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『のうりん』と大沼心の流れを断ち切らないパロディについて

週の半ばに書く文章が大体『ガンダムビルドファイターズ』の話になっている気がするのだが、今回もまた『ガンダムビルドファイターズ』の話から始めることとする。
今週描かれたのは天才少年科学者であるニルス・ニールセンと彼の操る戦国アストレイとレイジ・セイのスタービルドストライクの戦いだったわけなのだが、前回のアメリカ代表だったグレコとトールギス・ワルキューレを下した戦国アストレイの必殺技がまさかプラ不スキー粒子を気に見立て、相手のガンプラの中に粒子を叩き込んで破砕する発勁--粒子発勁だったとは! この粒子発勁の何が面白いかというと、戦国アストレイの元になっているガンダムアストレイレッドフレームという機体の話になるのだが、このアストレイレッドフレームという機体は『ガンダムSEED』の外伝にあたる『アストレイ』シリーズの主役機である。最大の特徴としては日本刀の形をした実体剣であるガーベラストレートだが、このガーベラストレートは日本刀の形をしているためか、通常のOSでは機体に負担がかかりすぎると言う設定がある。レッドフレームはこれを解決するためにOSに改造を施しているため、機体にかかる負荷は殆どかからないようになっているのだが、実はレッドフレームのOSにはガーベラストレートを操るための姿勢制御やらなんやらのデータだけでなく、八極拳などのモーションが組み込まれている。もちろんこれはアストレイシリーズにおける裏設定の一つではあるのだが、戦国アストレイがレッドフレームを素体とした改造機であること、そしてガンダムX魔王でサテライトシステムフル活用による大型ビームソードの出力強化を必殺技として扱った『ガンダムビルドファイターズ』のスタッフであることを考えると、「レッドフレームが素体」というところから膨らませた必殺技があの粒子発勁だったのではないだろうか。
思えばレッドフレームの強化形態であるパワードレッドにシルエットも似ているし、パワードレッドの必殺技も格闘技だったしなぁ(赤い一撃の話)。
まああのエフェクトの付け方は若干光雷球を思い出す部分でもあるのだが、しかしこの「○○が素体」ということを踏まえて、製作者の盛り込んだオリジナル要素と元になった機体の良さが混ざり合った不思議な面白さが機体の魅力になっているのは本作に登場する全ての機体が「プラモデルだからこそ」だと言い切ってもいい部分だと思う。

サンライズのセルフパロディ作品の話をした後なので、『のうりん』の話をする。
どういう運の巡り合わせなのか、『銀の匙』と合わせて同時期に日本も農業高校が舞台のアニメが二本もやっているという状態なのだが、『のうりん』が物凄く面白い。いやライトノベル読み界隈からは散々薦められていたのだが、まさかこんな面白い作品だったとは。俺が本作の何を面白いと感じているかというと、メインストーリーの面白さもさることながらそのパロディの面白さだ。
『のうりん』のパロディというのは、ただただ他作品のギャグや描写をやっているだけではない。『のうりん』のパロディネタの面白さというのは、文脈と話の流れをぶち壊しにしない形でやっているパロディなのだ。言ってしまえばパロディで笑わせるという部分は「遊び心」であって、パロディネタそのもので笑わせに来るわけではないのである。
例えばローズ花園とのポッキーゲームだが、あそこで挿入されたジョジョネタというのは「ホモのローズ花園に無理矢理キスされる耕作」というものを誇張化した表現としてジョジョのパロディが選択されているように見える。というか「ローズ花園が男色趣味の持ち主で、耕作が無理矢理キスされる」と言う部分だけで割とギャグとしては成立しているのだが、そこをあえてジョジョネタとの合わせ技にすることによって「無理矢理キスされる耕作」と「唇を奪ったことに興奮するローズ花園」という二人のキャラクターの心情を、耕作=エリナ、ローズ花園=ディオと言う図式に当てはめることで感情を増加させているのである。なにせ元ネタになっているそのシーン自体も、「ディオに無理矢理キスされるエリナ」なのだから。
そうして意図的にシーンの流れを重ねる事で引用を行い、絵柄も似せてやることで、パロディネタは話の本筋をぶち壊す事なく、そして元ネタになっている数々のネタの文脈を雑に扱うこと無く、笑うポイントへと変えている。
同じことは「僕を良くも騙したな!」なんかにも言えることで、あのシーンの面白いところは「騙した継にキレる」という『のうりん』の話の本筋から外れる事無く、元ネタを引用することによって「その怒りそのものを茶化す事で笑わせる」という効果を生み出している。同時にあのシーンはマンガのコマ割りまで再現することで、あの話を締める「ば~~~かじゃねーの!」というギャグに繋がっている部分で、コマ割りまで再現したマンガネタからそのままコマ割りまで再現したマンガネタでまとめた事で、一話の中でのコメディがまとまっている印象を受ける。
そういう意味では虎於を始めとする四天農も各キャラの方向性がパロディの方向性で垣間見える部分で、林太郎は『サラリーマン金太郎』系でまとまっていたし、虎於は「ざわ……ざわ……」というもはや一般人向けのパロディネタと化した福本伸行ネタから「きたぜ……ぬるりと」でアカギに投げて+夜王で青年誌パロディでまとまっていた。酷い。
この辺のパロディとしてのまとめ具合と文脈や話の流れを壊さず、乗っかる形でパロディを盛り込んでくる芸風は、本作の監督である大沼心の芸風だと思うのだが、大沼心といえば黒板ネタは外すことが出来ないだろう。
『ぱにぽにだっしゅ』などの新房昭之作品で散見された黒板ネタであるが、あれは元々新房昭之の演出ではなく大沼心の演出である。あの頃は本編とは全く関係ないネタと言う形で黒板でギャグを盛り込んでいた大沼心であるが、あの頃から文脈をある程度押さえた上でのパロディを積極的に行っていた。そういう意味では『のうりん』でも見られるようなバラエティ的なギャグのセンスというのは大沼心が元々持っていたものなのだが、シャフト(というか新房昭之チーム)から抜けて、SILVER LINK.という場所に移り、監督として第一線に立った事でそのギャグセンスがより先鋭化したように感じる。有り体に言えば、監督として仕事し続けたことで化けたのだと思う。
どの辺りで化けたかについては色々な見方ができるので一概にいうことは出来ないが、個人的に今のギャグセンスが完成されたのは『バカとテストと召喚獣にっ!』だと思っていて、『バカテス』二期の発展形が『のうりん』かな、という気はする。あくまでギャグだけに絞ればの話だけれど。

後回しにしたけど、地味に話のスケールの落とし込みようが上手いところもいいと思う。
どれだけギャグを盛り込みまくって、コメディ方向で話が大きくなっていっても、農業高校の枠組みから飛び越えない。
ギャグとしてもあくまで農業高校の枠組みの中でやってしまうことで、オチをつける時もあくまで高校の枠組みの中で終わってしまう。
そのことで「ノーリスクで失敗できるからこそ挑戦しよう」とか真面目な話になった時に自然に受け止められる。そういうところの配慮の仕方は評価されてもいいところだし、こういうところを律儀に守った事により振り返った時の印象として真面目な印象もちょっと残る、と思う。
でも6話の切符先生を褒めまくるのはやりすぎてる感があって酷かった。面白かったけど。

しかし新房昭之の実質的な弟子筋にあたる大沼心だけど、師匠とは全く別のクリエイターになったなーとここ最近強く感じる。個人的には大沼心の方が新房昭之よりも好きなので、この調子で頑張って欲しい。一年に一本ぐらい『のうりん』みたいなコメディ作品を手がけてくれると、個人的には安心してみていられるんで!
あ、一話のライブが拡張現実を用いたアイカツ!と同じタイプの演出装置持ちだったのは熱かった。


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2件のコメント

[C1467]

のうりんのパロを影で支えるのは計4話コンテを切るワタナベシンイチさんでもあるかと。冬コミの同人誌で「自分のルーツである味っ子パロ回がやりたいがために4本やらしてもらった」と仰ってたので。思えばDMFの半分近くも彼ですし、なんやかんやタツノコギャグをかましてくるのはナベシン回だったような?

[C1468] Re: タイトルなし

あ、ナベシン絵コンテ回が四話もあるんですね。それは知らなかった。
今のところ二話と五話だけなので、そのうち出てくるのかな……。

『のうりん』は仰るとおりナベシンが関わっている部分も相当大きいですね。
流れを断ち切らずに上手く本筋を進めているわけですし、大地丙太郎絵コンテ回だった三話もよい感じでした。
  • 2014-02-20
  • 水音
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