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『プリパラ』一話に見るコンプレックスの魅力化とプリパラへと導く道について

リメイク版『セーラームーン』。発表当初から三石琴乃だけ残してあとは一新というやり方には違和感があったし、三石琴乃の太い声と今回のキャラデザや美術周りから感じ取れる細い線で原作に寄せた作風とは水と油で合わないだろうなーと予想していたら、案の定相性が悪くて、この怒りは果たしてどこにぶつけたらいいのだろうか。
セーラームーンは三石琴乃しかいないのは理解できるし、三石琴乃が旧『セーラームーン』の終盤に参加できなかったことに心残りがあるのは理解しているが、物語だけでなくデザイン面でも原作の方向に寄せると言うことが決まった時、セーラームーンには三石琴乃しかいなくとも、三石琴乃と言う声優のその太い声質は相性が悪かろうということは理解できたはずだ。
結果として今回放送された『セーラームーン』は細い線が多い作画をちゃんと動かしていたり、原作の表現を苦労して拾っていたりと細部の演出については見どころになっていながらも一話の中心人物である月野うさぎとその声優である三石琴乃に関してはミスマッチと言う印象がぬぐいきれず、俺は「頑張っている」以上の評価を与えられずにいる。
というか、そもそもこのリメイクは「セーラームーンを原作に忠実に一から再構成する」と言う企画である以上、許されているのは「全員続投」か「全員変更」かのどちらかしかなかったはずで、なぜここまで中途半端な事をやったのかと理解に苦しむ。
そこ以外については「十万人を捌き切れずに止まりまくるニコニコ生放送」とか外部要因はあれども、内容は面白かっただけにどうなのだろうかこれ。放送が終わった後も母親を三石琴乃にして、うさぎ本人は別の声優を当てた方が面白かったんじゃねぇかなぁ。



『プリパラ』一話が面白かった。
2011年の『オーロラドリーム』から2013年の『レインボーライブ』まで続いた『プリティーリズム』シリーズの後継作として放送開始された『プリパラ』だが、主要なスタッフは『プリティーリズム』から一新されている。監督は『探偵オペラミルキィホームズ』や『おねがいマイメロディ』などを手がけた森脇真琴だし、脚本家は土屋理敬だ。
『プリティーリズム』と関係があるのは『プリティーリズム』でCGディレクターを努め、本作でもCGディレクターとして関わっている乙部善弘氏と音響監督である長崎行男氏、『プリティーリズム』で監督を務めた菱田正和氏(本作ではライブアニメ演出担当)ぐらいのもので、一話が放送されるまでは「『プリティーリズム』のテーマを継承する」や「『プリティーリズム』の後継作」という要素ばかりが取り上げられていた。「はたしてどの程度『プリティーリズム』を継承しているのか」という事が気になっていたのだが、いざ一話を視聴してみるとその心配は杞憂なものだった。
『プリパラ』の一話が面白かったのは「真中らぁら」の視点から「女の子の憧れであるプリパラの世界へと一歩踏み出していく」ということが丁寧に描かれているからだ。
『プリパラ』一話が始まって見せられるのは『プリパラ』世界における伝説のアイドルグループのライブ映像だが、そんなアイドルグループの存在を踏まえた上でらぁらとその友人との会話によって「プリパラ」が作中世界においてどの程度の位置づけなのかという事が描き出されている。
「題材になっているものの立ち位置」というものは作品を構成する上でとても大事なもので、『ラブライブ!』では「スクールアイドル=学校単位で行われる自主的なアイドル」を早期に出しているし、そのスクールアイドルがどれだけ作中世界の人間に認知されているかどうかは一話の中で提示されている。
また『ハピネスチャージプリキュア』でもあの世界における「プリキュア」というものは世界規模のニュースに登場するようなヒーロー的存在であることは一話の段階で提示されているし、『プリパラ』の三十分前の時間に放送されている『レディジュエルペット』でも「レディジュエル」は「誰もが憧れる存在」で、「学校で勉強してなるもの」として描写されているのだが、『プリパラ』でもらぁら達の会話によって「プリパラに行く事=アイドルとなる事は作中世界の女の子達の憧れ」ということや「作中世界におけるプリパラの位置づけ」も丁寧に描写されているのだが、『プリパラ』が良かったのはそんな「作中におけるプリパラの位置づけ」を踏まえた上で「学校単位でのプリパラの扱い」という形で真中らぁらの身近な問題へと落としこんでいるところだろう。
身近な問題へと落とし込まれたことで、「プリパラ」は「憧れ」から「身近ながらもちょっと遠い存在」というようにニュアンスの変化を起こしているのだが、その変化したニュアンスは「多くの人間が持っている中でプリチケを持たない」という真中らぁら自身にも当てはまる。
この変化した「身近ながらも遠い存在」というニュアンスがあるからこそみれぃの落し物を届けるべく飛び込んだプリズムストーンでプリチケを手に入れる流れが綺麗に見える。「身近でも遠い存在」ではあったものが「憧れのチケット」が手に入った事で「身近な存在」へと変わっているのである。この展開が実に気持ちいい。
また真中らぁらが憧れのプリパラの世界をみれぃを探して歩いて行く中で、らぁらがちゃんとプリパラ世界の魅力に魅せられていくようなロードマップが敷かれていることがとても面白い。
元はみれぃが計算してやったことではあるものの、らぁらは来訪者としてプリパラ世界を歩いて行くことでその世界の面白さが出てきているのだが、みれぃに誘われるがままにライブステージに向かうこととなったらぁらが面白いのは来訪者から当事者への変化していることで、その変化が冒頭から描写されてきた「大きな声」のコンプレックス化とその克服する展開へと繋がっている。
この「大きな声」と言うコンプレックスは冒頭から「真中らぁら」と言う少女を構成する要素として大事に描写されてきている。母親と喧嘩している姿もそうだし、一話の中でも何度と無く大きな声の持ち主として描写されているのだが、そんな描写があるからこそ「コンプレックス」としてエピソードを込めて描写されることで、その大きな声はコンプレックスとしてとても生きてくる。そしてそのコンプレックスは「思いっきりやってみる」ということで真中らぁらの魅力に変換され、「コンプレックス」を魅力に変換したことで生まれた「プリズムボイス」と彼女達の全力のライブへと繋がっていく。
このライブアニメもまた素晴らしいのだが、何より素晴らしいのは前作までと同じように舞台のように意識されていることだ。そしてその舞台として意識している事は、ライブのように花道を進むアニメや花道の先で見せるメイキングドラマやサイリウムチェンジなどの「本作ならではのライブパフォーマンス」にも繋がる部分で、一話のライブアニメで魅力的なのはそんな「ライブをライブとして演出する」ということをとことん突き詰めているように見えるからだろう。
特にサイリウムチェンジは本作の「変身ヒロイン物っぽい衣装チェンジ」と合わさってとても幻想的な演出だった。
あのリボンの裏側だけ色を変えているのはどうやってるのか。どこかで説明して欲しいぐらいである。



森脇真琴監督は『リルぷりっ』で「アイドルっぽく変身ヒロインを描く」ということをやっていたのだが、本作ではどちらかといえば「変身ヒロインっぽくアイドルを描く」という方向になっていて『リルぷりっ』とは逆転している点も面白い。
衣装ごとにブランドが設定されていることは『アイカツ!』っぽくもあるが、個々の個性やファッションの多様性について踏み込もうと思えばブランドごとのファッションの方向性の統一化は実に分かりやすく面白い。
『アイカツ!』化!?とまで言われていた時期もあったが蓋を開けてみれば全くの別物だし、『プリティーリズム』と似たような印象ながらもその後継作としてちゃんと物語としてしっかりしたものを感じさせる。
この後どうなっていくのかはよくわからないし、前作までのキャラを持ち込んでいるのはファンサービスなのかそうじゃないのかどちらなのかよく分からないが、いずれにしても個人的にはとても面白い一話だった。
『プリティーリズム』の後を引き継ぐ本作、何が描いていくのだろうか。


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