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『プリパラ』と理想の自分に変身するアプローチの生む物語について

今期も様々なアニメが放送され、いくつかは既に話題になっているが、今期放送開始の作品の中でイチオシを一本選ぶとするのなら、個人的には『プリパラ』を上げざるを得ない。この三年ぐらい「『プリティーリズム』がとにかく面白い」と言い続けてきた事もあるが、それを抜きにしても『プリパラ』はとてつもなく面白いからだ。

年頃の女の子の元へどこからともなく送られてくるプリパラへの入場チケット、プリチケ。プリパラでは毎日のようにオーディションが行われ、その様子はネットやテレビで中継されており一大ムーブメントを形成していた。そんなプリチケをひょんなことから手に入れた真中らぁらは南みれぃに誘われ、成り行きでオーディションに参加。鮮烈なデビューを飾ってしまう。こうして彼女のプリパラでのアイドル生活が幕を開けるのだった――という導入から始まる『プリパラ』。『プリティーリズム』シリーズのテーマを引き継いだ同名のトレーディングカードアーケードゲームを原作としたメディアミックス作品であるが、スタッフ面では『プリティーリズム』から一新されており、共通のスタッフといえばCGディレクターの乙部善弘氏と音響監督の長崎行男氏、『プリティーリズム』シリーズで監督を努め、本作ではライブアニメ演出を担当している菱田正和氏ぐらいで、多くのスタッフが『プリティーリズム』作品に参加していないスタッフばかりだ。
監督には『探偵オペラミルキィホームズ』や『ジュエルペットきら☆デコッ!』、そして『ひめチェン!おとぎちっくアイドル リルぷりっ』の森脇真琴氏であり、アイドルアニメである『きらりん☆レボリューション』の第一期シリーズでシリーズ構成を手がけた土屋理敬氏が本作のシリーズ構成を務めている。本作の見どころとしてはライブアニメがあるが、それについては以前にも書いたものなので、「『プリパラ』一話、二話のライブアニメについて」という記事へのリンクを張って割愛するが、ライブアニメ以外の見どころとして個人的には「プリパラチェンジを軸としてなりたい自分に近づいていく」というアプローチが物語面での見どころに思える。
プリパラチェンジというのは本作では衣装を身に纏わないとプリパラタウンへと入ることが出来ないため、全てのアイドル達はプリパラチェンジによって衣装を身に纏うのだ。この際面白いのは変身前と変身後で大きく異なった外見になることで、プリパラタウンでは多くの女の子たちは「なりたい理想の自分」へと変身した姿で日夜アイドル活動に励んでいる。
本作のキャラクターのアプローチが面白いのはそんな「プリパラチェンジ」によって「理想の自分(=変身後)」と「今の自分(=変身前)」を使い分けていることだ。例えば真中らぁらは大きな声をコンプレックスとして抱えており、一話では一見するとその大きな声と言うコンプレックスは克服されたように見えるが、二話で描かれたのは現実世界ではプリパラタウンで「思いっきりが許される」と言う言葉によって克服されたコンプレックスは現実世界に多少の影響しか与えていない姿が描かれている。
ここで大事なのは「コンプレックスを一度限りで克服させていない」事によるコンプレックスの深刻さの描写もさることながら、深刻さだけではなく、「大きな声を武器にしておもいっきり歌う」という行為がらぁらにとっては「プリパラでしか出来ない事」として描いていることだ。その事はプリパラタウンでみれぃと共に再びステージに立ったらぁらの「プリパラは特別な場所」という台詞からも伺えるところだが、これはつまり、らぁらにとって「思いっきり歌えるようになる」というのは「プリパラでしか出来ない=理想の自分にならないと出来ないこと」なのだ。そしてここには本作が今後展開していくコアとなる物語が見えてくるところでもある。
本作では二話の段階で「今の自分(=変身前)では出来ないけど、理想の自分(=変身後)では出来る事」を展開しているが、同時に「理想の自分(=変身後)で出来たことを今の自分(=変身前)でもやってみる」という挑戦が同時に存在している。二話で描かれた音楽の授業でプリパラの時と同じように大きな声を出そうとするらぁらの姿はそんな「今の自分での挑戦」だ。二話では失敗しているが、この挑戦はおそらくまた繰り返されるに違いない。
つまり本作は「プリパラチェンジ」という変身ヒロイン的要素をスイッチとして機能させることで「理想の自分」と「今の自分」を区別させており、それにより「理想の自分(=プリパラでの自分)で勝ち取ったものを、今の自分(=現実世界の自分)に徐々に反映していく事で理想の自分になっていく」という作品なのだろう。
この手法は『ジュエルペットてぃんくる☆』でも見られたものだが、変身と言う要素を挟むことでより「理想の自分」というものが強調されているのだ。
そうして考えると北条そふぃの性格付けにも納得がいくところで、そふぃは現実世界とプリパラタウンでの姿に差異は見られないのだが、これには彼女の「真剣になったことがない」という性格が反映されているのだろう。つまり真剣になって「何かになろうと思ったことがない」と言う彼女は「理想の自分」というものを描くことが出来ない。
それが反映されているのがプリパラタウンでの姿で、現実世界との差異がないのは「理想の自分」というものが彼女の中に存在していないからだ。そう考えると彼女は「真剣に何かになろうとする=何かになっていく」というのが彼女にとっての「理想の自分になる」と言う物語として立ち上がってくる。
一方で南みれぃは現実世界とのギャップが激しいキャラクター付けがされているが、現実世界とのギャップが大きければ大きいほど「理想の自分との距離」は開いていく。彼女はそんな「変身によるキャラクターの多層化」というアプローチによる恩恵を受けているからこそ、「プリパラタウンから出た時に現実世界へどう反映していくか」をらぁらやそふぃ以上に問われているキャラクターで、「可愛い女の子」というプリパラタウンでの姿が現実世界の堅物なイメージにどのような変革を齎すのかが物語の焦点となっていくだろう。
『プリティーリズム』は三年間もの長期シリーズとなり、それぞれの成長に関しては毎回様々なアプローチが問われてきた。その集大成となったものが『レインボーライブ』であり、七人の主人公と一年間という長い期間を与えられたことで、物語上誰一人として欠けていたら絶対に生まれなかった感動を生み出した。
『プリパラ』は『プリティーリズム』の背景世界を継承している事が北条コスモの存在や赤井めが姉ぇの存在からもわかるが、一人一人の主人公を多面的ではなく多層的に描くことで心の成長を物語に反映させている。この点は『プリティーリズム』の挑戦があったからこそのものを感じさせる点だ。
補足的になってしまうが、では森脇真琴監督らしくないのかというとこれがまた森脇真琴監督らしい作品でもある。
アップダウンの激しい物語進行やギャグの提示の仕方、ところどころでちゃんと王道を外して予想をいい意味で裏切ってくるところなどは森脇真琴監督らしいと言える。
二話の引きの作り方などは絶妙で、みれぃというキャラクターの全貌が見える大事なところだろう。

何にしても『プリパラ』は『プリティーリズム』から大きく変更しながらも最もコアとなる部分(=心の成長というテーマと多くの主人公達による展開)を引き継いでいることは間違いなく、まだ三話しか放送されていないながらも壮大な物語の誕生を予感させる。
まだ三話しか放送されていないのにそこまでのものを見せてくれた『プリパラ』。また一年間を楽しませてくれそうだ。

余談だが、前期から継続の作品でイチオシの作品はと言われると『レディジュエルペット』だ。
あれは変わったことは特にしていないのだが、一つ一つの描写を丁寧に大事に描いている。
そのことにより「丸く収まる」と分かっていても期待感でドキドキさせてくれるという稀有な経験をさせてくれる作品で、その一点のみで本作を前期から継続作品として一番面白い作品だと断言する。捨て回が一つもない時点で優秀と言わざるをえない。
惜しむらくはネット配信がないことだなぁ……。もったいない。


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