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『ラブライブ!サンシャイン!! 2nd season』第四話に見る捻りの利いたシナリオ

「10から100に!」と合言葉に廃校阻止へと向けて舵を切って進み始めた浦の星女学院のスクールアイドル「Aqours」。「入学説明会でのライブとラブライブ!予選のステージのダブルブッキング」という最大の難所を乗り越え、手にした結果は望みうる最高の結果。まさに順風満帆と言ってもいい最高のスタートとなったAqoursであったが、その「最高の結果」を勝ち取るために支払った代償も大きかった。
入学説明会用とラブライブ!予選用に二曲の楽曲を用意するということはその分だけ衣装代を含めお金がかかるということ。
二つのステージをこなした事でAqoursの活動資金はついに底を尽き、残されたのは五円玉のみ。「自分達の力だけで何とかする」という目標を掲げた事で小原鞠莉の太い実家の力を借りることも出来ない今、五円玉だけではラブライブ!本戦の会場である東京に行くことすら出来ない。そこでAqoursの九人は活動資金を稼ぐためにみんなでアルバイトに挑戦するのだが、そんな最中、黒澤ダイヤはただ一人、下級生との間に壁を感じていたのであった……。
この四話は突き詰めると「上級生と下級生達が共に困難に立ち向かうことで打ち解ける」という話になる。
前身となる『ラブライブ!』でも同様の構造の物語は存在しているため(一期10話「先輩禁止!」)、「Aqoursにもついにこういう話が!」と感慨深くなるところがあるが、この四話が面白いのは「やろうとしていること」は過去シリーズと同じでも一捻りを加わることでかなり別の印象を残していることだ。
この四話において黒澤ダイヤは自身の感じている下級生との壁を打ち壊すために、名前を「ちゃん」づけで呼んでみたりと普段の自分では絶対にやらないような事までして様々なことに挑戦する。表情豊かな黒澤ダイヤを今回の主役に据えただけあり、コロコロと表情が変わっていくさまは楽しく、また表情をあえて直接的に見せないことで打ち解けようと努力している様を「怒っている」と感じ取ってしまっている高海千歌や国木田花丸とのギャップが面白いのだが、そもそも下級生達は黒澤ダイヤに近寄りづらさを感じているのだろうか。黒澤ダイヤはあると感じ取っている下級生との壁は存在するのだろうか。
結論から言えば、おそらく下級生達は黒澤ダイヤとも既に打ち解けていると思っているし、壁なんて存在しないものと思っている。今回の話で描かれた描写を見ても遠慮している素振りは一つも見られない。ラブライブ!の予選突破の喜びを分かち合う時も「同じ目標に向かう対等な立場の仲間」としてハイタッチを求めているし、ダイヤの意見にも納得した上で「そうします」と述べている。
あくまで対等なのだ。少なくとも下級生達はそう思っている。しかしダイヤは果南や鞠莉との呼び方から「壁がある」と考えて行動しているわけなので……やる気が空回った喜劇が誕生する。
ここまでくると不器用故に真正面からぶつかることで分かり合ってきたμ'sとはまた違う話だ。
聞き分けがよく、物分りのよいAqoursだからこそ、こうした空回りがゆえの喜劇が成立すると言い切っても良いだろう。こうした「一捻り」を「彼女達らしさ」という元々持っている味わいと共に楽しませてくれる四話は本当によく出来たシナリオであった。

ところで今回の四話を演出された南川達馬氏だ。
氏は『劇場版 NARUTO -ナルト- 疾風伝』等で制作進行を経験した後、演出家へと転向。『進撃の巨人』や『DUEL MASTERS』などで活躍。ラブライブ!シリーズには『ラブライブ! 2nd season』の7話「なんとかしなきゃ!」からの参加となり、12話「ラストライブ」や劇場版である『ラブライブ!The School Idol Movie』などの演出を手掛け、『ラブライブ!サンシャイン!!』では5話「ヨハネ堕天」、10話「シャイ煮はじめました」を演出されている。
担当された話から考えると、ラブライブ!シリーズにおける南川達馬氏は「大きな話が一段落した後、どうしても下がりがちなテンションを再び盛り上げる」という役割を担っているように思う。笑わせ楽しませながらも明確に「前へ」と進んでいる感を残してくれる南川達馬演出回は、全体の中では小規模であるものの、キャラクター一人一人の顔が見えてとても魅力的だ。『アイカツ!』において「憧れの先輩達が今に決して満足せずに次の夢へと向かっていく姿を見て、自分達の夢に改めて向き合い、叶えることを決意する」という超重要エピソード「あこがれの向こう側」を任せられるだけのことはある。本当に良い演出家だ……。

さらりとSaint Snowと連絡を取り合っていることが明らかになるなど、予想外の関係を提示してきた『ラブライブ!サンシャイン!!』。アニメでは定期的に「従来とは違う解釈」を提示してくるが、「ライバルであると共に同じ目標に向かって頑張る仲間」という解釈で見ると「Saint Snow」というスクールアイドルユニットの多面性が見えて面白い。こうした点に着目してみるとより一層楽しむことが出来るのではないだろうか。


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