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『アイカツ!』116話に見るサインが描く「アイドル・大空あかり」について

「登場人物の死」というのは見ているものに少なからず衝撃を与えるものだ。『まどか☆マギカ』の巴マミ然り『Gガンダム』の東方不敗然りである。最近多く見かける(と言われているような)「三話で誰かが死ぬ展開」は、まあそういう「衝撃」を与えることで「物語に興味を持ってもらう」というために用いられる事が多い展開の一つだろう。別にそれ自体はどちらでもいいのだが、『レディジュエルペット』の今週の展開はまさに「衝撃的」である。
いやあの展開そのものは誰もが予想出来たものなのだ。
あの人物が掘り下げられるにつれて明らかになっていく事実の数々やここ最近の展開、そして年明け一発目のあの回で告げられた「未来はない」という占いの結果はあの人物に何か起きることを――死を予見させるように仕込まれていたことは間違いない。それだけ綿密に「死ぬ」という事を予感させる描写を積み重ねていたのになぜそこまで衝撃的かと言われれば、本作のストーリーテリングが絶妙で、死んだその人物が人と心を通わせ、愛を育める「血の通った人間」として描写されていたからに他ならない。また視聴者視点では真実は既に明かされているからこそ、「どうかこの二人が幸せでありますように」と願わずにはいられないような展開が続いていた事も大事なところだろう。
あの人物がもう少し格好悪いのならきっと逃げ出して終わりまで一緒にいただろう。しかしあの人物は格好良く、「自分の愛したあの人なら真実を知っても一緒に乗り越えていける」と確信し、想い人は信じていた通りに素敵な存在だった。
視聴者が願った愛する二人の幸せは物語の黒幕によって無残に散らされたわけなのだが、まだ物語は終わっていない。それはつまりあの人達が幸せになる可能性は残されているということでもある。
本作は「素敵なレディになる」という夢を持った少女達の自己実現の物語であるとともに、「人を愛する」ということの愛おしさ、尊さを描いた素晴らしい作品だ。「憎しみに満ちた世界を癒やすのは愛のみ」とレディジュエルは語った。ならばその愛が憎しみを癒やす事で描き出される彼女達な素敵な未来を楽しみにするしか無い。残り二ヶ月ほどの物語、最後まで見届けるしかない。
と書いているけど、見終わったあとは一時間ぐらい放心状態で、何を見ても頭に入ってこなかった事をここに書いておく。やっぱりすげぇなぁ、レディジュエルペット。



星宮いちごを主役とするライブイベント、「大スター宮いちごまつり」。そのPR活動を手伝った事で星宮いちご・霧矢あおい・紫吹蘭の「アイドルとしての在り方」を間近で体感した大空あかり、氷上スミレ、新条ひなきの三人はそれぞれの道を模索していくことを決める。
年末年始でそれぞれ英気を養った後で116話から描かれることになった三人のアイドル達の新たな一歩。そんな三人の中で最初に一歩を踏み出したのは『アイカツ!』シリーズの二代目主人公を務める大空あかりだ。
『アイカツ!』シリーズのシリーズ構成を務める加藤陽一氏が「お爺ちゃんお婆ちゃん世代から小さい子供世代まで、幅広い世代の人達から愛されるアイドルにしたい」と言う大空あかりだが、そんな116話で描かれた大空あかりの一歩はそんな「アイドル・大空あかり」の片鱗が垣間見えるものだった。
星宮いちご達を手伝って「自分の得意なことを見つける」と思いを新たにしたものの、特にこれといったことが思いつかない大空あかり。尊敬する星宮いちごに貰ったアドバイスを胸に、ピンと来たというお天気キャスターのオーディションを受けることに決める――という116話。
この116話で大事なことは、大空あかりが「何となくピンと来た」というだけで受けることに決めたお天気キャスターのお仕事を調べていく中で、「自分がお天気キャスターと言うお仕事を通じて何を伝えたいのか」ということを丁寧に突き詰めていったことだろう。
「何かを伝える」ということはとても難しいものだ。「情報を正確に伝える」という事以上に「その情報を聞いて、どう思って欲しいのか」というところまでを意識しなければならないからだ。
作中でも触れられているように「晴れ」という事を聞いて喜ぶ人は多いが、農家の人達のように「雨が降ってもらわないと困る」と言う人も多い。一つの情報だけを切り出してみても、その情報を受け取る人達にとって様々な捉え方をする。
自分がポシティブに捉えている情報でも、別の人からすればネガティブな情報だったりする。
「天気予報」と言う一日限りの情報であっても、受け取る側によってはその印象は大きく違ったものとなる。
「お天気キャスター」と言うお仕事を通じて描かれた「何を伝えて、どう思って欲しいのか」という事は「アイドル・大空あかり」にとっても同じことが言える。
大空あかりはアイドルとして、自分を見てくれた人達に何を伝えてどう思って欲しいのだろうか。
その事の難しさを改めて痛感させられた大空あかりだったが、だからこそ見つけられた「空は雨でも、気分は晴れ」「楽しい時はもっと楽しく、悲しかったり寂しかったりする時は和らげられる」のような、「見てくれた人を、聞いてくれた人を少しでも幸せにしたい」というポジティブな気持ちはアイドルとしての彼女を成長させる。
その成長がお天気キャスターという新たなお仕事へと繋がり、大空あかりを夢へと一歩近づけさせるのである。
また冒頭で振られたサインの話がきちんと回収されているのも面白い。
この話までの大空あかりのサインは「ただ名前が書いてあるのみ」とよく言えばシンプル、悪く言えば飾り気のないデザインだが、そもそもアイドルのサインとは「そのアイドルらしさ」がデザインに現れたものだといえる。どれだけシンプルに見えていてもアイドルのサインはアイドル自身が定義する「自分がどう思われたいか」が現れているのだ。
そういった視点から従来までの大空あかりのサインを見ると、そのシンプルなサインは大空あかりの「アイドルとしての定まっていなさ」を現れていると言えるだろう。ある意味では彼女にある無限の可能性を内包しているとも言えるが、お天気キャスターとしての最初の仕事として書いたサインでは、シンプルなサインから一転してハートをモチーフに盛り込んだデザインへと変化している。
このデザイン面での変化は「アイドルとしての道が定まっていない」から「見た人が少しでも幸せになれるように」という目的を持ったことでの大空あかりの成長を表しているのだろう。ハートがモチーフに盛り込まれているのも、彼女の「ハートを届けたい」と言う思いを汲み取っているからに違いない。
一見本筋には関係なさそうに見えるサインの話だったが、アイドルの成長に合わせて変化させることで、「そのアイドルが進む道のようなもの」を感じさせるような属性を帯びさせている点は非常に面白い。その初出となるのが「お天気キャスターとしての最初のお仕事」にすることで今後の伸び白のようなものが余韻となって物語を感じさせてくれる。成長物語の熱さを一つのアイテム、デザインの変化で描いてみせる辺りに豪快ながらも繊細さも忘れていない『アイカツ!』らしさが光る。「熱い」演出である。

117話では氷上スミレの物語がまた一歩進んだが、118話からはいよいよ藤原みやびと『アイカツ!』では初となる和をデザインモチーフとするブランドである「桜色花伝」が登場する。セクシー属性なのに和風という外し方が面白い桜色花伝と藤原みやびが登場し、大空あかり達の『アイカツ!』はますます盛り上がっていく。
今は道を模索する時だが、いずれはソレイユのように彼女達もユニットを組むことがあるだろう。彼女達が結成するユニットはきっとそれぞれの道で見つけたもので輝かしいものである事は間違いない。
彼女達がどうなっていくのか。何を見つけていくのか。物語はまだ続いていくのである。


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