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『残響のテロル』に見る不明な目的によるドラマの牽引について

夏コミ新刊の『プリズムアライブ』ですが、委託する分ぐらいは残っていたのでとらのあな様に委託しております。

とらのあな - プリズムアライブ

いつものことですが、うちは「在庫を抱えない」「欲しい人のところに大体行き渡るようにする」という事を念頭に置いて同人誌を製作しているため、一度作ったらそれが最後であります。今のところ、内で再販した唯一の同人誌がラブライブ!本の『RUNWAY』ですが、あれは「仲間内+欲しい人がいればいいや」ぐらいのつもりで少部数生産したところ、正午頃に完売したために再販しただけの話でほぼ例外であります。したがって今回の『プリズムアライブ』も今委託されている分が最後ですので、欲しい方はお早めにどうぞ。

なお冬コミは企画だけはあったものの、製作期間の都合で断念したラブライブ!二期にスポットを当てた本を作る予定です。タイトルは仮称ですが『RUNWAY2』で。このままのタイトルにはならないと思いますが一応。



今期スタートのアニメで一番気に入っているのは言うまでもなく『プリパラ』なのだが、今一番物語の行く末がきになるのは『残響のテロル』だ。
『カウボーイビバップ』や『坂道のアポロン』で有名な渡辺信一郎が原案と監督を努める本作は、現代の東京で大規模爆弾テロを引き起こした二人のテロリストと現代社会とそこに暮らす人々との戦いを描いた作品だ。
フジテレビのノイタミナ枠では今までにも100億円で日本を救う方法を模索するゲームに巻き込まれた人間たちに依る群像劇の『東のエデン』(監督は神山健治)や『踊る大捜査線』などの警察ドラマを手がけた本広克行を総監督に、虚淵玄と深見真が脚本を務めた心理状態や性格傾向によって全ての価値観が決定されるシビュラシステムに支配された社会における正義の戦いを描いた『PSYCHO-PASS』などがあり、比較的「社会」や「価値観」といったものを題材とする作品が定期的に製作され放送されている。
『残響のテロル』は現代の東京が舞台でありそんな東京で起きた大規模爆弾テロをきっかけにして、様々な事件が起きていく物語であり、前述した『東のエデン』などの「ノイタミナ社会派アニメ」の系譜に名を連ねる作品だろう。
『残響のテロル』で個人的に面白い点は物語の主要な登場人物達が出揃い、三陣営を構築した時に「主人公・スピンクスがテロを行う理由に何らかのドラマを感じさせるように作られている」ということだ。
本作では「ナインとツエルブの二人の少年達がテロリストとして爆弾を仕掛け、警察に謎掛けをする。警察陣営の主人公である柴崎はそんな二人が仕掛けた謎を解くことで爆破を阻止する」というのが基本的な物語の流れとなっている。この物語の流れは第三勢力としてスピンクス達と過去を共有し、因縁の深いハイヴが登場してもなお基本的には変わっていないのだが、大規模爆破テロに関わってくる三陣営を比較してみるとスピンクスだけが目的が明かされていないのだ。
柴崎達警察は大規模爆破テロを阻止したい。それは警察官としては当然のことであるし、スピンクスは序盤から警察をコケにするかのようなテロばかりを行っている。そのスピンクスの行いは警察を過剰なまでに煽るものであり、愉快犯じみている部分はあるため、彼ら警察がスピンクスという存在を逮捕し、大規模爆破テロを収束させることで国民に対して平和をもたらしたいと考えるのは自然な流れだ。
また警察側の主人公として用意されている柴崎には被爆二世という設定が用意されており、スピンクス達が核燃料再処理施設から強奪したプルトニウムを東京で使用する可能性を念頭に置き、彼らにそれを使わせないために行動している。したがって柴崎と警察は一体となって大規模爆破テロに関わっていくし、目的も非常に明快なものとなっている。
それに対してハイヴは明らかにハイヴの「ナイン・ツエルブとの決着をつける」と言う明快な目的のもとで活動しているものの、その中には大規模爆破テロを阻止したいと言う思惑は感じられない。むしろ民間人に犠牲が出ると分かった上で爆破テロを計画し、ナインとツエルブを誘い出すなど思考回路としてはスピンクスよりもハイヴのほうがテロリストじみている。
つまりハイヴにとって「テロの阻止」は目的の中に入っていないのだが、その分「ナインとツエルブとの因縁に決着をつける」と言うシンプルな目的を持っており、物語を牽引していく。
そして物語の最初の引き金を引いたスピンクスはというと、彼らについては未だに目的が明かされていない。警察に対しては挑戦的な態度を取る愉快犯のように振舞っているものの、彼らの目的は「社会を混乱させる」という単純な目的を持っているようには描かれていない。大規模爆破テロを行っているテロリストであるものの、地下鉄に仕掛けた爆弾については「阻止されるもの」として計画していたり、偽物に扮したハイヴの空港爆破についてもハイヴの仕掛けた罠だと分かっていながら飛び込んでいくなど、「社会を混乱させたい」と言う意図こそあるものの「被害者は出ないようにしている」ように見える。大規模爆破テロと言う手段こそとっているものの、その目的はプルトニウムを都心で使用することでもただ街を破壊するだけでもなく、もっとその向こう側に何かがあるように感じさせる。
スピンクスサイドのこの「目的がないように見えるのに、何らかの目的があるように感じさせるようにしている」というのは、三つの陣営が出揃った時に他の二つにシンプルな目的を与えているからこそより際立つ。
「スピンクスの真意はどこにあるのか」は視聴者視点で見れば手がかりだけがいくつも与えられているからこそ、「彼らが爆弾を仕掛け、テロを行った先に何を求めているのか」という部分は物語に強い魅力として、「何が目的で、この物語はどこに終着するのか」を想像させてくれる。
またスピンクスの仲間になったリサの位置づけが面白いのは、現代社会における外様として描かれているスピンクスの二人に対して、彼女は現代社会の人間でありながら現代社会に居場所がなく、破壊を望んでいる存在として描かれていることだ。
「学校は社会の縮図」と言う言葉をそのまま当てはめるのであれば学校にそもそもいたリサは社会の住人で、転校してきたスピンクスの二人は社会の外側からやってきた存在だ。この二人と一人の出会いはそれだけ強い意味を持っており、現代社会の住人でありながら居場所をもたないリサが、現代社会の外側の人間であるスピンクスの傍でだけ居場所を持っており、笑顔を見せているのには必ず意味がある。
その意味はおそらくスピンクス達の当初の計画を大きく狂わせていくのだろう。既に空港爆破事件ではリサと多く接してきたツエルブが変化を見せており、その片鱗は伺える。
彼女の存在は物語にどのような変化を与えていくのか。それもまた本作の魅力の一つだろう。

『カウボーイビバップ』ではコメディタッチの軽快なノリながらも、時にビターな味わいを与える物語を構築した渡辺信一郎だが、本作ではコメディタッチなノリは控えめだ。しかしかと言って全くないわけではなく、ボーイミーツガール的な要素は物語が必要以上のシリアスにならないように有効に活用されており、エンターテイメントの精神はなお健在だ。
『スペースダンディ』と共に一話も見逃せない作品である。



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