Entries

『アイドルマスターシンデレラガールズ』コミュニケーションが繋ぐチームとアイドルへの道について

仮面ライダードライブ。「刑事で仮面ライダー」というのは始まる前のキャッチコピーだったけど、「仮面ライダーであることは隠さなければならない」という要素が「刑事として人を守る事」が制約になっていて、今は警察内部に怪人がいるせいで「刑事であることがライダーとしての活動の制約になる」という逆転具合が実に心地よい。
「仮面ライダーであることは隠さなければならない」というのが作劇上のメリハリとなっていて面白かったんだけど、「仮面ライダーである」ということが公表された事で「隠さなければならない」という制約から解き放たれながらも、「警察である」と言うことが別の制約となっていて、性質そのものは変化しているけどメリハリそのものは続投というのは本当に上手い。さすがは三条陸である。また相対的にマッハやチェイサーの立場もドライブより自由度がある事を演出しているのも上手い。チェイサーとか本当に便利だよなぁ。唐突に出てきても全く違和感がないのはチェイサーだけだし。
しかしマッハがロイミュード根絶に傾倒しすぎている背景が明かされてみると、もう「なるほど」としか言い様がない。その内容が内容なだけにさらっとした印象で流してしまうのは正解なんだけど、そうなってくると霧子の扱いが非常に気になる。いやその設定だと霧子は間違いなくその真実を知りませんよね……。真面目に考えりゃ霧子もロイミュードとかになっちゃうんだけど、その辺をどうするのかなぁ。いや三条陸なので全く心配してないけど、ネタばらし次第じゃ悲劇にしかならんよね、これ……。



大手芸能プロダクション、356プロダクションが新たに始めたシンデレラプロジェクト。そんなプロジェクトからデビューするアイドルとして集められた、十四人の普通の少女達が初めて足を踏み入れたアイドルの世界に戸惑いながらも、シンデレラを目指して仲間達と頑張っていく。そんな少女達のシンデレラ・ストーリーを描いたのが『アイドルマスターシンデレラガールズ』だ。
短命に終わりがちなソーシャルゲーム業界の中で、三年以上もの間、愛され続けているソーシャルゲームをアニメ化作品となる本作だが、その最大の特徴は「プロデューサーの存在」と「十四人とメインストーリーを紡ぐキャラクターを絞り込んでいる」ということだろう。
アイドルをプロデュースするプロデューサーと言う存在は『アイドルマスター』と言うシリーズの特異な点だといえるだろう。
昨今様々なアイドルコンテンツが展開されているが、「アイドルとプロデューサー」と言う関係が作品の核となっている作品は『アイドルマスター』シリーズぐらいだろう。
ユーザー=プロデューサーがアイドルと共に歩んでいく。それが『アイドルマスター』という作品の特異性であり、魅力的な部分なのだ。
そのため、この「プロデューサー」というものは『アイドルマスター』を展開する上では外す事が出来ない部分となっており、錦織敦史監督が制作した『THE IDOLM@STER』では「未熟なれども、アイドル達を支え、時に一緒に間違えながらも成長していく」というプロデューサー像が新たに設定されている。
『アイドルマスターシンデレラガールズ』もまた『アイドルマスター』シリーズの一つであるため、プロデューサーは必要不可欠な存在だ。
原作ではユーザーがプロデューサーとなってユニットを組んだりとプロデュースするのだが、本作では長身で強面、そして言葉数の少ないプロデューサーが設定され、シンデレラプロジェクトを総括するプロデューサーとして設定されている。
錦織敦史が生み出したプロデューサーが失敗からきちんと学んで周囲の信頼を勝ち取っていく未熟さの残る好青年だったのに対して、高雄統子が生み出したプロデューサーは言葉数の少なさや風貌から誤解されてしまう事が多いものの、大手プロダクションでプロデューサーを任せられるほどの手腕を持つ「出来る男」として描写されているなど差別化が図られている。
錦織版プロデューサーとはかなり違った印象を受ける高雄版プロデューサーだが、「アイドル達が悩んだ時に背中を押してやる」「自分なりの解答を導き出せるような手助けをしてやる」という点では同じ。しっかりとアイドル達を導いていけるプロデューサー像が構築されている。

またメインキャラクターが十四人と言う人数は分割2クールのアニメとしては多い方に入るが、百人以上のアイドル達がいる原作を考えると「人数を相当絞り込んでいる」と言えるだろう。おそらくこの十四人になったのは原作にあるキュート、クール、パッションという属性とその属性内でのアイドル達の多様な個性、そしてアニメが紡ぐストーリーとの兼ね合いを考えた結果なのだろう。
しかし三度に渡る総選挙の結果を見ても分かる通り、アニメで中心となる十四人以外のアイドル達にも根強いファンが付いており、そのファン達を切り捨てるようなことは決して好ましいことではない。「物語を紡ぐ上ではこの人数がおそらく限界であるにも関わらず、多くのアイドル達にファンが付いている」という問題に対して、高雄統子達メインスタッフが用意した解答は「物語を構成する要素の一つ」としてアイドル達を登場させるということだった。
本作の風景を見てみると随所で原作に登場するアイドル達の姿が描かれている。
看板やポスター、または通り過ぎる一般人や346プロ所属の先輩アイドルなどなど。背景や通行人などで原作のアイドル達を登場させているが、そういう形で登場させることで十四人の少女達が足を踏み入れた「芸能界」の「広さ」と「多様性」を演出している。またアニメで一般人として描写された少女達も原作では中心人物達と同じアイドルである事から、十四人と同じように「出会いさえあればアイドルになれる存在」という演出と読み解く事も出来るだろう。
「寡黙なプロデューサーがそうであったように、少女達をアイドルにするのはプロデューサー=ユーザーだ」というメッセージが込められているのだとすれば、これほど見事なメッセージの展開もないのではないだろうか。
ともすれば「メインキャラクターだけが豊富にいる」という印象になりかねないところだが、本作は絶妙なところでバランスが取られている。また登場するアイドル達の中には今回のアニメのために声優が用意されたアイドル達もいて、原作をプレイしているユーザーならではの驚きが生まれている点も本作を視聴する上で重要な点だ。

そんな『アイドルマスターシンデレラガールズ』だが、ストーリー面でも面白い作品に仕上がっている。
一話から三話までを使って島村卯月、渋谷凛、本田未央を中心に、彼女達が足を踏み入れた「アイドルの世界」「芸能界」というものを描いていく。
夢中になれる情熱はあるものの機会に恵まれなかった島村卯月と夢中になれるものを持たない渋谷凛。
二人を対比させながら、急くことなく描写を一つ一つ積み上げることで「普通の人間がアイドルの道を歩き出す」という原作の多くのアイドル達が経験する物語の始動を「渋谷凛・島村卯月の物語」に落とし込まれており、渋谷凛が一歩を踏み出すシーンではダイナミズムを感じさせてくれる。しかしこの一話で一番大切なのは本田未央の存在だろう。
一話を「島村卯月と渋谷凛がアイドルになることを志す」というところで終えるのではなく、本田未央の登場を持って終わらせることで「この二人が中心の物語ではない」という事を描写している。
そんな本田未央から繋がる形で346プロと言う世界とシンデレラプロジェクトの仲間達を描いた二話だは、一歩踏み出したからこそ見える世界と存在を描き、三話ではアイドルになったからこそ得られる体験と快感を描いている。とりわけ素晴らしいのは三話で、上手くいかない練習に緊張から会話すらなくなってしまうなど「失敗する」と言う雰囲気だけが色濃く演出されている。「これは失敗する」と言うネガティブな要素を数多く散りばめているからこそ、先輩の一言がきっかけで一蹴される空気からはポジティブな要素を強く感じるのだ。
この三話は『ラブライブ!』一期三話と真逆の描き方をしているように思う。
『ラブライブ!』ではチラシを受け取ってくれる人達などネガティブな描写は物語から排除されているが、『シンデレラガールズ』では逆にポジティブな描写が排除されている。だからこそ積み上げてきた描写と真逆の展開を見せた時に衝撃を受けるのではないだろうか
「上手くいきそう」なイメージを積み上げてきたのに観客は一人だけで大失敗したり、「失敗しそう」なイメージを積み上げてきたのに先輩の一言で一度も成功していない事を成功してみせたりというのは、それまでの描写の積み重ねと真逆の展開だからこそだろう。
『ラブライブ!』一期三話と『シンデレラガールズ』三話は構造としては似ているが、その内容は真逆のものだ。
しかしだからこそ失敗を前にしてももう一度挑戦しようとする意思や、成功した事で見えた景色というものは作品の中で重大な意味を持つのである。

三話までを踏まえて展開されていく四話からは、『アイドルマスターシンデレラガールズ』と言う作品のテーマが展開されていくが、ではアニメ版『アイドルマスターシンデレラガールズ』のテーマとは何だろうか。
一概に語ることは難しいが、テーマの一つには「普通の少女達がアイドルとなり夢を叶えていく」というものがあるだろう。
これは『アイドルマスターシンデレラガールズ』と言うコンテンツの共通のテーマで、アニメ以外のメディアミックス作品でもそのテーマは大事に扱われているし、アニメでも当然忘れ去られていない。
むしろそれが特に大切なモノとして描いているのがアニメ版だといえる。
一話から三話までかけて「普通の少女達が飛び込んだ世界」というものを丁寧に描写していたのはこのテーマが『アイドルマスターシンデレラガールズ』と言う作品にとって大切だったからだろう。
しかし本作のテーマはそれだけではない。四話以降で大切になってくるのは「コミュニケーション」だ。
後から入ってきた島村卯月、本田未央、渋谷凛の三人とアナスタシア、新田美波の二人が先にデビューを決めてしまった事に不満爆発の前川みくを描いた五話もそうだが、特にその「コミュニケーション」が物語の鍵となったのは何と言っても六話と七話だ。
デビューCDのミニライブが決定し、城ヶ崎美嘉のステージでバックダンサーを務めた時のような光景が待っている!と思っていたニュージェネレーションズが自分達のステージを見て現実を突きつけられる六話だが、この話で興味深いのは本田未央の勘違いについて誰もが気づいていながらも、誰もが踏み込もうとしていなかったことだろう
つまりこの六話では勘違いしている本田未央に対して誰も向きあおうとしてなかったし、誤解を解こうとしていなかったのだ。だから本田未央は勘違いしたままステージに立ってしまい、今の自分の実力というものを突きつけられ、プロデューサーの口から冷たい現実を見せられた事で「アイドルを辞める!」と言って飛び出してしまう。誰もが気づいていながら、その誤解を解かなかったが故の因果応報とも言える展開だが、しかしだからこそプロデューサーがもう一度アイドル達に向きあおうとする展開が面白い
過去の出来事により臆病になったプロデューサーがアイドル達から逃げずにもう一度真正面から向き合う。その描写は決してスマートなものとはいえず、どちらかと言えば泥臭い。しかしそのプロデューサーの姿には臆病になる前のプロデューサーが持っていただろう「生来の真っ直ぐさ」というものが強く現れており、本作の「過去の出来事が原因で臆病になってしまったプロデューサーが本来持っていたはずの真っ直ぐな情熱を取り戻す」というアイドルの影に隠れたもう一つの物語が動き出したことを感じさせてくれる。
プロデューサーがアイドル達と向き合った時に口にした「努力します」と言う言葉だが、その「努力」の成果が描かれたのが八話だ。ゴスロリファッションに中二病的な小難しい言い回しを多用する神崎蘭子のデビューをプロデュースする際、「ゴスロリ」というところから蘭子が苦手なホラーを方向性としてチョイスしてしまう、と言うミスをやらかしたプロデューサーだが、蘭子と向き合い、仲の良い人達から蘭子を知ることで彼は蘭子の望む方向でのプロデュースを成功させていく。
一方でアイドル同士のコミュニケーションもこの辺りから描写されていく。
九話から十一話までは「プロデューサーとアイドル」というよりも、アイドル達同士のコミュニケーションが鍵となっており、とりわけ十一話のアスタリスクは「こだわりが強い二人がどうにかして分かり合う」と言う話ではなく、「相手に好みを押し付けるのをやめて相手の好みを尊重しあう」というところでの決着となっている。いずれもコミュニケーションした結果、それぞれのユニットらしい関係性を構築しており、それぞれの個性と魅力が生かされきっている。
12話ではフェスのための合宿を通じて、「フェスを通じて見たい風景」というものを共有し、また新田美波をリーダーとした「シンデレラプロジェクト」というチームの結束を深める展開が描かれたが、一期シリーズ最終話となる13話では12話とは逆に新田美波が倒れることで各々が出来る事を全うしようとする。
特に神崎蘭子は新田美波の代役を務めるべく、難解な言い回しではなく自分なりの言葉で仲間やプロデューサーに代役を務める事を進言するなど、12話で新田美波・アナスタシアの二人と組んだ事で得られた「チームの大切さ」を活かして彼女の成長を描いている。
また6話では観客一人一人を見ることが出来ず、またショックからまともなパフォーマンスが出来てなかった本田未央は、その反省を活かして二人を引っ張っていくなどリーダーとしての活躍が光る。
出身地も違えば性格も違うし、好きなものも違う。しかし全員「シンデレラプロジェクト」を通じて出会った仲間達。そんな仲間達の活躍を見て復活を遂げた新田美波と共に踏み出す「皆で見たかった風景」は、それぞれのユニットで見る風景よりも輝いて見える。
しかしこれはまだ「シンデレラプロジェクト」というチームがようやく踏み出した一歩、デビューにすぎない。彼女達がようやく踏み出した一歩が、どこに繋がっているのだろうか。三ヶ月後に描かれる第二期シリーズに期待したい。


アイドルマスター シンデレラガールズ 1【完全生産限定版】(『THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS SUMMER FESTIV@L 2015』チケット購入申込(抽選)シリアルナンバー封入) [Blu-ray]アイドルマスター シンデレラガールズ 1【完全生産限定版】(『THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS SUMMER FESTIV@L 2015』チケット購入申込(抽選)シリアルナンバー封入) [Blu-ray]
(2015/04/23)
大橋彩香、福原綾香 他

商品詳細を見る

THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS ANIMATION PROJECT 08 GOIN’!!!【初回限定盤CD+Blu-ray】THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS ANIMATION PROJECT 08 GOIN’!!!【初回限定盤CD+Blu-ray】
(2015/05/13)
CINDERELLA PROJECT

商品詳細を見る

スポンサーサイト
この記事に対してトラックバックを送信する(FC2ブログユーザー)
http://ilya0320.blog14.fc2.com/tb.php/2135-ae14133a

0件のトラックバック

4件のコメント

[C1602]

うーん…
私は6~7話は明らかにダメだったと思っちゃいますね
本田未央が克服しなければいけない問題は“バックダンサーの経験によって生じた思い上がり”であって
それをプロデューサーとのコミュニケーションの齟齬に物語を着地させるのは論点のすり替えでしょう
未央が反省し謝っているのは“ライブが失敗だったと勘違いした結果の水差し行為”であって根本的な解決になってないっていう
  • 2015-04-27
  • チョウチンアンコウ
  • URL
  • 編集

[C1603] Re: タイトルなし

そこについては六話の中で薄々感づいている描写がちょこちょこ差し込まれているんで、「思いあがりそのもの」よりも「それに気づいていながら何もしなかった」というところを問題にするのは筋道としては間違ってないと思いますね。


  • 2015-04-27
  • 水音
  • URL
  • 編集

[C1604] 承認待ちコメント

このコメントは管理者の承認待ちです

[C1605] 承認待ちコメント

このコメントは管理者の承認待ちです

コメントの投稿

投稿フォーム
投稿した内容は管理者にだけ閲覧出来ます

Appendix

魔界戦線


■DREAM WING(C87新刊)


■プリズムアライブ(C86新刊)
44829979_m.jpg
とらのあなで委託中

■スイッチオン!(C85新刊)
アイカツ3
とらのあなで委託してました

■RUNWAY
表紙
とらのあなで委託してました

プロフィール

  • Author:水音
  • tumblrの方が積極的に更新してるマン。
    面倒くさがりなので、Twitterのほうが捕まります。

    魔界戦線



    連絡先  :mizune.moon.sounds@gmail.com
    @を半角にして下さい

カウンター