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『WIXOSS』に見る「自己犠牲」の友情による否定について

何だかんだで今年の『遊戯王』はまじめに見ているのだが、『GX』以降のシリーズでここまでちゃんと序盤から核心に迫るような話を組んで展開してきたのは始めてなんじゃないだろうか。今までのシリーズは最低でも二年以上は続く関係で、一クール目などは物語の核心となる要素は一切明かされずに伏線をばらまくのみにとどめてガッツリ話に絡んでくることは無かったのだが、今回のシリーズは一クール目からガンガン話に絡んできている。
ペンデュラム召喚の謎や主人公と同じ顔をしたエクシーズ使い、失踪した父親などなど今回の『遊戯王』は前期以上に面白い。「最終的に卒業すれば話として体裁が整う」と言う意味ではかなり自由な話の展開ができた『GX』、物語としては面白かったもののスロースターターだった『5D's』、主人公がステップアップしていくまでに比重をおいていた『ZEXAL』と比較した時、今回の『ARK-V』の物語として序盤から重要な話を組み上げていく姿勢はかなり面白い。
また今までの主人公と比較して、今作の主人公は年齢相応の精神であることがちゃんと物語の面で生かされているのは好感が持てるのだが、しかし一ターンキルばっかりだな今作。すげー面白いのは認めるけど。



今期でも一、二を争うほどの話題作、『selector infected WIXOSS』が無事に放送終了を迎えた。
今回放送終了したのは物語全体の前半部分に当たる。つまり最近では珍しくも何とも無くなった分割二クール形式なわけだが、そのため今回の前半部分だけではこの物語の核心に迫る部分は明かされていない。肝心な部分は2014年秋から放送予定の第二期『selector spread WIXOSS』にそれらは全て持ち越されたのだが、「infected=感染」の名を冠する一期は間違いなく極普通の少女達がWIXOSSに、そしてセレクターバトルに「感染」していく物語だった。
「特別なルリグを持つ少女=セレクターはセレクター同士の戦いに勝ち続けることで、どんな願いでも叶えられる夢幻少女になることができる」という都市伝説が少女達の間では信じられていた。友達作りのために『WIXOSS』を兄から教えてもらったるう子はいつしかそのセレクターバトル、そしてWIXOSSに夢中になっていく――というあらすじ通り、本作では『WIXOSS』と言うゲームそのものではなく『WIXOSS』を中心としたセレクターバトルに物語の焦点が置かれている。だからこそカードゲーム自体の解説は公式サイトのコラムに丸投げされており、「『WIXOSS』と言うゲームそのものを知らずとも楽しめる」という「一個の作品」として完結されているのだが、この作品の最もコアになる部分は『WIXOSS』によって行われるセレクターバトルだろう。
このセレクターバトルの面白いところは主人公であるるう子とその対となる存在であるイオナ以外の全員が「夢幻少女にならなくては叶えられない願い」を抱えていることだろう。るう子と後に友人になる遊月には「双子の弟と恋人になりたい」という願いがあるし、友達がいない一衣は「友達がほしい」と言う願いを抱えていた。これらは全て当価値として扱われおり、だからこそセレクターバトルでは「願いを叶えたい者同士の真剣勝負」が展開される。その「真剣勝負」の魅力を含めて『WIXOSS』にハマっていったのがるう子でありその対となる存在であるイオナだが、このセレクターバトルで三回負けた人間は願いが反転してしまうのだ。
友達がほしいと願った一衣は二度と友達ができない体となり、イオナを蹴落とそうとした晶は顔に癒えない傷を抱えることとなってしまう。だからこそ面白いのは「負けられない」ことからくるセレクター達の必死さや叶えたい願いに対する強い想いであるし、勝つ事に生じる「敗者の願いを踏みにじっていくことへの罪悪感」だ。
ここには思春期の少女や少年の感情のぶつかり合いや自分を傷つけてしまうほどの不器用なまでの愚直さの表現において、唯一無二のスキルを持つ岡田麿里の魅力が光るところだが、そんな岡田麿里がルリグとセレクターの関係性を「プレイヤーとパートナー」以上のものへと変えたのが中盤において描かれた「夢幻少女となった遊月がルリグとなってしまい、遊月のルリグである花代が遊月になってしまう」「願いは肉体を得たルリグ達によって叶えられる」という展開だろう。
あの展開はそれ自体も衝撃の展開ではあるものの、あの入れ替わりが起きた瞬間、ルリグ達が元セレクターであることが明言されたことだろう。それはつまり本作においてパートナーとなってきたルリグ達は全て「願いを叶えようと必死に戦ってきたものの、ルリグにされてしまった存在」であり、セレクターとルリグは同一の存在=願いを叶えたいと思った普通の少女達であるということにほかならない。
思い返してみれば一衣が三回負けて願いが反転した時、花代が罰が悪そうな顔をしてそのことを説明したのも「セレクターバトルに巻き込んだ」という罪悪感以上に「遊月がセレクターバトルを降りる」という可能性を考慮したからだろうし、花代が遊月達に話した「反転された願いは夢幻少女になった誰かの願いでもキャンセルできない」という嘘のルールもルリグが願いを叶えると言っても超常的な能力が発揮されるわけではない以上、「普通の少女が必死にやることで叶えられる願いしか叶えられない」という設定から考えれば、普通の少女では無理なオールキャンセルの事を警戒したからこその嘘だったのだろう。
その辺りを考えてみると本作ではセレクター達もルリグ達も互いにブラフをかけあっているようなものであり、セレクターバトルの当事者達ですら真実のルールを把握していないのだ。夢幻少女になるための条件はもとより、「叶えられる願いの制限」などは「明かされて始めて理解できる真実のルール」だといえ、そんな「謎=真実のルールが明かされる度に次の謎が生まれていく」という物語展開の仕方は視聴者を「引き込ませる」。その「引きこませる物語作り」が本作が注目された理由であり、魅力的な部分なのだろう。
そしてこの衝撃の展開があったからこそ面白いのは「るう子がオールキャンセルを願ったとしても、そんなるう子のルリグであるタマが同意しなければ願いが叶えられない」ということ。つまり「願っているのはセレクターなのに、その願いの主導権をルリグが握っている」という構図が非常に面白い。そんな構図があるからこそ、イオナが主催したWIXOSSトーナメントでの話の焦点はそんな「るう子の願いをタマが聞いてくれるのかどうか」というところに絞られるのだが、第一期で描かれたのは「タマはその願いを受け入れない」ということだった。
ここに面白さがあるのはタマは「オールキャンセル」というるう子の願いには同意しているものの、「るう子がルリグになる自己犠牲的展開による救済」が否定されているからだ。
本作で描かれてきたのは普通の少女達が願いを叶えるために必死で戦い、傷ついてきた姿だった。セレクターはもとより、ルリグ達もまた願いを叶えるために戦ってきたもののルリグにされてしまった普通の少女達だった。そんなセレクターバトルだからこそ、るう子はオールキャンセルを、「全てのルリグを解放し人間に戻す」という願いを生み出すのだが、「セレクターの願いはルリグが叶える」という設定がある以上、そんなるう子の願いを叶えるためには「普通ではない」タマの力を借りるしかない。しかしそれは「普通の少女」であるるう子を犠牲にしてしまうことにほかならない。
「それしかない」と理解していてもそれに納得できるかどうかは別の問題だ。近年だと『魔法少女まどか☆マギカ』が自己犠牲に依る救済を描いたが、『劇場版』ではその自己犠牲的な救済をよしとはしない人間によって大きく世界は改変されることとなった。
本作『WIXOSS』はそんな世界改変までには至らないものの、るう子のルリグであるタマはるう子の願いを否定すると理解していてもそれでも彼女をルリグにしないように行動する。ここに宿るのは「自己犠牲的な救済」であるが、同時にタマのるう子に対する唯一無二の友情も存在している。大切だからこそ自己犠牲に依る救済をよしとはしない展開とルリグ側が主導権を握っている構図は非常に上手く噛み合っていると言え、タマのるう子に対する思いの強さが強調されているところだろう。
そして敗北したイオナの願いは物語を第二期へと繋ぐ。描写を見る限りではイオナはるう子のルリグとなっているし、第二期の予告では晶が元通りになっている点など一期の展開を踏まえてないような流れが見受けられる。しかしinfected=感染から始まった物語はspread=拡大していく。
そのこととイオナのキャラクター性を考えてみた時、第二期で描かれるのはおそらくセレクターバトルが認知された世界だろう。それは「何かを犠牲にしてまでも叶えたい願い」に感染していく人々を描いた一期から「広がった後」の世界だ。
果たしてどういう顛末をたどるのか。そしてセレクターバトルの真実とは。
物語はまだ半ばを迎えたばかり。2014年より放送開始予定の第二期に期待である。


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