Entries

言葉にならない美しさのある『この世界の片隅に』について

『ALL OUT!!』。勝つために必死で教本を読み込み、自分達で練習を考え、自分達のやり方で今までラグビーを続けてきた赤山がコーチに就任した籠に怒られて喜ぶシーンも凄くよかったけど、「自主性を重んじて」の一言でまともに教師として振る舞おうとしなかった顧問教師に発破をかけるシーンも良いなぁ。主役はラグビーをやる選手側だから、指導者の物語というのはそこまで出てこないけど、この作品ではそんな指導者の方針の違いと衝突まで描いている点がちょっと面白い。
実際に競技しているシーンも頑張っているし、良い作品である。でも今期一番ドスケベ枠な気もするんだよなぁ、これ……。

コミックマーケット91。当選しているので、よろしくお願いします。【三日目 東2 V18-a 魔界戦線】です。
新刊はラブライブ!サンシャイン!!とアイカツ!です。
詳しい事はWEBカタログでご確認ください。こちらからどうぞ




片渕須直監督作品『この世界の片隅に』は歴史に名を残す大傑作映画だ。
しかし本作のその傑作具合を言葉にすることはとても難しい。見終わった後に胸に湧き上がった思い。それが何一つとして言葉にならないのである。

思い返してみると、私が『この世界の片隅に』に興味を持ったのは、片渕須直監督達が始めたクラウドファンディングの話を聞いた時だった。
「『マイマイ新子と千年の魔法』の監督が、次回作の資金をクラウドファンディングで集めるらしい」。
そんな話を小耳に挟んだ私は『この世界の片隅に』と片渕須直監督に興味を持った。クラウドファンディングが開始された2015年は「アニメにクラウドファンディングは利用できるのでは?」に注目が集まり始めていた頃であったが、今よりも小規模な企画が多かった。国外向けに目を向ければ『リトルウィッチアカデミア』があったが、正直その程度である。同年五月には『Dies irae』が一億円弱の資金を集める事に成功するのだが、少なくとも『この世界の片隅に』のクラウドファンディングが開始されていた頃は「クラウドファンディングそのものが珍しかった」という時期であった。
そんな時期であったから、「あえてクラウドファンディングで資金を集めるという手段を取ったこの作品は一体何なんだ」という思いがあった。
もちろん片渕須直監督が本作を制作したいがために込めた思いは十分凄いと感じていたし、投資してもらうための資料として記されている数々の資料の数々にはもう「ここまでやるか」と愕然としたのであるが、自分にとってはまず「そこ」が入り口だった。私にとって、そこがすずさん達が暮らす「広島・呉」と言う場所に続くトンネルだったのだ。

次に興味を持ったのはそれからしばらくして公開された予告映像を見た時である。
私自身は出資しなかったものの、私の数少ない友人達の多くは出資していた事もあり、予告映像が公開されるや否や即座に話題にしていたし、多くの人に勧めて回っていた。私もその「勧められた一人」であったのだが、いざその予告映像を見てみると、そのあまりの美しさに圧倒された。そして同時に言葉で言い表しようもない悲しみを覚えた。
広島県呉市の映像は生命に溢れているし、何気ない生活の全ては「人の営み」そのものであり、そこには活力があった。にも関わらず、予告映像を見ていると悲しくなったのだ。涙を流していたのである。これにはコトリンゴ氏の物悲しく寂し気な音楽も関係していたように思う。しかし音楽だけでここまでの感情を引っ張り出されるとはとても思えない。片渕須直監督が作り上げた映像があまりに美しかったからこそ、コトリンゴ氏の音楽の物悲しさに私の感情は引きずり出されてしまったのだ。
何度も何度もこの予告映像を繰り返し視聴して自分の感情に決着をつけた後、私は「この映画は絶対に初日に見に行こう」と誓った。
思いっきり冬コミの原稿執筆期間真っ只中ではあったが、「これは見に行かねばなるまい。見に行かなければ後悔する」と思った心は止められようもなく。丸一日を捻出するために地獄のスケジュールをこなすことになったわけであるが、それはそれである。
ともあれ地獄のスケジュールを何とか終えて、映画館へと足を運ぶことに成功した私を待っていたのは何とも言葉で言い表し難い体験であり、至上の経験であった。

本作で描かれるのは昭和19年に広島県呉市に嫁入りにやってきたすずさんの日常である。
昭和19年といえば第2次世界大戦真っ只中で、広島県呉市といえば軍港があった場所であるが、そんな呉市にやってきたすずさんは物資が少なくなっていく中で日々に楽しみを見出しながら懸命に生きていく。描かれているものの一つ一つを切り取ってみれば別に「美しいもの」や「貴いもの」ではないのだが、日々を楽しみながら皆で笑い合いながら過ごしていくすずさん達の日常はコミカルで楽しい。見ているうちに自然とこちらも笑顔になってしまう。
しかしながら時間が経つに連れて、すずさん達の日常にも戦争の気配が迫っていき、空襲も増えていくのだが、その空襲すらも日常に組み込まれて馴染んでしまう。空襲が日常化している事を見せるための繰り返しが笑える展開になってしまうようなシーンまであるぐらいに、戦争は「戦時下の生活」へと組み込まれ、「日々の出来事」になっていく。こうした描写の一つ一つがまた面白いのだが、戦争が激化するにつれてその日常からは様々なものが失われていくし、すずさん達の日常も過ぎし日の平和な出来事へと変わっていく。
そんなすずさん達の日常が壊されていく過程がたまらなく怖い。そして何より壊された後の日々が日常へと変わっていく事はとても恐ろしい。続きを見る事に痛みを覚えるほどに。あれほど苦しいなりに日々を楽しんでいた人々の笑顔が失われていくのが辛いのである。
しかしそれでも人が生きていれば人の営みは続いていくし、人はその営みの中で喜びを見出す事ができる。辛く悲しい経験もいつかは笑いに変える事ができる。
生きる事の強さ、人の営みの煌めき。
本作はそうしたものに彩られていて、辛く悲しく凄惨なものもあるけれど最終的には「美しい」という印象を残してくれる。

『この世界の片隅に』は本当に美しい作品だった。それ以外の言葉が出てこないほど、美しいものを見せてくれた。
映像的には原作にはない最初の空襲シーンの、あの印象派の絵画みたいな演出がたまらなく美しかったのだが、要所に差し込まれる生命の力強さは至上の美しさだったように思う。
見に行く機会があるのならば、その美しさに注目してみて欲しい。


スポンサーサイト
この記事に対してトラックバックを送信する(FC2ブログユーザー)
http://ilya0320.blog14.fc2.com/tb.php/2304-24fd2a3e

0件のトラックバック

0件のコメント

コメントの投稿

投稿フォーム
投稿した内容は管理者にだけ閲覧出来ます

Appendix

魔界戦線


■DREAM WING(C87新刊)


■プリズムアライブ(C86新刊)
44829979_m.jpg
とらのあなで委託中

■スイッチオン!(C85新刊)
アイカツ3
とらのあなで委託してました

■RUNWAY
表紙
とらのあなで委託してました

プロフィール

水音

  • Author:水音
  • tumblrの方が積極的に更新してるマン。
    面倒くさがりなので、Twitterのほうが捕まります。

    魔界戦線



    連絡先  :mizune.moon.sounds@gmail.com
    @を半角にして下さい

カウンター