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『もしも私が【星月ヒカリ】だったら。』神アイドルの視点で気づく、自分の大切な想いについて

艦これAC。時間が出来たのでプレイしてきたのだが、一言で言えば「ブラウザ版で抽象化されていた部分をあえてガッツリ掘り下げた」というゲームで、なかなか良く作りこまれている。個人的に良かったのは艦娘の着任演出で、「艦娘とすれ違う」「こちらに気づいた艦娘がちゃんと挨拶してくれる」など「俺の鎮守府」感が半端じゃない。戦闘中は戦闘中で結構な頻度で喋ってくれるし、手元にはカードが残るので愛着も湧きやすい。この辺の「このゲームに何が求められているか」を分析して、面倒くさいオンデマンド印刷機能をちゃんと盛り込んでくる辺りは流石はセガである。オンデマンド印刷機能をいつもの筐体に増設したおかげで横にでかくなり、そして印刷部分を飾ってる小物のセンスはちょっとダサいとは思うが。まあそれもセガらしいといえばセガらしいか。
個人的に気になったのは「ゲームとしては重い」ということかな。チュートリアルが不親切なのはいいとして、一回のプレイ時間が長く、そして体験の密度が濃いので合う人には合うけど、合わない人には「重い」という印象しか残らないぐらい重いんだよなぁ。
とはいえ、艦これらしいゲームではあると思うので売れるといいなー。筐体の数が明らかに足りてない今の状態ではあんまりプレイしたいとは思わないんだけども(二時間待った)。



もしも自分が「自分ではない別の何か」であったのなら。
誰でも人生で一度ぐらいはそんな事を考えた事があるだろう。特に誰にも相談する事が出来ないような深刻な悩みを抱えている時などはそうした想いも強くなる。ましてや非の打ち所のない完璧な「神にも等しい存在」がこの世界にいたのなら、「神アイドルなら自分の悩みも解決できるのに」という想いは真に迫った願いとなるだろう。どんな悩みも完全無欠の存在なら、軽く飛び越えてしまえるのだから。
本作『もしも私が【星月ヒカリ】だったら。』は、そんなどんな悩みとも無縁の完全無欠の神アイドル「星月ヒカリ」になった三人の少女達と、彼女達の体験する「神アイドルの日常」を描いた作品だ。恋愛、夢、友達といったいかにも「ありそう」な悩みを抱えた三人の少女達が「星月ヒカリ」となって、様々なアイドルの仕事を体験していく。「等身大の少女」がいきなり「神アイドル」と呼ばれるような存在の暮らす世界へと放り込まれ、戸惑いながらもその面白さに夢中になっていく姿には異世界転移物のような趣きがある。一章ごとに一人づつ、全部で三人の少女の物語が本作の中で描かれているが、彼女達三人が「星月ヒカリ」として体験する「神アイドルの日常」はいずれも異なっている事もあって、その「神アイドルの世界」の異世界転移物のような面白さは強調されているといえるだろう。ライブに星月ヒカリにスポットを当てた番組制作などなど、少女達が体験する世界はまさしく「キラキラと輝いた異世界」なのだ。

しかし本作で一番大事な点は「神アイドルの日常」ではなく、「神アイドルになった事で自分達の本当の気持ちに向き合い、自分達の物語へと戻っていく」という物語になっている事だろう。
三人の少女達はいずれも誰にも相談できないような悩み事を抱え、その悩みから逃れるために「星月ヒカリ」になることを願った。
その願いが叶って「星月ヒカリ」となった少女達は神アイドルが暮らす世界を知り、その世界の面白さに「最高!!」と心から思うほど夢中になっていくのだが、視点が変われば見えてくる世界も変わってくるように「自分ではない何か」になったからこそ、自分が見逃していた「自分の本当の気持ち」に気づいて、成長していく。
「星月ヒカリなら好きな人と両想いになれるのに」と思っていた朝比奈真琴は「自分の姿、自分の言葉で思いを伝えなければ何の意味もない」という事を、「星月ヒカリになれば勉強なんてしなくても、アイドルだけに打ち込んでいられる」と思っていた野崎亜美は両親が本気で自分を心配し、本気で自分の夢に向き合ってくれていた事を、「星月ヒカリみたいになれば自信を持って自分らしくいられるのに」と思っていた森田結衣は「星月ヒカリだって様々な物事に真剣に向き合っていたからこそ、自信を持つことができる」と言うことをそれぞれ学び、自分自身の身体へと戻って彼女達の物語を生きていく。
シナリオ構造こそシンプルではあるが、シンプルであるが故に少女達が自信を持って自分の物語を生きていこうとする姿が美しい。自分の身体、自分の言葉で好きな人に告白した朝比奈真琴は立派だし、「アイドルになりたい」と言う夢を逃げ道にすることを辞めた野崎亜美の自分自身の力でアイドルになる事を目指していこうとする姿は本物のアイドルのように凛々しい。傷つく事を恐れて他者に合わせるのではなく、本音でぶつかった森田結衣は真の友を得て、自分の居場所を作り上げた事で自信をつけた。
もしも私が星月ヒカリだったら。そのように願う少女はこの作中世界にもきっとまだまだいるのだろう。
しかし自分にとって大切なことは自分自身で掴み取らなければ、きっとそれを掴みとったとしても輝くことはない。恋愛も夢も友達も、「誰か」ではなく「自分」で掴みとったからこそ自分の中で輝きを放つのだ。
そのことを教えてくれた「星月ヒカリ」は、きっとこれからも「少女達の神アイドル」で在り続けるに違いない。
星月ヒカリと少女達がこれからも幸福であらんことを。
本作はそんなピュアな事を心から願わずにはいられない作品だった。

なお本作において星月ヒカリ本人と呼ぶべき存在は全く登場していない。本作に登場しているのは「星月ヒカリ」となった少女達であり、星月ヒカリ本人は全く描かれていないのである。彼女本人を描いた描写もなくはないのだが、そこで描かれているものは「外見」と「功績」のみで、内面に踏み込んだ描写は一切描かれておらず、徹底して省かれている。
これは本作における星月ヒカリとは「少女達が神アイドルの世界を体験するための舞台装置(あるいは少女達の器)」であるためだろう。仮に星月ヒカリの描写が一欠片でもあったのなら、星月ヒカリは少女達が憑依する「星月ヒカリ」にはなれなかったはずだ。描いていないからこそ、彼女は「星月ヒカリ」という舞台装置になることが出来たのだが、では星月ヒカリ本人に魅力がないかというとそうではない。
彼女は彼女でスタッフやアイドル達から好かれている描写はされているし、何より「内面に踏み込んだ描写が一切ないがゆえの神秘性と俗世に染まらない品格」がある。
神アイドル・星月ヒカリ。
彼女はその名に恥じない完全無欠の「神アイドル」である。


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