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『ラブライブ!』二期九話と「皆で叶える物語」が作り上げる最高のライブについて

『ラブライブ!』九話が予想通り、いや予想以上に素晴らしい出来だった。
八話の話の流れや最後に呟いた言葉から考えると、今回『Snow halation』が来ることは誰でも予想がつく。
しかし物語としてそのライブパートへどう接続するのかは予告からは伺えず、どういう話の流れを作るのかと八話から今回の九話までの間、ずっと考えていたのだが、京極尚彦と花田十輝はファンの中でも人気が高い楽曲を最高に盛り上がる物語と合わせて見せてくれた。
そんな『ラブライブ!』二期九話はラブライブ!最終予選当日の朝から幕を開ける。
ラブライブ!最終予選に向けて練習に励んできたμ's。いよいよ始まる最終予選に気合が入る九人だったが、最終予選当日は音ノ木坂学院の学校案内会と重なっており、生徒会である穂乃果達は後から最終予選会場に向かうこととなった。朝から降り続く雪におり一時間の遅延があったもののつつがなく学校案内会を終えた穂乃果達三人は改めて最終予選へ向かおうとするのだが、朝から降り続いた雪はそんな学校案内会が行われている間に強さを増し、彼女達が会場に向かうための道を閉ざしてしまうのだった。
今回の九話が素晴らしかった点は「音ノ木坂学院のために頑張り続けてきたμ'sがどうしようもない危機に見舞われた時、彼女達に勇気づけられてきた名も無き一般生徒=ファンがステージへの道を作っていく」というファンとアイドルの相互関係を描いたことだ。
ファンとアイドルの相互関係というのは「アイドルがファンに幸福感を与えているように、アイドルもまたファンの応援によってより頑張ることができる」と言う関係性のことだ。この相互関係は「アイドル物」と言うジャンルが持つテーマの一つでもあって、京極尚彦氏が副監督を務めた『プリティーリズム・オーロラドリーム』では誰もが憧れる夢の様な存在となったプリズムスター(=題材となっている架空スポーツ、プリズムショーをやる存在)が、ファンの応援を受けてオーロラライジング・ドリームという全ての人を笑顔にするプリズムジャンプを見せる流れがあったし、『AKB0048』のファンの合唱によって地面に叩きつけられたアイドルが立ち上がっていた。アイドル物としては不朽の名作だろう『アイドル伝説えり子』では、トップアイドルとなったものの「アイドルとしての自分」と素の自分が乖離していくことに思い悩み失踪したえり子が、再びステージに舞い戻ってきたのはファンの存在がいたからだ。
また今年映画が公開され、来年には姉妹作品である『シンデレラガールズ』のアニメ化が決定した『アイドルマスター』では18話の秋月律子回にて「あまり売れないまま引退することになった律子のことを覚えていたファンの応援を受け、当時の持ち歌だった楽曲を歌う」と言う流れがあり、こうして見ていくと「アイドル」はアイドル自身だけでなく常にファンと共に描かれてきた題材であることが伺える。
そしてそのいずれもが「ファンとアイドルが相互に作用しあうことで、より素晴らしいものを見せられる」いう流れを踏まえている。(余談だが、この辺りをギミックとして組み込んだのが『アイカツ!』の星座アピールで、この星座アピールはファンのボルテージが高まらないと使用することが出来ないスペシャルアピールとなっている)
そして今回の『ラブライブ!』二期九話はまさしくそうしたファンとアイドルの相互関係を描いている。
朝から降り続いた雪により交通網が麻痺してしまい、会場に向かえなくなった穂乃果、ことり、海未。会場で待っている六人のために、そしてここまで練習してきた自分達のために、雪が降りしきる中会場へ向かうために一歩づつ足を進めていく。

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しかし雪は思った以上に強く、もうダメかと心が折れそうになる三人に手を差し伸べたのは音ノ木坂学院全ての生徒達=ファンだった。
この生徒達が集まったのは他でもないμ'sのためなのだが、なぜ彼女達がμ'sのために力を貸してくれるのだろうか。
それは音ノ木坂学院が廃校の危機に立たされた時に立ち上がり、そんな廃校を一時的とはいえ阻止してくれるほどの頑張りを見せてくれた「音ノ木坂学院のスクールアイドル」に熱い「何か」をもらっていたからだ。
μ'sは自分達がやりたいからとスクールアイドル活動を続けてきたが、そのそもそもの発端は廃校になってしまう音ノ木坂学院を救うためだった。彼女達はいつだって音ノ木坂学院のために頑張っていたし、今回最終予選があるにも関わらず学校案内会に出席してくれていたのも全て音ノ木坂学院のためだ。
そんな音ノ木坂学院が誇るスクールアイドルが、ラブライブ!というステージに立つために頑張ってきた「九人の仲間達」がどうしようもないようなピンチで道が閉ざされてしまっている。
そこで手を差し伸べ、彼女達の道を切り開き、ステージへと導いていく「十人目」。それが彼女達、名も無き一般生徒なのだ。

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最初は「廃校になるのが嫌だ」というところから始まったμ'sだが、その内に秘めた熱い想いは多くの人を熱くさせていった。
それは仲間と言う形で加入することもあればファーストライブの時に助けてくれた三人のような存在の時もあった。しかしその熱い思いは周囲に伝わっていき、いつしか最初は誰もいなかった講堂を満員にすることができるようになった。その熱は第一回ラブライブ!の覇者であるA-RISEをして「最大のライバル」とまで言わしめるほどとなった。
熱い思いは人へと伝わり、その想いはその人の中に何かを生み出していく。
その熱い想いがあったからこそ彼女達はμ'sのために立ち上がってくれる。自分達の仲間でもあり、自分達を熱くさせた存在だからこそ、彼女達のために自分たちができる方法でステージまでの道を切り開いてくれる。
応援とともに描写されるのは名も無き一般生徒ではない。彼女達に熱い何かを貰ったファンの姿だ。そしてそれは『ラブライブ!』というコンテンツをここまで応援してきた全てのファンの姿でもある。
そのことはどうにか仲間の元へたどり着くことが出来た穂乃果達が一般生徒達にお礼をいうシーンでもよく分かる。
このお礼を言う際に一般生徒達は手前に、穂乃果達は画面奥に配置されている他、一般生徒達は誰一人顔が写されない。

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この一般生徒達を手前に配置するレイアウトと顔が描写されない事で視聴者と一般生徒は同一化される。
そのことにより穂乃果の「辿りつけたことへのお礼」は作中のファンへのお礼であるとともに、ここまで応援してくれたファンに対するお礼としての意味を与えられている。
この点は『ラブライブ!』と言うコンテンツが「作中で描かれるファンと現実のファンが同一化されている」という構造を持つ事を意識しているからこそ、あえて強調するような形でやっているのだろう。
だからこそ一般生徒達が切り開いた道がステージへと三人を連れて行く事、そしてそれに対する「ありがとう」の一言が胸を打つのである。
そして始まる最終予選のステージとこのために製作された『Snow halation』はμ's初のラブソングにして皆で言葉を持ち寄って作り上げられたこの九人による一曲はμ'sをより輝かせる。
このステージは九人が目指したものであるとともにファンの応援と導きがあったからこそのものだ。
だからこそファンへの解答として「アイドルらしく」ステージで答えようとステージ上で踊る彼女達の姿はとても強い輝きを放っているのだろう。

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「たくさんのありがとうを込めて歌にしました。応援してくれた人、助けてくれた人がいてくれたおかげで私達は今、ここに立っています! だからこれは皆で作った曲です!」

そして今回の最大の山場である『Snow halation』も素晴らしい出来だった。
アニメ版『ラブライブ!』のライブアニメは基本的に新曲ばかりで構成されており、二期でも『ユメノトビラ』『Love wing bell』『Dancing stars on me!』の三曲が使用されているが、今回のライブアニメでは既存楽曲である『Snow halation』が用いられている。
この『Snow halation』にはシングルに付属したMV版が存在しているのだが、そのMV版『Snow halation』において最も特徴的なのは最後のサビ直前のズームアウトだろう。

MV版Snow halation

あのズームアウトを見た時には引き込まれるような感覚を覚えたのだが、なぜあの映像を見た時に「引き込まれるような感覚」を覚えるのだろうか。
それはあのズームアウトが穂乃果のバストアップショットからの流れで見せられるからだ。
あのバストアップショットは穂乃果の表情を見せるために使われているが、その表情を見せた後に一気にカメラをズームアウト(つまり実際の映像の動きとしては一気に後ろに引かれる)される事で、視聴している人間の視点としては画面中央に位置する穂乃果達から外れていないのに彼女達は小さくなっていく。そして小さくなるからこそ視聴者は視点として彼女達により注目してしまう。
このカメラの実際の動き(後ろに引く動き)と視聴者の注目(つまりより注意深く見ようとして前のめりになる動き)は相反する動き方をしている。その二つの相反する動きが組み合わされる事で生まれるのがあの「引き込まれる」と言う感覚なのだ。
そしてそれは街路樹の白で灯っていた電飾が一瞬消え、手前から奥に向かってついていくという映像面での動きが合わさることで、その演出効果はより強められている。
今回のライブパートでは3DBGに『プリティーリズム』シリーズで3DCGディレクターを務めた乙部善弘氏が参加しており、『プリティーリズム』シリーズで魅力的な映像を作ってきた乙部氏だからこそのステージとなっているのだが、今回の『Snow halation』では最後のサビ直前ではMV版でも見られたズームアウトの演出が残されている。
しかし演者を正面から捉えることでその引き込まれる効果を最大限発揮したMV版に対して、今回は演者を正面に捉えながらもカメラの動き自体は別の動き方をしておりMV版の「引き込まれる」演出効果は生まれていない。
しかしズームアウトすることでカメラは画面奥から手前へとステージ上に存在するゲートをくぐり抜けていくような形で移動する。そしてこのゲートをくぐり抜ける動きと連動してゲートに備え付けられた電飾がオレンジに染まっていく。

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この動きは『ラブライブ!』が行ってきた全てのライブで行われた『Snow halation』の「オレンジのサイリウムが一斉に灯る」と言うファンが作り上げた演出を踏まえた上でのライブ演出だろう。オレンジの海ではなく、そびえ立つゲートにした事は楽曲のタイトルである「Snow」、つまり「雪」を強く意識させてくれる。
これはMVとは違うライブだからこそのものだ。
このライブ演出を手がけたのは『僕らのLive 君とのLife』から『ラブライブ!』に参加し、『Snow halation』以降は全ての監督を担当してきた京極尚彦だが、一期八話のライブ的リメイク版『僕らのLive 君とのLife』がそうだったように京極尚彦は既存曲のライブ的リメイクを行う際には「その楽曲がファンにとってどういう立ち位置で、どれだけ愛されているか」という事が強く意識されているように見える。
特に今回の『Snow halation』のライブリメイクではその「楽曲の愛され具合」に加えて、「ファンの存在がμ'sをここまで連れてきた」ということが強く意識されているような映像となっている。それは最後のサビの穂乃果のソロからオレンジに灯っていくゲートやライブ前のMCの「皆が連れてきてくれた」という言葉からも読み取れる事だが、今回の『Snow halation』ではその強められている部分が映像として魅力的だ。
この『Snow halation』はそんな「ファンの想いを汲み取ろうとするスタッフの熱意」があればこそ生み出されたライブアニメなのではないだろうか。



思えばこの二期九話は二月に行われたライブの様子をそのまま作品に反映したかのような物語だ。
大雪により電車が麻痺した事。そうした災害に見舞われてもなおさいたまスーパーアリーナという国内でも最大規模の会場は多くのファンに埋め尽くされた事。そして『Snow halation』で会場全体がオレンジのサイリウムの海に染まったこと。
思い出せば思い出すほど、今回は二月のライブと大雪に重なるものが多い。
だからこそそうした状況でも駆けつけたファンの存在であり、そしてそんな悪天候の中で最高のパフォーマンスを見せてくれた九人の姿がまぶたに焼き付いて離れないわけなのだが、今回はそんな悪天候の中で駆けつけたファンの存在を知っているからこそ、あえてなぞらえる事により今まで応援してくれたファンに対するメッセージとなっているようにも見えるのだ。
その真実は知る由もないが何にしても今回は傑作であることだけは間違いない。
μ'sが熱いファンによってステージに立っていることを強く再確認させてくれる今回のこの一話。まずは一人で見ていただきたいところである。


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4件のコメント

[C1512]

さすが水音さん、やはりファンの存在に着目されましたね。

なんかもうすごくよかったというか
2期1話とOPで提示された
「限られた時間だからこそアイドルとして最大限輝こう」と
「奇跡」というキーワードに対して
綺麗な答えを見せてもらった感じです。

個人的に思い入れがなかったスノハレを
ファンの想いを上乗せして「奇跡の歌」にした作劇も見事だと思いましたね。
これならA-RISEに勝てても不思議じゃないと思わせてくれました(勝てるとは言ってない)

世間的には賛否両論ですが吹雪のくだりは
京極監督のハッタリを重視する作家性が表れてて
これぞアニメ版ラブライブ!の醍醐味とすら思いました。

あと4話でどうやってこれを越える奇跡を見せてくれるのか楽しみです。

映像面での分析も毎回勉強になります。
残り4話の記事も楽しみにしていますね。

[C1513]

MADの中にPVのワンシーンがあって、穂乃果が街中を走っているところもありましたねー。

9話見ながら、「2月のライブみたいじゃないか!」とやはり思いました。

音乃木坂の生徒が全員道を作って……ラブライブ!というコンテンツのコンセプトから
やっぱり出場→優勝という流れには是非行って欲しいですが……

次が楽しみで仕方ないです。
  • 2014-06-06
  • sbjrt777
  • URL
  • 編集

[C1514]

9話、自分はとても良かったと感じました。
しかし視聴者間では温度差が激しいみたいですね。
「これが好きになれないならファンじゃない」とまで発言する気は毛頭もありませんが、
これは『作中で描かれるファンと現実のファンが同一化されている」という構造』を強調した結果なのでしょうか。
ファンである自分にとって9話はとても魅力的な回であり、その魅力はこの構造が生み出した効果だと思いますが、
地上波放送しているアニメとはいったい誰に向けて発信しているのかを考えさせられる回でもありました。

6話の返信読みました。
ありがとうございました。
  • 2014-06-08
  • 色々あってコメント消した人
  • URL
  • 編集

[C1530]

同人誌作ってて返信する時間がなかった者です。
全部終わったので返信してます。

>>czさん

「スノハレがくる」ということは視聴者全てが理解している中で、そこに接続した上で「奇跡」と感じさせる脚本を書き上げてきた花田十輝と、ハッタリを効かせる京極尚彦の作風が合わさったからこその九話だと思いますねー。
この脚本を書き上げたのがSSAのライブ前というのがまた神がかっているなーと。

>>sbjrt777さん

「A-RISEに勝つ」ではなくて「皆のために」という着地のさせ方をしているのはアイドルとしての成熟を感じさせる部分でもありますね。

>>1514さん

どちらかというと京極監督や花田十輝のハッタリと伝えたいテーマ、感情優先のドラマ構成を重視する作風を受け入れられるかどうかかなーという気がします。ああいうのってリアリズムとはかけ離れているものですし。

  • 2014-07-20
  • 水音
  • URL
  • 編集

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