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『ラブライブ!』二期一話に見る「今しかできないこと」について

『プリンスアニメージュ』で『プリティーリズム・レインボーライブ』の特集があって、その中で菱田正和監督がインタビューを受けていたのだが、プリズムボーイ達全員にヘソについてのデザイン設定があって、その辺を汲み取った菱田監督がプリリズシリーズ全てのプリズムショー演出を手がける京極尚彦に依頼していたと言う話を聞いて、そりゃ「情熱熱風スターライトキッス」のヒロさんのへそチラが色っぽく見えるわぁ、と納得したのだが、冷静に考えれば考えるほどその技術が生かされたのがプリズムボーイだけということに色々間違っている気がしないでもない。
とはいえ『ラブライブ!』の後、京極尚彦監督はプリリズの傍らで『ワルキューレロマンツェ』のEDや絵コンテを切っていたりと仕事も多いみたいだし、6thシングルではミニアニメパートの脚本を京極監督自ら書いていたりと『ラブライブ!』でもいろんなことに挑戦しているわけで、京極尚彦厨ということを自称するほど好きな俺としては特に文句をいうところはないというか。やっぱりあの人、ハッタリの効かせ方と説明のしない具合に関しては頭一つ飛び抜けてるわ。説明しなくても絵で説得力を作れるんだから、あの人の作る作品はいい意味で予想がつかない。

というわけで、「だって可能性、感じたんだ」と言う歌詞で一話を盛り上げられた事もあったし、二期発表後から「二期まで生きてたらやる」と言っていたので、二期でも『ラブライブ!』の各話について気になったことを書いていく事とする。

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まず二期一話について振り返る前に一期の内容をおさらいしてみると、「廃校の危機にある音ノ木坂学院を救うべく結成した高坂穂乃果をリーダーとするスクールアイドルユニット、μ's。しかしスクールアイドルの祭典に参加するために頑張りすぎて倒れた事や音ノ木坂に入学希望する生徒が増えて廃校がなくなった事を受けて、目的を失った穂乃果はアイドル活動を一度はやめてしまうのだが、本当にやりたいことを考えていった結果、再びスクールアイドル活動を始めるのであった」というのが一期の内容であった。こうして振り返ってみると、一期の内容というのは「廃校になってしまう学校を救う」という「今頑張らないといけない!」というものであり、終盤はそんな「今頑張らないといけない!」というものを取り上げた上で「では今自分達は何をしたいのか?」という事を問い直すものだった。
迷惑をかけた事などを理由に一度はアイドルをやめた穂乃果が再びアイドル活動を「やりたい」という結論に至って戻ってくるのはまさに「今彼女にとってやりたいことがそれだった」ということで、だからこそそのことを認めて再び走りだす決意をした穂乃果と「周囲の人間がアシストしていくから!」という園田海未の発言が生きるまとめ方になっていたのだが、そんな一期からダイレクトに繋がる形で幕を開けた二期は穂乃果が生徒会長になっている!と言う驚きの展開から始まる。

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演出的にも大変面白いものを見せてくれ、一話として申し分ない出来だったのだが、その中でも特に素晴らしかったことは「今頑張らないと!」から「今やりたいこと」につなげた一期から、「今しかできない!」ということに繋げた事だろう。
一話では「第二回ラブライブ!が開催されることになったものの、あれだけラブライブ!に固執していた穂乃果はなぜか出場したがらない」ということが描かれた。なぜ穂乃果はラブライブ!に出場したがらないのだろうか。
作中でも「今で十分だと考えている」という説明がされているものの、冷静になって考えてみれば高坂穂乃果にとって、「アイドル活動」は手段であり目的なのだ。そのことは一期の最終話で園田海未相手に語った「「やめるって言ったけど、気持ちは変わらなかった。学校のためとか、ラブライブのためとかじゃなく、私好きなの、歌うのが。それだけは譲れない。だから、ごめんなさい! これからもきっと迷惑をかける。夢中になって誰かが悩んでいることに気づかなかったり、入れ込み過ぎて空回りすると思う。だって私、不器用だもん。でも!追いかけていたいの! 我儘なのはわかるけど、私――!」と言う台詞や南ことりを引き止める時の「「ことりちゃん、ごめん! 私、スクールアイドルやりたいの! ことりちゃんと一緒にやりたいの!」と言うセリフからもうかがい知る事ができる。
つまり彼女にとっては「今のメンバー」で「アイドル活動をすること」という現状で満足できてしまうのだ。なにせやりたかったアイドル活動を続けられるのだから。
生徒会長になって忙しくなったということもあるだろう。しかしそれでもアイドル活動自体はずっと続けてきたのはなぜかと言われれば、このアイドル活動が、仲間と共にするアイドル活動こそが彼女にとって「楽しい今」の形だったからだ。故に「今やりたいこと」という一期で問われたテーマは二期でも継続して描かれていると言えるだろう。
しかし一期で出した結論を反芻して引き延ばしているだけで終わらせるようなスタッフであるかと言われれば、答えは「NO」である。菱田正和監督の弟子筋である京極尚彦監督が、そんな生っちょろいようなことをするわけがなかった!
ここが素晴らしいのだが、『ラブライブ!』では一期で半年間の物語を組み上げてきた。すると二期では残りの半年間を描くというのは自然な流れなのだが、μ'sは学年ごとに三人づつメンバーが居るというスクールアイドルである。つまり三年生が三人もいるのだが、残りの半年を終えてしまうと三年生の彼女達は卒業してしまうのである。
だからこそ「ラブライブ!に出たい!」と言う矢澤にこの叫びは切実なのだ。彼女はアイドル活動がやりたかった人間で、スクールアイドル活動を始めたものの挫折し、紆余曲折あった後にμ'sという共にアイドル活動で笑い合える仲間と出会えた人間だ。
だからこそ第二回ラブライブ!が行われる事に喜ぶし、挑戦したいと思う。たとえ地区大会でぶつかるのが前回優勝であるA-RISEだとしてもだ。
そう、彼女にとっては「今しかない」のである。そしてそれは穂乃果に取っても同じだ。半年間のアイドル活動をただただ続けていくのもいいだろう。それも一つの道であるし、そこそこの満足感は得られるだろう。
しかし彼女達といる「今」は有限なのだ。終りがある「今」なのだ。
だからこそ「今しかない」と言う思いは共有される。「この九人でやれるのは今しかない」。その思いがあるからこそ彼女達は再び走りだす。一度は諦めたラブライブ!という夢に向かって。

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つまりこの一話、「今やりたいこと」と「今しかないということ」を穂乃果とそれ以外で再び描き直した(その中核にいたのが矢澤にこだった)という一話なのである。その点で言えばこの一話は完璧に近いと言っていいだろう。
二期と一期の違い、テーマとしての発展性、歌詞を引用して一期一話と重ね合わせることで意味を成すように計算された物語構成。
演出としてこれでもか!と言わんばかりに様々な演出を盛り込んでいるが、物語自体が骨太だからこそ揺らがない。
だからこの二期の一話は「今頑張らないといけない!=未来が消えてしまう」と言う一期から「今しかない=過去を踏まえての今、そして未来へ繋ぐ」と『今』というこの瞬間を描いた物語である『ラブライブ!』としてこれ以上ない展開の仕方をした事そのものが既に素晴らしい。今がどれだけ満足できようとも、終わりある今だからこそ「今」に美しい幕引きを望んでしまうのもまた当然のことなのだから。

そんな二期の一話であるが、演出としては様々な趣向が凝らされていて見ているだけで楽しませてくれるような映像になっているように見えた。その中でもとりわけ目を引くのはやはりミュージカル演出だろう。

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『もぎゅっと"love"で接近中!』を彷彿とさせる穂乃果のマイク投げパフォーマンスから始まる一連のミュージカル演出であるが、あのミュージカル演出が面白いことは何かというとミュージカル演出自体のコミカルさも去ることながら、一期から二期の間に必要な情報を全て盛り込んだ歌とダンスになっていることに尽きる。
ミュージカルの演出というものをよくよく考えて見れば登場人物の心情や置かれている状況を歌やダンスで説明してしまうということなのだが、『ラブライブ!』二期一話のアバンタイトルで行われているこの演出はまさにそんな「ミュージカル」の演出そのものだ。
なぜミュージカル仕立てにしたのかというと、説明しなければ多いことがあまりにも多かったからだろう。この記事でも一言で済ませた「高坂穂乃果が新しい生徒会長になった」と言う事実だけれど、実際に生徒会長になった穂乃果の心情や苦労話などを映像に込めるというのは尺的にも厳しいものがある。二期一話ではOPそのものをカットして、OPをEDで流すということをやって尺を確保しているわけなのだが、それでも尺が足りない。台詞で説明しようにも、その台詞というのは不自然さがどうしても出てしまう。なにせリアルタイムで経験したことであるし、当事者達なのだから、台詞で説明しようとしてもそれは厳しいといえるだろう。台詞は登場人物達が何気なく言うものであるのだから。
だからこそミュージカル演出なのだ。
先程も述べたようにミュージカルの演出はキャラクターの心情や状況を歌とダンスで目と耳を楽しませながら理解させると言う演出だ。二期一話で意図的に盛り込まれたこのミュージカル演出はまさに「心情と状況を歌とダンスで楽しませる」。だから「穂乃果が生徒会長に!」ということの驚きがありながらも、その中にある苦労話がすんなり入ってくるし、一話終盤における「今は何をやるべきか分からなくなる時がある」という台詞も意味を成す。
もちろんそこを理解させるために、ミュージカル演出が終わり、生徒会室に戻ってきた時に海未の口を借りて「生徒会長の仕事はたくさんある」ということを改めて説明させている。

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これにより「やらなければならないことが多い」というところに繋がるようにしている辺りは実にそつがない。
また一期からちょこちょこ見られた決断や覚悟を語る時に鼻筋が通ったデザインになる演出も、二期では発展した形で用いられているところも興味深い。一期では主に穂乃果に見られた演出であるけれど、二期ではにこで用いられていた。
そしてにこで用いられた時、その表情付けが大人びた表情になっているのである。

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一期でも同様の演出は見られ、とりわけ覚悟や決意を語る時に使われることが多かった事を考えるといかににこの決意が真に迫ったものだったかがよく分かる。本心からの叫びであるからこそ、演出においてもそれを本物に見せようとしている。
この演出は一話を語る上で抑えておきたい部分だ。

そして穂乃果の「雨、やめー!」と叫んだ後、本当に雨が止む演出は面白い。
一期の頃から「作り物っぽさ」というのは随所で見られたし、二期でも海未が穂乃果にやらなければならないことを語った時に海未が指をさすところだけ写していて肝心の「やらなければならないこと」を描写してなかったり、そもそもミュージカルで全て説明してしまう事自体がありえないものなので、そういう点からするとこれらの演出として一貫したものだ。
したがってこの「雨、やめー!」と穂乃果が叫ぶと本当に雨がやんでしまう演出もまた、そういう「作り物っぽさ」を強調するものだといえる。

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「雨、やめー!!」と叫ぶと(上)、本当に止む(下)


しかしそれだけかと言われるとそうではない。この演出で大事なのはこのハッタリを活かして「人間その気になればなんだって出来るよ! ラブライブ!に出るだけじゃ勿体無い!この九人で残せる最高の結果、優勝を目指そう!」という穂乃果の自信あふれる決意の台詞を強調する効果を生み出しているところだ。
「雨、やめー!と叫んだら雨が止んだ」という事をもって「それだけの事をやり遂げる自信がある」という決意を強調させているのがあの演出なのだ。同時に「それってあり得ないことだよね」という事を言わせておくことで、そのあり得なさが際立つ。だからこそあの時の「ラブライブ!に出場する」ということを再び決意する流れが「この子たちならやれそう」と感じさせる映像になるのである。



しかしまあ、一話始まる前はどんな映像になるのかと思ってみれば、こうして面白い映像になっていて非常に満足度が高い一話だった。京極監督の師匠である菱田正和監督の『プリティーリズム』シリーズも、有終の美を飾った『オーロラドリーム』から『ディアマイフューチャー』になった時に様々な趣向を凝らして演出していたけれど、『ラブライブ!』も一期と二期を比較してみると同じような挑戦をしているように思える。
特に脚本のテンションのアップダウンの激しさと主人公である穂乃果とみあの決断の美しさを際だたせる点ではどちらも同じで、そのあたりがたまらなく面白い。『ディアマイフューチャー』が好きすぎる人間だけれど、師匠と弟子、やってる作品は違うのにこうまで似てくるというのが実に面白い。
とはいえ、『ディアマイフューチャー』のプリリズらしさがラブライブ!らしさに置き換わっただけでなく、『ラブライブ!』だからこそ出来る二期の一話である辺りは留意しておきたいところだ。
そんなわけで。
『ラブライブ!』二期もまた書いていきたいと思うので一つ、よろしくお願いします。


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2件のコメント

[C1486] 始まりましたね

エントリの量としてはかなりの文字量と毎度感じますが、
今回も楽しく読めました。ありがとうございました。

今回の2期1話、やはり、というかとうとう卒業が出てしまったなあ、というのがまず一つと、
穂乃果の背中を押す結果につながった”ススメ~”のイントロ合唱で泣きそうになりました。

今回のエントリを読み、「ああ確かに3年の時ってどんな活動してても、そう思うところあるよな」って
3年生組に感情移入できます。

あと、もうひとつ思ったのは、どうしたらいいか、先行き不安で全方位に体当たり状態だった
穂乃果のエネルギーが1期1話だったように今は思えます。
第1話EDでことりから始まって、口々に「どうしたらいいの?」と
不安を吐露する。けれども、それでも何かやる!と自分や一緒に動く仲間を鼓舞する意味で、
”ススメ~”の歌詞が生きてくる側面も見えてこないか?と
このエントリを見てそんなことを思いついた次第です。

今後とも楽しみにしてます。貴重なスペースありがとうございました。

[C1490] Re: 始まりましたね

二期一話は一期のおさらいも含んでますが、一期一話に対して逆の構図をやっている部分が目立ちますね。
穂乃果を追いかけるメンバーとか、ご指摘されている「だって可能性感じたんだ」を一期一話で引用して回答とした穂乃果に対して使うことで歌詞を活かすところとか。それだけじゃなくて構成レベルで見てもミュージカル演出をアバンタイトルで使うとか色々ネタはあると思うんですけど、最終的に取りまとめるのが「終わりがあるから今最高の結果を出そう」と言う結論だったり、「雨、やめー!」と叫べば本当に止んでしまう部分から出てくる穂乃果の自身の現れだったりする。
特筆すべきはこれだけ詰め込んでいるのに、伝えなければならないものは大体伝えきっているところで、この辺は構成が上手いと感じます。一期の頃から持って行きたい方向から逆算的にシリーズ構成している部分はあるので、二期が最終的にどこに持って行きたいのか。それを楽しみにしています。
  • 2014-04-11
  • 水音
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