Entries

『艦これRPG』に見る原作再現による「原作らしさ」について

『Wake Up,Girls』は「アイドルオタクの山本寛が作るアイドルアニメ」ということで、グダグダ言いながらも一応毎週チェックしているのだが、相変わらず「特に書くことがないアニメ」という印象が拭えない。面白くないわけではないし、理屈も一応筋が通っている。ただ盛り上がりに欠けるというか盛り上げ方が甘いというか、『かんなぎ』以降の山本寛監督作品に見られる「冷やかな視線」が話の山場においてノイズとして機能してしまっている気がする。その辺が猛烈なノイズになっていたのが『劇場版』だし二話で見られた水着での営業とかだが……まあここ最近は割と素直に見られる作品になっているので特に気にしてはいないのだが、今週の問題としては「母親との和解が早過ぎる」ということでも「和解があっさりすぎる」ということでもなくて、単純に母親の「今の感情」が抜け落ちていて、過去の感情を振り返った上での今の感情が見えてこない。結果として過去の出来事である「感情の暴走による確執」から現在の「娘のステージを見て涙を流して和解」と言う流れが繋がっておらず意味がわからない。
例えばこの話、「娘が自分の信じる正しいことを貫いた結果、プロデューサーの計略によってアイドル活動で涙を流したことを知っているからこそ『今度こそは涙を流させない』という親心だった」という落としどころにしておけばそこそこ見れたと思うし、「ステージで活き活きとパフォーマンスをする娘に『あの頃とは違う』と言う意味を見せることで和解する」という流れになっておけば自然だと思う。もしあの過去の描写をそのまま使うにしても「娘のライブに来た理由」とか「和解に至る理由」とかをちゃんと描写しておく必要があって、つまるところあれに関しては「あっさりしすぎ」というより「理屈が通ってないよね」が正しいところだと思う。
あ、あのイベント自体の採点システムに関しては特にいうことはないです。むしろ「会場のファンによる投票+ネット投票+審査員の審査評」という三つの複合的な要因で決定されるので、ファン同士の現場での確執が起きにくい状況は作られているように思う。まー言っても『アイカツ!』とか『プリティーリズム・ディアマイフューチャー』とか『ラブライブ!』とかも第三者の投票だけによって順位付けがされているわけで、ああいう競争システムをちゃんと描写しようとする意気込みと、そこまで文句が出ないように作られてる部分は評価に値する、かな。

で、おそらくTRPG業界で今年一番売れたゲームシステムになるだろう『艦これRPG』の話をする。


艦隊これくしょん -艦これ- 艦これRPG 着任ノ書 (富士見ドラゴンブック)艦隊これくしょん -艦これ- 艦これRPG 着任ノ書 (富士見ドラゴンブック)
(2014/03/20)
河嶋陶一朗/冒険企画局

商品詳細を見る


このゲームの元ネタになっているのは昨年の夏ぐらいに話題になり、今なお無数の提督を楽しませている『艦隊これくしょん』というブラウザゲーム。このゲームの面白いところはキャラクターや史実ネタの盛り込みようなど色々あるけれど、ことゲーム的な部分での面白さでは、「資材運用」と「引き際を考える」と言う部分でゲーム性と言う部分が保たれているように感じる。資材運用が重要になってくるからこそ「クリアできた時は大体事前の準備がしっかり出来ていて、出来なかった時は事前の準備不足であることが多い」という事になるし、引き際を間違えば自分が育てたキャラクターを失ってしまう。
そういう意味では「負けない」と言う事を要求されるゲームなのだが、そんな『艦隊これくしょん』のTRPG化と聞いて、どうなるのかと思いきや『艦隊これくしょん』のゲーム的な部分での魅力もキャラクターとしての魅力もちゃんとシステムとして落とし込まれた非常によいシステム設計になっていて驚かされた。
本作ではプレイヤーは全て艦娘となり、提督(ゲームマスター)の指揮の元で深海棲艦と戦っていく!というゲームではあるのだが、何が秀逸かというと「キャラクターの個性を発見する」と言うゲームになっていること。
このゲームでは各艦娘達は66個の個性の中から最大6つまで個性を持つことが出来るのだが、プレイヤーはこのゲームをプレイし、艦娘としてイベントを経験していくことで自分のプレイしている艦娘の新たな個性を発見していけるような作りになっているのである。というのも、本作では各種イベントにランダム要素を導入することで同じシナリオを用いても起きるイベントが異なっていくからだ。
例えば「日常風景」という大きな括りで見ても釣りに行くイベントだったり、訓練したり、海水浴に行ったりと様々なイベントが用意されていてプレイごとに描かれる日常風景は必ずしも同じとは限らない。その結果として「自分の中にある艦娘らしさ」と向き合うことになるし、その「らしさ」が個性としてちゃんと出てくるような作りになっているのである。
その個性をより意識させるのが判定システムで、本作における判定は全て「個性」で判定されるのでプレイしているだけで自分の艦娘の個性を自然と意識させてくれる作りになっている。自分の艦娘の個性を見つけさせてくれる「ランダムイベント」とその個性を意識させてくれる「判定システム」。
この二つにより『艦これRPG』は艦娘一人一人の個性がプレイしているだけで見えてくるゲームとなっているのだが、面白いのはそれだけじゃなくて、各艦娘らしさを「個性」だけでなく「固有能力」と言う形で表現していることで、例えば天龍は「溢れる自信」という固有能力を持っているし、雪風は「奇跡の駆逐艦」という固有能力を持っている。これにより各艦娘の持つエピソードや性格がちゃんとゲームに直接反映されるデータ的な意味付けを持つように作られていて、各艦娘の差別化と同時に、立ち回りにもその艦娘らしさが出てくるようになっている。
みんなのオカンとして機能してしまう雷は「私がいるじゃない!」という「他のプレイヤーが判定に再挑戦する時に支払うコストを肩代わりする」という固有能力を持っているのだが、この固有能力により「どうしても成功させたいけど、もうコストを支払えない」と言う時でも雷がいれば再挑戦できるのだ。
そしてこの固有能力がちゃんとその艦娘らしい名前と効果を持つのも面白い。那珂ちゃんの「那珂ちゃんセンター!」なんかは艦隊戦時の立ち位置によってボーナスが発生すると言う能力で、「艦隊のアイドル」と言う那珂ちゃんのキャラクターを上手く落としこんでいる一例だろう。
その他にも様々な艦娘が収録されているのだが、その艦娘の中で一つとして同じ固有能力を持つものがいないところは特に面白い。同じような個性の構成をしていたとしても、固有能力が全然違う事でデータ的な裏付けを持つ個性が生まれている。
もっともそのためにキャラクターメイキングルールが存在しないし追加される予定もないようなのだが、もし固有能力まで一から設計するとなると複雑化しやすい部分なのでメイキングルールを取り外したことは評価されるべきだし、その変わりに各艦娘ごとのオンリーワンの固有能力を持たせてきているわけで、キャラメイク出来ない部分の抜けた穴は上手く改修されているように感じる。
また資材運用ゲーとしての要素も健在で、本作では資材を消費してダメージを回復するのだが、この資材は鎮守府の共通リソースで有限である。そのため、ダメージを喰らいすぎると完全回復するのに資材が足りなくなる!ということが起きるようになっている。
資材の消費具合は、他の艦種に比べて強力な戦艦や空母は消費が激しく、逆に火力や装甲の低い駆逐艦は少なくなっているなどちゃんと強さによって決定されているのだが、プレイ中に資材を手に入れられるイベントも存在している辺りは親切な作りになっていると感じる。とはいえ、確実に資材が手に入るわけではない辺りも艦これらしいといえばらしい点だといえ、「どれだけ損耗を減らすことが出来るのか」という点にも注意する必要があるところは原作と同じような魅力が光る点だろう。
ざっと書いてきたが、このルールブックを読んでいて感じるのはいずれも『艦隊これくしょん』と言うゲームをよく研究した上で、ちゃんとTRPGらしく仕上げてきたところだろう。「これが初TRPG!」と言う人向けにも分かりやすく解説しているし、システムとしても非常に分かりやすい。
にも関わらず、ゲームとしてはきちんと艦これらしさを感じさせる作りになっているのだから見事というしか無い。キャラメイクルールがないものの、キャラメイクルールをなくしたからこそ簡略化と共に個性を出す事ができているのでこの方向はやり方としては面白い。艦娘は基本ルールブックの段階でも艦娘の数は相当数あるのだが、今後発売される追加データ集ではさらに60人もの追加がされるようだし、そのうち気にならなくなるような気もする。とはいえ、マイナーな艦娘好きだと涙をのむパターンもありそうだし、今回は改造ルールが一切ないので改造ルールの実装が楽しみだ。潜水艦も存在しないしね。
何にせよ、こういう愛にあふれたゲームは売れて欲しいので、自分の引き受けられる範囲内でなら幾らでも提督やりたいなぁ。まあ気分転換に別のゲームやろうぜ!って言い出す可能性も無きにしもあらずだが。

ところで、本作はソロプレイも出来るようになっている辺りは高く評価されてもいいと思う。
那珂ちゃんで一回回してみたけど、さくっとクリアできたしね。もっともこの経験点の使い道はないわけなのだが。
スポンサーサイト
この記事に対してトラックバックを送信する(FC2ブログユーザー)
http://ilya0320.blog14.fc2.com/tb.php/2020-abb547b3

0件のトラックバック

0件のコメント

コメントの投稿

投稿フォーム
投稿した内容は管理者にだけ閲覧出来ます

Appendix

魔界戦線


■DREAM WING(C87新刊)


■プリズムアライブ(C86新刊)
44829979_m.jpg
とらのあなで委託中

■スイッチオン!(C85新刊)
アイカツ3
とらのあなで委託してました

■RUNWAY
表紙
とらのあなで委託してました

プロフィール

水音

  • Author:水音
  • tumblrの方が積極的に更新してるマン。
    面倒くさがりなので、Twitterのほうが捕まります。

    魔界戦線



    連絡先  :mizune.moon.sounds@gmail.com
    @を半角にして下さい

カウンター