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『クラスルーム☆クライシス』「学生+技術者orスポンサー」の多重構造について

『シンフォギアGX』。脚本も面白い。演出も冴えてる。作画も安定しているし歌もいい。でも音響演出の酷さは牛歩としか言えないぐらい殆ど進歩してないなぁ。歌う途中でセリフを発しなくなっているので二期よりは改善されているけど、遠近感を意識して音量調整を全くしていないのは相変わらずで全く距離感が感じられない。
『シンフォギア』シリーズの歌は設定上シンフォギア自体から出ているはずなので、奏者から離れれば離れるほど音は小さくならなければならないし、近ければ近いほど音が大きくないといけない。でも『シンフォギア』の音響演出はそういう部分を全く意識していない。モブキャラが「何か聞こえる」とセリフで言っていても音量自体は全く変えていないのだ。結果として音の大きさから「戦闘現場から遠いのか近いのか」と言った距離感を感じさせる演出に失敗していてせっかくの歌が「挿入歌」にしか感じられず、「歌いながら戦う」と言うシンフォギア独自の設定が生かされた演出にできていない。実に勿体無いことだ。
なんかもうここまで来ると、流石にわざとやってるんだと思うんだけど、わざとやっているのなら「設定をちゃんと読みましょう」って話だよなぁ。「反響音まできっちり計算してやれ」とまでは言わないけど、「歌」を鍵としている物語なのに歌の演出面での扱いが雑だと萎えるよ。設定ではちゃんと「シンフォギア自体が旋律を奏でる」と言う設定があるのに、それを拾う気がないんだからなぁ。
こういうことを書くと「嫌なら見るな」と言われそうだが、内容自体は楽しんでるんで。単に「音響演出をもうちょっと何とかしろ」って話です。



2015年7月より放送開始した『クラスルーム☆クライシス』は発展型試作ロケット開発を目的とする「先行技術開発部 教育開発室(通称:A-TEC)」に所属する学生達を描いた作品だ。彼らは昼間は学生として学校に通いながら、夜は霧科コーポレーションの社員としてロケット開発に励んでいる。そんなA-TECに転校生兼先行技術開発部長としてやってきた霧羽ナギサ。多額の予算を投じているのに全く成果を上げないA-TECから人員削減するために送り込まれた上層部からの刺客であった。果たしてこのA-TECはどうなってしまうのか。学生兼技術者達の危機(クライシス)はこうして幕を開けた――というストーリーの本作はジャンルとしては「SF+学園物」というジャンルになるのだろう。前述したストーリーからは『宇宙のステルヴィア』を彷彿とさせるが一話はかなり堅実かつ大胆な構成。「学園物」と思わせておきながら実は『ライトスタッフ』的な「先行技術者物」というフェイントがよく効いており、二話以降の視聴意欲を沸かせてくれる。
そんな本作の特に面白い点は「多重構造の群像劇」になっていることだろう。
本作はA-TECという一つのクラスとその担任を主人公にしているのだが、このA-TECは「学校の一クラス」であるとともに「先行技術開発事業部 教育開発室」と言う側面を持たされている。これはA-TECというクラスに所属しているキャラクター達も例外ではない。つまりA-TECに所属するキャラクター達は全員「学生」であるとともに先端技術を用いてロケットを開発する「技術者」でもあるのだ。こうして一人のキャラクターに二つの顔を持たせることにより、「転校生」など学校ならではの出来事で一喜一憂する姿や学生らしいやりとりを楽しむ「学園物らしさ」と、技術者として「新型ロケット開発」と言う目標のためにチームで一丸となって邁進する「技術開発物らしさ」の両方の魅力を展開することに成功しており、これが実に楽しい。
学生らしい語り口で繰り出される技術者としての冷静な指摘は、本作の登場人物達が「学生」であるとともに「技術者」でもあるからこそだろう。こうした描写が「学生」と「技術者」の両方を印象づけさせており、キャラクターの魅力を引き出す。
またこのA-TECも一枚岩ではないのが面白い。というのも、A-TECに所属する殆どの生徒は「学生でありながら技術者」なのだが、転校生としてやってきた霧羽ナギサは学生ではあるものの「技術者」ではなく、そんな技術者に出資する「スポンサー」の人間だからだ。そしてそんな霧羽ナギサは、スポンサーとして「多額の予算を使いながらも成果を挙げない」というA-TECから人員削減するためのリストラを使命としてやってきている。
つまり本作は「A-TEC」というクラスの中で「スポンサー対技術者」という対立構造まで発生させている作品なのである。
スポンサーの希望は人員削減、つまりはリストラなのでそこには必然的に技術者との対立が発生し、クラスそのものを大きく揺さぶる騒動となっている。だから本作は「クラスルームクライシス(=教室の危機)」なのだろう。
出来事そのものは「クラスそのものの存亡の危機」なのだが、本作が舞台とする「A-TEC」と言うクラスは「発展型ロケット開発」というプロジェクトのチームでもあるため、「プロジェクトそのものの存亡の危機」という意味もこのタイトルに込められている。二つの顔を持つA-TECを題材にしているからこその「らしい」タイトルだといえるだろう。
もっともその「クラスルームクライシス」を解決するための手段も極めて単純だ。
教室の中にスポンサーがいる以上、このスポンサーに「リストラは必要ない」ということを理解させればいい。それだけなのである。
しかしここで大事なのは「学生」と「スポンサー」の両方の意味で理解してもらわなければならないということ。A-TECのリストラ阻止は学生生活だけではダメなのだ。あくまで「スポンサー」としてリストラを進めようとしている以上、技術者としてそのスポンサーを納得させるだけの成果を挙げなければならない。
そのため、本作は「感情」と「理屈」の二つの側面から「霧羽ナギサ」という「クラスメートでありスポンサーでもある」というキャラクターを攻略しなければならない。真の意味でクラスが一丸となって「ロケット開発」と言うプロジェクトに対して、予算に見合う成果を出せるのかどうか。そして学生らしからぬ言動が多い霧羽ナギサが学生として何を得るのか。それら全てに関わる「A-TEC」と言うクラスそのものが存続するのかどうか。作品への導入として割り切って作られた一話は今後の展開について色々と考えさせてくれ、非常に楽しいものだった。

本作の監督を務める長崎健司は『ガンダムビルドファイターズ』で世界の壁を超えた友情を描き、コミュニケーションの大切さを見せた男である。そんな長崎監督と組む丸戸史明は『WHITE ALBUM2』や『冴えない彼女の育てかた』で時間をたっぷり書けて、物語を描ききる事に長けた作家である。
『クラスルーム☆クライシス』はそんな両者の得意な部分が見事に噛み合っており、細部にまでこだわり抜かれた設計の美しさが魅力的な作品に仕上げられている。
ゴール地点は明白なれど、過程は不明。本作の結末がきっと面白いものであることに期待したい。

 






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