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『WHITE ALBUM2』アニメ放送開始に寄せて

いよいよ本日関東ではTVA『WHITE ALBUM2』が放送開始となるのだが、この『WHITE ALBUM2』という作品は序章・終章・codaという三部作構造となっており、今回アニメ化される運びとなったのはその中でもさわりの部分にしか過ぎない序章のアニメ化となっている。
なぜ序章だけのアニメ化となったかというと単純に本作がボリュームがある作品だからで、原作にあたるPC版では序章のみでもクリアまでにはそれなりに時間が掛かるし、終章・codaに至っては全てクリアするのにはおそらく通常のゲーム一本分以上の時間が必要になってくる。それらを僅かな時間の中に押し込めてしまってアニメは広報活動と割り切るという手もあったわけなのだが、本作ではそういうことをせずに序章のみをアニメ化し続きは評判次第!という形式にすることで作品自体の価値を大事にする戦略をとったようだ。
なので序章のみのアニメ化である今回は本編といえる終章やcodaは当然今回は放送されないということになるのだが、この「序章」は決して「全体の触りの部分」というだけではなく、一本の物語としてかなり完成された物語となっているのである。
この『WHITE ALBUM2』という作品では「浮気」「失恋(に近い状態から)の新たな恋に生きる」というテーマを持つ『WHITE ALBUM』の続編としてリリースされた作品である。「続編」と言いながらも前作に登場した『WHITE ALBUM』という楽曲が物語の中で重要な位置を占めるぐらいで前作との繋がりは殆ど無いのだが、『WHITE ALBUM』の大ファンだというシナリオライター、丸戸史明自らが企画を持ち込んだ本作は『WHITE ALBUM』らしさともいうべきものをきちんと持っているということが特徴としてあげられるだろう。
「WHITE ALBUMらしさ」というのは人それぞれあるものだが、丸戸史明が今回『WHITE ALBUM2』でやったのは「実質的な両思いが些細なボタンのかけ間違いによりすれ違いへと変わり、互いに互いを傷つけあう」という『WHITE ALBUM』で見られた物語展開をアレンジした上で持ち込んでいるということである。
この序章は軽音楽部に所属していた主人公は友人とともに文化祭で演奏することになっていたのだが、サークルクラッシャーの存在によりメンバーが離脱してしまったところ、隣の音楽室から聞こえてきたピアノの音、そして屋上から鳴り響く歌声を聞いたところから物語は始まるのだが、ギャグもコメディもない本作では彼女達との交流というものを非常に丁寧に描写している。
例えば学園の中における人気者が周囲に隠れてバイトしているところや実は庶民的な趣味の持ち主であることや、サボり魔である少女が様々な事情を抱えて生活していることなど、それらを劇的に描くのではなく一つ一つ積み上げながら彼女達と交流していく姿が描かれることで、一人と一人と一人だった彼あるいは彼女達が三人になるまでの過程に対して説得力が生まれ、彼女達が相手のことを思うに足る理由を獲得させている。
そうして三人の物語となった上で「どちらか一人を選ぶことになる」というのはよくある作劇なのだが、本作の面白いところは彼あるいは彼女が恋愛感情を抱くことが「三人の関係性を破壊する」ということに繋がっていくところが面白いのだ。
主人公がどちらか一人を選ぶ事で、どちらか片方が選ばれない存在になるという作劇は散見されるが、本作の面白いところは三人が三人と「も誰かを選ぼうと思うと誰かを傷つけてしまう」というところに持ち込み、であるからこそ「すれ違い」や「傷つけあってしまう」という展開にちゃんと繋がっているのである。
序章終盤にてとあるヒロインが密かに姿を消そうとする下りなどは、二人のことを理解し愛し、大事にしているからこそ自分自身を追い詰めているわけなのだが、同時に三人でいることを望んだあるキャラクターなどは「三人でいたい」という自分のわがままこそが全ての元凶であることを理解しているからこそ傷ついていく。
その上でどちらも選べずにようやく選んだ時には時間切れ。そしてその選択はどちらにせよもう一人で裏切っていたことに主人公も傷を負うのだが、「三人でいたい」と思えるほどの「幸せな記憶」を丁寧に描き、その幸せさ加減がプレイヤーに伝わるように苦心していればこそ「幸せだった事が全ての苦しみの元凶になる」という裏返り方をした時にきちんと切なく苦しい物になるというところが魅力なのだ。
それでいて本作ではそこに対して一つのけじめをつけることで物語として畳んでいる事も面白いところで、そのけじめが終章やcodaにおいて生きてくる。
だからこそアニメ化において急かないじっくりなキャラクター描写と彼らの幸せだった頃の記憶を積み重ねようとするやり方は喜ばしいものであると感じられる。
原作者である丸戸史明自らが脚本を手がけるということも驚きであるのだが、そもそもの企画として原作において最も大事なエピソードだからこそ丁寧に描こうとするこの姿勢にファンとしてはやはり応援したくなるし、アニメだからこそ動きがついた時にその幸せだった頃の記憶がどのような見え方をするのか気になったりもする。
続きがどうなるのか分からないとのことだが、もし終章がアニメ化したその時本作を見逃したことを必ず後悔する日が来ると断言できる。
なので終章がアニメ化されるその日のための第一歩として本作を存分に楽しんでほしいと思うところである。


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