Entries

『トライブクルクル』ジェイの理想と二つの否定について

『ピクセル』視聴完了。「宇宙人が攻めてきた! 何とかして倒さないと!」というハリウッド映画のステロタイプ的な物語を「アーケードゲーム」と「ゲーマー」という切り口でパロディにした作品でなかなか面白かった。人生が少しづつずれていくそもそもの原因となる『ドンキーコング』の扱い方もよかったし、「ゲームの持つ法則性」を現実で再現する事で生まれるロジカルなアクションも楽しい。政府首脳陣が徹底的に「バカ」として描かれているけど、そういうところは『アイアン・スカイ』を思い出した。世界存亡の危機にならないと支持率が回復しないとか酷すぎるぜ。
恋愛要素について「いらない」と言う人がいるけど、この作品は「ステロタイプなハリウッド映画のパロディ」を志向して制作されていると思うので、ベタベタで特に凝ってない感じの恋愛ドラマって必要だと思う。むしろ恋愛要素がないとまとまらない感はちょっとするかな。
しかしこの作品で一番輝いているのはワンダーキッドではなかろうか。アイツ、「本当に陰謀だった」「ゲーマーとして大活躍する」「子供の頃から嫁にしたかったキャラと結婚する」と一通りオタクの夢を叶えてるんだよなぁ。エドガー・ライトの『ホット・ファズ』におけるダニーも最終的には夢を一通り叶えてるし、やっぱりオタクバンザイ映画にはオタクの夢を一通り叶える存在が必要なんだなぁ。



秋の番組改編期に突入した事で、春や夏に放送開始したアニメが次々と終了を迎え、そしてまた新たなアニメが放送を開始している。今まで三ヶ月から半年ほど見続けてきたアニメの終了には一抹の寂しさを覚えるが、新作アニメへの期待感でワクワクする気持ちは抑えられず、何とも混沌とした心持ちでアニメを見ているのだが、今季終了作品の中で一番面白かった作品をあえて一本取り上げるとしたら、自分としては『トライブクルクル』になるだろう。
『トライブクルクル』はカリスマダンサーであるジェイ・エルと一緒に踊る事を目指して頑張るダンサー達の活躍を描いた作品で、2014年10月から放送開始し、2015年10月4日の放送で完結を迎える予定である。「ストリートダンス」というものに真剣かつ真面目に向き合う姿勢や、「身体が成長してしまって、本人の望みとは関係なく素質が変化してしまう」のような成長期まっただ中である中学生であるからこその悩みをきちんと描いている事など、この作品の面白い点は上げ始めれば本当にキリがないのだが、その中で個人的に一番面白いと思うのは、昏睡状態にあるジェイ・エルの理想――「戦争や貧困の根絶」を継ぐメイベルとギャラガーの二人の人間の考えの違いと対立が物語の根幹にあることだ。

「ジェイ・エルと一緒に踊るダンサーを見つける」という名目で「ダンスロード」というオーディションを企画したメイベルは、「ジェイ・エル」というシンボルを守り続ける事で、戦争や貧困のあるこの世界を変えようとする意思を世界に示し続ける道を選んだ。そのために彼女はジェイ・エルのダンスの全てをプログラムしたダンスロイドを用いて、ジェイ・エルの存在を世の中に示し続けた。
ダンスロードを開催したのもジェイ・エルらしさを守り続けるためだ。全世界のダンサー達から最先端のダンスを提供してもらうことで「常に最先端のダンスを学んでいるジェイ」という世間のイメージを守り、戦争根絶や貧困に立ち向かう象徴にしようとしていたのだ。
それに対してジェイの尊い理想を認めず、それどころか彼の命を奪う事で理想を否定しようとする者達がいる事に絶望したギャラガーが考えるのは別のやり方である。
彼が選んだのは「圧倒的な力、資金によって理想を否定する者達全てをねじ伏せる」と言うやり方である。そのために彼が仕掛けたのが「クラウドハイ」だ。サブリミナル効果などで人を操ることが出来るクラウドハイを利用すれば多大な資金を引き出すこともが出来る。その資金があれば戦争や貧困を無くす事ができると考えたギャラガーは、ジェイですら認めないほど危険なクラウドハイという手段をあえて選ぶ事で「戦争や貧困の根絶」をいうジェイの理想を実現させようとした。
メイベルとギャラガーは、どちらもジェイの理想に共感したからこそ、その理想を成し遂げるために業を背負う覚悟を固めた存在である。メイベルは「ジェイ」という平和のシンボルを守り続けることで、ギャラガーは「クラウドハイ」という力によってジェイの理想を実現させようとした。双方の対立はダンスロード最終オーディションの場で表面化し、「どちらのやり方が正しいのか」という戦いに発展するのだが、この対立の決着がまた面白いのだ。というのも、メイベルの考え方もギャラガーの考え方も、ダンスロードに参加したダンサー達によって否定されているのである。
メイベルもギャラガーもジェイ・エルに共感したからこそ業を一人で背負う事を決め、それぞれのやり方でジェイの理想を成し遂げようとした。しかしダンサー達が歩き出していたのはそのメイベルでもギャラガーでもない第三の道だ。彼らが選んだのは「ジェイ・エルの魂を受け継ぐ」という事。それは「ジェイ・エルの理想も、その理想の中で生まれる業も皆で共有する」という事でもある。
一人で実現する事が困難な理想なら皆で共有すれば実現する可能性も生まれるだろう。本作におけるダンサー達はチームを組んでそうやって歩んできたからこそ、今「ダンスロード」と言うステージに立っている。メイベルとギャラガーの二つの考えを否定するダンサー達の在り方はとても印象的だ。
そしてそんなジェイの魂を受け継ぐダンサー達のムーブに呼応するかのように目覚めるジェイ・エル。彼が眠りの中で何を見つけたのか。最終話の展開に期待したいところだ。

ところで本作の物語の中央に存在するジェイ・エルは、どう見てもマイケル・ジャクソンをモデルにしている事に疑いの余地が無い存在であるが、そんなジェイ・エルが昏睡状態にある『トライブクルクル』の作中世界とマイケル・ジャクソンが既に亡くなっている我々の世界を重ねあわせる事も出来るだろう。
ここまで丁寧に物語を紡いできた本作である。マイケル・ジャクソン亡き後の世界に対するメッセージも描いてくれるような気がしてならない。果たしてどういうメッセージを提示してくれるのだろうか。最終話ではそうした点にも注目したい。

 

スポンサーサイト
この記事に対してトラックバックを送信する(FC2ブログユーザー)
http://ilya0320.blog14.fc2.com/tb.php/2181-6f7710c2

0件のトラックバック

0件のコメント

コメントの投稿

投稿フォーム
投稿した内容は管理者にだけ閲覧出来ます

Appendix

魔界戦線


■DREAM WING(C87新刊)


■プリズムアライブ(C86新刊)
44829979_m.jpg
とらのあなで委託中

■スイッチオン!(C85新刊)
アイカツ3
とらのあなで委託してました

■RUNWAY
表紙
とらのあなで委託してました

プロフィール

  • Author:水音
  • tumblrの方が積極的に更新してるマン。
    面倒くさがりなので、Twitterのほうが捕まります。

    魔界戦線



    連絡先  :mizune.moon.sounds@gmail.com
    @を半角にして下さい

カウンター