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『Fate/EXTELLA』新ヒロイン・アルテラを救う想いと今後の課題について

冬コミの進捗状況ですが、二冊とも大体六割ぐらい完了していて、これから先は四割を作っていく感じになります。間に合うかどうかというとほぼ間違いなく間に合うと思うのですが、二冊同時に進行すると管理するものが増えて大変ですなー。作業量も普段よりも多いし……。

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先日書いた『Fate/EXTELLA』対軍宝具と呂布が猛威を振るうシリーズ初の無双ゲームについてという記事は公式が敷くネタバレ禁止の期間中に執筆したこともあり、ゲームシステムについての話が大半だった。
ネタバレが解禁された後である今回は、奈須きのこと桜井光が担当したシナリオについて述べていきたい。

本題であるメインシナリオについての話に入る前に、まずは本作と『EXTRA』シリーズの距離感について確認しておきたい。
本作は『EXTRA』シリーズから繋がる物語ではあるが、「直接の続編」であるかというと解答は「NO」だ。本作で描かれる世界も物語も『EXTRA』『EXTRA/CCC』と大筋では似たような流れを辿った異なる世界の物語とした方が適切で、厳密には繋がっていない。ネロがメインサーヴァント、玉藻がサブサーヴァントとして扱われているのもそれが理由であり、『EXTRA』シリーズではプレイヤーサーヴァントの一人であった無銘と面識がないように記述されているのも「そもそも『EXTRA』とは異なった世界」だからである。
とはいえ、大部分では『EXTRA』と同様の流れを辿っていることは間違いない。ガウェインが「レオを成長させてくれた主人公だから協力を約束する」と語っている事からみても同様の経緯は辿ったようである。
この点は本作の物語を見ていく上で重要になるため、心の片隅にでも留意しておきたい。

『EXTRA』シリーズとの距離感について確認したところで本作のシナリオについて見ていくことにしよう。
本作のシナリオはネロを主役とした「ネロ編」、玉藻を主役とした「玉藻編」、アルテラを主役とした「アルテラ編」、そして全てを解決へと導く「金枝篇」の四部構成となっている。基本的にはどの物語も「並行世界の物語」として位置づけられているものの、攻略順がネロ→玉藻→アルテラ→金枝篇の固定になっている事から「全四部構成の1ルート固定の物語」として捉えた方が現実的だろう。
ルートが固定されている事で読み進めるのは楽であったしだからこそ仕込めたギミックもあるため、ルート固定の是非について一概に語る事は難しいが、ネロと玉藻の両者の攻略を必須にしたのは失策だったように思う。詳細は後述するが、玉藻ルートはほぼメインシナリオに関わらないので玉藻の攻略が必須だったのは非常につらいものがあった。
なお本作では各シナリオごとに諸事情で魂・精神・肉体に分かたれた主人公の視点で物語が紡がれていく。大筋では似ているが細部では異なった思考をしているため、「キャラ立てとしては悪くなかった」とだけ述べておく。

ここからは各シナリオについて述べていく。

プレイを開始して最初にプレイすることになるネロ編は「魂・精神・肉体」のうち、最も希薄である精神に対応するシナリオである。
マスターと共に聖杯戦争の勝者となったメインサーヴァントであるネロは、放っておけばいずれ消えてしまう精神の主人公を救うために勝者の証である「レガリア」を統合すべく玉藻やアルテラと共に戦っていく。
全体の中で見れば序章であることもあってか、本作で何度もプレイすることになる大筋の流れをなぞった展開であり、初見のインパクトと物語構造そのものの面白さを提供することに終始している部分があるが流れ自体は悪くない。アルテラが1万4000年前に文明を破壊した白い巨人・セファールであること設定レベルでの驚きもある。またメインヒロインに対応する三人の中で一番饒舌で勇ましいネロだけあって、1万4000年前に文明を破壊したセファールを相手に啖呵を切る姿は凛々しいものであった。
しかしながら、あれほど燃える戦いを見せ、主人公を救うために尽力したネロなのに、エンディングでは「目覚めない主人公にネロが呼びかけ続ける」というバッドエンド風味な展開なのはいただけない。どのルートも同じ程度の後味の悪さがあるならまだしも、ネロのみがバッドエンド風味なのは彼女の頑張りを無駄にしているように見える。一応理屈の上では間違いではないのだが、描いていることそのものは同じでも、希望ある結末には出来なかったものかと悔やまれる。

ネロ編の次にプレイすることになる玉藻編は、ネロ編をポジティブな感情に基づく物語と位置付けるのであれば、どちらかと言えばネガティブな感情に基づく物語となっている。本シナリオにおける玉藻は「良妻賢母」ではなく「傾国の美女」という側面が強く表れており、マスターとの関係も堕落的・共依存的な関係性と『EXTRA』や『FGO』でも見られなかったようなものが展開されていく。
これは玉藻が一万四千年前に文明を破壊したアルテラ(厳密にはセファール)の恐ろしさを知っているために起きた変化である。「セファールが目覚めた以上もう自分達は滅びるしかない」と考えた玉藻は自分達の領土に引きこもり、マスターと堕落的な関係性を続けていく――緩慢な自殺ともいえる選択肢を取るのだが、魂のマスターに叱咤されたことで考え直し、自分達の本当の幸せを手に入れるためにセファールへと戦いを挑む。
セファールの復活は絶望的な死の誕生であるため、その恐ろしさを知っているものなら玉藻のように自暴自棄になるのも理解できないではない。絶望に立ち向かう勇気を持つのも人間らしい感情であるのならば、絶望に震えあがって過ちを犯すのも人間らしい感情なのである。
これを演出するためにネロと玉藻を対極に配置したのは良い判断であるし、対比構造が効いていて面白いように思う。単体シナリオとしてみても玉藻編は最もコンパクトにまとまっていて、最もネガティブ感情からポジティブ感情への切り替えが上手くいっており、面白いシナリオだった。
しかしながら「一本のシナリオ」として見た場合、「一番不必要なシナリオに見えてしまう」のもまた確かである。
こうした印象を受けるのは金枝篇における扱いの弱さ故であるため、この玉藻編の物語を生かした結末が存在しない事については片手落ちと言わざるを得ない。まあそれはさておき、カルナ君のド天然ぶりは面白かったです。

三種類存在するヒロインルートの最後を飾るアルテラ編であるが、金枝篇に直接つながる物語という事もあり、本作の中でも特に重要度が高いエピソードである。
「なぜ主人公は肉体と魂と精神に分かたれてしまったのか」から始まり、巨神アルテラとの邂逅、英霊アルテラと共に戦場を駆け抜けながら、巨神・英霊の両方のアルテラと主人公は心を通わせていく。「魂と精神が抜け落ちた肉体に宿った残留思念の主人公」と「文明を破壊するだけの装置でありながら、人としての心が芽生えてしまったアルテラ」という似た者同士の二人だからこそ生まれ、育まれる友情でもあり愛でもあり絆でもある関係性はネロや玉藻とはまた違った印象を受け、巨神アルテラの「破壊装置であることは十分承知しているものの、主人公からは嫌われたくない。もっと一緒にいたい」という想いが現れた挙動の一つ一つにはドキドキしてしまう。英霊アルテラも比率こそ違うものの基本的な挙動は同じであるため、一人で二度美味しいキャラクター造詣っぷりには舌を巻く次第であるが、物語が進むにつれアルテラが抱いたその感情もマスターとの絆も近い将来は消えゆくものであることが分かってくるとその日々のあまりの儚さが胸に染み入り、涙してしまう。それは避けられない運命であると分かればわかるほど悲しくなるのだが、しかし最後にアルテラが手に入れたものは紛れもなく彼女だけの想いであった。
文明を破壊するための存在として生まれながら、マスターと交流を重ねることで自分だけの立派な思いを手に入れることができたアルテラ。例え近い将来消えゆく想いであったとしても、その想いを尊ぶ心は本物であり、それはアルテラが戦いの中で手に入れた二つ目の戦利品でもある。
そしてその戦利品があったからこそ、肉体の主人公は彼女を救うために「彼女のマスター」として最善を尽くす。
二人はその宿命に抗い続けた事でこの世界から消え去ってしまったが、二人が抱いた本物の想いは次の誰かに受け継がれる。
その誰かに該当するのが「金枝篇」である。

金枝篇は『Fate/EXTELLA』という物語の最後を締めくくる「解決編」となる物語だ。
アルテラ編の事実上の後編として位置づけられ、肉体の主人公がアルテラを救うべく消滅する覚悟で送ってきた「自分の経験」を元に、ネロと精神のマスターは二人でアルテラを救う道を探し始める。解決編となる物語という事もあり、玉藻陣営を滅ぼさずに進行し、全英霊達が「文明の破壊者」でもあり「一人の少女」でもあるアルテラを救うために尽力する構図は実に熱く、自分の想いを自覚して助けを求めるアルテラの一人の少女としての在り方は美しく、そして英霊のみならずエリザベートにすら感情優先の行いで計画をぶち壊しにされるアルキメデスの姿は痛快で、グランドフィナーレへと繋がる道は少年漫画的な熱さを帯びたヒロイックストーリーであった。
特にネロがアルテラに自分の心を自覚させる一連の流れは、「人の美しさ」を己の代名詞たる宝具にまで昇華させたネロにしか出来ない。「「美しい」と感じる心があるのならばお前は人間だろう」と説き伏せられるのはネロだけであり、そこに切り込まれたことでアルテラが助けを求めるシーンは本作の中でも屈指の名シーンである。
最終決戦においてヴィーナスの力を借りるネロは実にらしく、「人の美しさ」を誇るネロに相応しいあのビキニアーマーは面白かったのだが、残念なのは「アルテラの救済はネロ固定である」ということだ。

ネロは「人間」に対応し、「破壊装置」に徹しようとするアルテラに対するカウンターになるのであれば、玉藻はアルテラに近しい神霊の立場から「自分の想いに素直になる事」を説けたのではないか。
ネロと玉藻をシナリオ上平等に扱うのであれば、ゲームシステム上でもきちんと平等に扱い、玉藻ルートを実装するべきではないか。
シナリオをあえて実装しないにしても、「玉藻はお留守番」ではなく「最終編はネロと玉藻を使える」程度の事はするべきではなかったか。

大筋では美しい物語であり、奈須きのこがこれまで繰り返し描いてきた「例えすぐに消えてしまうような想いであったとしても、その願いは本物」「器の記憶」と言ったテーマもSF的な世界観である本作ならではの解釈を交えながら展開されており、アルテラという新ヒロインを既に存在するネロと玉藻と同ステージへと押し上げるためには本作のような「アルテラを中心に置いた物語」は必要だったように思う。
この点については不満はなく、設定過積載気味のアルテラの造詣には唸らされるし、一年前に『FGO』でピックアップをすり抜けて手元に来てくれたアルテラの魅力が増した事には感謝している。しかしながら既存ヒロインが蔑ろにされるような展開を望んでいたかというと当然「NO」である。『EXTRA』でも『EXTRA/CCC』でも「一週目から玉藻」という苦行を乗り越えた身の上として、その点については批判的な立場にならざるを得ない。
また純粋に一本の作品としても玉藻編の玉藻の変化を金枝篇では上手く取り込めていないように思う。
『猛将伝』に該当するゲームが出る予定であるのならば、玉藻ルートないし玉藻編の物語を取り込んだ金枝篇へのリメイクに期待したい。長い沈黙を破ってようやく始まった新シリーズなのだから。

最後にもう一度述べておくが、細かいところを除けば本作はゲームとしても「Fateの新作」としてもそう悪いものではない。
先日書いたようにゲームシステムは細かいところに粗があるとはいえ全体的には良好である。無双ゲームの第一作目は試験的な試みが目立ち、微妙な印象を受ける事が多いが、本作にはそうした微妙さはほぼない。本当に細かいところでの調整不足がある程度で、プレイしていてストレスに感じる点は少なかった。
シナリオについても上述するように難点こそあるものの、アルテラ編と金枝篇については素晴らしいシナリオだ。
「機会があれば一度プレイしていただきたい」と言える程度のものではあるのだ。それだけに難点が目立つともいえるが、この辺りは「シナリオサイドのゲームシステムへの理解不足」ともいえるし、シリーズが進むごとに改善される見込みがあるだけまだマシである。前向きに評価していきたい。

でもアルトリアの出現条件だけは許さない。
アルトリアが「プレイアブルキャラクターですよ」と発売前の宣伝活動に使用されていなければ「バカな条件だなぁ」と好意的に受け止められたと思うが、表立って宣伝活動に利用しておきながらあの条件はない。偶発的に条件を満たすことも難しく、最初から狙っていかなければ達成は不可能で、ゲーム中に出現条件に関するヒントもないのはどうなのか。
制作陣は「面白い」と思っているかもしれないが、あれは「面倒くさい」である。
まあ苦労した分アルトリアは滅茶苦茶に強いのだが。そこだけはよかった。




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