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『デジモンアドベンチャー tri. 第一章 再会』変わらない演出と変化する「選ばれし子供達」について

『シュタインズゲート』が再放送で新作映像としてβ世界線の物語を提示した一件について。「並行世界物だからこそ出来る事」ではあるし、「再放送」という「既知情報」として扱っていい枠だったから出来る事なので「面白い事をやったなぁ」という印象なのだが、そういえば『ガンスリンガーストラトス』でも似たような事をやっていた事を思い出した。あちらは「テレビ放送版とネット配信版とでは内容が変わる」というもので、厳密には同じではないのだけれど。
『ガンスリンガーストラトス』にしろ『シュタインズ・ゲート』にしろ、こうした仕掛けを機能させるのはとても難しいように思う。なぜならその変化に気づかれなければいけないからだ。その変化に気づかれなかったのが『ガンスリンガーストラトス』で、その変化に気づかれたのが『シュタインズ・ゲート』であるが、両者を分けたのは「気づいてもらえる環境があるかどうか」だったように思う。そういう点で見ても、両者の明暗の分かれ具合は重要なのではないかと思うのだ。
何にしても、こうした仕掛け自体は悪くないし面白いと思うのでやれる作品はドンドンやっていけばいいんじゃなかろうか。



1999年3月から2000年3月にかけて放送された『デジモンアドベンチャー』は、突如異世界に召喚された小学生の少年少女達が元の世界に戻るために冒険する」という異世界冒険物の要素と、世紀末的な表現しようもない不穏さが立ち込める独特の暗い空気感、そして複雑な家庭環境を抱える少年少女達がデジモン達と共に戦う中で成長していく物語性から今もなお高い人気を誇る傑作アニメである。
その人気を受けて2000年4月からは直接の続編となる『デジモンアドベンチャー02』が放送され、同枠では『02』後も『デジモンフロンティア』『デジモンセイバーズ』などが放送されたが、今日でも一番人気の高い作品はといえばやはり「初代」である『デジモンアドベンチャー』だろう。自分にとってもとても思い入れが強い作品で、怪獣映画的な面白さのある前日談『デジモンアドベンチャー』と、重厚なハードSFっぷりがたまらない後日談『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』の三本を合わせて見なおすぐらいには大好きな作品である。
本作『デジモンアドベンチャー tri..』はそんな『デジモンアドベンチャー』の直接の続編となる新シリーズで、『02』から三年後となる2005年の東京お台場を舞台に、突如現実世界に現れた暴走デジモン達と八神太一達「選ばれし子供達」の新たな戦いを描く。

本作で面白い点はいくつもあるが、その中でも特に面白いのは『デジモンアドベンチャー』の演出上のポイントを踏襲し、スタイリッシュさをそのままに今の作品として見事に表現している点だろう。
『デジモンアドベンチャー』の演出は今見ても「格好いい」と感じさせるほど洗練されたもので、特に挿入歌として人気の高い「brave heart」を『進化』『戦闘』という見せ場でBGMとして使う手法は、『デジモンアドベンチャー』と言う作品の代名詞とも言えるほど印象深い演出で、後のシリーズにおいてもそれぞれの挿入歌と言う形で模倣されているのだが、本作『tri..』でも同様の演出が行われており、「アグモンがグレイモンへと進化する」「グレイモンがクワガーモンと戦う」という二つの展開を一つの流れになるように上手に構成・演出されている。
また「楽曲の盛り上がりに合わせてアクションの展開を構成する」という点もきちんと押さえられている。特に二番サビ終了後から最後のサビへの曲の進行の中で表現される物語の溜めと解放によるカタルシスは、『デジモンアドベンチャー』の演出と全く同じものだといっても決して過言ではないだろう。
その演出上のポイントの押さえっぷりには驚かされるが、こうした「見せ場」となるポイントで『デジモンアドベンチャー』の演出を押さえているからこそ物語面でのキャラクター達の変化がより強調されたものとなる。

本作のテーマとなっているのは「変わらない彼ら(デジモン達)と変わっていく僕ら(選ばれし子供達)」だ。
「選ばれし子供達」としてデジタルワールドを旅していた頃から六年も経過し、彼らの多くは高校生となって大人へと近づいた。体と心の成熟により彼らは「子供達だった頃」とは物事に対する向き合い方が大きく変化していく。
第一章でその変化が強調されていたのは八神太一で、六年前は猪突猛進気味に前に出て引っ張っていくようなリーダー気質だった彼も、体と心が成熟した事で視野が広くなった事で「デジモン達と共に戦う事で傷つく人達」の存在を感じ取ってしまい、その迷いから以前までのようなアクティブさが失われてしまっている。
その一方、『デジモンアドベンチャー』時代から太一の対になる存在として配置されている石田ヤマトは、「自分達が戦わなければ、もっと被害が出る」という割り切った考え方を見せている。
「アクティブな太一と現実的で慎重派のヤマト」という『デジモンアドベンチャー』時代と比較すると真逆のポジションとなった二人だが、これもまた「大人に近づいたからこその変化」なのだろう。対比構造は変わらないからこそこうした変化は際立ったものとなっており、またアグモンを始めとするデジモン達が変わらない事もあってその変化っぷりにはどこか切なさを感じさせるが、しかしその変化があるからこそ二人の思いを一つにしなければ誕生しないオメガモンの登場は物語を盛り上げてくれる。
とはいえ、太一はまだ迷いを捨て去ったわけではない。彼が迷いを振り切り、オメガモンが真の能力を発揮するその瞬間を楽しみにしたい。

全六章構成の第一章ということもあってキャラクター達の顔見せと伏線を展開に終止した雰囲気があるが、15年前の作品の新シリーズということを考えると、第一章のこの作り方は別段悪くはない。むしろ新キャラクターである望月芽心とデジモン騒動の鍵を握るメイクーモンではなく、「選ばれし子供達」の方に物語を寄せ切っている分、この後の物語に期待をさせる作りだと言えるだろう。
第二章のタイトルは「決意」ということだが、選ばれし子供達に何を「決意」 させるのだろうか。第二章以降の物語も楽しみにしていきたい。




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