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『HUGっと!プリキュア』絶望と希望と全人類プリキュア化についての雑感

シリーズ15作品目として2018年に始まった『HUGっと!プリキュア』が終わりを迎えようとしている。
『プリティーリズム・ディアマイフューチャー』のグレイトフルシンフォニア三部作で衝撃を受けて以来、敬愛の念を抱き続けている坪田文女史がシリーズ構成を担当する事もあって、表立っては話していないものの例年以上に気合を入れて追い続けてきたわけであるが、今週末放送予定の最終話で無事に物語が幕を下ろすのかと思うと何とも言えない思いが湧き上がってくる。「今年のプリキュアももう終わるんだなぁ」と口にした時に舌の根に苦味を少し覚えるのはいつぶりぐらいであろうか。ともあれ、『HUGっと!プリキュア』は自分にとっては久しぶりにクリティカルヒットしたプリキュアであった。

『HUGっと!プリキュア』の何がそこまで気に入ったのかというと、「全ての人間の心には希望と絶望の両方が存在し、揺らぎ合っている」ということを描いていたからだ。
作中では希望は「アスパワワ」、絶望は「トゲパワワ」と表現されているが、全ての人間の心の中にはアスパワワとトゲパワワが存在しており、それは揺らぎ合っている。だからアスパワワが心に満ちている人であっても、ふとした拍子にトゲパワワが満ちる事だってあるし、逆にクライアス社の社員のように「トゲパワワの権化」として登場しておきながらも、プリキュア達の応援によってアスパワワを取り戻すこともある。プリキュアに変身する少女達もその点については例外ではなく、やはりアスパワワとトゲパワワの狭間で揺れ動きながら自分達の抱えている問題に向き合っていく。
この辺りの希望と絶望の両義性について描いていたのがキュアエールとジョージ・クライの最終決戦だろう。
ジョージは「トゲパワワは無くなることはない!」と主張するが、キュアエールはジョージの主張を「そうかもね」とやんわりと肯定しつつも「アスパワワもまた無くならない」と主張する。双方の問答は結局明確に決着をつけることはなかったが、一年間の物語を追ってきたものであるのならば双方の言い分がどちらも正しい事が分かることだろう。
仮にどちらか一方が正しいのであればクライアス社の社員達は今アスパワワに満ちていることや、トゲパワワがプリキュアの中にだって生じうることの説明がつかない。ジョージの主張も間違っていないから、キュアエールは否定しないのだ。
そしてあの問答があるからこそ、「ジョージが自覚していないだけで、彼の心の中にもアスパワワが残っていた」という結末に繋がる。先程も述べたように一人の人間の中にトゲパワワもアスパワワも、両方存在している。それはジョージだって例外ではない。彼は悲劇的な未来によって心がトゲパワワに支配されてしまっているが、だからといってアスパワワがなくなるわけではない。だから「自分の心の中にあったアスパワワに気付かされる」が彼の改心につながるのだ。
この辺りの描写の巧みさには「流石は坪田文」と唸らされた。ジョージですら最終的には敵ではなく、今を生きて未来を楽しみにする人として描ききってしまったのは本当に感動した。

また最終決戦周りでは「プリキュアは諦めない!」も唸らされた。
自分を手中に収めるために仲間達を痛めつけるジョージに屈しそうになった野乃はなに、薬師寺さあやと輝木ほまれは「プリキュアは諦めない!」とエールを送る。あそこのシーンは別に「私は諦めない!」でもよかったはずなのに、なぜ「プリキュアは諦めない!」だったのか。その点について見終わった直後からずっと考えていたのだが、最終決戦での全人類プリキュア化をみて理解した。あれはプリキュアを再定義するための台詞なのだ。
あの台詞は「プリキュア(=私達)は諦めない」ではなく、詠んで字のごとく「プリキュアは諦めない」なのだ。つまり「諦めないものこそがプリキュア」という意味なのである。
だから「未来を諦めなかったジョージ以外の人々」はプリキュアに変身できる。「プリキュアは諦めてない」の言葉どおり、キュアエール達の戦いを見ていた人々は明日を諦めていないのだからプリキュアに変身できるのは当然のことだ。むしろ出来なきゃおかしいと言ってもいいだろう。
そしてその全人類プリキュア化は「少数の人間によって未来が作られる」のではなく「未来は皆で作っていくものなんだ」という強いメッセージを生み出している点も見逃すことは出来ない。未来に絶望して一人で今を引き延ばそうとしたジョージと対になっている。ジョージが間違っていたのはその「一人で全人類の未来を奪うと決めたこと」という一点のみなので、そこを明確に否定するのが「全人類」というのは構図としてあまりにも美しかった。

そして今週末放送の最終話はおそらく一話丸々エピローグだと思うのだが、坪田文女史が脚本をやるはずなので期待している。
坪田文脚本作品といえばエピローグの美しさも込みだと思っているので、『HUGっと!プリキュア』も最高の形で締めくくってくれるはずだ。

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