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『ラブライブ!サンシャイン!!The School Idol Movie Over the Rainbow』について

2016年7月から9月と2017年10月から12月の半年にわけて描かれたTVアニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』は特別な才能や奇跡を起こす力なんて持っていないごくごく普通の少女達が、「0から1に」を合言葉にひたむきに頑張る姿を描いた物語だった。
最初は憧れから始めたことだったのかもしれない。しかし彼女達が純粋に「輝きたい」と思ったことは紛れもない真実で、そんな思いを共にする仲間達と手を取り助け合いながら走り続けた日々は0を1にも10にも100にもして、彼女達自身を輝かせた。太陽のように強く優しく、そして熱く。何者でもなかった彼女達は、半年間の物語を経て見るものの心を熱くさせるようなスクールアイドルになったのである。
しかしだからこそ「劇場版アニメ制作決定!」の一報を聞いた時には「本当に必要なのだろうか」と感じた。
半年に渡って放送されたTVアニメで彼女達は最後まで走り抜いたではないか。母校である浦の星女学院を廃校から守ることはできなかったが、代わりに彼女達はスクールアイドルの歴史に「浦の星女学院」の名を刻みつけたではないか。浦の星女学院と彼女達九人の名「Aqours」はスクールアイドルが存在し続ける限り語り継がれる、永遠に等しいものになったではないか。
彼女達の物語はTVアニメで十二分に描かれているのに、これ以上何かを描く必要があるのだろうか。
その答えを探して『ラブライブ!サンシャイン!!The School Idol Movie Over the Rainbow』を見に行ったのだが、まさか「新たなる始まり」をテーマにするとは。これには恐れ入った。確かにそこはまだ未着手なものであった。

本作は卒業していく三年生組――黒澤ダイヤ・松浦果南・小原鞠莉と約束したとおり統廃合先の学校でもスクールアイドル「Aqours」を続けていこうとする高海千歌・桜内梨子・渡辺曜・津島善子・国木田花丸・黒澤ルビィの六人から始まり、三年生たちがいなくなった後の「新しいAqours」の具体的なイメージに欠けていたことからスクールアイドル活動そのものを見失ってしまう。そんな時、小原鞠莉の母親から卒業旅行に行った三年生たちが行方不明になったと知らされたAqoursの六人は卒業旅行先――イタリアへと飛ぶのだが……と物語は展開されていく。小原鞠莉の母親の目的が「自分の言うことを聞かない娘を強制的に結婚させ、自由を奪うこと」と言うことが判明し、三年生達の卒業旅行も母親への反発であったことが語られるなど、この辺りの描写はコミカルで楽しい。イタリアのヴェネツィアやフィレンツェの町並みも美しく、鞠莉の母親を説得するために行ったライブもキャッチーなサウンドとフィレンツェの風景が合わさって、前半部分の最大の見せ場になっている。見ていて楽しく、それでいて印象に残る素晴らしいCGライブであった。
この前半部分で描かれているものは端的に言えば「親の子離れ」ではあるのだが、その合間に「ルビィの姉離れ」が描かれている点を見逃せない。なぜなら前半から「ルビィの姉離れ」が描かれていることでテーマがグラデーション化しており、後半部分に物語を上手く繋げられているからだ。

帰国後の物語はAqoursのライバルだった「Saint Snow」を交えながら「新しく始めること」そのものを展開していく。
三年生達がいなくなってもAqoursを続けていくことを選んだ六人と、姉との思い出を大切にするべくSaint Snowを終わらせて新しいスクールアイドルを作ることにした鹿角理亞。選んだものは違えども「今まで一緒にいた人達がいなくなって、新しいものを始める道を選んだ」という点では同じである二つのユニットを通じて描かれるのは「『新しく始める』ということはどういうことなのか」ということだった。
高海千歌も鹿角理亞も「新しく始める」ということは「また0から始める」ということだと考えていた。今まで築き上げてきたものを一度0に戻して、再び高みを目指す行為だと考えていた。しかしながらそれは違う。新しく始めるからといって、今まで築き上げてきたものを失う必要はない。むしろ「今まで築き上げてきたもの」があるからこそ「新しく始めることが出来る」「また違う輝きを探す事ができる」とする今作の解答は、Aqoursの三年生達もそうであったことを考えるととても綺麗な結論であったように思う。
それに『ラブライブ!サンシャイン!!』という作品だって元々はそういう作品ではないか。
『ラブライブ!サンシャイン!!』は『ラブライブ!』という作品があったから生まれた。では『ラブライブ!サンシャイン!!』が新たに始まった際に、『ラブライブ!』が築き上げてきたものが全く受け継がれていないのかというと、そうではない。明らかに『ラブライブ!サンシャイン!!』は『ラブライブ!』の築いてきたものをブラッシュアップしている。TVシリーズから劇場版の流れも『ラブライブ!』があったからこそだろう。
この『ラブライブ!サンシャイン!!』という作品そのものが高海千歌達の結論を説得力の伴ったものへと変えてくれている。「新しく始めることは0にすることではなく、今までやってきたものを全て抱えて進むことだ」が決して無責任な発言などではないことをこの作品自ら証明してくれている。「ラブライブ!」というシリーズの強みを活かした上手い落とし込み具合ではないだろうか。

ただここまで「六人の新しいAqours」というものについて模索する物語を展開してきて上手く決着をつけたにも関わらず、ラストライブで六人から九人に戻してしまった点だけは未だに消化できていない。
せめてスポットライトを3:6にするとか、「三年生組はもういない」という部分を演出面で残す方針であれば文句はなかったのだが、そういうわけでもないのでラストライブだけは「無い方が面白い」という印象が強い。あれだけが単品で出てくるのであれば面白かったのだが。あれさえなければ文句のつけどころがない作品であった。

それはそうと、今作のオリジナルキャラクターとしてほぼ全編に渡って登場するボーイッシュな生徒会長を黒沢ともよが演じているので、興味がある方は是非見ていただきたい。アレは本当に凄いキャラクターで、ものの見事に突き刺さってしまった。

  
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