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『ガンダムビルドファイターズトライ』十八話に見るSDガンダムだから出来る芝居と楽しむ心の大切さについて

『蒼穹のファフナー EXODUS』。「話の立ち上がりは遅い。しかし面白い」と思えるのは、この作品が序盤に時間をかけて描いたものが「異なるコミュニティの接触とその波及」だからだろう。エメリー達の接触は新たなファフナーのコアを生み出し、ファフナーパイロット達の中にも人類軍に参加しようとする者達も出てくる。そうして繋がりが生まれた事で変わっていく姿を丁寧に描かれているのだから面白くないわけがない。
また同じ島の中でも新世代が登場し「竜宮島」と言うコミュニティそのものも外だけでなく内側からも変化していく。その変化がもたらすものが何かはまだ分からないが、少なくともこの作品が以前までのような「自分はどうあるか」と言う自分を定義していくと言う作品ではないことは今上げた事からも分かるだろう。本作はコミュニティの話なのだ。竜宮島や人類軍、シュリーナガルにフェストゥム。個人同士の繋がりという観点に目を向ければ、様々なコミュニティの存在が描かれているが、シリーズ構成を務める冲方丁はキャラクター達にとって本作のテーマを「自分が今このコミュニティにいる理由」と定義している。世界とつながる事で自分と向き合い、自分を獲得していく思春期の少年少女の姿を描いた『蒼穹のファフナー』シリーズだが、TVシリーズ二期となる『EXODUS』は前述した点を見れば今までとは大きく異なっていることが分かるだろう。シリーズを追ってきたものにとっても未知の情報に溢れているが、その一方で変わらないものもある。例えば人と人との繋がりを大事にしていることや、ごくごく普通の人間としてキャラクターを描写しようとしていることなどがそれだ。
そんな「今までと違う」と「今までと同じ」が様々な面で垣間見える『蒼穹のファフナー EXODUS』。
今まで追ってきた人間としては面白くないわけがないのだが、『ファフナー』一期を放送してたのは十年前なんだよなぁ。
十年間も愛されて今二期をやっていると思うと、凄くいい話なのでは……。



『ガンダム』の新作TVシリーズが同時期に放送されているのは2004年以来、十年ぶりのことだそうだ。
『ガンダム Gのレコンギスタ』はガンダムの生みの親である富野由悠季が五年ぶりに総監督を務めた作品だ。宇宙世紀から遙か未来のリギルド・センチュリーを舞台に、ひょんなことからGセルフに乗り込んだ少年、ベルリ・ゼナムとアメリア軍総監の娘であるアイーダ・スルガンが数奇な運命に振り回されながらも、自分達の意思で世界に向き合う物語が展開され、ガンダムシリーズの正史に繋がる作品ともあって、その物語の行く末はガンダムファンの注目を集めている。
そんな『Gのレコンギスタ』が「ガンダムの生みの親が送り出す渾身の作品」であるのならば、同時期に放送されている『ガンダムビルドファイターズトライ』は「ガンダムを広げようとしている作品」だと言えるだろう。
ガンダムのプラモデルであるガンプラを戦わせるガンプラバトルが流行っている世界を舞台に、異世界からやってきた少年、レイジとガンプラ製作の腕は天才的であるものの、バトルとなると弱いイオリ・セイ。二人の少年がガンプラファイター達との戦いの中で絆を育んでいった第一期シリーズ。その七年後を舞台とする本作『ガンダムビルドファイターズトライ』は、ガンプラバトルの魅力にハマったカミキ・セカイとかつてのリベンジのために再び立ち上がったコウサカ・ユウマ、そしてガンプラバトル部の部長であるホシノ・フミナの三人が結成したチーム・トライファイターズを主役に、ガンプラ選手権優勝を目指して戦う姿が描かれているのだが、最新話となる十八話がとても面白い一話だった。

全国大会第二戦の相手は新潟代表の統立学園のチーム、SD-R。相手を分析し尽くし、緻密な連携を持って相手を圧倒する彼らの術中にハマったトライファイターズはピンチに追い込まれる。フミナの機転によりどうにか持ち直したトライファイターズ。しかしSD-Rもまた自分達のガンプラを合体させたスナイバル・ドラゴ・ギラを投入し、トライファイターズは再びピンチに陥るのだった――という、この十八話ではSD-Rのシキ・トシヤがなぜここまでガンプラ学園を倒すことに固執するようになったかが描かれている。かつてガンプラ学園に入学することを夢見たものの不合格に潰えた。純粋な願いだったからこそ潰えたその思いは復讐心へと変わり、ガンプラ学園を倒すためにガンプラバトルを利用するような存在へと変わっていった。そんな彼がガンプラ学園を倒すために作り上げたと語るスナイバル・ドラゴ・ギラは、もはや「ガンプラ」というよりも「怪物」だ。『ガンダムビルドファイターズ』シリーズにおけるガンプラは、ファイター達の思いの結晶であることを考えると、スナイバル・ドラゴ・ギラは制作者であるシキ・トシヤのガンプラ学園への凝り固まった憎悪の化身といえる。スナイバル・ドラゴ・ギラを「怪物」として演出されている背景には、そうした「自分を不合格にしたガンプラ学園への憎悪と復讐心がシキ・トシヤの心を怪物のように変えてしまっているから」と言う理由があるのではないだろうか。
そしてそんなスナイバル・ドラゴ・ギラを倒すトライファイターズの流れは理屈の通ったものだった。
物語の流れとしてはセカイがトライバーニングガンダムで防御用障壁を砕く→ライトニングガンダムが他の二人を撃墜する→フミナが繰り込むと言う流れになっているのだが、スナイバル・ドラゴ・ギラの障壁を破ったセカイが一番最初にトシヤの本心を引き出しているのだ。
こセカイは以前にも「拳を交わすことで相手の心に触れる」ということをやっているのだが、今回は拳を交わして復讐心を感じ取りトシヤに「お前は本当にガンプラバトルを楽しんでいるのか!」と投げかけている。そんなセカイの問いかけに対してトシヤは「綺麗事を!」と感情を全面に出して答えているのだが、この流れとスナイバル・ドラゴ・ギラがトシヤの復讐心の化身である事を踏まえて、セカイが防御用障壁を破壊するシーンを見てみると「トシヤの凝り固まった憎悪を、ガンプラバトルを楽しむセカイがヒビを入れた」というように見えてくる。破壊した技がウィルフリッドとのガンプラバトルの中で生まれた技であることを考えると、「ガンプラバトルを楽しむセカイの心が憎悪で封じ込めてしまったトシヤの心に切り込んだ」という意図が込められているのではないだろうか。
そんなセカイの後にアドウ・サガによってガンプラを破壊された事でガンプラバトルへの情熱と楽しさを忘れていたものの、セカイと出会った事で思い出したコウサカ・ユウマと、ガンプラバトルの楽しさをずっと忘れていないホシノ・フミナが続く事で、「ガンプラバトルを楽しんでいないトシヤと楽しんでいるフミナ達」という対比を生じさせ、この対比が「トシヤがトライファイターズとの戦いを通じて、ガンプラバトルを楽しむ心を取り戻す」と言う決着に説得力がある。ウィルフリッドの言葉に素直に向き合えたのも、「ガンプラバトルの楽しさ」を思い出させてくれるようなトライファイターズとの戦いがあったからこそなのだろう。

またこのスナイバル・ドラゴ・ギラ戦ではSDガンダムが大活躍で、見せ場も非常に多い回だった。スナイバル・ドラゴ・ギラ自体がSDガンダム三機が合体した姿なのだが、今回注目したいのは戦いに決着をつけたスターウイニングガンダムだ。
なぜなら今回のスターウイニングガンダムは特に表情付けが工夫されていたからだ。
SDガンダムの特徴としては等身が低い事もあるが、個人的には「目があること」というのは非常に大きいようにも思う。「目がある」ということは、それだけ「多様な表情を見せられる」ということだ。
『ガンダムビルドファイターズ』シリーズではSDガンダムを描く際に、「一人のキャラクター」として捉えているかのような描き方をしており、表情は変わらないプラモなのにガンプラバトルでは表情豊かに描かれている。
スナイバル・ドラゴ・ギラ戦ではそんなSDガンダムの「豊かな表情」が非常に生かされている。
例えばフミナの「笑って戦うわ!」の後の突撃後、スナイバル・ドラゴ・ギラの迎撃による破壊された中から登場するスターウイニングガンダムの表情付けはフミナの感情を表しているかのようだ。

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そんなSDガンダムの表情豊かな面がフルに生かされたのは、やはりスナイバル・ドラゴ・ギラに哀れんでいるかのような目を向けるこのカットだろう。

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この描き方が出来るのは本作の戦闘シーンが「実際に機体に載って操っている」という見せ方をされているからだが、SDガンダムだからこそトシヤとフミナの二人による「人間同士の芝居」を挟む前に、スナイバル・ドラゴ・ギラとスターウイニングガンダムの二機による細やかな感情を込めた芝居を演出することが出来るのだ。
この十八話ではスターウイニングガンダムのリアルモードにとても驚かされたが、演出の面で見るとSDガンダムの格好良さを全面に押し出されている。
『ガンダムビルドファイターズトライ』の監督である綿田慎也は、SDガンダムを「可愛さと格好良さの共存と思っていた」とインタビューで語っていたが、この十八話のスターウイニングガンダムの描き方はまさにそうした「可愛さと格好良さが共存したもの」で本作らしい描かれ方だ。物語も残り僅かとなってきたが、可愛く格好いいSDガンダムの姿をまた見せてほしい。

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