全部合わせろ!とはいわんけど、「キャラが歌ってる」という設定なのに、歌い出しからBGM化するんじゃ何の意味もないんだから、せめてもうちょっと音楽の扱いをよくしてほしいところであるし、音響監督はこの辺りをもうちょっと理解した演出にしてくれねぇかなぁ、と思うのである。
本人が歌うのをやめた時ぐらいBGM止めようぜ!ってのもあるけどさ!
あれも本当にどうなんだろうね。本人が歌ってるんじゃないのかよ!と思うわ。
まあそこを抜きにすれば割と楽しい作品で、立花響の問題に切り込み始めているので割と楽しく見ている作品ではあるかな。
上松範康がライブシーンにこだわりを持っているのは『うたプリ』なんかも見ていて分かるし、サイリウムの演出を持ち込んでいるなど二期はその辺りが演出されているように感じるし。
しかし早くfigmaのクリスちゃん出さねぇかなぁ、グッスマ。
俺、一期の頃から待ってるんですけど。
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ちょっと良くわからない点があったのでお聞きしたいのですが、絶唱に対しての「歌えよ」というのは「歌いながら攻撃しろ」って意味で良いのでしょうか?一応発動時には毎回歌ってるので。
あと私には装者たちの動きに合わせて歌い方変えたりしてちゃんと「歌いながら戦ってる」演出をしてるように思えるので、その辺についてもう少し詳しく聞いてみたいです。
それと設定だけで本編で描写の無いものを持ち出すのはちょっと卑怯かもしれませんが、「歌ってなくてもBGMが流れる」というのは「ギアから音が流れている」という設定があるんで一応説明はつきますね。