Entries

『ラブライブ!サンシャイン!! 2nd season』六話に見る三つの物語と束ねるリーダーの資質について

『ラブライブ!サンシャイン!!』で巧みな点の一つに、「個々の物語をスクールアイドル活動へと集約させている」という点が上げられる。まず最初に高海千歌達のスクールアイドル活動があり、そのスクールアイドル活動に合流する形で「廃校阻止」という「浦の星女学院」という場所そのものの存続に関わる危機が生まれ、そしてかつての夢を今度こそ叶えたいという物語と共に三年生が加わった。
全ては同じ方向を向いている。しかしあくまでスクールアイドル活動が先にあり、その他の物語がそこに加わるという様式であり、それ以上でもそれ以下でもない。それだけにスクールアイドル活動の重要な舞台は、その他の物語においても重要な局面を迎えることが多い。それはつまりそれぞれの物語を集約させていく際には情報整理の技術が問われるということで、とりわけシナリオ周りにおいて大変な苦労があるわけなのだが、今回の話においてそのあたりは見事な采配だったと言うしかなかった。必要な情報を整理した上で、それぞれの比重も上手く振り分けられている。この上手さが監督由来なのか、それとも脚本家なのかはわからないが、過不足なくまとめてドラマチックな波を作り上げたのは見事の一言に尽きる。今回は一つの最終回といってもいい。最高だった。

今回特に注目なのは三つの物語を「ラブライブ!東海地区予選」というステージに集約させていたことだろう。
一つ目の物語は「浦の星女学院の生徒としての物語」だ。現在浦の星女学院は在校生徒数も入学希望者数も少ない。それを理由にした廃校の話が持ち上がっており、Aqoursの活動理由の一つにはこの「廃校阻止」が加えられていた。『ラブライブ!サンシャイン!! 2nd season』一話では、そんなスクールアイドル活動を通じての宣伝活動のおかげで入学希望者は増加こそしているものの、依然として少ない現状を受けて廃校阻止の動きが強いこと、そしてラストチャンスとして期日までに「100人」という希望者を集める事が提示されていたが、その期日となるのはなんとラブライブ!東海地区予選当日。にも関わらず、現在希望者は57人と目標とする数字に全く届いていないのだが、はたしてこのまま廃校になってしまうのか!?というのが浦の星女学院の生徒としての物語だった。
二つ目の物語は「リベンジの物語」だ。Aqoursは廃校を阻止するために、浦の星女学院全校生徒の思いを背負ってラブライブ!東海地区予選に挑んだものの、惜しくも手が届かずにここで敗退になってしまった。したがって今回の地区予選突破はAqoursの悲願である。おまけに今回の会場は前回敗れ去った会場と同じ会場だ。そんな奇縁もあって今回のリベンジマッチ否が応でも燃え上がる。
最後の物語は「かつて叶えられなかった夢の物語」だ。松浦果南、黒澤ダイヤ、小原鞠莉の三人はかつてスクールアイドルとして活動していたものの、友達のためであれば例え少し動かすだけで激痛が走るほどの怪我をしていても、「私なら大丈夫」と笑顔で言えてしまう小原鞠莉の将来を心配した果南によってそのスクールアイドル活動を終えることとなった。
今回Aqoursが挑戦することになったパフォーマンスは、そんな小原鞠莉に怪我を負わせてスクールアイドル活動を終える遠因を作ったパフォーマンスであった。事情が事情なだけにダンス周り全てを担当する果南も「これはやらない」と封じ込めていたものであるが、「今度は三人じゃない。それにあの時のAqoursとは違う」ということで封印を解禁。自分達が出来なかった事を今度こそ形にするために、そして地区予選を無事に突破するためにかつて叶えられなかった夢のAqoursを実現させるために行動を開始する。

以上の三つの物語はいずれも素晴らしく、Aパートを丸々使って描かれていることもあって、「地区予選に賭けるAqoursの思い」は伝わってくる。
しかしながらこれらの三つの話は大局的なものであり、「Aqoursに背負わされているもの/背負っているものの物語」でしかない。それをまとめ上げるにはもう一つ、何か別の物語が必要だ。その「何か」になったのが高海千歌の「リーダーとしての資質」の物語だ。
作中で本人は述懐しているように高海千歌は普通だ。Aqoursの他の八人と比べると特別なものは何もない少女だ。「私は特別なんかじゃない」と最初に発表されたオーディオドラマでも語っていたし、アニメの一話でも「私は普通。普通怪獣」と自嘲気味に述べていた。しかし彼女が「スクールアイドルを始めよう」と言わなければAqoursは生まれなかったし、彼女が行動しなければAqoursは多くの人々の物語を受け止める存在になることはなかった。彼女は普通だ。特別な力も他よりも秀でた能力も持たない。しかし最初の一歩を踏み出そうとした事、そしてその最初の一歩が他の誰かが一歩を踏み出すための理由となれたのならば、それはきっと特別なことであり、きっかけをくれた人もまた特別な存在なのである。
そんな「普通だからこそ特別」な高海千歌のリーダーとしての資質を持って三つの物語を束ね、よりドラマチックなものへと変えてきた酒井監督を始めとするスタッフの手腕には恐れ入る。どれか一つ欠けてもおそらくここまでの感動はなかった。
そんな酒井監督をリーダーとするチームは、Aqoursが決して手の届かない光に指先程度でも触れた時にどんな煌めきを生み出してくれることだろうか。物語は半ばを超えたばかりで、先はまだ見えないが楽しみだ。
スポンサーサイト
この記事に対してトラックバックを送信する(FC2ブログユーザー)
http://ilya0320.blog14.fc2.com/tb.php/2406-4fa3735c

0件のトラックバック

0件のコメント

コメントの投稿

投稿フォーム
投稿した内容は管理者にだけ閲覧出来ます

Appendix

魔界戦線


■DREAM WING(C87新刊)


■プリズムアライブ(C86新刊)
44829979_m.jpg
とらのあなで委託中

■スイッチオン!(C85新刊)
アイカツ3
とらのあなで委託してました

■RUNWAY
表紙
とらのあなで委託してました

プロフィール

水音

  • Author:水音
  • tumblrの方が積極的に更新してるマン。
    面倒くさがりなので、Twitterのほうが捕まります。

    魔界戦線



    連絡先  :mizune.moon.sounds@gmail.com
    @を半角にして下さい

カウンター