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『プリパラ』九話と北条そふぃの「本当の自分での挑戦」について

『ガンダムビルドファイターズトライ』の監督は綿田慎也で、『ガンダムビルドファイターズ』の長崎健司監督から交代しているのだが、綿田慎也の初監督作品が『ガンダム』になるというのもなかなか面白い流れではないだろうか。
綿田慎也と『ガンダム』とのつながりはそこそこ長い。たしか最初は『ガンダム00』第二期で二十話の演出を担当し、続いて『ガンダムビルドファイターズ』の監督を務めた長崎健司や名取孝浩や角田一樹と共に『劇場版ガンダム00』で演出を担当。続いて『ガンダムUC』四話では京極尚彦、菱田正和と共に演出を担当。『ガンダムAGE』でも一部の話で演出を手がけている。
当然前作の『ビルドファイターズ』にも参加していて、戦国アストレイが世界大会常連のプレイヤーを撃破するなど各国のビルダー達の活躍が描かれた八話やガンダムX魔王とスタービルドストライクガンダムの戦いを描いた十七話などは彼が絵コンテと演出を務めている。このような経歴を持つ綿田慎也が、今度は自分の初監督作品としてガンダムを手がけるというのはなかなか面白い。どのようなガンダムを描き出すのか。それに期待したい。



『アイカツ!』が二年目の、そして星宮いちごの物語の完結へ向けてアクセルを踏み込んでいる中、『プリパラ』もまた物語として大きく動き出している。今週放送された九話では北条そふぃがらぁら・みれぃのチームメイトになるまでが描かれ、第一報より登場していた三人がようやく一つのユニットとして活動していく事になったのだが、この九話はプリパラタウンにやってきた北条そふぃという少女の成長物語として重要な意味を持つ一話だった。
幼い頃からプリパラタウンで活躍しているクールな天才アイドルとして登場した北条そふぃだが、物語が進むごとに彼女のそのクールな天才アイドルとしての姿は彼女を構成する一つの姿でしかなかった。そふぃ本来の姿は梅干しを食べなければアイドルとして活動できず、また姉であるコスモや定子、ちゃん子達の親衛隊の助けがなければ日常生活を送ることすら出来ないほどダメな人間(作中ではファンシーモードと呼ばれている)で、自身がなく「自分では何もアクションを起こすことが出来ない」と思い込んでいる少女だった。つまり現実世界での北条そふぃとは「歌って踊る事は好きだが、梅干しと他人の力がなければ何も出来ない」し、そのコンプレックスから「頑張っても何も手に入れられない」と思い込んでいる少女だったのだ。
外の世界では親衛隊がいなければ日常生活を送ることが困難な事は作中で何度と無く描写されており、彼女は親衛隊に守られることでどうにかプリパラを続けられている。今回の九話では姉であるコスモによって彼女が守られてきたことが明かされた。北条そふぃはコスモや親衛隊、そしてウサギによって守られる事で活動を続けることが出来た。
そんな北条そふぃが変わるきっかけが生まれたのはらぁらとの出会いである。
彼女は「他人の力では何も出来ない」と言う人間であり、「ダメな自分」にコンプレックスを持っているがために自信がなく、「何も出来ない」と思い込んでいる少女だ。梅干しと他人の力を借りることでどうにか立っていられるような人間だが、らぁらだけはそんな梅干しも他人の力も借りる事ができず、ただ「ダメな自分」というそふぃにとっての醜態を晒しているにも関わらず、幻滅せずに「どちらも好きだ」と認めてくれている。らぁらが好きでいてくれるからこそ、彼女は「素の自分」というものに向き合う事ができるのだ。
素の自分を見せてもなお好きでいてくれるらぁらのために、そふぃが自発的に行った行動は、彼女にとって初めて誰の力も借りずに行えた大事な一歩だ。そしてそうやって「自分から起こしたアクション」が「誰かの笑顔に繋がった」時、彼女は初めて「自分の力で何かを勝ち取った」という成功を手にする。「ダメな自分でも精一杯やった行動が、誰かを笑顔にした」という成功体験は些細な事かもしれないが、彼女にとっては大事で尊い第一歩だ。
北条そふぃと言うにとってそれは「プリパラタウンから戻ってきても活かせる大事なもの」になりうるのである。

また「本当の自分を皆は好きになってくれるわけがない」というそふぃの思い込みに対して、らぁらが「そんなことない!」といった時に面白いのは、そふぃの親衛隊はそふぃの「本当の自分」を知っていてもなお好きでいてくれている事実だ。彼女達にとって、北条そふぃとはステージに立っているクールなアイドルであり、そして梅干しと他人がいなければ何も出来ないファンシーな少女だ。両方を知っていてもなお嫌いにならなかったのが親衛隊であり、彼女達は北条そふぃが登場した時から「本当の自分を知ってもなお好きでいてくれる存在」という側面を担わされていたのだろう。だかららぁらやみれぃが本当のそふぃを知ってもなお「好き」と言った時に「らぁら達だけが好き」には絶対にならないのだ。
「他にも好きでいてくれる人々が世界にはもっといる」と言うことは親衛隊によって予め描かれている以上、「らぁら達だけがそふぃの本当の自分を知っている」という話にはなりえないのである。それは「本当の自分を好きになっていく」という北条そふぃの物語のテーマにも通ずる部分でもあり、『プリパラ』と言う作品が展開している「プリパラタウンと行き来しながら心を成長させていく」という構造にも合致する部分でもある。
余談ではあるが、北条そふぃの抱えるテーマは姉である北条コスモが抱えていたテーマと似ている。
どちらも「挑戦しなかった少女が周囲に影響される形で第一歩を踏み出す」という物語ではあるのだが、コスモは「失敗する事で傷つくことを恐れている」というキャラクターであり、そふぃは「ダメなので成功するわけがない」というキャラクター造詣ではあるのだが、どちらも「自信のなさ」という意味では共通だ。
コスモが主人公との出会いによってプリズムショーを行い、恐れずに挑戦する勇気を手に入れて自分の世界へ戻っていったように、そふぃもまたらぁらのために起こした自発的なアクションによってバラエティ番組でのライブステージを勝ち取る経験を得ている。
そふぃの頑張って手に入れた成功体験は、どのような形で「自分を好きになれる北条そふぃ」を作り出していくのだろうか。
少なくとも本作はプリパラタウンからの卒業を視野に入れた物語であることは間違いない(プリパラタウンと現実を行き来しながら心を成長させていく構造を採用している時点で、プリパラタウンから卒業することは運命づけられている)。
そんな卒業までの間にらぁら、そふぃ、みれぃの三人はどのような成長をしていくか。
遊び心は多いながらも、大事なところは外さずに突き進んできている『プリパラ』。
本当に油断ならない作品である。

ところで今週驚かされたのは「そふぃがメイクした上で外に出ている」と言う描写がされたことだ。
多くのアニメにおいて「メイクをする」と言う部分は省略されがちで、それこそデートなどの「イベント発生時」にメイクをするぐらいのものだ。そしてそのメイクというのはつまるところ「普段とは違った自分を出す」程度の位置づけであり、「日常風景」としてそうしたメイク描写を中高生でやった事例というのは少し珍しい。特に「メイクする」と言うことをあれだけ尺とカット数を割いてやったのは女児向けアニメと言う枠組みでは相当珍しいように思う。
しかし本作では「そふぃの日常シーンの一つ」としてメイク描写が挿入されており、その事によりそふぃの「何も出来なさ」が強調されると共に彼女の「作られてる感」と「保護されてる感」が演出されている。その三つの要素がアバンタイトルのメイク描写に込められているからこそ、そふぃが素の自分に戻った時やそふぃが自発的に行動した時にその描写そのものの印象を強くさせる。九話でそういった描写に印象深さを覚えるとすれば、そふぃ周りの演出に注目してみると面白いかもしれない。


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