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『ラブライブ!サンシャイン!!』μ'sが残したものと羽ばたきの時について

『君の名は。』。新海誠監督作品だということと友人知人から勧められていたので見に行ったのだが、素晴らしい作品だった。色々素晴らしいところはあるけど、個人的には新海誠がこれまで何度も繰り返してきた「運命の相手とのすれ違い」という題材を「男女の魂の入れ替わり」という普遍的な題材へと変換した上で、上質なエンターテイメント作品として完成させた事が何より素晴らしいところだった。これまでの新海誠監督作品は「すれ違いのときに抱えた想いを引きずる」という展開が多くて、その想いを昇華することが少なかったように思う。『君の名は。』もクライマックスからエピローグの最後のシーンまでは想いを引きずったまま暮らしていて新海誠「らしい」展開になっているのだが、ラストシーンではそれぞれが引きずっていた想いはきちんと昇華されており、新海誠監督作品らしからぬ感動と思いが通じ合う喜びがあった。
またストーリーテリングもよく出来ている。「男女入れ替わりネタかと思いきや実は別のジャンルで」というのはフェイントとしてもいいのだが、この「男女入れ替わり」と言うギミックがあるからこそ人智の及ばぬ事故をクリアするための突破口が生まれるというのが本当にいい。ほぼ入れ替わりネタ一本なのに、よくこれだけのことが出来るなぁ、と感心しっぱなしである。
見たことがない人は是非見て欲しい。



「あのアイドルみたいになりたい」と言う強い憧れは、いつだって「アイドル」の最初の一歩だ。自分は自分にしかなれない以上、憧れたアイドルと同じ存在になることは出来ないかもしれない。しかし強い憧れは夢への原動力。「あの人みたいになりたい」という純粋な想いは「何でもない自分」が「最高に輝ける自分」へと変わるための力になってくれる。いつでも憧れが最初の道標なのである。

『ラブライブ!サンシャイン!!』12話「はばたきのとき」は、そんな「憧れ」を胸にスクールアイドルの世界へと飛び込んだAqoursの九人が「自分達らしさ」を獲得する物語だった。それは同時に「μ'sの後を追うことを辞めて、自分達の翼で自分達の空に向かって羽ばたくときがやってきた」ということでもある。
これまでの物語において、Aqoursは今日のスクールアイドル業界を確立させ、「伝説のスクールアイドル」と呼ばれるようになったμ'sの九人の背中を追いかけてきた。スクールアイドル活動を始めたのも「μ'sのように輝きたかったから」であるし、困ったときにはμ'sのポスターや楽曲を聞き、「μ'sだったらどうするか」をシミュレートすることで前へ前へと進んできた。物語半ばから浮上してきた「スクールアイドル活動で廃校を阻止する」という要素についてもその反応は「μ'sみたい」で、彼女達は「μ's」という伝説の後を追う事で今日まで活動を続けてきた。
しかしながら彼女達は「浦の星女学院のAqours」であって、「音ノ木坂学院のμ's」ではない。どこまでいってもAqoursはμ'sには絶対になることができないのである。
それ故にこれまでの物語においてたびたび登場していた「μ'sだったら」「μ'sのように」という言葉は「前へ」と進む原動力になれるだけの力強さがありながらも、どこか不安感がつきまとっていた。
少し考えてみれば当たり前の話と言えよう。Aqoursはμ'sにはなれない以上、μ'sのモノマネをしてもAqoursが最高の輝きを手に入れられるわけではないのだから。
12話でAqoursの九人が気づいたのはそんな当たり前で、しかし彼女達にとってとても大切なことだった。
ラブライブ!の予選を突破した事で動画の再生回数も格段に増えたものの、浦の星女学院の学校説明会に参加するような人達は依然0。μ'sはこの頃には既に廃校阻止を成し遂げていたと聞いたAqoursの九人は、「μ'sはなぜ凄いのか」「μ'sはなぜ伝説のスクールアイドルになることが出来たのか」を知るヒントを探すために東京へと向かう。
この「μ'sはなぜ凄いのか」「μ'sはなぜ伝説のスクールアイドルになることが出来たのか」と言う疑問は「μ'sとAqoursはなぜここまで違うのか」「μ'sとAqoursの明暗を分けているものは何なのか」と言い換える事も出来よう。高海千歌達は知りたかったのだ。「なぜ自分達とμ'sは違うのか」を。
μ'sのライバルであるA-RISEに憧れてスクールアイドルを目指したSaint Snowの二人との会話や、μ'sが所属していた音ノ木坂学院を巡って千歌達はようやく自分達の問いの答えに気づく。
「μ'sはμ'sとして今を全力で輝かせようとしたからこそ、『伝説のスクールアイドル』と呼ばれるほどの存在になることが出来たのだ」と。そしてその今を全力で輝かせようとすることこそが「スクールアイドルの輝き」であると。
そのことに気づいたAqoursの九人は「μ'sのように輝きたい」という想いを「Aqoursとして全力で輝きたい」へと一新し、自分達の空を目指して飛び立つ。その空に何もなかったとしても、その空に輝くただ一つの太陽になることは出来ると信じて羽ばたこうとする彼女達の姿は輝きに満ちている。この時Aqoursが身にまとった輝きこそが何も残さなかったというμ'sがただ一つ残した、「スクールアイドルの輝き」なのだろう。
その事は沼津へと戻ってきた高海千歌のもとに舞い降りた白い羽からも分かる。


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『ラブライブ! 2nd season』のエンディングにて印象的に用いられていた白い羽。それはスクールアイドルとして己の空を目指して羽ばたき出したものにだけ与えられる祝福なのだから。

『ラブライブ!サンシャイン!!』はμ'sに憧れた者達の物語だ。μ'sが輝かせた全力の『今』に魅せられ、「自分達も負けないぐらいに輝かせたい!」と思った者達の物語だ。
12話ではAqoursが自分達の『今』を輝かせるべく羽ばたき出したが、自分達の『今』を輝かせるために羽ばたく権利は別にAqoursだけに与えられた特権ではない。Aqoursがそうであったように、おそらく全国各地にいるスクールアイドル達もAqoursのように自分達の『今』を輝かせるために努力を積み重ねているのだろう。でなければおそらく作中で描かれているようなスクールアイドルの隆盛は存在しないはずだ。
そんな少女達の『輝き』と熱い想いが集まるラブライブ!は、きっと陽光のように眩い輝きに満ち、見ているものを熱くさせてくれるに違いない。ラブライブ!のステージで、今の九人はどんな太陽になるのだろう。Aqoursという太陽になるステージを楽しみにしたい。



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1件のコメント

[C1687]

お久しぶりです。とうとう「君の名は。」に言及する回を読んでしまい、居ても立っても居られなくなったのでコメントします。

2回見ましたが、本当に「エンターテインメント作品だな」と。

新海誠さんといえば…という感じで、九条さんが言われた通りの作風だと思ってました。今回の映画を見るまでは。

何より、背景が恐ろしくきれいに描かれていたのに惹かれて、
本当に見てよかったと思える作品でしたね。

そして、サンシャインは、ようやく、本当の彼女たちの物語が始まるんだな、と。今回の「はばたきのとき」を見て思いました。
これまで、μ'sという存在が、Aqousたちの鎖になっていたように思えてたんですが、ここにきて、
μ'sが一番大切にしてきたこと、そして輝くために一番大切なことに気付いたのを見て、
ここから始めるんだな、と。
Aqoursが輝くためのストーリーが見られるんだな、と感じることができた回でした。

次回で今のクールは終了ですが、冬か春に2クール目やるんでしょうか……?今のところニュースは来てないので、
この子達、次あるのかしらん?とちょっと今から不安ですが、
次のサンシャイン!!の展開が今から楽しみです。
  • 2016-09-20
  • ツカサ
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