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アニメの表現規制の中での表現技法の模索についてのメモ

魔弾の王と戦姫。同名のライトノベルが原作なのだが、これが非常によく出来ていると思う。
この作品は戦記物で「主人公の行動」ではなく「主人公の決断」と「その決断に依る小隊、中隊の動き」で上京が変わっていく作品だ。そのためキャラクターだけを描いていては状況の移り変わりが分かりにくい。もっと大きな視野で物語が進行していくのが戦記物だからだ。
その辺りを見せる際に佐藤竜雄は歴史家の視点で戦場全体を見渡したナレーションを介在させる事で、戦況そのものの移り変わりを描く演出を採用している。そんなナレーションのお陰で戦況の移り変わりがよく分かるし、劣勢を覆す策略など主人公達の決断に伴う戦況の変化にカタルシスが生まれているし、物語が非常にテンポよく進んでいく。
またアニメが面白かったので原作に手を出してみたが、本作は原作から一部のエピソードを削っていたり改変こそしているが、一部のエピソードを削除・改変しながらも肝心な部分は外していないように思う。
ティグルが好青年であることを端的に表した一巻のエピソードの削除は確かに勿体無くはあるものの、ティグルを演じる石川界人の演技プランからも好青年っぷりと領民から好かれる人間性は見えてくるのでそこまで気にならない。
今期一番とは言わないまでも堅実な作風から個人的にはかなり楽しんでいる一本だ。



『テラフォーマーズ』。
原作は割と好きなのでアニメも一応見ているのだが、正直なところグロテスクな表現の殆どが作品の魅力を損なうレベルの規制に晒されていて「見るに耐えない」の一言である。
「表現を規制する」という動きそのものが悪いというのは確かにあるのだが、しかしながら『テラフォーマーズ』と同じ時期に放送されている作品群はそこまでの規制を受けていなかったりもする。
例えば『サイコパス』では主人公達の使う武器、ドミネーターのエリミネーターモードの射撃を受けた対象は「体が大きく膨らみ破裂する」。言うまでもなくグロテスクだし、二期の四話では事件に巻き込まれただけの民間人が公安局のドミネーター一斉射撃を受けて、「次々と破裂して死んでいく」というショッキングな映像が放送されたのだが、特に表現規制はされていなかったように思う。
そういう意味では『テラフォーマーズ』の表現規制は「放送局の審査基準に引っかかった」というだけで、可哀想な犠牲者ということも出来るのだろうが、個人的な見解としては『テラフォーマーズ』のグロを始めとする表現規制に関しては「原作からしてグロテスクな表現が多い作品なんだから、それぐらい分かった上で制作していればよかった」という意見である。
そもそもこういうエロやグロの表現規制に関して、アニメ制作スタッフ側がただ「規制されるだけ」という状態であったわけではないと思うのだ。
エロやグロに対する表現規制が強まる動きが起きる度に、制作スタッフ側も作品としての魅力を損なわないような表現技法を模索してきたように思えるからだ。
例えば「どれだけ激しいアクションをしていてもパンツだけは絶対に見えない」という鉄壁スカートなどもそういった表現の一つで、「パンツが見えたら黒塗りやら不自然な光の差し込みで規制されてしまう」というのならばパンツを見せないようにすれば良い話で、「どれだけ激しいアクションをしていてもスカートがパンツを見せない」と言う鉄壁スカートはそういった表現規制に対する挑戦として生まれた表現だろう。
また女性キャラの入浴シーンで深夜枠のアニメにも関わらず必ずと言っていいほど不自然に現れる湯気や日光もそういった規制の中で抗う動きの中で生まれたものだが、この手のエロの表現では『フルメタルパニックふもっふ』九話「女神の来日(温泉編)」が絶妙だ。
局部を隠すために挿入される湯気や日光を一切使わずに女性キャラの入浴シーンを演出しているのだが、京都アニメーションが行ったのはシャンプーや蛇口などの局部を隠せるものを散りばめ、レイアウトを工夫することで局部を隠し切り、湯気や日光の存在しない入浴シーンを作り出していた。転倒したテッサの股間を隠し通したシャンプーなどは神がかっている。あの回の規制への挑戦っぷりは何度見ても色褪せない面白さだろう(なおこの回の演出家は山本寛である)。
またそういう規制に対する表現がされていたからこそ、局部を隠す表現をギャグとして用いる手法が生まれたとも言える。
十年ぐらい前の作品ではあるが『ガンソード』の十七話「座標Xを追え」では「女性キャラの尻をロバで隠す」という演出が取られたが、あれは完全に「規制」というものをギャグとして扱っていたし、『聖痕のクェイサー』ではどうやっても女の子のおっぱいを露出させないといけない作品なので、不自然に差し込む日光やベタ塗りの表現が面白かった部分もある。
まあ『聖痕のクェイサー』の場合だと「アバンタイトルの前回までの粗筋が妙に長いと思ったらそこは全部規制箇所」というのがあまりにも豪快すぎて誰にも気づかれない規制の仕方で、正直感心の方が上回った。あとエロに関する規制だと「ビール缶で局部を隠す」という表現を手を変え品を変えと言う形で新劇場版でもやりきった『エヴァ』は何だかんだ言って凄い。
『花咲くいろは』の手の動きだけで局部を守り切った辺りはもはや「ブロックサインとはこういうことか!」と笑うしかないレベルだ。
この辺りはエロに対する規制の中での模索の話だが、グロに関して言うのなら『魔法少女まどか☆マギカ』三話の巴マミが頭を齧られる――所謂マミるカットなどは「グロだけどグロに見せない工夫」が大事なところだろう。
あのシーンではシャルロッテの口の中のアングルから巴マミの絶望した表情を描いた後でマミの頭が齧られるわけなのだが、肝心のマミの頭が齧られているカットではレイアウトで頭を見切れさせる事で齧られているところを一切見せていない。マミの全身が映るのは齧られた後、地面に落ちていくところぐらいだ(なおこの落ちていくマミには頭部がちゃんと見当たらない)。
視聴者は直接巴マミが頭を齧られているところを見せられたわけではない。しかし視聴していた人達はあのカットで「巴マミが頭を齧られる」というグロテスク極まりない表現を見せられたように感じたはずだ。
トリガーの『キルラキル』もバイオレンス要素が強くグロテスクな描写こそあったものの、それらはシルエットで見せるなど、やっていることはグロテスクなのに、映像としてはそういうグロテスクさを感じられない演出がされていて、むしろスタイリッシュさの方が勝るという工夫が目立つ一作だった。
『テラフォーマーズ』と同時期に放送されている『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞』では二話にして主人公を慕っていた女の子が胴体半ばで真っ二つにされているし、中隊の隊長も直接は描かれていないが見るも無残な死に方をしているのだが、どちらもレイアウトや演出を工夫することで表現の規制を乗り越えて視聴者に伝えたい意図を演出しきっている。
特に中隊長が死ぬシーンでは「隊長の義眼が主人公の元に転がってくる」というカットが挿入されることで、中隊長の死体が目も当てられないほどの状態であることは何となく分かる。そういった工夫によって画面が暗くされていても「見るも無残な隊長の姿」という今後の展開のために見せておきたいものが伝わるように演出されているのだ。
このように「表現の規制」というものに晒されながらも、表現手法を模索する多くのクリエイター達がいたからこそ、今日のアニメの表現というものがあるのではないだろうか。

話を『テラフォーマーズ』に戻すが、『テラフォーマーズ』は原作からしてグロテスクな表現が多い作品だ。
進化したゴキブリ、テラフォーマーが腕を薙ぎ払うだけで人はたやすく死に至るし、本気を出せば人間など引きちぎられてしまう。そういった生物との戦いを描いているのが『テラフォーマーズ』で、その「人間を簡単に殺せる能力を持つゴキブリ達」だからこそ、人間達の生き足掻こうとする部分が印象に残る。
原作からしてそういう作品なのだ。そういう作品をTVシリーズでやる以上、グロに対する規制というものは最初から予想されていたはずだ。
どれだけ規制のガイドラインが放送局ごとにまちまちであったとしても、そういった規制に晒されることを予知できなかったわけがない。そうなってくると演出やレイアウトなどで工夫する余地が残されていたわけで、「なぜ何の工夫もしなかったのか」というしかない。
本当に何を考えていたんだろうか。俺には全く分からない。

でも今期アニメで一番わからないのは『SHIROBAKO』の高梨太郎だと思う。
制作進行が作画班と3DCG班の不協和を引き起こして本人はそれに無自覚。その後の九話の制作作業にもトラブルをプレゼントフォーユーしておいて、「お前も俺側の人間だから」とかのたうち回るとか、本当に意味がわからない。
制作デスクが最終話の絵コンテをまだ上げない監督につきっきりになっちゃったので、そのせいで進捗管理が疎かになってトラブルが深刻化したという見方もできるのだが、アイツが余計な一言を言わなければこういう問題は起きなかったわけでなぁ。本当にどうなんだ、あの男は。
五話では板野一郎がモデルのキャラクターが出てきていたけど、板野さんは今『楽園追放』を制作しているグラフィニカに所属してアドバイザーやってるんだよなぁ。
板野一郎が最後に監督した『ブラスレイター』とか今見ても見応えがあるし、あの人は本当に凄い……。


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