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『サムライフラメンコ』と「警察官である友人」の視点について

最近のヒーロー物において「真のヒーローとはなにか」という問題は、ヒーローを扱う上で「避けては通れない問題」になっているような気がする。
前期の『ガッチャマンクラウズ』や来年映画が公開される『タイガー&バニー』とかもそうだったのだが、この「真のヒーローとは何か」という問題ってかなり扱いが難しい問題だと思う。なぜなら「真のヒーローについて語る」ということは一度ヒーローというものの概念を解体した上で再構築していく作業になるからで、解体の仕方や再構築する順番に酔っては「ヒーローなんていない方がいい」というところにも着地しかねないからだ。
いやもちろんその回答はある意味では正しいもので、数多くの平成ライダーシリーズに関わってきた白倉伸一郎とか井上敏樹とかはほぼ間違いなくその境地に脚を踏み込んでいるのだが、彼らはそんな中においても「ヒーロー」というものを語ってきたわけなのだが、さて現在ノイタミナで放送している『サムライフラメンコ』もまたヒーロー物として「真のヒーローとは何か」という問題に向き合っている作品なのだが、なかなか面白い作品であると思う。

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主人公である羽佐間正義は特撮ヒーローが好きで強い正義感を持つ青年だったが、ついにそのヒーローへの憧れと強い正義感を押さえる事が出来ずに正義のヒーロー・サムライフラメンコとして街のトラブルを解決すべく奮闘することになる!というのが本作のあらすじなのだが、本作に出てくるヒーローであるサムライフラメンコ=羽佐間正義は特殊な能力を持っているわけでも喧嘩が強いわけでもない。それどころか中学生にすら喧嘩で負けるほど弱い。しかしそんな彼の正義感とその正義感から来る講堂の数々がSNSなどを通じて拡散されていったことで、サムライフラメンコはヒーローとして認知されていくわけなのだが、この導入はハリウッドのアメコミ映画である『キックアス』と似ている部分がある、というのは柔らかめの表現で正義のキャラ立てについても『キックアス』からギーク分を抜いただけでほぼ同じだ。

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『キックアス』もまた「ヒーローに憧れた青年がヒーロースーツを着込んで強盗退治した姿をネットに上げられたことで、ヒーローとして認知されていく」というところから始まる物語だったのだが、この『キックアス』では「暴力が暴力を呼んでいく」という「暴力の連鎖」という落とし所にしており、エピローグで語られたのも「キックアスとヒットガールが倒してしまった存在の息子が彼らを倒す事を決意する」というものだったわけなのだが、『サムライフラメンコ』は『キックアス』のような「暴力の連鎖」に向かわない。それどころか、『キックアス』になりかねないところをギリギリのところで踏みとどまる事で「サムライフラメンコらしい面白さ」になっている。
なぜそう感じるのかといえば、それは羽佐間正義と対になる主人公として描かれている後藤英徳の存在があるからだ。
この後藤の面白いところは「社会秩序を護る職業」である警察官という職業ながら正義感があんまり強くない職業警察官というキャラ造型をしているのだが、この警察官設定の面白いところは「正義感は強いが結局私人でしかない」というサムライフラメンコ=羽佐間正義とちゃんと対になっており、作中でもこの二人は対照的な存在として描かれている。
ヒーローとして活躍する羽佐間正義のやりすぎさ加減や無茶や周囲に与える影響をちゃんと注意出来る後藤秀徳の描写があれば、ちゃんと後藤秀徳は羽佐間正義が中学生に負けるほど喧嘩が弱いにも関わらず、それでもなお折れること無い正義感の強さがちゃんと後藤の中で反映されている。
一例を上げると二話において傘を盗まれた後藤が赤信号である横断歩道を渡ろうとした時に正義に止められる描写があるのだが、それがちゃんと同じ話のエピローグにおいて後藤が赤信号を無視して横断歩道を渡ろうとする男を止めるという描写に繋がっているし、正義もまた後藤の存在があるからこそ「自分にできる限界を超えない範囲での無茶」で留まっている行動を心がけるようになってきている。
またこの二人の存在を対照的にしておきながら「互いに互いを注意し合える」という「友人関係」としていることも面白い。後藤は警察官ではあるのだが、同時に彼は正義の友人だ。友人だからこそ彼の行動の無茶さ加減を「友人として心配している」し「だからこその注意」という描写になっていて、友人同士の語り合いという形で収まっている。
これが警察官と一個人として他人を咎めるヒーローだとやっぱりきな臭さが出てしまう部分なんだろうけど、あくまで友人同士だからこそこちらとしても「友人同士のやりとり」で落ち着いてみていられる部分はある。
加えて後藤は警察官の中でも「交番勤務の警察官」という住民の目線に一番近い存在の警察官であるというのが面白くて、住民に一番近いからこそ正義の強い正義感とそこからくる行動の余波を一番受ける立場で二話冒頭におけるゴミを捨てる時間を守らない住民の訴えを聞くことになったり、交番勤務だからこそ正義の無茶さ加減をアシストすることになっていたりする。
これが刑事とかだと微妙にずれてしまう部分で、あくまで「困った事があればとりあえず駆けこむところ」として機能しがちな交番に勤務する警察官だからこその部分だろう。
「もう一人の主人公は警察官」という設定にすることで、『サムライフラメンコ』は「暴力の連鎖」という『キックアス』的展開に雪崩れ込むことなく、『キックアス』とは別の面白さになっているように映る。
あと正義を基本的には「情けない」部分を押し出しているのもいいんだよなぁ。変に格好つけた描写にしないことで、彼がそうした醜態を晒してでも貫きたい正義感みたいなものが格好良く見えるというか。

あ、ところで真野まりの部屋にある魔法少女グッズの中にぴえろ製魔法少女っぽいアイテムが大体あるのが面白すぎるぜ。
さすが『ファンシーララ』の監督だわぁ。
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