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『Fate/EXTRA Last Encore』について

2010年に今は亡きイメージエポックとTYPE-MOONが開発した『Fate/EXTRA』は「SF版Fate」とでも言うべき代物で、2013年に外伝として発売された『Fate/EXTRA CCC』共々多くのファンに受け入れられた。2016年にはそんな『Fate/EXTRA』の正式な続編としてアルテラが新規ヒロインとして追加されたアクションゲーム『Fate/EXTELLA』が発表。そして今年にはそんな『Fate/EXTELLA』の外伝としてシャルルマーニュを主人公に据えた『Fate/EXTELLA LINK』の発売が予定されている。
そんな『Fate/EXTRA』のメディアミックス展開の一つとして、今年一月末から『Fate/EXTRA Last Encore』が放送開始。現在三話まで放送されているのだが、その内容はあまりにも幾原邦彦のファンを公言する奈須きのこらしい作品だった。

まず大前提として本作の物語構成そのものは原作とさほど変わらない。原作は細かい違いこそあるが概ね「対戦相手が決定する→敵のサーヴァントの正体を探る→決戦→敗者達の死を主人公が見届ける→次の戦いへ」という構成であり、そこから大きな逸脱はしていない。しかし、原作とアニメとでは重要視している点が大きく異なる。
原作において特に比重を置かれているのは「状況証拠や相手の言葉の端々から相手のサーヴァントの正体を突き止める」というミステリー的な部分だ。
様々な証言や証拠を積み上げて相手のサーヴァントの「強さ」を切り崩していく展開は「真名がバレると相手に対策を打たれてしまうから普通は隠す」という従来の設定を上手く昇華した面白いシナリオであった。しかしながらあのシナリオはあくまで「ゲームだから」成立していたものだと言われれば全くその通りだ。アニメでそのままそれを表現してもその面白さは「ゲームの劣化版」にしかなりえないし、加えて現在展開している『Fate/Grand Order』では本作に登場する大半のサーヴァントが真名を開示した状態で参戦している事を考えるとそのミステリー要素はもはや通じない。タネが割れてる手品は手品師の手品以外の部分が面白くなければ楽しめないのである。
おそらくその辺りを他ならぬ原作者たる奈須きのこはよくよく理解していたのだろう。そのままやっては冗長なだけであることを。
『Last Encore』では相手サーヴァントの真名当ては申し訳程度のものへと変更。その代わりに本作では、各階層を統括するフロアマスターが創造する世界と、その世界に込められた彼らの人間らしい願い、そしてその願いに切り込んでいくネロとそのマスターである「キシナミハクノ」の意思の方を強く押し出した物語を展開している。それはフロアマスターの概念とキシナミハクノ&ネロの概念同士の衝突である。信念どころではない。根本的に相容れない者同士の衝突であり、勝利した概念はより研ぎ澄まされた概念となって次の自分とは相容れない概念との決戦の地へと赴いていく。これは原作以上に残酷で耽美な物語だ。ある意味では『Fate/EXTRA CCC』以上に『少女革命ウテナ』的であるとも言える。
反面、本作ではアクションがそこまで重要視されておらず、作中描写的にも少々あっさりしたものになっている。直前まで放送されていた『Fate/Apocrypha』が劇場アニメと比較しても遜色ないほどの激しいバトルアクションを描いていた事を考えると、いささか拍子抜けと感じる部分はなくもない。特に三話のフランシス・ドレイクの宝具の演出はあっさりしすぎているし、その決着もさくっとしたものになっていたが、本作で重要なのは「体現する概念とその衝突」であるため、そこについては重要度としては低いということなのだろう。「概念の衝突をわかりやすくするためにアクションパートを入れているだけ」とするのが妥当なようにも思う。そもそも言葉を交わしすぎてしまえば論破する必要性も生まれてくるわけで、それは彼らが貫こうとする願いを口論のレベルへと貶める事になってしまう。「それは流石にない」と言う判断でああいう最低限の尺しか与えられていないのだろう。ありかなしかで言えば自分はもちろん「あり」だ。

余談だが、本作の脚本は奈須きのこと桜井光の共同脚本ということになっているのだが、奈須きのこが『EXTRA』をやる上で相棒として選んだのが桜井光というのはなかなか面白い。
桜井光は過去に『黄雷のガクトゥーン』というウテナのオマージュが全面に散りばめられた作品を執筆しているが、まさかここにきて右腕に選ぶとは予想すらしていなかった。「どの辺りが桜井光?」と効かれると難しいところだが、ともあれ女史がこうして活躍してくれると一ユーザーとしては嬉しい限りである。

ワンシーズンだけの物語ということだが、原作とは大筋では同じでありながら本作は全く異なる様相を見せている。
とりわけ「憎悪を持って立ち上がるキシナミハクノ」は原作と異なる最たる点であるが、「何も持たないが故に、戦ったマスター達やサーヴァントの思いを自分の中に詰め込んでいく」原作主人公とは違い、戦いを経て己の中身を研ぎ澄ましていく彼は最後に何になるのだろうか。残り短い話数の中で語られるキシナミハクノの物語を楽しみにしたい。
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