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『少年ハリウッド』に見る「普通の人間がアイドルになる」と言う事について

ギャレス版『ゴジラ』を視聴したのだが、結論から言えば「あいつら、きっちり怪獣映画作ってきやがって! それもとんでもないスケールで!」と言う映画だった。
何が素晴らしいかというと「怪獣が現れた現代」を構築したところだろう。
『ジョーズ』的な怪獣のパーツだけを写して巨大感を演出しながらも観客に想像させる演出、怪獣が暴れまわったことで逃げ惑う観客達など、細かい描写を積み重ねることで「現代にもし怪獣が現れたら」と言うシミュレーションを行い、それによって「怪獣が出現した世界」というものの空気感が生まれている。特に良かったのは「怪獣に振り回される人類」で、これは怪獣映画ではよく描かれる王道中の王道なのだが、その「怪獣に振り回される人類側の視点」で怪獣を描いたことで怪獣の強大さがちゃんと出ているし、人類の無力さが出ていたのは素晴らしい。
特に素晴らしかったのはメガトン級の核爆弾使おうとして自分の首を絞めるアメリカ軍だが、あの因果応報感は「怪獣に振り回される人類」もさることながら原爆ネタをちゃんとやろうとしている感があって嫌いにはなれないし、ああいうところで「怪獣に尻拭いをさせる」ではなく「人類が活躍する場所」を用意しているのはありだと思う。
肝心の怪獣プロレスだが、終盤に集中していることを除けば素晴らしい出来だった。
ムート―やゴジラのビジュアルもいいんだが、プロレスとしてどちらにもちゃんと見せ場がある。ゴジラの見せ場は言うまでもなく放射熱線だが、あの放射熱線の演出だけで本作は素晴らしいというしかない。ムート―へとどめを刺す時の放射熱線のやり過ぎ感と、頭部を投げ捨てるゴジラに関しては妙に人間臭くてキグルミ感があった。
エピローグで怪獣王と名付けられていたりと「あ、ちゃんと研究してるんだ」って感じがあったしなぁ。
続編ではモスラとキングギドラとラドンが出てくるらしいが、個人的にはビオランテと戦ってほしくもあり。いやでもやっぱりメカゴジラだな。人類が叡智を結集し、ゴジラを研究して作り上げたメカゴジラ。そんなメカゴジラをゴジラが破壊する瞬間が見たいなー。




アイドル戦国時代ならぬアイドルアニメ戦国時代である。
今年だけでも『プリパラ』『普通の女子高生が【ろこどる】やってみた。』などが放送され、『ラブライブ!』は劇場版アニメ化が発表されているし、『アイドルマスターシンデレラガールズ』は来年一月から放送開始である。昨年一年で女児向けアニメ界の覇者であった『プリキュア』を超える売上を叩きだした『アイカツ!』が三年目の放送を決定済み。こちらも十二月に劇場版アニメが公開されるわけなのだが、アイドルアニメとには女性アイドルばかりかといえばそうではない。
来年からアニメ三期が放送されることが決まった『うたの☆プリンスさまっ♪』など男性アイドルを描いた作品も存在している。今期から放送開始した『少年ハリウッド』はそんな男性アイドルユニットを描いた作品だ。
伝説的アイドルユニット、少年ハリウッドの解散から15年後。彼らが活躍した劇場、ハリウッド東京にまた新たなアイドルが誕生した。少年ハリウッドの名を受け継ぐ二代目少年ハリウッド。そんな二代目少年ハリウッドとしてデビューすることになった五人の少年達がアイドルとして成長していくまでを描いた青春サクセスストーリーである本作だが、他のアイドルアニメと比べると少し大人しい作品だ。「少年ハリウッドとしてデビューする」ということは一話で告げられたものの、今までライブはおろかアイドルとしてまだ一度もステージに立っていないし、物語として「アイドル的なお仕事」というものは何一つ描かれていない。CDですら「ある」ということは告げられているものの、五話までで描かれたものはその前段階ですらない。
だが本作が紛れも無くアイドルアニメだ。なぜアイドルとしてデビューはおろかステージすらまともに描かれていないのに、本作がアイドルアニメと言えるのかというと、本作では「アイドルというものが社会に、この世界にとってどういう存在であるか」というものを冷静に見つめた上で、そんな「アイドル」になっていく少年達を描いた作品だからだ。
本作で描かれているアイドルの姿は「職業としてのアイドル」であり「奇跡を与える側としてのアイドル」だが、前者について述べていくと本作ではアイドル特有の自己紹介など、アイドル的要素とされているものに対して「素でやるのは恥ずかしいもの」として描いている。
それは口にしているアイドル自身もそうだし、それを考えた社長自身も恥ずかしいものとして理解した上でやらせている。なぜ恥ずかしいのに言わせるのかというとそれが「アイドル的なもの」だからだ。
アイドル的なものは恥ずかしいものだ。自己紹介もそうだし、少年ハリウッド達が歌っているというOPの歌詞も基本的にはこっ恥ずかしい歌詞だろう。「ハローハロー世界」とか正気では歌えないだろう。「キミの宇宙は僕の宇宙、僕の宇宙はキミの宇宙。つまり僕はキミに夢中!」なんて自己紹介を振り付きでやるなんて恥ずかしい以外の何物でもない。
それをいう少年ハリウッドの彼らもそのこっ恥ずかしさを理解しているし、発案した社長も当然それを理解している。だがそれでもやるのはそれがアイドルだからだ。アイドルだからこそ恥ずかしくともそういう「アイドル的な名乗り」は恥ずかしがらずに口にしなければならない。
そう、『少年ハリウッド』で描かれているアイドルの姿はそんな「恥ずかしい物を恥ずかしがらずに表現する存在」だ。
恥ずかしがらずに真正面から恥ずかしいことを力いっぱい叫ぶことこそが「アイドル」なのだ。
『少年ハリウッド』の物語はそれを起点としている。「恥ずかしいことを力いっぱい叫ぶ存在」になるために二代目としてデビューすることになった少年達はそんな存在=アイドルになりきるために努力していくし、初代少年ハリウッドとの邂逅を経て「アイドル」というものの役割を学んでアイドルになっていく。そこに本作の面白さがある。
少年ハリウッド達を見ていると彼らはごくごく普通の少年達であるように描かれている。
女の子にモテたいし、友達とも遊びたい。くだらないことで馬鹿やったり、ブランド物のスニーカーが欲しくなったりもする。
しかし彼らはアイドルなのだ。アイドルとしてデビューすることを社長命令で決定された人間なのだ。だからこそ彼らはレッスンして学び、初代少年ハリウッドやマネージャー、社長との会話の中で「アイドル」に触れて、アイドルになっていく。
本作には「アイドルの天才」は存在していない。心の底からアイドルになりきり、アイドルになりきってやった行動そのものが「アイドル」として呼ばれる行為なのだとして描いている。
この「普通の少年達がアイドルになっていく」がたまらなく面白いし「アイドルらしい」。
初代少年ハリウッドが合宿中に語った本心の夢は「何一つとして叶えられていない」のにステージの上では輝いていて、その輝きが多くの人の心を輝かせ、二代目少年ハリウッドのあるメンバーの憧れになっているところなどは、そんな素の人格よりも「アイドルになりきる」ということが重要視され、その「なりきったアイドルの姿」こそが「アイドルらしさ」の源であることの証明だろう。
また「いつまでもアイドルをやっていられない」と言う勅使河原の言葉はアイドルの輝きの儚さを、そして「恥ずかしい事を全力で叫び続ける」という虚業の儚さを、アイドルという存在が本当に「刹那的な存在」で、「この時にしか出来ないもの」と言うことを物語っているところでもある。
だからこそ社長の「誘われたからという気安さ」で始めるものだという言葉にも意味がある。なにせ「自分が正しいと思った時、後ろの道は全部正しくなる」のだから。
余談ではあるが、本作は暗喩の使い方が絶妙だ。二話の復刻版スニーカーを持って一般人との友人と決別する姿を描く辺りなどはそんな暗喩が生きた事例だが、復刻版スニーカーとオリジナルを比較することで「初代少年ハリウッド」と「二代目少年ハリウッド」を比較した上で、どちらが本物かと語らせたのは面白いところだろう。結論としてはまだ出ていないが、二代目も初代も本物として描かれた時にこの疑問に思った事は生きてくるところだろう。
また「僕達の仕事はね、ここから奇跡の種をまくだけなんだよ。その先の奇跡は僕達の知らないところで起きるんだ」などのアイドル役割論はなかなか興味深い。ステージの上で歌い踊る彼らをみて感じた何かを観客達が昇華していく事を指しているのだろうが、奇跡の種を与えられて今少年ハリウッドのラッキーボーイとなった人間に対しては少々突き放しているかように描かれている。だがその程度しか出来ないからこそそれに対して全力で挑んでいるアイドル達が輝いて見える。
だからこの台詞は素晴らしい。アイドルの役割に対してここまで冷静に見ている台詞も早々無いだろう。

例えるなら『少年ハリウッド』は青白く静かに燃える炎のような作品だ。
地味かもしれないし、ハイコンテクストすぎるようにも思う。「アイドル」というものに触れた人間にしか理解できないような文脈も存在しているように思う。しかし描かれている内容は冷静にアイドルを見つめたからこそ出てくるアイドル哲学の塊のような熱い作品だ。
その熱さは他のアイドルアニメと比べても遜色ない。むしろこういう冷静な作品が出てきた「今」というのは凄い事ではあると思うのだ。アイドルを「憧れるもの」ではなく「なりきるもの」として描く『少年ハリウッド』。
彼らがアイドルとしてステージに立った時、彼らがアイドルとしての輝きを放っていることを期待させてしまう大傑作である。


ハロー世界ハロー世界
(2014/08/13)
少年ハリウッド

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