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『アイカツ!』と季節感とテーマを配慮したシリーズ構成について

『プリキュアオールスターズNewStage3』を視聴したのだが、「今までの集大成」と言う言葉は間違いではなかった。前作のゲストだった妖精二人とそんな二人と妖精学校の友達だったバクの妖精を中心に物語は進むわけなのだが、「夢」というキーワードに寝る時に見る「夢」と目標的な意味である「夢」の二つの意味を重ね合わせ、「なりたい自分になった幸せな夢に籠絡されるプリキュア」と言う姿を描き、そこから「夢を叶えるために頑張る」ということの意味に繋げていったのは見事だ。
本作で描かれているのは何れも夢の世界であり「夢を叶えた世界」ではあるものの、「なりたい自分のために頑張る」ということを尊く扱っていたけれど、これがいちいち心に刺さる。「挑戦し続ければいつか夢は叶う!」というのは綺麗事ではあるものの、こういう綺麗事は説く意味があるし、本作はちゃんとその部分を描き切っている。それも「夢に敗れそうになっている少年」という存在を主人公とすることで、少年が再び立ち上がり「夢をかなえるための第一歩を踏み出す」としている。安易に夢を叶えさせるのではなく、そのために必要な第一歩を丁寧に描くに本作のテーマである「なりたい自分のために今を頑張る」というテーマは生きる。そのテーマの力強さは紛れも無くプリキュアらしさでもあり、魅力だと感じるのだが、本作の良い所はそこに加えて「親子の物語」とすることで「親離れ・子離れ」と言うドラマになっていることだ。
幸せな夢の世界=母親に守られている世界とすることで、「いつかは母親から離れて戦わなければならない」という親離れのドラマを描いているのだが、母親を丁寧に掘り下げることで「今は守られているけれど、いつかは我が子は旅立っていく」という子離れのドラマとしても描かれる。
本作はプリキュアである以上、主なターゲットは当然女の子であるのだが、女の子とともに来るだろう親に対するメッセージとして「守るだけが親の役目ではない」し、「子供はいつかは旅立っていくもの」として描き切ったのは見事だ。シリーズ全体のテーマである友情も、今回は「どんなに辛くても友達と一緒なら乗り越えられる」という拾い方をすることで絆の強調にも繋がっている。
全体的な作りとしては言うまでもなく傑作だといえるのだが、キュアブラックさんとキュアホワイトさんの力強さは殆ど神話級だと思う。あの二人が出てくる時の安心感は一体なんなんだろうな。他のプリキュアも見劣りしないほど頑張っているというのに、キュアブラックさんとキュアホワイトさんの安心感はちょっと凄い。さすが十年間の始まりの一作よ……。
ところで俺としてはタルトはんがミラクルライト職人から引退したことに一抹の寂しさを覚えてしまうのです。なんだかんだでタルトはんがいてのミラクルライトだったもんなぁ……。
あ、EDは3DCGでしたけど、シリーズの最期らしく京極尚彦絵コンテでもよかったんじゃないですかねぇ。一作目の絵コンテもそうだったじゃないですか。

『アイカツ!』の卒業式回を今頃になって視聴したのだが、素晴らしい一話であった。
卒業アルバム製作と言う体裁で今までのドラマを思い出させながら進めている事もさることながら、俺がこの卒業式回を素晴らしいと褒めているのは『アイカツ!』という作品のテーマと今回の内容が噛み合っていること、そしてシリーズ構成として、ここで卒業を描くということの意味があったからだ。
そもそも「卒業」というものを冷静に考えてみると、学生生活においては「一つの終わり」であるという部分が強い。当たり前だが卒業するということはもう学校の一員ではなくなるということなのだから、卒業をイコール学校生活の終わりとして演出することには納得がいく。だからこそ一年を描いた作品の多くは卒業を最終回に持ってくるのだが、『アイカツ!』の面白いところは一年目の進級もそうだが、今回の卒業を話の半ばに持ってきていることだ。
なぜ『アイカツ!』が話の半ばに卒業や進級を持ってくるのだろうか。
3月の終盤に卒業や進級を入れることで季節感を出すためというのはもちろんあるだろう。『アイカツ!』ではクリスマスやバレンタインなどのイベントで、ちゃんとそのイベントを盛り込んだ話を展開してきた流れがある。それだけではなく正月には正月太りしてダイエットする話があったりと季節感を様々な形で盛り込んだエピソードを展開してきた。
そういう意味では一年目の進級や今回のような卒業式などはまさしく「季節感を出す」と言う意味は含まれているのだろうが、今回の卒業式ではそんな「季節感」だけでなく『アイカツ!』が一年かけてやってきたことを思い出してみると、ここで卒業式を描いたことのシリーズ構成的な意味合いが見えてくる。
『アイカツ!』は一年かけて神崎美月に憧れる少女達がアイドルとして成長していくまでを描いてきた。その中にはグループを結成したり、神崎美月と同じステージに立ったりと様々な出来事があったわけなのだが、一年目の最期に本作が持ってきたのはスターライトクイーンカップ。つまり現スターライトクイーンである神崎美月に挑む!というイベントだった。このイベントの面白かったところは「いちご達がついに神崎美月に挑めるようなアイドルとなった」ということもあるが、スターライトクイーンカップは学園長が言ったように「これまでの集大成」であると同時に「これからの始まり」であった。
だからこそ「通過点」として描かれ、「スターライトクイーン」という王者の地位はそれほど意味があるものして描かれなかった。もちろんトップアイドルであることの証明であるスターライトクイーンであるけれど、それはあくまで「アイドル活動」の中で副産物的に与えられるものであり、それは「なりたい自分に向けて頑張る=セルフプロデュースの精神」の中では意味があるものではなかった。だからこそスターライトクイーンカップは物語の一区切りとして機能し、一年間の集大成を見せつけた星宮いちごと神崎美月は自分の求める「なりたい自分」になるためにそれぞれの道を征く、という筋立てが意味あるものとして描かれる。あくまでスターライトクイーンは、トップアイドルになるということは「結果的になるもの」であって、自分達のなりたいもの、やりたいことはスターライトクイーンの中にはないのだから。
そんな一年目の物語を振り返ってみた時、話の半ばにも関わらず卒業式をやったことというに「季節感を出すため」以外の意味が見えてくる。
それは卒業してもアイドル活動は終わらないということ。
つまり今回の卒業式は「アイドルの側面での一区切り」としてスターライトクイーンカップであったように、「学生の側面での一区切り」として卒業式だったのでは無いだろうか。
そういう意味では我々が視聴者として見てきた半年間で描かれたものは、彼女達がスターライトクイーンカップからの半年間の中で確実に成長してきたという事実と、彼女達はアイドル活動をどんなことがあっても続けていくだろうということの証明だったように見える。
そしてそれは「卒業式」という「学校生活の終わり」がこうして確かに描かれていても、いやいるからこそ「彼女達のアイドル活動はまだまだ続く」という事を強く認識させてくれる。まだ残り半年もの放映期間を残しているからこそ、今ここで「卒業式」と言うイベントによって一年目の終盤を思い返させることで、今後の物語展開に対して「続く」ということの意味を改めて理解させてくれるのである。

一年目の進級イベントもいちご達の半年間を思い出させてくれるようないい物語であったけれど、それ以上の価値がこの卒業式にはあった。残りの半年でどんな物語を見せてくれるのだろうか。そのことが楽しみで仕方がない。

ところで『アイカツ!』ではちょっと珍しいものとして、ライブパートで北大路さくらが感情を見せて来たのには驚いた。すぐに涙を振り払ってパフォーマンスに戻らせることで、さくらのアイドルとしてのプロ意識が見える部分でもあり、彼女の成長もまた感じられた。同時に非常にいい演技を見せてくれたな、と今回のCGスタッフには賞賛を送りたいと強く思った。


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5件のコメント

[C1482]

記事タイトルに関して、アイカツはその辺りに相当拘っていると思うので記事にしてくれて良かったです
ただシリーズ構成の話をすると、ドリアカ4人がユニットになったという後に
ゲームでキャンペーン中のドリームスターが唐突に出てきたかと思えば終わり、
次いでのようにドリアカも卒業式、
今後は美月さんと新アイドル登場、スターライト学園の新入生など、
スターライト学園側でやりたいドラマがドリアカとイマイチ噛み合ってないように思えます
前回と今回のアイカツ記事を書いた水音さんの意見を聞いてみたいです

[C1483]

>>774さん

「スターライト側のドラマとドリアカが噛み合ってない」という件について。
確かにスターライト側のドラマにドリアカ組の混ぜ具合が未だにこなれてないと感じる部分は多々ありますね。
このへんには販促スケジュールの都合やドリアカが二年目から登場したこともあって定着させるために登場させる必要がある、という今後の展望的な事も考えての都合もあるんでしょうけど、ここまで噛み合ってない感じがする、もっと言えばドリアカ組が中心の物語になると非常に練られたシナリオになっているのに、スターライトと共演するシナリオになるとドリアカ組が浮いてしまうのはスターライト側のドラマが一期で描き切られてしまっているからではないかと思いますね。
個々の物語を描き切っちゃって、完成されているからこそ、ドリアカ組のそこまで至って無さが目立つというか。
また一年目と比べると二年目は「主軸となる話がまだ見えない」というのが一つ特徴としてあって、一年目は「神崎美月の背中を追いかけてアイドルとして成長する」という物語が中心に存在していたわけですけど、二年目はそれがない部分が影響しているような気もします。
とはいえまだ半年あるわけですし、神崎美月プロデュースのアイドルなど群像劇構造に持ち込む事で、アイドルとアイドル達が体現する理念の相対化が行われ、それにより「アイドルの理想型とは何か」を突き詰めてくれそうな気もするのです。
そういう意味ではこのスターライト側との噛み合わせの悪さも、残り半年の仕込みでもあり、群像劇構造に持ち込んだ時に「それも個性」と言うところに持って行きたいのかなーとも思うのです。

実際にはどうなるのかは俺はスタッフでもないし、スタッフと直接つながりがあるわけでもないのでわかりませんが(繋がりがあっても聞きませんけど)、一年目でもこの辺りまでは「どこに向かうのか分からなさ」があったわけで、今後の展開についてはあんまり気にしても仕方がない気はしますね。
でも販促スケジュールは一年目より格段に厳しくなってるので、製作現場も大変だなーと同情したりはしてますよ、一応。
  • 2014-04-03
  • 水音
  • URL
  • 編集

[C1484]

前回のドリアカに関する記事も良かったので、その影響からご意見番のような訪ね方になってしまい失礼しました
スターライト側のドラマが描き切れている事、物語の主軸が見えないという指摘は面白いです
個人的にドリアカ組の、スターライトに影響されながらアイドルになっていくドラマを高く評価しているのですが
初期設定の段階でスターライトと同等の実力というのが、目標を通した成長が描けないのがネックになってると思いますね
ドリアカユニット結成、ハッピィアイドルフェスティバル1stDayの回が素晴らしかったために、2ndDayのドリームスターがカットされた事、
そしてこの回のスターライトと並列した卒業式で、販促スケジュール以上にドリアカが設定レベルで扱い辛いのではと思い始めたのですが
少々入れ込みすぎたようで、現時点では途方も無い議論になってしまったようです
今後ともアイカツと、水音さんの記事にも注目しています

[C1487] Re: タイトルなし

個人的にはドリアカサイドのドラマとしては「スターライトと同等の実力を持つけれど、経験値は少ない」というのを活かした組み立て方をしていると思うのです。
例えばいちごとセイラの第二戦ではいちごは負けているのに笑顔になりますが、コレに対してセイラは意味がわからないような表情をします。これはいちごは『アイカツ!』という作品では「敗北」を「次に活かすもの」であり、「それぞれのアイドル活動=自己実現を邪魔しない」というところを踏まえた芝居なんですけど、アイドルとしての経験が浅いセイラにとってはそれは「分からないもの」なんですよ。だから楽屋できいに「勝てたかどうかを聞く」と言うシーンが有ると。
そこからスタートして半年かけてドリアカ組をひとまず経験積ませたわけで、そこから美月サイドのアイドルが出てきて三つ巴の構図になるのはありっちゃありだと思います。スターライト側のメンバーの描写が明らかに減ってるところは由々しき問題だとは思いますけど。
  • 2014-04-10
  • 水音
  • URL
  • 編集

[C1491]

話を自らこじれさせたようなのですが、「季節感を配慮したシリーズ構成」というのには同感ですし、
美月を目指して入ったスターライト中等部を振り返り、高等部になって再び美月が現れるというのは綺麗なんですよね
74話の感想なのに75話の話をしているというのがフェアじゃないというか、マナー違反でした
一方でドリアカが関わった季節感があるイベントと言えばクリスマス・紅白・お正月のうち、
上手かったのはデザイナーとしてのそら・ノエルの誕生日が描かれたクリスマスくらいでしょうか
ドリアカ自体がシリーズ構成的に描きにくい物で、ドリームスターの扱いと卒業式でそれを再確認した事がコメントを書いたきっかけなのですが
ドリアカはドリアカで描いてきたものがあり、 アイカツ=自己表現という文に納得致しました
確かに2期ではスターライト側の描写が減った事の方が問題ですね

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