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『ファンタジスタドール』のバラエティコンテンツ性と貫かれたストーリーについて

人がアニメに何の面白さを見出すのかは人それぞれだ。
テーマやコンセプトから繋がる一貫した物語の面白さを見出す人もいれば、穏やかな日常による癒される描写を見出す人もいる。声オタならば声優の演技に面白さを見出すだろう。
したがってアニメに何を求め、何に面白さを見出し、何を楽しく思うかというのは人それぞれである以上、アニメを見て何を感じたかどうかについては「正解はない」と思うのだが、さてこのブログでも何回か取り上げてきた『ファンタジスタドール』が先日無事に1クール全12話の放送を終えた。


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(2013/09/20)
大橋彩香、津田美波 他

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ひょんなことからドールと出会った中学生の鵜野うずめとドール達との日常を描いたこの『ファンタジスタドール』、いざ終わってみればバラエティコンテンツとしては文句の付け所がない優良コンテンツだったように思う。
バラエティコンテンツというのは要するにバラエティに富んだ様々な面白さを内包しているコンテンツということなのだが、この『ファンタジスタドール』はそういう面白さにおいて、同時期のアニメのどのアニメよりも「毎週違った面白さ」を追求していて、毎週飽きさせなかった。
例えば前半部分は各ドール達を掘り下げていく個人回(所謂○○担当回って奴だ)が中心に据えられていたのだが、これらにおいて『ファンタジスタドール』は一度として同じ描き方をしなかった。例えば「マスターに捨てられた」と思っているささらが、優柔不断で流されっぱなしのうずめに悪態づくささら回とバイトの途中で出会ったみことカティアの友情を描いたカティア回は、「その回の中心になっているキャラクターが違う」ということを差し置いても描き方としてはカティア回はコメディ寄りだったし、バトル自体の描き方もドール対ドールをきちんと描いていたささら回と比べるとさくっと終わらせていた。「ささら回は序盤だから状況説明をしなけりゃいけなかった」というのはそりゃそうなのだが、しめじ回とマドレーヌ回のような残念王子回りの話において一度として同じような面白さをやったことはなかった。「前のマスターの存在が引っかかっている」というマドレーヌとしめじを中心にした物語としておきながら、マドレーヌ回ではドールごとの自律意志の存在とドールの使命と誇りともいうべき話を中心に組み立てていたし、しめじ回ではその辺をしめじ個人の話として描いていた。
バトル部分の逆転劇においてもサバのカードという絵面の面白さで大逆転させたマドレーヌ回と比べると、しめじ回はそういう絵面の面白さに頼らず、非常に真面目なアクションとして活躍させていたように思うところで、そういう意味ではドールごとの描き方の違いがそのまま担当回の差別化を生み出している。
後半部分においては馬鹿馬鹿しい絵面なのにキャラクター達が真剣である事によるギャップで笑わせにくる七話のような回や九話のように他のマスターであるかがみに焦点をあて、彼女がカードを回収する事で叶えたい「希望」に焦点を当てていたり、「カードの奪い合い」を強制させる希望扶助委員会という組織の掘り下げたアクション寄りの回描いたりしていたり、九話のような製作者の苦悩を描いたちょっと真面目な話もあれば、十話のような「ドールとマスターの絆」をポーカー勝負を通じて描いた回もあり、あの手のこの手で「友達との絆」という絆を再確認させるような回が目立ってくる。
前半部分を絆の構築が物語の主軸とするなら後半部分は絆の再確認、または「ドールとマスター」ではない「友達との絆」という筋書きだったのだが、本作はあれだけ色んな事をやっておきながら「シリーズ全体を通して貫かれているお話」としてはかなりがっちり組まれていることにより「毎週ごとの面白さ」だけでない「シリーズ全体を俯瞰してみた時の面白さ」がちゃんとあり、その二つの面白さが毎週しっかりと存在感を放っていたということが何より面白い。
この辺りの仕立て上げ方でいえばシリーズ構成補佐として関わっている柿原優子の代表作である『ジュエルペットサンシャイン』もまたそういう作品であったのだが、1クールの間にその境地まで辿り着いているというその点において(4クールアニメと1クールアニメでは出来る話に制限があるとはいえ)本作は評価に値する。
「毎週の面白さ」という意味では監督・斎藤久の『そらのおとしもの』でも見られた引き出しの多さとギリギリのところで良い話に持っていく芸風だと思うのだが、本作においてはその引き出しの多さも良い話に仕立て上げる技法も「毎回違った面白さ」と「毎回の面白さ」を支えている。
こういう部分が毎週の飽きの来なさと「見終えた時の満足感」があって、その積み重ねが本作の終盤である十一話の「小町の記憶を取り戻したドールと小町の正体を知り困惑する」というエピソードと、そこからドール達とうずめがもう一度契約を結ぶという展開の熱さは「毎週違った方法で個人と個人の絆を積み上げる」という毎週の面白さを急かずに丁寧に描いてきたからこそ生きてくる。
そして最終回なのだが、「大切なことは1つだけ」とする小町に対する「大切な事はいっぱいあってもいい」とするうずめの対立構造の持ち込み方も去ることながら、「大切なことは一つじゃなくてもいいんじゃないかな」とは言いながらも「ソネットを復活させる」という希望に関しては否定されないし、マスターとドールを主従関係としてしまわないところは三話を引用してきて地味に上手い。
そうして「友達」として扱ってきたこと、そして丁寧に彼女達が友達として信頼関係を築く過程を描いてきた事は「ささら達を犠牲にすればソネットを復活できる」という希望が否定されるところに繋がるのだが、その直後にきちんと解決策が提示され、ドールとの絆があるからこその救済手段の存在が小町を救済していく。
この時に「ソネットを救済するためにドールとマスターが集まってくる」というのは本当に凄い。その後のソネット復活が美しく見えるのは「うずめのため」ではなく、「ドールを失う事」を理解しているからこそ、失った小町のために行動するという美しさがあるからだ。
また最終回においてはドール達が「あくまでデータでしか無い」ということをソネットの事故死を酷く描く事で、「データだからこそマスターとの絆を大事にしたい」というささらの台詞が生きてくる。
だからドール自体の儚さとマスターとの絆の美しさを再確認した上で、それを「ドールだからこそ救済できる」という手段へつなげていく過程とソネットと小町が失った日々が再生されていく姿が胸を打つのである。
これだけバラエティ豊かな話をやっておきながら、こうして一本の話として見事にまとめあげた本作を極上のバラエティコンテンツとして呼べなくて何がバラエティか。
何気ない日常を何気なく描き、何気なさが全ての「日常」へと変わっていき、そのすべての日常は「また明日」があるからこそ「日常」であり、「また明日」と言える気軽さと儚さを踏まえた物語を見せてくれた本作は「日常を描いたバラエティコンテンツ」としては一級品であると確信を持って言える。
「見てなかったことを後悔するほどの傑作」とまでは言い切らないが、少なくとも後悔だけはしないだろうと思うので、今からでも全話視聴する事を薦めておく。

で、今更っちゃ今更なんだが、斎藤久監督で『Baby Princess』をアニメ化したら面白いと思うので全世界のアニメプロデューサーは『Baby Princess』のアニメシリーズ化をすればいいと思います。画面に二十人ぐらい配置しておきながらちゃんと全員の動きに個性を与えて動かし、毎回違った面白さを提供し続けた斎藤久なら『Baby Princess』のアニメ化行けるって!


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(2011/07/20)
不明

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まあ同じことは3Dアニメ化した時に監督が稲垣隆行になった時にも思ったんだけど、やっぱりこういう引き出しの多さが特徴の監督は個人的には好みだなぁ。


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