Entries

『劇場版モーレツ宇宙海賊』に見る開拓する者達について

 「さあ海賊の時間だ!」
 この言葉から始まった本格スペースオペラアニメ『モーレツ宇宙海賊』。
 2012年1月よりアニメが放送開始されるやいなや、加藤茉莉香と弁天丸の活躍に魅了される人間が続出! また近年でも珍しい本格的なスペースオペラということでSFファンからも高く評価され、第44回星雲賞メディア部門を受賞するなど様々な点で話題をかっさらっていったわけなのだが、そんな『モーレツ宇宙海賊』が劇場版アニメ化!
 第一報が出たのが2012年の6月末。TVA版の最終話直後に監督を務めた佐藤竜雄氏入魂の一筆で描かれたその告知アニメに、「遅ぇよ!」「2014年って!」と言われまくってた記憶もあるのだが、それから一年と半年。
 2014年2月22日にようやく封切りと相成った。
 『モーレツ宇宙海賊』放送終了後には当時更新すらまともにしなくなったこのブログで無駄に長い感想文を書きなぐった記憶もあるし、「遅いよ!」といった記憶もあるわけなのだが、ともあれ無事に作品が鑑賞されるに相応しい舞台に上がった。
 ならばこちらとしても本気の構えで見るしかないわけで、公開初日である本日22日に視聴すべく『プリティーリズム』のリアルタイム視聴を諦めて視聴してきたわけなのだが、これは開拓者の物語だ!!
 あらすじとしては「亜空ダイバーである冒険者である父を持つ無限彼方少年が、加藤茉莉香と弁天丸と出会い、父親が追い求めた亜空の果てにたどり着く」と言う物語なのだが、本作で面白かった点としては加藤茉莉香と無限彼方の対比と「自分で自分のベストを選択する」ということ。
 一つ目についていうと、加藤茉莉香と無限彼方。元々加藤茉莉香が無限彼方と関わることになったのは自分の父親である加藤権左衛門と彼方の父親である無限博士が「彼方少年の未来の選択肢の一つを教える」という約束をしていたからで、それを代行すると言う形で茉莉香は彼方の物語へ関わっていくわけなのだが、『モーレツ宇宙海賊』ではTVA版の頃から「親は選択肢を与えるだけ」で「子供が自分で決めた選択肢であれば尊重する」というスタンスを守り切ってきた。
 加藤茉莉香は母親や周囲の人間に恵まれていたことや素直にまっすぐに育つ資質に恵まれていたからこそ、突如降って湧いたように現れた「海賊稼業」と言う「これから先の自分を決定する選択肢」と向き合うことが出来た。それを描いたのがTVA版の五話までで、当時佐藤竜雄監督は「他の人物を牽引していく主人公の決断を説得力がある形で描きたかった」と語っていたが、TVA版はヨット部や母親、弁天丸クルー達を丁寧に描くことで加藤茉莉香の置かれている環境を視聴者に理解させた上で加藤茉莉香という少女が決断する事で物語自体が大きく動き出す。
 この佐藤竜雄監督の意図は確かに無謀とも言える挑戦ではあったのだが、それがあったからこそ加藤茉莉香の決断は本作における大事な土台を形成し、宇宙の広大さやそこに暮らす人々の魅力を雄弁に語っても本作が『モーレツ宇宙海賊』で、「加藤茉莉香と弁天丸活躍を描いた作品である」という大事な部分はぶれなかった。そしてそれこそが最終話におけるグランドクロス戦へつながっていく。
 そんな加藤茉莉香が今回は決断する側ではなく、無限彼方少年の決断を見守る側となる。
『モーレツ宇宙海賊』を愛する者としてコレに面白さを感じないわけにはいくまい。
 もちろん細部では加藤茉莉香と無限彼方少年は違う。
 父親と面識がなかった加藤茉莉香と父親と学校に入るまでは一緒に暮らしていた無限彼方とでは、父親が託した選択肢のあ使い方は違うだろう。加えて言うなら無限彼方少年は割と捻くれた性格をしているのだが、そんな彼方少年が加藤茉莉香に引っ張り回される中で、父親の思いを、託してくれた選択肢を知り、自分の決断を導き出す。
 その決断を導き出し、自分の気持ちに素直になり、自分の両目で未来を見据えた時。
 無限彼方という少年は一人の男として自分のベストを決断するのである。
 コレは少年の成長物語ではない。一人の子供が一人の男となり、自分の生きる道を切り開いていく物語なのである。
 だからこそ終盤で彼に与えられる「Trigger you have?」と言う言葉と、彼の回答が重く、そして格好いい。
 その格好良い決断が彼を、そして世界を切り開いていくのだからもうたまらない。自分の決断によって広がった未来が、彼の世界を大きく変えていく。その美しさと重厚さ、そして大きな音を立てて躍動する「無限の世界」。「世界を切り開いていくもの」という存在が本作『劇場版モーレツ宇宙海賊 亜空の深淵』に描かれている。
 加藤茉莉香と無限彼方という男が見せてくれた彼らの未来と、切り開いた際に二人で述べた「決断は自分の選んだベスト!」という言葉を大事にしたい。
 本作は佐藤竜雄監督によると「サトタツひとりまんがまつり」がコンセプトの一つに含まれているらしいのだが、その要素は確かに存在している。『モーレツ宇宙海賊』は元々様々なジャンルの物語に対応する作品でもあるのだが、本作では90分という動画の中に様々な物語が存在している。一つは当然「冒険譚」であるのだが、その他にも謎を解き明かすという探偵サスペンス要素もあるし、今まで以上にパワーアップした電子戦の根幹にあったのは「企業同士の化かし合い」だ。ビジネスとしての客の争奪戦と言う要素もあったし、熱い友情物語でもある。要するに様々なジャンルの物語が様々な手法でつめ込まれているということなのだが、本作の恐ろしいところはそれらの物語が一つとして使い捨てられておらず、そして流れが途切れさせないところだ。
この物語が無限彼方の決断の物語であるのは間違いないのだが、その流れはそのままに様々な色へシームレスに変化していく。探偵サスペンスになったかと思えばアクション映画っぽい事をやったり、そしてスペースオペラに戻ったりする。
その流れがあまりにも自然で、だからこそ心地いい。また話の流れ自体も決して単調にならずに飽きさせない。
だからこそ本作は始まったと思ったらオモシロイと思ったまま終わる。そしてその体験の中には様々な面白さが内包されているのだから、この面白さを言語化することは本当に難しい。
 今ここにこれだけ文章を書いている俺でさえも、「俺が何を面白かったか」とこれだけ書いてもおそらく伝わらないだろうと思いながら書いているぐらいである。ということはここで書いた内容は何かということになるのだが、佐藤竜雄監督へのラブレターみたいなもんである。
 また映像面で面白かった点といえば無限彼方が虚勢を張っていたり捻くれていた時は前髪で右目が隠れるのに、素直になった後は前髪で隠れなくなる!というところも面白いのだが、個人的には「無線兵器なのに、使う場所の問題で有線に見える」というところを上げたい。
 事前に「超光速通信は亜空ダイバーに取って命綱のようなものだ」と言うセリフがあったのだが、その超光速通信が最後の伏線になっているところを考えると、あそこで印象強く見せていたのは大事なところではないだろうか。まああと亜空の海と記憶の海を水中と言う描写に落としこんでいるところとか、暗喩も絶妙ではなかろうか。
「宇宙」を海に例える事はよくあるけれど、本作はそこに亜空間の海と記憶の海を重ねていて、そこにも味わい深さがある。
 TVA版からの続投キャラだとグリュンヒルデは今回はじめてスポットが当たったわけなのだが、自分の内なるものと向き合いきれてない彼女が無限彼方との出会いを通じて、自分の内なるものに向き合い始めた辺りは「グリュンヒルデ」と言う人間が動き出した感がある。アニメ版オリジナルキャラだったグリュンヒルデをこういう掘り下げ方で描くとは。それがちゃんと物語を動かすきっかけになっているのだから、丁寧というしかない。
 メカ周りではアルヴァジーレ! 潜水艇として登場したあのメカが、ある人物の覚悟によって変形するあの一連の流れと「潜水艇だから」と言わんばかりのフォルムにいちいちシビれる。目のあるメカって久しぶりに見たのだが、目があるからこそある人物の問いかけが面白いところでもあるし、「両の目で未来を見据え、拳で切り開く」というダイナミックさ溢れる展開に繋がっているわけで。パンフレットによるとあきまんデザインみたいだが、あのデザインは格好良かった……!
 劇場版用にディテールアップされた弁天丸も良かったし、艦隊戦もあの熱さはずるいと思う。もうTVA版から追ってきた人間にとってはご褒美、そうじゃなくても「あれが伏線だったのか……!」と驚くこと間違いなし。しかしチアキちゃんも丸くなってノリがよくなったな、と思ったんだけど、やたらノリノリで海賊服を着るチアキちゃんはTV版よりも良かったなぁ。
ああ、あと彗星は文句なし。あの世界の銀河の壮大さがあの一カットだけで伝わってくるので。

 何はともあれ、本作『モーレツ宇宙海賊』がこうして劇場のスクリーンに戻ってきたこと。そしてその面白さの性質はそのままに、パワーアップしてきたことをただただ喜ばしく思う。その一点だけで何度涙を流したことか。
 そういう映画ではないと分かってはいても、「面白いもの」を見た時に人はこれだけ涙をながすのだと自分の事ながらもそう思う。というわけで、全世界、いや全銀河の人類に本作を強く強くおすすめする。
一生ものの映画だと思うよ!


Sail away(アニメ盤)Sail away(アニメ盤)
(2014/02/22)
小松未可子

商品詳細を見る



Cosmic ExplosionCosmic Explosion
(2014/02/22)
小松未可子

商品詳細を見る



スポンサーサイト
この記事に対してトラックバックを送信する(FC2ブログユーザー)
http://ilya0320.blog14.fc2.com/tb.php/2011-a7d9f7e4

0件のトラックバック

0件のコメント

コメントの投稿

投稿フォーム
投稿した内容は管理者にだけ閲覧出来ます

Appendix

魔界戦線


■DREAM WING(C87新刊)


■プリズムアライブ(C86新刊)
44829979_m.jpg
とらのあなで委託中

■スイッチオン!(C85新刊)
アイカツ3
とらのあなで委託してました

■RUNWAY
表紙
とらのあなで委託してました

プロフィール

  • Author:水音
  • tumblrの方が積極的に更新してるマン。
    面倒くさがりなので、Twitterのほうが捕まります。

    魔界戦線



    連絡先  :mizune.moon.sounds@gmail.com
    @を半角にして下さい

カウンター