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『アイカツ!』に見る新主人公のストーリーの立て方について

夏コミ新刊である『プリズムアライブ』ですが、何度も書いているように完売しており、再販予定は今のところありません。ですが、執筆者の一人である泉信行さんが『プリズムアライブ』に寄稿された『プリズムに変わるメイン・キャラクターの構造─テレ東系キッズアニメシナリオが模索した道』を全文公開されております。

https://note.mu/izumino/n/n239bc0569812

全文を読むためには100円ほどかかりますが、このお話はメインキャラクター(≒主人公)の表現技法のお話は様々な作品に応用できるものでもあるので個人的には一読する価値はあるかと思います。またタイトルに「テレ東系キッズアニメ」という一文が入ってます通り、プリティーリズムと言う作品が好きな方はもちろん、プリティーリズムを見ていないという方にも面白い内容かと。よろしければどうぞ。



『アイカツ!』は神崎美月のライブを見て、アイドルを志した星宮いちごが仲間達とともにアイドルとして一歩づつ成長していく物語である。一年目では「セルフプロデュース」をテーマに「どうすれば自分を幸せに出来るのか」という「生き方」の物語を展開し、二年目ではそこから一歩踏み込んで「アイカツ!の未来」と「憧れの連鎖」をテーマに、「アイドルとしての生き様」の物語を展開している。『アイカツ!』がアイドルアニメとして非凡な点の一つは、そういう「アイドルだけが人の生きる道じゃない」と言う距離感の取り方をした物語を構築しているという点だろう。
いちごの母親であるりんごやスターライト学園の学園長である織姫はいずれもアイドルを引退した後で活躍の舞台を広げているが、彼女達はどちらも「自分を幸せにする方法」としてそれぞれ自分の生き方をしている。だからこそ「幸せにする方法」がアイドルであるマスカレードにあるのであれば、その時はちゃんとスイッチしてパフォーマンスを成し遂げることが出来る。
また二年目から登場したドリームアカデミーは学園長の夢咲ティアラの「誰もがアイドルの才能を持っていて、アイドルになれる」と言う理念を元に設立されており、全ての人間がアイドルへの憧れをそのままにアイドルに関わっていく生き方を開拓できるという学校だ。音城セイラがこの学校を代表するアイドルとして夢咲ティアラに認められているのは、音城セイラのアイドルに憧れる気持ちとそのアイドルの才能はドリームアカデミーだからこそ開花したものだからだろう。
彼女が満開に咲かせたアイドルの花はスターライト学園で努力する星宮いちごと並ぶ偉大な才能であり、だからこそ彼女達はトップアイドルとして君臨し続ける神崎美月という背中に追い付くため、そして飛び越すためのツバサとなって彼女達を輝かせているのだが、『アイカツ!』は一年目にせよ二年目にせよ、星宮いちごという少女を中心とした物語だ。そして星宮いちごはジョニー別府が語る通り、アイドルとしては非凡な才能を持つアイドルだ。
彼女はアイドルとしてスターライト学園に入学する際にスペシャルアピールを出しているということもあるが、彼女のアイドルの才能とはそこではない。彼女の非凡なところは「出来るか出来ないか」という「0か1かというシビアな価値観」が確固として存在しており、「オーディションに負けてしまったらどれだけ努力を積み重ねても日の目を見ることがない」という芸能界の理屈を受け止めた上で、それでも「全力を出して負けたら勝利した相手を讃えよう」という精神にすぐに行き着いてしまう点だろう。そしてそうした価値観を受け止めた上で、「やってきた事を絶対に無駄にせず、それを自分の輝きを磨く手段へと変えてしまう」。
そここそが星宮いちごのアイドルとして天才だと呼ばれる理由だろう。彼女は今までやってきたことを絶対に無駄にしない。アイカツ!風に言うのならば、星宮いちごは自分自身が持つ可能性の輝きの存在を絶対に疑わない。見失いそうになっても、そこにあることを確信できるのが星宮いちごというアイドルなのだ。そして二年目から登場した音城セイラもまた「アイドルにどうしてもなりたい」と言う思いを持ち、自分の中にある輝きを確信できるアイドルだ。輝くきっかけを掴む場所こそ違えど、彼女達はどちらも「自分のアイドルとしての輝きを見失わない(もしくは見失いかけても自力で気づけてしまう)アイドル」だといえるだろう。
そんな二人を中心としているからこそ『アイカツ!』という二年間の物語は、「輝きを見失わないアイドル達」が新たな物事に挑戦していく時に「どう理屈をつけるのか」というところに物語の重みが置かれているように見える。スペシャルアピールにおいても星宮いちごは「スペシャルアピールがなぜ出来るようになるのか」ということには特に悩まない。ただ努力し続けるだけだし、最初に出した時に思い続けていた事を思い出す事で彼女はスペシャルアピールの発動を可能とさせている。理屈抜きで答えに行き着いてしまうからこそ、その答えの過程を理屈付けされることで彼女は前に進めるようになるのだ。
三年目の主人公を務めることになった大空あかりはそんな星宮いちごとは真逆の存在だ。
大空あかりはいちごのような天才ではない。能力も平均であれば知識も平均的だ。
そのことはアイドルとしての才能を輝かせられる存在しか入学できないスターライト学園の入学試験に一度は落ちていることからも彼女は星宮いちごのような天才肌ではないことが分かるし、アイカツ!ブートキャンプや夏期講習に参加しなければならなかった事からも伺うことが出来る。しかしそんな彼女だからこそ星宮いちごでは辿り着くことが出来なかった物語を展開できる。
大空あかりがスペシャルアピールを完成させるまでを描いた96話と97話はそんな大空あかりが主人公を務める三年目の物語の片鱗が垣間見ることが出来るエピソードだ。
大空あかりは天才ではない。能力も知識も人並みほどしか持っていないのだが、それは心の面でも同じである。彼女は星宮いちごほど、自分の中にある輝きを確信することが出来ない。「出来るか出来ないか」というシビアな価値観を前にすると「出来ない自分」を無力に感じてしまい、自分のやっていることが無意味に思えて苦悩してしまう。
星宮いちごは理屈を用意してやればどこまでも輝けるキャラクターであるのならば、大空あかりは理屈を用意しても能力を磨くために努力しても、「出来ない以上は努力し続けるしかない」というキャラクターだ。
彼女はどこまで言っても「理屈も理解していて努力しているのに出来ない」キャラクターなのだ。
だからこそ星宮いちごには描けなかった「出来るようになるまでひたむきに頑張る姿」を描ける。そして出来ない時間が長かったからこそ、努力し続ける事しか出来なかったからこそ、出来るようになった時=努力が実を結んだ時に「喜び」とその努力の尊い輝きを描き出す事ができるのだ。
この時大事なのは大空あかりは普通の少女であり「努力し続けるしかない」キャラクターではあるものの、『アイカツ!』の主人公としては「星宮いちごに憧れてアイドルになることを決めた」という「憧れの連鎖を受け継ぐもの」であるとともに「結果が出るまで努力し続けるしかない自分と向き合い続けて、それでも努力し続けている」というセルフプロデュースの精神を体現している存在だということだ。
つまり星宮いちごと同じルーツを持ちながら、彼女が体現するセルフプロデュースは星宮いちごとはまた違ったものなのである。その違いがちゃんとこの二話の中で提示されているからこそ、三年目においても「アイカツ!らしさ」を維持しながらも、「大空あかりのアイカツ!」というドラマを生み出す予感を感じさせる。
大空あかりは『アイカツ!』ではおそらく初めて登場した「普通の女の子だ。それは彼女が97話で歌った「ハートのメロディ」の歌詞からも分かるだろう。
しかしそんな「普通の女の子」が努力し続けた先に輝くアイドルとしての姿は、ジョニー別府が語ったようにどん底を知っているからこそより強い輝きを放つはずだ。
彼女の更なる輝きを期待させる96話・97話は三年目へと届く輝きだ。だからこそアイカツ!は面白い。


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