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『アイカツ!』二年目に見る「私の可能性の物語」について

昨年冬コミ出だしたアイカツ!本『スイッチオン!』で書いたアイカツ!一年目の総論を有料ですが公開しています。タイトルは『未来プロデュース ――アイカツ!が描いたもの』です。

https://note.mu/mizune/n/n4615129b8d20

なぜ今ごろになって公開したのかというと、この記事の本文に当たる部分が二年目の総論として書かれたものであり、一年目の総論の話を踏まえて書いている部分があるからです。
二年目の総論もドリームアカデミーについて掘り下げたテキストを追加して一年目と同じような形で発表したかったんですけど、今の段階でアイカツ!本を作れる目処が立たないのでこういう形で公開しておきます。



遅ればせながら『アイカツ!』101話を視聴した。
友人・霧矢あおいに連れられて行った神崎美月のライブ。そのライブを見た時に憧れた思いが彼女にアイドルへの道を開かせてからかれこれ二年もの時間が流れ、この101話を持って星宮いちごを中心として展開されてきた二年間の物語は幕を下ろした。翌週から放送される三年目からは星宮いちごに代わって、いちごによってアイドルの可能性を見出されてスターライト学園に入学した少女、大空あかりが主人公を務める新たな『アイカツ!』がスタート。二年目では星座がモチーフとなった星座ドレスが登場したように、三年目からは白鳥の湖や白雪姫といった物語をモチーフとするロマンスドレスが登場する事が予定されており、新主人公となってもアイカツ!からはますます目が離せない。
さて星宮いちごを主人公とした二年間の物語を終えた『アイカツ!』だが、改めて二年目の物語を振り返ってみると、一年目から継承してきた「神崎美月との決着」や「憧れの連鎖」などもさることながら、一年目とは異なった物語をしていることに気づく。
まず二年目からはスターライト学園だけではなくドリームアカデミーという新たな学校が登場し、どんなドリームアカデミーに所属しているアイドル達が半年ほどかけて丁寧に描かれていた。
元々はロックバンドを結成していた音城セイラを中心にドリームアカデミーのプロデューサーコースに所属している冴草きい、ファッションブランド・ボヘミアンスカイのデザイナーである風沢そらにメイクやコスメに詳しいお嬢様の姫里マリア。彼女達がドリームアカデミーでアイドルとして羽ばたいていく姿はそれはそれで面白いものがあったのだが、なぜ彼女達が活躍する姿を半年ほどかけて描いたかというと、「ドリームアカデミーのアイドルたちはスターライト学園のアイドルたちにも負けない個性的な存在であることを視聴者に周知してもらうこと」ということはもちろんあるだろう。
しかし二年目の物語を終えた今、考えてみればドリアカがいなければ二年目の物語は成立しないからこそ、ドリアカ組の存在感とキャラクター立てに半年もの時間を費やしていたのだ。
ではアイカツ!が二年目に物語として描いたものとは何か。
それは「自分の可能性(=自分の未来)の物語」だ。
『アイカツ!』ではこれまでセルフプロデュースというやり方で「なりたい自分になる」という活動を一貫して貫いてきた。一年目ではそのセルフプロデュースの理念から一歩踏み込んだ形で「自分を幸せにする方法を探しなさい」という物語を描いた。スターライトクイーンカップを終えた後、いちごと美月が共にスターライトを飛び出して、それぞれの道へと向かったのは、彼女達が彼女達なりの幸せを求めて探しに出たのだが、二年目ではそこから更に一歩踏み込んで「自分を幸せにする方法(=夢・未来)は一つじゃなくてもいい」ということを描いた。
神崎美月と星宮いちご。二人の勝敗を分けたのはその点だった。
神崎美月は夏樹みくると共にマスカレードという伝説のアイドルデュオを超える事を目的として活動してきた。そしてそれは最高の形で成し遂げることが出来たのだが、星宮いちごは憧れの神崎美月の背中のそのまた向こうにある未来を見続けていた。それも一つではなくより多くの夢や未来を見続けていたからこそ、神崎美月を超えることが出来る。
この時大事なのは決して星宮いちごは神崎美月を一人で超えたわけではないということだ。音城セイラがパートナーだったからこそ神崎美月を超えられたわけなのだが、なぜ霧矢あおいではダメだったのかというと音城セイラはドリアカを代表するアイドルだからだ。
ドリームアカデミーという学校は「誰でもアイドルになれる才能を秘めている」からこそ、その才能を研ぎ澄ませる事でアイドルに近づけさせる学校だ。その事は前半の半年間でちゃんと描かれているし、終盤でも触れられている通りなのだが、ドリームアカデミーのその「誰でもアイドルになれる才能」とはもっと言えば、「誰だってアイドルと比べても見落としリしないような才能=可能性を秘めている」ということだ。そしてそれは「誰にでも色んな可能性が眠っている」ということでもある。
音城セイラはそんなドリームアカデミーの代表となったアイドルだ。
そんな彼女にはロックやクラシックといった才能が眠っている。「アイドル向きではない」とスターライト学園からは否定されたものの、彼女にはスターライト学園が求めるアイドルの才能に匹敵するような可能性が幾つも眠っている。
その可能性がドリームアカデミーで開花したからこそ彼女はドリームアカデミーの代表になれたし、初めてのステージでスペシャルアピールを飛んでしまうほどのアイドルの才能に恵まれた星宮いちごの隣で、彼女のライバルでありパートナーとして立っていられるのだが、「自分に眠る無限の可能性」や「自分の未来」といったテーマを考えた時にいちご達だけではそのテーマは成立しないのだ。いちご達はスターライト学園のアイドルであり、「アイドルの才能を認められたからこそアイドルとなれた存在」なのだから。
しかしドリームアカデミーはそうではない。ドリームアカデミーは「誰にでも眠るアイドルに匹敵するような才能を開花させる」という学校であり、音城セイラ達はそんなドリームアカデミーでアイドルの才能に匹敵するような才能を見出されたからこそのアイドルだ。
そんなセイラと共にアイドル活動をしてきたからこそ、星宮いちごはアイドルとしてではなく星宮いちごという一人の人間として「自分が幸せになるビジョン」を幾つも見出すことが出来たのだろう。セイラもまた同じだろう。いちごのように自分自身に眠る色々な可能性を確信し続けられる存在がいつも一緒だったからこそ、「WMを超える」というゴールの向こう側にある新たなスタートを目標として定めて、全力で走りぬくことが出来たのだ。
そうして「可能性」というテーマで考えてみると、大空あかりが物語半ばで登場したのも理解できる。
三年目の主人公を務めることになる大空あかりだが、本当に三年目へのパスを繋ぐための「憧れの連鎖の担い手」という以上の役割が与えられていないのであれば、ここで登場させる必要はなかったはずだ。それこそ最後の最後でWMと2WingSのライブを観客の一人として見ていた存在として描いてしまい、三年目はいちごのリフレインとして扱ってしまう方が彼女の「とにかく努力するしかない」という個性は際立つだろう。
しかしそういう描き方にはならなかったのは彼女には彼女なりに二年目でやっておかばなければならなかった物語があったからだ。
大空あかりは自分のアイドルの才能を信じきれずに挫折しそうになる話はスペシャルアピールの特訓をさせられる話でも触れられているとおりだが、あの話は別に三年目でもやれたはずだ。しかし実際には二年目で行われている。なぜだろうか。
それは「自分自身の可能性を自分が信じられなくても、見ている誰かが信じてくれている」という要素が大事だったからだろう。
「なりたい自分は幾つもあっていい」「ゴールの先にはまた新たなスタートがある」というのが『アイカツ!』が二年目で描いたことだが、しかしゴールへ向かう中でなりたい自分を信じきれなくなる事も必ずあるはずだ。むしろそういう可能性の方が大きいだろうし、『アイカツ!』では度々脱落してスターライト学園を去る生徒たちの姿が描かれてきたし、ドリームアカデミーが無ければ音城セイラもそうなっていただろう。
セイラはドリームアカデミーと巡り会えたからこそアイドルになれた。ではあかりにとっては?
自分の憧れた星宮いちごが自分の中に眠るアイドル・大空あかりの可能性を信じてくれている。そのことがあかりに自身の中に眠る可能性の光を信じさせ、もう一度羽撃くことが出来た。つまり大空あかりがいなければ「誰かが信じてくれる自分の可能性を信じる」という物語は生まれなかったのだ。
それは大空あかりがいなければ、「可能性は天才しか信じ切れないもの」というテーマに対する誤解を招いていたという事でもある。大空あかりは努力するしかなかった「普通の少女」だ。星空いちごのように無根拠に信じられるタイプでも、音城セイラのように今までの経験から信じられるタイプではなく、ごくごく普通の少女として物語に登場した。あかりが普通の少女だったからこそ「自分の中に眠る可能性」を一年間を貫く物語の軸とした時に見落としそうになる、「挫折する可能性」を「誰かの信じてくれる自分の可能性」という形で乗り越えさせる物語が生まれたのだ。
だから大空あかりは三年目の主人公という役割以上に、いちごやセイラだけでは抱えきれない物語を担う存在として物語の半ばで登場するのである。あかりは三年目の主人公であるとともに、二年目のメインキャラクターの一人なのだ。
また地味なところであるが、あかりやセイラ達ドリームアカデミー側の話をやるために二年目では星宮いちごが物語の中心にいない話が多くなっている。少しづつではあるが、星宮いちごは物語の中心からずらされているのだ。大空あかりの特訓回などはまさにそれで、星宮いちごは物語の中心にいないからこそ大空あかりの努力し続ける姿とそのひたむきさは胸を打つのだ。
そしてその星宮いちごを中心からずらしていく物語展開をさり気なくやっていたからこそ、憧れの連鎖という三年目へと繋がるバトンを渡す101話で、「いちご達のいる世界へあかりが勇気を出して一歩を踏み出して、その世界へ入っていく」という展開がやれるのだ。
この101話はいちごからあかりへのバトンタッチの回だ。しかしそれ以上に「憧れたからこその第一歩」を改めて貴んだお話だといえる。そもそも星宮いちごは神崎美月への憧れからアイドル活動を目指した。しかしそんな神崎美月もマスカレードへと憧れたことがアイドル活動の最初の一歩だった。そして二年目には星宮いちごがいたからこそいちごのようになりたい!と思った音城セイラが登場し、そして憧れのいちごに憧れた大空あかりが生まれた。
誰かへ憧れた気持ちは別の誰かの憧れた気持ちを生み、次の世代へと繋がっていく。しかしその憧れを自分の力にするかどうかはいつも自分自身で掴み取るしかない。
大空あかりは普通の少女だ。星宮いちごに対する憧れの気持ちが強いだけの普通の少女だった。
しかし彼女は自分自身の力で憧れをスタートラインにした。ただ憧れるだけではなく自分自身の力で星宮いちご達がいる「アイドル」という世界へと踏み入れたのだ。「星宮いちごに憧れる少女」ではなく「大空あかり」として。彼女は憧れを力にして自分自身の輝きを信じて、星宮いちごとは違う空へと羽ばたいていく。
このスターライト学園という場所は通う生徒全てがアイドルだ。このスターライト学園にいるということは、それだけでもうアイドル活動のスタートラインに立っていると言っても過言ではない。だからそんなスタートラインに立った大空あかりを先輩たちは祝福するのだ。自分達とともにアイカツ!をする仲間でありライバルとして、新世代のアイドル達が自分達と同じように憧れた気持ちを胸に扉を開いたことを、かつての自分達と同じ彼女達を歓迎するのである。
定例会のライブが素晴らしいのはあかりが今立っているステージが、いちご達と同じステージであることを再確認させる。同じステージに立つ同じアイドルであることを強く認識させるからこそ、大空あかりは自分のアイドル活動をスタートさせていることに気づくことに強い輝きを放てるのだ。

誰もが誰かに憧れてその扉を開く。「あの人のようになりたい」と思うことは強力な力になるのだ。
神崎美月がマスカレードに憧れて走り続けたからこそ、マスカレードですら成し得なかった偉業を成し遂げたように。星宮いちごが神崎美月に憧れて走り続けたからこそ、音城セイラと出会って二人で新たな未来を切り開いたように。
今度は大空あかりが星宮いちごに憧れた気持ちを力に、自分自身のオリジナルスターを輝かせるために「大空あかりのアイドル活動」を始めていく。憧れの背中のその先にあるトップアイドルを目指して、新たな仲間達とともに駆け抜ける日々が幕を開けるのだ。
目をそらせないほど、そして心に焼き付いて離れないほどの強い輝きに向かって、自分の中に眠るオリジナルスターを輝かせるために。アイドル・大空あかりの物語は今がスタートなのだ。
そして星宮いちごも。音城セイラも。この物語に登場した全てのアイドル達も。彼女達の物語はまだまだ始まったばかりだ。なぜならゴールの先には、また新たなスタートがいつも待っていてくれるのだから。
彼女達のアイカツ!はまだまだ終わりそうにない。


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