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『γ-ガンマ-』とヒーローとは何かとエブリデイヒーローについて

「ヒーローとは何か」というテーマはヒーローというものを扱う作品においてはしばしば登場し、作品に依っては根幹を成すテーマになっていることも多いのだが、「全ての英雄に捧ぐ。」という帯が装着されたこの『γ-ガンマ-』もまたそういう「ヒーローとは何か」ということをメインテーマに据えた作品である。


γ─ガンマ─ 1 (ジャンプコミックス)γ─ガンマ─ 1 (ジャンプコミックス)
(2013/07/04)
荻野 純

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物語は様々な敵とヒーローが日夜戦っている世界を舞台に、北鹿海鵬と北鹿酉里の姉妹がヒーロー達の悩み事を解決していくという物語なのだが、本作において貫かれているのは「ヒーローとは何か」という事である。
それはすなわち「ヒーローの存在意義」というべき問いかけであり、本作で描かれるヒーロー達は大なり小なり様々な悩みを抱えている存在であり、彼女達姉妹はそんなヒーロー達と向き合い、悩み事に対して一緒に考えてやることで、「彼らがヒーローとして活躍できるようにしていく」。
そんな中で見えてくるものは「ヒーローだって人間だ」ということなのだが、それは「人間であるヒーローがなぜ戦うのか」ということの他に「そもそもヒーローと呼ばれる存在ってどういう奴らなのか」ということにも繋がっていく。
本作は超人的な能力を持つ存在を「ヒーロー」としており侵略者とヒーローは日夜戦いを繰り広げているわけなのだが、果たしてそういう超人的な能力を持つ存在だけがヒーローで、それ以外の存在はヒーローではないのだろうか。
こういう「超人的な能力を持つやつだけがヒーローなのかどうか」という問題、もっといえば「ヒーローとは一体何か」という問題は最近のアメコミヒーローが出てくる映画では頻繁に登場する問題なのだが、これはヒーローが結局のところ「ヴィランとは戦うものの、ヴィラン以外の存在に於いては特に何もしてくれやしない」という部分から来ているように思う。
例えばダークナイト三部作で描かれたゴッサム・シティはバットマンというヒーローがいるものの、彼だって人間である以上全ての人間を救えるわけではないし、ましてや彼は一人である以上対等に救うことは出来やしない。彼にできる事はあくまでヴィランを捉えるだけであり、そういう意味では「大規模犯罪や災害に巻き込まれた存在」に対してはヒーローはあまりにも無力だといえる。
「そういう状況における『ヒーロー』というのはいるのだろうか」というのがこの作品の世界設定につながっている。
本作はヒーローと侵略者が日夜戦いを繰り広げている世界が舞台だと述べたが、では人々はヒーローに頼るだけなのかというとそうではない。本作には地球防衛軍という組織がいる。
彼らは超人的な能力を持たないし敵に対しては無力で、避難誘導ぐらいしか出来ないのだが、彼らは自分達が出来る方法でヒーローが出来ない事をやって救い続けている。そしてヒーローもまた、彼らの存在があるからこそ目の前の敵と戦うことで人々を救う。この互いに持ちつ持たれつの相互関係が見せてくれるのは、本作に出てくる存在はヒーローも地球防衛軍も「自分達の出来る方法で人々を救う」ということなのだが、「全ての英雄に捧ぐ。」という煽り文句で伝えたい本作の本質はそこなのだ。
つまりこの作品はヒーローを褒め称える「英雄賛歌」ではなくて「自分に出来る事で人を救おう」という「エブリデイヒーロー達を褒め称えるもの」なのだ。
エブリデイヒーローとはなにも警察官や自衛隊員だけではないし、災害が起きたりする時に避難誘導をするとかそういうことをしなくてもいい。それこそヒーローの悩みを聞いてやったり、相談に乗ってやる。それだけでも本作では人を救うことに繋がるものなのだと描いている。
「ヒーローだって人間だ」というテーマから一歩踏み込み、「ヒーローという人間に対して向き合ってやろうとする」という本作は、確かに帯に描かれた煽り文句である「全ての英雄たちに捧ぐ」に相応しい作品だといえるだろう。
個人的には今の社会というのは「ヒーローなんていない」ということが何となくレベルでも理解しちゃっている世界で、アメコミ映画で「ヒーローとは何か」みたいな問いかけが出てくるのは、様々な事があって「超人的能力で助けてくれる存在=ヒーローなんていない」と「人並みの力しか無くても、それでも助けてくれる人達がいる」ということを理解しているからこそ、「超人的能力を持つ存在」の存在理由を描かなくてはならなくなったからだと思っているのだが、そういう意味ではこの『γ-ガンマ-』はある種の解答になっているように思う。
ヒーローが戦う事で多くの人を救うのであれば、様々な理由を抱えるヒーローと向き合ってやる事で救う奴らもまたヒーローなのだから。

しかしプレジデントマンが吸血鬼ハンターってのは、ひょっとして「リンカーンは吸血鬼ハンターだった!」という設定の『リンカーン:秘密の書』から来ているのか? ライトブライトがグリーン・ランタンであることは見れば分かるのだが、そうして見ているとこの作者は俺と見ているものが似通いすぎてて笑う。
作者コメントを見ていると俺と同年代っぽいしなぁ。




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